≪飛天大王ガルベリオン≫高いところへ



   


<オープニング>


 ガルベリオンが墜落した場所は、全く見覚えの無い場所だった。雰囲気などからワイルドファイアであることは間違い無さそうなのだが……。
「まずは状況確認か」
 護衛士たちの提案に、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)頷く。ここは何処か? 自分の居る場所がわからなければ誰しもが思う疑問であろう。
 そして、その場所について確認するには高いところへ登るのが手っ取り早いのも確かだ。
「ここから南へ少し行くと、かなり高い岩山がある。そこからならガルベリオンを含めた周囲を一望できるだろう」
 アムネリアは南……鬱蒼と茂った森の奥を示し説明を始める。
「その岩山の中腹辺りには、巻きついてきたり頭から丸呑みにしてきたりする蛇怪獣の群れが居るから注意してくれ……しかも結構数が多いから、まともに相手にするより叩き落すなり退かすなりした方が良いかも知れないな」
 岩山と言うからには足場も悪いだろう、まともに戦うよりは何か工夫する事を考えておいた方が良さそうだ。
「……後は、行って見ないと解らないな」
 アムネリアは一通りの説明を終えると小首をかしげる……具体的な情報が何も無い以上、行ってみるしかないのだろう。
「くれぐれも山から落ちたりしないようにな? ……それじゃ、頑張って」
 アムネリアはそういうと、護衛士たちを見送った。


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参加者
白銀の山嶺・フォーネ(a11250)
彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)
空気は読まない・レジィ(a18041)
輪廻の翼・フィード(a35267)
弓使い・ユリア(a41874)
空白の大空・マイシャ(a46800)
ノソ・リン(a50852)
綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)


<リプレイ>

 深い緑の匂いを含んだ風が頬を撫ぜる。
 異様な生暖かさと湿度を持つ風は少し不愉快にすら思えるほどだが、それは同時に見も知らぬこの場所が常夏の大陸であるワイルドファイアであることを示しているようで、少しほっとした気分にもさせてくれる。

「ワイルドファイアよ……俺は帰ってきた!」
 近場にあった岩に腕組みしながら足をかけ、真夏の蒼穹・フィード(a35267)は格好よく決めてみる。実際のところ、この場所がワイルドファイアなのかどうかは不明なのであるが。
「周り全てが未知なんてワクワクするよ!」
 何せ、綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)が言うように周りの全てに全く見覚えが無いのだから。
 しかし、それはそれでワクワクしたりするものである。フィードはスゥベルの言葉に大きく頷くと自分達が歩いてきた道を振り返る……この先には彼等をこの場所へ運んだ……と言うよりも、勝手に落ちたガルベリオンが居るはずだ。
「空の旅も得難く面白い経験でしたが……やはり大地は落ち着きますね」
 フィードの視線を追ってガルベリオンが居る方を見ていた、白銀の山嶺・フォーネ(a11250)はそう言うと視線を地面へ落とす。ガルベリオンの上も空の上であることを意識させない程に広い場所であったが、やはり本物の大地は一味違う。主に安心感の面で。
「そうですね、ようやく大地を踏めたのはいいですけれど……」
 フォーネの言葉に頷きつつ、二振りの剣・マイシャ(a46800)は地面を踏みしめるが、
「迷子だなんて……」
 少し不安そうに周囲を見回す。地面が落ちないと言う点では大分安心出切るのだが、やはり見知らぬ土地と言うのは落ち着かないものだ。何処に向かえば見知った場所へ辿り着けるのかさえも解らないのだから。
「何とか現在地の手がかりだけでも掴めれば良いですね」
 そんなマイシャと視線の合ったフォーネは優しく微笑むと、鬱蒼と茂る木々の合間から見え始めた岩山へと視線を向ける……頂上付近が霞がかって良く見えないほどに高いその岩山から一望出切ればある程度の情報を手に入れられるだろう。
「ここが何処だか、意地でも手がかりを掴まなくては!」
「気を引き締めてかないとね!」
 フォーネにつられるようにマイシャとスゥベルも岩山へ視線を移すと、力強く頷きあった。

