カミエリヤセミ



<オープニング>


 百は下らぬ小径のそこかしこに、千は下らぬ生活があった。
 粗野で猥雑で、それでいて奇妙な秩序をもった、魔窟。昼とは言わず夜とは言わず、怒声と歓声と嬌声が入り乱れ、あらゆる醜行と罪にまみれた、貧民街。
 彼女にとって、暗くて狭いそんな路地裏の迷路だけが、知りうる世界の全てであった。
 その日、彼女はいつものように商売を終えると――彼女の家は代々花屋を営んでいたのだが、家には一輪の花もなかったので、彼女は仕方なく別のものを売って糊口をしのいでいた――、たった一人の肉親である幼い弟の喉をかき切った。
 なぜそうしたのか、彼女にもわからなかった。たしかに、こんな生活に嫌気がさして、いっそ弟と共に命を絶とうと考えたことも一度や二度ではなかったが、それにしても、あまりにもあっけなく、なんの躊躇もなく、彼女の変異した指は、弟の命を奪い去っていたのだ。
「……」
 彼女は声も立てずに泣きながら、せめて弟が苦しまないよう、丹念にとどめをさした。
 そうしている間に、涙はでなくなった。もはや、彼女は自分が何をしているのか、相手が何者であるかも、認識できなくなっていたのだ。

「その敵は、くだんのキマイラめいた怪物、と考えてよいのでしょうか」
 卓についていた葬蝶・サリサ(a90401)が、ぴんと背筋を伸ばした姿勢のまま、静かな声音で霊査士に訊ねた。
「ええ。ソレはかつて人だったものが怪物になった、キマイラに似た存在よ。周知のとおり、ソレは元人間だと言っても、決して侮れない戦闘力を持ち合わせているわ。形質は一つ。椿の腕。二つの腕そのものが椿の枝葉となり、花を咲かせているの。その枝葉を自在に伸ばし、攻撃を仕掛けてくる」
 およそ十メートルまでその椿の腕は伸びるそうだ。そして、その腕に傷つけられた者は、身体が痺れ身動きが取れなくなるという。一度に一人しか相手取ることができないようだが、脅威的な力ということに変わりはない。
「さらに面倒なことに、ソレはもともと住んでいた貧民街から離れていないの。なかば崩れかけた廃墟に潜伏している。無論、周囲に住んでいた人間は退避して、ここ数日は新たな犠牲者は出ていない。とはいえ、その状況に至るまでに流れた血の量が多すぎたわ。確実に、始末して」
「その廃墟の間取りなど、わかりますか?」
 頬に掛かった髪を鬱陶しげに払った霊査士に、サリサがやや身を乗り出し質問する。
「確かなことはわからないわ。ただ……おぼろげに視えた感じでは、五階建てで、各階の部屋は少なく、面積も狭い。射程の関係上、至近距離での遭遇戦になりやすく、かつ奇襲を受けやすい。逆に言えば、逃すことなく圧殺することも可能……策と力量如何によって状況が変わるわね」
 崩壊するほど傾いてはいないけれど、足音を立てずに索敵するのは難しいかもしれない。霊査士はそう締めくくると、懐からシガーケースを取り出した。


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参加者
花柩・セラト(a37358)
煤の双眸・クローチェ(a38525)
暁の音律・オルガ(a41868)
風韻縹緲・ハーツェニール(a52509)
倖せ空色・ハーシェル(a52972)
藍焼・イグニース(a59659)
万色を纏いし者・クロウハット(a60081)
暁に荒ぶ・タユ(a75218)
NPC:葬蝶・サリサ(a90401)



