<リプレイ>
●花咲く丘へ 依頼を受けた冒険者達は、カマキリを退治する為、グリムロンデの丘に向かっていた。 「今回の相手は、1m近くもある巨大カマキリとはな。ある意味、自然の驚異……か?」 蒼穹を貫く白銀の咆哮・サレナ(a08759)は、酒場で聞いたキーゼルの言葉を思い返しながら、そう呟きを漏らした。正直な所、サレナは昆虫が苦手なのだが……けれど、被害が現実に出ている以上、そうも言っていられない。サレナは、丘へ向かう足を早める。 「カマキリは、どうして人を襲っているのでしょうね」 その道すがら、不思議そうに口にしたのは水精歌姫・マユ(a09016)だ。カマキリは人を襲っているといっても、傷を負わせただけで相手を逃がしてしまっている。生きる為ではないのか……何か、守りたいものが、そのカマキリにはあるのだろうか……? 「まあ……どのような理由があろうとも、花が踏み躙られる事は、絶対に許せませんわ」 マユの言葉を聞いて、強い口調で言い放ったのは、蝶の如く華の如く・リリエラ(a09529)だ。 綺麗な物が好きなリリエラにとって、それは許せる行為では無かったし……それに。『願いが叶う』という言い伝えのあるマールメイアが踏み荒らされる事は、それに願いをかけた人々の想いさえ、踏み躙る事になるような気がして。 「そうだね……あたしも、マールメイアの花を、守りたいな」 煌く銀砂・グラリア(a09339)は、リリエラの言葉に頷くと、そう口にしながら心の中で思う。 (「あたしも、夜明けと共に咲くマールメイアの花を見たいし……それに、お願いごとをしたいから……」) グラリアにとって、マールメイアにまつわる伝承は、とても魅力的だった。 願いを叶えてくれるかもしれない、マールメイアの花。それを守りたいと、グラリアは強く、強く思う。他にマールメイアの花を楽しみにしている人たちの為にも……彼らの願いを叶える為にも、頑張るのだと。 「えっと……エルルちゃん、巨大カマキリ倒せたら……一緒にマールメイアの花が咲くところを、見に行かないかな?」 その一方で、エルルの隣を歩きながら、そう誘いかけたのは、暁の疾風・フウガ(a03266)だった。 「そうね。折角だもの、マールメイアが咲くのを、この目で見てみたいわ」 フウガの誘いに頷くと、見る事が出来るかしら……と、エルルは楽しげな様子で笑みを零す。だが、すぐに気を取り直した様子で小さく首を振ると、まずはカマキリ退治に専念しなくちゃねと気合を入れ直す。 「そろそろマールメイアが生えとる場所やな」 大自然より奇跡を呼ぶ医術士・バルム(a06234)は足を止めると、マールメイアに被害が出ないようにしながら戦う為、良い場所はないかと、周囲を調べ始める。 丘はマールメイアに限らず、多数の植物の姿が見受けられ……それら全てに被害を出さないようにする、というのは、流石に難しそうだ。だが、被害を出来るだけ最小限に抑える事ならば、出来るだろう。 「わいらは、あの辺りがエエかな。そっちはあそこの木の近くが向いとると思うわ」 冒険者達は二体のカマキリに対して同時に対応する為、二手に分かれるという話になっている。バルムはそれを踏まえながら、場所についての目星を付け……そして冒険者達は、酒場で相談した通り二手に分かれると、それぞれカマキリを退治する為に動き始めた。
●巨大なカマキリ 二手に分かれた冒険者のうち、東側へと回った一人であるストライダーの忍び・ディディ(a09772)は、辺りの様子を確認しながら、カマキリの様子を探っていた。 「………」 前方には、草をカサカサと踏みながら、悠々と過ごしている大きなカマキリが一匹。ディディはカマキリとその周囲の状況を確認すると共に、他の者達の動向を確認すると……機を計って、カマキリの方へと近付きながら、弓を構える。 「――はっ!」 カマキリからもよく見えるように姿を現しながら、その姿目がけて矢を放つディディ。その攻撃に、カマキリは怒りの色を浮かべながら振り返ると、前足を蠢かせながらディディの方へ迫る。 「来たね……」 その動きに合わせて、ディディは後退を始める。カマキリをマールメイアから遠ざけ……そして、皆が待ち伏せている場所まで、カマキリを誘導する為に。 そう……ディディの役目は、囮としてカマキリを惹きつける事だ。ディディはつかず離れずという距離を保ちながら、後退を続ける。 「く……」 だが、誤算はディディの想像以上に、カマキリが素早かったという事だろう。それなりの距離を開けながら後退していたはずなのに、それはどんどん狭まっていき……カマキリはディディの眼前まで迫ると、その前足を繰り出す。 「いかん……!」 他の冒険者達が待機していた場所まではまだ距離があるが、このままではディディが危険だと、冒険者達は潜んでいた物陰から飛び出す。駆けつけながらサレナがチェインシュートを放つ一方、エルルが気高き銀狼を飛ばし、カマキリの制止に動く。 「すぐに回復するからな」 その間に海風・イサナ(a03616)がディディとカマキリの間に割って入ると、バルムが彼女の傷を癒しの水滴ですぐに癒す。 カマキリの方はといえば、自分を組み伏せて来た銀狼を振り払うと、身体を起こし体勢を立て直そうとする。だが…… 「――はあっ!」 そこに、すかさずサレナが詰め寄ると、カマキリの腹に電刃衝を放つ。その一撃にカマキリは麻痺し動けなくなり……続けてイサナのチェインシュートが突き刺さり、傷の癒えたディディによる、貫き通す矢が一直線に飛ぶ。 「今や!」 更に、バルムとエルルの手元で紋章が描かれると、エンブレムシュートが飛び……再び身構えたサレナが、電刃衝を用いてカマキリの身体を貫くと、カマキリは甲高い声を上げながら崩れ落ちていった。
同時に、もう一体のカマキリの居場所へと向かった冒険者達も、行動を開始していた。 こちらでは、この作戦を提案したのは自分だからと、リリエラがカマキリを誘き寄せる囮の役目を引き受けると、皆が居る場所まで誘導していく。 「ふ……わたくしを、カマキリ如きが傷付けられるとでもお思い?」 カマキリは素早い動きでリリエラに迫ると、攻撃を繰り出していたが、それをリリエラはライクアフェザーを用いて避けながら、移動を重ねる。 だが、リリエラには口にしているほど、余裕がある訳ではなかった。攻撃を避けているといっても、それは辛うじて、紙一重の差での事。これ以上カマキリの攻撃が続けば、それをいつまでも避け続ける事は出来ないだろう。 「大きいですね……」 カマキリが近付いて来るのを待ち構えていたフウガは、その姿を実際に目の当たりにして呟くと、挟み込むように攻撃していきましょうとグラリアに呼びかけ、待機していた物陰から飛び出す。 「うん。……行くよ……!」 グラリアは斧を握りながらカマキリに近付くと、電刃衝を叩き込む。その反対側にはフウガが回り込み、ツインサーベルでカマキリの背を切り裂く。 「大丈夫ですか?」 その間にリリエラは皆の後方へと下がり……ヒトの紋章術士・ミア(a09735)は、心配げな表情で怪我は無いかと気遣う。 「ええ。この程度……ただのかすり傷ですわ。ご心配には及びませんことよ」 そうは告げられたものの、ミアは僅かな傷であろうと、早めの回復を心がけた方が良いだろうと、リリエラに癒しの水滴を使う。 「なぜ、こんな事をしているんだ……?」 一方マユは獣達の歌を用いながら、カマキリへと語りかける。彼らがこのような行動に出ているのは、きっと何か理由があるはず。そう考えてのマユの問いかけだったが……返事は何もなく、カマキリはただ、響く歌声に対して、チラリと視線を向けて来ただけだった。 「駄目か……」 もしかしたら返事は返って来ないかもしれない、とは考えていたマユだったが……実際に返事が返って来なかった事に、落胆を隠せない。 だが、いつまでもそれを気にしてはいられない。それに……人々を安心させる為にも、このカマキリを倒さなければならない。自分達と同じ生き物を倒す事は、とても辛いけれど……でも、自分は冒険者。人々の為にあるべき存在なのだから。 「――華麗なる衝撃!」 マユはパルチザンから七色の光を放つ。それはカマキリの身体へと伸び……命中すると同時に、辺りにはファンファーレが鳴り響いた。 その間にもグラリアとフウガの手からは幾度と攻撃が繰り出され、後方からは、カマキリの動きを抑えるべく、ミアが気高き銀狼を放つ。 「せっかく……みんな、綺麗に咲くところを見に来てるのに……!」 フウガはミラージュアタックを使うと、銀狼によって組み伏せられたカマキリへと一気に迫り、渾身の一撃を放つ。 その一撃は、カマキリの腹部を大きく裂き……そのまま、カマキリはグッタリとした様子で大人しくなると、もう、そのまま二度と動く事はなかった。 「終わりましたわね……。では、ゆっくり花を眺める事にでもいたしましょうかしら。きっと……格別に綺麗でしょうから、ね」 地に伏したカマキリの姿を眺めながら、リリエラは静かに呟きを漏らすと、顔を上げて皆を振り返り……ゆっくりと、艶やかに微笑んだ。