<リプレイ>


 その貧民街は、乱雑に組まれた積木の塊を思わせた。
 狭い区画に無数の建物が密集しており、それら一棟一棟が無計画な建て増しを繰り返してきたためか、路地は迷路のように入り組んでいた。あちこちに放棄された得体の知れないゴミの悪臭で、風通しの悪い空気は澱みきっている。
 当然、日当たりも悪い。昼でも暗いため、病や犯罪が当たり前のように横行している様子だ。暗がりには剣呑な目つきをした輩が蠢いており、辻に差し掛かるたびに、いかがわしい女たちが声をかけてくる。
「ここが舞台ってワケね。まったく、素晴らしいことこの上ないわ」
 無遠慮に向けられる敵意と好奇に満ちた視線を無視しながら、冒険者たちはなんとか路地を抜け、くだんの建物へ辿りついた。
 臭いをモロに嗅がないよう、はぷはぷ口で息を吸っていた夕焼け小焼けの・タユ(a75218)が鼻声で皮肉ると、藍なる修羅・イグニース(a59659)がかぶりを振った。
「そう言うな。もとより賞賛に値する演目とはなり得ぬことは、承知であろう」
 おうおうにして虚構より美しい真実などはなく、ゆえに美しい真実を望むならば、虚構のなかに見出すより他はない。その矛盾に、彼は諦念めいたため息をつく。
 冒険者たちは、隊列を組み建物へ侵入した。
 長い歴史のなかで、この辺りも興隆を誇っていた時期があったのかもしれない。もともとホテルとして使われていたらしく、一階はロビーと思しき場所で、立派な黒檀のカウンターと、瀟洒な調度品の数々がしつらえられていた。もっとも、それらの品々は荒れ果て、かつての趣など微塵も感じることはできなかったが。
 風韻縹緲・ハーツェニール(a52509)は、階段の錆びた真鍮製の手すりをなぞると、辺りを見回した。時の流れに曝され、荒れ果てた廃墟。その退廃美に、どこか懐かしさを感じたのだ。
 その手を繋いだ先には万色を纏いし者・クロウハット(a60081)がいる。目を閉じ、囮として先行させているクリスタルインセクトに意識を集中させているため、彼の歩みは一歩一歩、手を引かれながらの慎重なものになっている。
「よしなに」
 水晶の虫のやや後方につくのは忍びの二人だ。うなずく程度の、煤の双眸・クローチェ(a38525)のおじぎに、葬蝶・サリサ(a90401)が目を伏せ応える。先頭に立つ彼らが担った役割は、奇襲を仕掛けてきた敵の動きを捕らえるというものだ。
 一行は、なるべく音を立てず、慎重に建物内部を探索していく。こんな廃墟でも相当数の不法住居者がいたらしく、ところどころに無残な遺体が転がっていた。
 自分のなかにある『家』という概念とかけ離れた場所にも、たしかに人々の生活があった。そして、加害者である『彼女』にも、それはあったのだろう。暁の音律・オルガ(a41868)は、気を抜けばさざなみたつ感情を懸命に抑えて、意識を索敵に集中させた。
 曲がり角や扉に差し掛かるたびに立ち止まり、クロウハットが虫を介して敵の有無を確認する。侵入してからだいぶ経っていたが、それらしき気配は未だ感じられない。
 しかし五階にあがったとき、物音に注意を払っていた倖せ空色・ハーシェル(a52972)の長い耳が、かすかな葉ずれの音を捉えてぴくりと震えた。彼女はその旨を小声で仲間に伝えると、盾を構え先頭に寄り添った。
 一行に緊張が走る。建物内は荒れ放題で、窓の多くは板を打ちつけられており薄暗い。実質、頼りになるのは気配と物音だけだ。
 長く狭い廊下の向こうに、倒れた扉が見える。そこからかすかな光が差し込んでいた。その光のなかにさしかかった水晶の虫が突如、異形たる椿の腕に砕かれた。