●夜明けと共に、願いを 「マールメイアへの被害は、ほとんど無いみたいやな」 戦闘を追え、すぐに花の様子を確認に向かったバルムは、ホッと胸を撫で下ろした。 もし花が傷んでいたら、どう対処すべきだろうかと案じていたバルムだったが……幸いにも、さほどマールメイアには被害は出ていないようだ。 「卵の類は無いみたいね……」 もしカマキリが卵を産み落としていたら、と危惧したディディは、辺りを丹念に探し回っていたが、それらしき物は何も見つからなかった。どうやら、この点に関しては心配する必要は無さそうだ。 「うにゃ……マールメイアの花には、そんな言い伝えがあったんだ〜」 その間に、エルルからマールメイアにまつわる伝承を聞いたフウガは、驚きと関心の入り混じった様子で声を上げた。 どうやら、先程エルルに声を掛けた時は、マールメイアに関する話については何も知らず……ただ、エルルと一緒に居たいという理由で、フウガは彼女を誘ったようだ。 「そろそろ夜が明けそうね。マールメイアが咲くところ、見れるか……あっ」 白んできた空と、マールメイアを交互に見ていたグラリアは、驚いた様子で声を上げる。彼女の視線の先……そこでは、ゆっくりとマールメイアの花が、開こうとしている。 「わぁ……」 思わず見惚れる冒険者達の前で、マールメイアはゆっくりと、淡いピンク色の花を咲かせた。 (「ずっと一緒に……。まだまだエルルちゃんを護るには、弱くて小さいですけど……必ず頼れるようになります。だから……」) フウガはマールメイアの花が咲く様子を見ながら、そっと心の中で願う。そして祈るように一度目を閉ざし……それを開けると、エルルの方を見る。 「フウガさん、お願いは済んだ?」 どうやらエルルも、何か願い事をしていたようだ。彼女はフウガと視線が合うと、照れくさそうに頬を染めながら、笑みを浮かべている。 「はい……」 そう答えながら、フウガは自分の顔も同じように、きっと照れ笑いを浮かべているのだろうなと思う。 「そうだな……」 サレナは、自分の事は願うより、実際に行動してしまう方だから……と、皆の健康と、そして友人の恋路が上手くいくようにと、次々と花開いていくマールメイアを眺めながら願う。 (「……あの人に、会えますように……」) 私も、とミアは両手を組みながら目を閉ざすと、そっとマールメイアの花に願い事をする。どうか、どうか会えますようにと、そう強く想いながら。 「私には、お願いするような相手はいないし……」 そんな皆の様子を眺めながら、苦笑したのはディディだ。皆が何を願っているかは分からないけれど……ディディには願いたいと思うような事は、特にこれといって無い。 (「もし今後、縁があればお願いしに来るかもしれないけどね。……どこかに、面白い男がいないかしら」) いい相手が転がってないものかしら、と思いながら、ディディは咲いたマールメイアの花を見やる。 (「まだ見ぬ運命の人……素敵な王子様が、私の前に現れますように……」) ぎゅっと両手を握り合わせ、マールメイアの花をじっと見つめながら、そう願っているのはグラリアだ。 周りの皆からは『恋に恋するお年頃』なんて言われたりもするけれど……グラリアにとって、素敵な王子様の存在は、やっぱり憧れだから。 (「あ、それから……」) そう願い事を終えたグラリアだったが……ふと思い出した様子で、もう一度真剣な眼差しを、マールメイアに向ける。 (「……皆さんの願いが、叶いますように」) そう祈るグラリアの前で、マールメイアの花は、朝の眩しい日差しを受けながら、そよ風に揺れた。

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参加者:9人
作成日:2004/07/03
得票数:冒険活劇8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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