 敵はまだ死角におり、その姿を現してはいない。廊下から室内に踏み込めば必然、敵の的になるだろう。先頭にいたクローチェは、どうすべきか一瞬躊躇した。しかし構えた黒鐵の得物に映った自分自身と目が合うと、彼は瞬きを一つして、弾かれたように床を蹴った。
「……!」
 思ったよりもソレは近くにいた。放った蜘蛛糸と放たれた椿の腕が交差したが、出会い頭の一手は互いにかわしあい痛み分けとなる。
 どうやら技巧に優れた相手らしく、クローチェの後ろに追従し、死角から接近していたサリサの蜘蛛糸もまた、敵にかわされてしまう。奇襲を受けてからわずか六秒、その間にも状況はめまぐるしく移り変わっていた。
 真っ先に室内深くまで乗り込んだのはハーシェルだ。立ち位置上やや出遅れたものの、彼女はすぐさま距離をつめ盾ごと体当たりすると、無色の太刀を逆上げに払い、怪物を力任せにぶっ飛ばした。
 壁際まで吹っ飛んでいく敵の姿が、幾重にも連なった残像に見える。そのいびつな影に向けて、花柩・セラト(a37358)が矢を放った。薄闇でもそれとわかる真紅の矢羽が怪物の胸に朱をそえ、影を縫いとめる。投げだされた怪物の身体が、窓に打たれていた板を崩し、射しこんだ陽光が、怪物の全容を冒険者たちの眼前にさらした。
 乱れた髪を乱雑にひっつめ、あどけなさの残る顔を似合わない化粧で彩り、やせっぽちな肢体をちゃちな装飾品とドレスで着飾った、怪物。かつて人だった存在。
 前衛の合間を縫い射線を通したハーツェニールが、そんな怪物の姿を赤鉄色の瞳に捉えたまま、邪竜の炎を射掛けた。宙を疾った黒い炎が怪物を焼き、よく知った、そして決して慣れぬ焦げた異臭を立ち昇らせる。
 クロウハットは微塵も顔色を変えず、さらなる業火で怪物を炙る。敵に対して思うことなどなにもない。余計な感傷など持ち合わさず、異形と成り果てた存在を倒すことだけが、彼が思うことの全てだ。
 弾けた火の玉が室内に散らばると、とたんに、身を切る寒さが、汗をかくほどの熱気に代わった。隙間風に乗って舞う火の粉のなかを、イグニースが駆ける。怪物の横手を間合いに捉え、端麗な棍棒の柄頭を叩き込むと、皮膚と肉と骨が裂けるいやな感触が腕に伝わってきた。それでも構わず、彼は貫いた得物をねじこみ、致命的な怪我を与える。
 野卑な声だった。怪物のあげた悲鳴は、人の声とはおよそかけ離れていた。
 痛ましい怪物の姿に、憐憫すら覚える。はやく終わらせなければならない。オルガのつがえた二本の短矢は、伸ばされた彼女の左腕が怪物の胸元を指したときには、すでに弦より離れていた。穴の開いた水袋のように、怪物の胸から吹き出た細い血流が、弧を描く。
 中衛にさがったオルガの後方、部屋の入り口にはタユの姿。その呼び方がこれほど似合わない者も珍しいが、『彼』の傍らには呼び降ろした白い守護天使たちが寄り添っていた。広げた黒薔薇の扇で口元を隠すと、彼は舞台を見渡し薄っすら目を細めた。
 幕を引くのがはたして人か椿か、誰にもわからない。さりとて終幕はすぐそこまで近づいているのだ。血まみれの演目は、開幕したが最後。どちらかが身を横たえるまで、終わることはないのだから。


 戦場となった最上階の一室は、他の部屋に比べれば多少広さに余裕があった。とはいえ、八名と一匹が死闘を繰り広げるには、やや手狭なのも事実。略奪を逃れた朽ちた家具を蹴りよけながら、冒険者たちは包囲の幅を狭めていく。
 繋がれた鎖が立てる聞きなれた音に混じって、セラトの耳に不快な笑い声が届く。組み合った眼前の怪物を赤弓で押しのけると、彼は手早く弦を絞り、付与された追尾の能力すら不要とばかりの精密な弓射を見せる。
 のけぞった怪物が椿の枝葉をひるがえし、無数の花びらを散らした。その花のあまりにも紅いこと。深い血の色に模した、人の抜け殻の色だ。ハーツェニールは、怪物が人をやめた原因がなんであるのか、その赤い花の裏側に見た気がした。だが、そんなことを考えたとしても、もはやなんの意味がないことも、彼は知っていた。
 響いた子守唄は効かず。風化と腐食と延焼で脆くなった床が突如抜け、飛び退った怪物の姿が階下に消えた。予期せぬ事態だ。
 ハーシェルは深く息を吸い込むと、臆せず崩れた床を飛び降りた。階下は暗く、彼女は視界を一瞬失うが、背後で蠢く気配を察し、反射的に振り向き渾身の一刀を見舞った。
 赤黒い血しぶきがあがり、深い裂傷を負った怪物が耳障りな声でわめき散らす。がむしゃらに振るわれた椿の腕を、体勢を崩したままだったハーシェルは直に受け、その身の自由を奪われてしまう。
 少女騎士の勇気に鼓舞された冒険者たちが、次々と階下へと降り立つ。
「あなたのもので最後にさせてもらいますよ、流れる血は」
 追撃せんと奇声をあげた怪物に向けて、クロウハットは黒布に納めたままの奇怪な杖を差し向けた。ほどこされたのは邪竜の術ではなく、紛れもない紋章の術だ。解き放たれた雄々しき銀狼を律し、彼が床に手のひらを押し当てると、怪物はその場に押し止められた。
 この娘は生きるコトすら気の毒だったという。では、胸に浮くこの不運の痣はなんの印となるだろう? 生を終えるための、幸福の印だろうか。……バカげている。間合いに侵入したクローチェは、指の合間に握りこんだ不吉な絵札を怪物のはだけた胸に叩きつけると、深くめり込ませた。ただただ、気の毒な娘のために。
「失敬」
 後退ったクローチェに立ち代り、イグニースが踏み込む。先とはうって変わり、羽毛のごとく柔らかな打撃が怪物の腹に打ち込まれる。とても攻撃とは思えぬその一撃はしかし、体内を巡る気を爆発させ、怪物の細い身体を壁まで弾き飛ばした。
 あらわになった胸は血でしとどに濡れ、折れた骨が生白い皮膚から突き出し、ピンク色に光っている。もはや常人では推し量れぬ精神状態にあるのだろう。怪物は、空気が漏れたような気味の悪い声で笑った。
 笑い声とは思えない不気味な声に、耳を塞ぎたくなる。不快だからではなく、居たたまれないからだ。強敵と渡り合うときに感じる高揚など、いまのオルガには感じられなかった。未だ動きを止めたままの無抵抗の怪物に向けて、彼女は矢を三本、無造作に撃ち込むと、場を譲り部屋の入り口を背負った。
 断頭を待つ罪人のように、怪物は頭を垂れたまま微動だにできずにいる。タユが扇を払い祝福を捧げると、聖女が傷ついた者に慈愛の口づけをもたらす。戦いは、もはや一方的なものになりつつあった。狂乱と血の演目に顔をそむけそうになるが、彼は決して目を逸らさない。
 サリサの鞭がしなり、錬気を纏った鞭打が怪物の肌を裂いて、壁を赤く染める。薄明かりにもうもうと巻き立つ埃が血玉に囚われ、身体を汚す。
 慟哭した怪物に、セラトは無言で矢を射掛けた。いかな存在であろうと、己の心だけは最期まで自分のもののはずだ。それすらも奪った花を葬るために。彼は弦を弾いた。肩から吹き飛んだ椿の幹から溢れ出したのは、人となんら変わらない鮮やかな血潮だった。
 残された腕を伸ばし、拘束を解いた怪物が悪あがきの一打を見舞う。それすらも、タユの力に掛かれば脅威とはなりえない。
 ここは暗くて寒い。心すら冷えてしまいそうだ。
 怪物が啼いた。ハーシェルはきつく盾の柄を握り締めた。だれも、こんなことを望んだ者などいないのに。こんな花など、咲かせたいと願う者はなかったというのに。なぜ、こんなことになったのだろう。彼女の振り下ろした刀は、残された怪物の椿の最期の一枝を難なく切り落とした。
「なぁ姐さん、そろそろ眠る時間だぜ」
 乾ききった喉が張りつき、そう呟いたハーツェニールの声は、かすれていた。柄の細工を指先で玩びながら、彼は静かに、子守唄を歌う。腕を断たれた怪物が、膝を突いたまま眠りに落ちていった。
 かつて人だった存在。いまも人の姿をした存在。ひどく不機嫌な声をこぼすと、オルガは手で顔を覆った。怪物が寝息を立てている。その、安らかな寝顔といったら……。
「あぁ」
 彼女はぶら下げていた弓をおもむろに前に突き出すと、射った。決して外さない距離で、決して生き延びずにすむ距離で。
 七本。それは奇しくも、床に落ちた椿の花と同じ数であった。


「弟さんとやら、まだどっかで独りぼっちなのかね。一緒に埋葬できねェかな」
 これからは、ずっと一緒に居られるようにさ。静かな鎮魂歌を歌い終えたハーツェニールがぽそりとこぼすと、みなが無言で賛同した。彼らの足元には、持ち寄られた布に覆われた娘の亡骸が横たわっている。
 薄く開かれたままの娘のまぶたに手が添えられ、濁った瞳がそっと閉ざされた。クロウハットは娘の身の不幸に同情してやるつもりはなかった。ただ一つ、永遠の安らぎを得、眠りについた者の来世の幸福だけを彼は祈ってやる。
 オルガが血と化粧で乱れた顔を拭ってやれば、年端も行かぬ娘の容貌があらわになった。ぼろになった衣服を整え、髪を梳いて、彼女は花を一輪手向けてやる。誰かが「そこまでしなくてもいいのでは」と控えめに声をかけると、彼女は手を止め、「だって、女だもの」とたった一言、低く、そして気を張った声で答えた。
 娘だけに限らず、被害者全ての身寄りの者を探すのは、苦労に思えた。こんな土地でも顔役はいるだろうから、冒険者たちはそこに事情を話して死者の処遇を任せることにした。
「おやすみなさい……なぁ〜ん」
 奇麗に整えられ、少なくとも見た目だけは人間らしくなった娘の胸元に、ハーシェルは柔らかな色彩の花束をそえた。椿や血の赤とは違う、優しい薄紅色の花だ。
 いともたやすく手折れてしまった心と身体に、イグニースは脆さゆえの儚い美を見出したのだろうか。目をつむり、ささやかな黙祷を彼は捧げる。そのさまを厳かに見守っていたタユもまた、花を一輪受け取り、死者に捧げた。
 廃墟に鎮魂歌が流れる。葬送。死者を偲び慈しみ、彼岸での幸福を願う、生者に課せられた義務。聞き慣れぬ詞と旋律を口ずさみながら、被害にあった死者の一人一人の額に、サリサは香油を注いでいく。
 こうして、人であることをやめさせられた娘と、その手に掛かった者の弔いは終わった。
 やけに冷えると思ったら、建物の外に出ると、乳白色の空から雪が降ってきていた。
「割りに合わないよな」
 クローチェが狭い空を見あげながらぼそりと呟く。請け負った仕事が、ではない。先に触れた、幕切れすら自分の意思から奪われた、報われぬ一人の人間の生のことについて、だ。
 彼の横で同じく空を見上げていたセラトは、何も口にはしなかった。死んだ人間の心などわからなかったし、それに、何を想えど受け取る心はすでにこの世には存在していなかったのだから。
 暗く澱んだ町を、冒険者たちは後にした。
 椿を七つ、この世の片隅で生まれて死んだ娘の、生きた証に残して。


マスター:扇谷きいち 紹介ページ
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作成日:2009/03/02
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