 密林地帯を抜けると、目の前に岩肌をむき出しにした巨大な山が聳える。
 まるで一つの岩を山のかたちに切り崩したような、そこへ申し訳程度の木を飾ったような……そんな岩山だ。
「よーし、おねーさん気合入れてがんばるぞー」
 首が痛くなるほどに高い場所にある頂上を確認しようと暫く上を向いていた、空に響く幻奏・レジィ(a18041)はそういうと両手をぐりぐり回す。此処最近ドラゴンの相手だとかで気の抜けない日々が続いていたのだが、久々のドラゴンに関係の無い探索でのんびりした感じが嬉しいらしい。
 そんなレジィに小さめのハンマーやらピッケルやらを渡しつつ、弓使い・ユリア(a41874)は岩山の登りやすいルートを調べてゆく。岩山だけあって普通の山より登るのは難しそうだ……もっとも、冒険者の能力を持ってすれば大抵の場所は力技で何とかなりそうだが……蛇怪獣の事もあるし、警戒するに越した事は無いだろう。
 フォーネはユリアと共にり易いルートを見つけるべく先頭に立ち……その後ろからマイシャは女性陣見上げる。
「……今日は皆さんズボンなんですね……」
 普段はひらひらしたスカートを着用している女性陣も今日は全員ズボンで来ているようだ。
「でも、目のやり場に困るよりはズボンの方がありがたい」
 とかフィードは言っているが、何かこう、ちょっとこう……。
「け、決してヒネて言ってるんじゃないよ!」
 ちょっと物足りなそうな視線のフィードを訝しげに見つめるマイシャに、フィードは念を押したりする。そう、別に見たいわけじゃない、見たいわけじゃないのだが、警戒されると逆に男心を擽っちゃったりするのだ! 逆にね!
「ま、冒険者としての動き易さや足のラインの見易さがあればそれでいいんでないか」
 そんな二人に興味の無さそうな眼を向けつつ、彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)は大人の意見を言う。足のラインの見易さの辺りが特にちょっと大人だ。そしてザルフィンは腑に落ちない表情の二人から視線を頂上の方へ向けると、
「何とかと煙は高い所が好き、ってな」
「バカとホニャララは高い所好きだって言うよね」
 あまりの高さに脳裏によぎった言葉をそのまま口にする、と同時に、銀花小花・リン(a50852)もまた同じようなことを言う。
「私? 高い所は大好きだよ。……バカじゃないけどね!」
 そして何となく視線の合ったザルフィンに対して、リンは何となくそう主張する。本人が主張するのだからバカでは無いのだろう、うん、きっとそうに違いない。ただ、ちょっと……ちょっとだけ不自由なだけに違いない。
 そう言われても如何したものかとザルフィンが首をかしげて居ると上のほうから、フォーネとユリアが呼ぶ声が聞こえてきた。大雑把なルートが確定したのだろう。
「それじゃ行くか」
 ザルフィンはリンたちに先に進むように促すと、自分は殿について歩き始めたのだった。

 足場が悪く登りにくい岩山を登る、途中にはほぼ垂直に切り立った岩壁やら、踏み外したら帰ってこれ無さそうな崖やらが数え切れないほど在ったが、各人それぞれが用意した粘着性の高い蜘蛛糸や武器の射出などを繰り返して徐々に頂上へ向かって歩みを進める。
 そうして山の中腹部に差し掛かった辺りで、正面に無数の穴を見つけた。
「蛇がいっぱい居ますね」
 ユリアが確認すると、その穴の周りには無数の蛇怪獣が屯しており、迂回するのは難しそうだ。もし仮に別の道を選んだとしても、そこから頂上へと辿り着ける保証も無いのだし、ここは蛇怪獣の中を突破するのが確実だろう。
「突破するしか無いみたいだねぇ」
 考えあぐねているユリアにフィードが肩をすくめると、一行は各々の得物を手に蛇怪獣の群れへと突っ込んだ。

 フィードたちに気付いた蛇怪獣たちがシャー! と奇妙な音を上げながらいっせいに近づいてくる。
 蛇怪獣たちは一体一体なら護衛士たちが梃子摺る相手でも無いが、何せ数が多い……その上怪獣である以上体力もそれなりにあると見て間違いないだろう。
「少しの間……退いていて下さい、ね?」
 そんな蛇怪獣たちに対してフォーネたちはまともに相手にしようとはせず、退かして道を切り開く事にしたのだ。フォーネは鈍く輝く黒色の長剣を振り上げるを振り上げ、そのまま地面に叩きつける。叩きつけられた地面から砂礫と衝撃が発生し今正にフォーネを飲み込まんと大きく口を開いていた蛇怪獣たちの体を吹き飛ばす。
 吹き飛ばされた蛇怪獣の合間を縫って近づいてくる他の蛇怪獣へ向かいフィードとマイシャが粘着性の高い糸を放ち、その動きを止める。
「今のうちに前へ!」
 蛇怪獣の群れの間に一瞬で来た隙を縫ってマイシャたちは前へと進むが、またすぐ別の蛇怪獣たちが行く手を塞ぐ……これは確かにまともに相手にしては切りが無さそうだ。
 リンはアームブレードを岩肌に叩きつけて砂礫と衝撃波を生み出し、何匹かの蛇怪獣を岩山の下へと叩き落すが、衝撃に耐えた蛇怪獣の一体がリンの体に巻き体を締め上げる。
「うぐ!」
 蛇怪獣の胴体の太さはリンの胴体の太さとほぼ同じ程度だ、それが絡み付いて締め上げてくるのだから堪らない、あまりの圧迫感に思わずリンは呻き声を上げる。
 リンの様子を見たレジィは仲間たちを励ます力強い歌を歌う……と、リンに絡み付いていた蛇怪獣が離れ……離れたところへ直撃したザルフィンのブーメランが蛇怪獣の体を魔氷と魔炎の力によって封じる。
「丸呑みは勘弁だよ、あたしは肉が少ないしきっと不味いって」
 動きを封じた蛇怪獣の横から大口を開けて向かってくる蛇怪獣に、きっと柔らかい肉があんまり無くて美味しくないと自覚するスゥベルは緑色の木の葉の突風を放ち、吹き飛ばす……なにやらとっても負けた気分になったが、それは多分気のせいだ!

 リンたちはジワジワと前へ進むと、やがて前方を塞ぐ蛇怪獣たちの数も少なくなってくる。そしてユリアが桃色の矢を放ち、蛇怪獣たちを魅了すると正面の敵をほぼ無効化することが出来た。
「突破しましょう!」
 この機を逃す手は無いだろう、フォーネの言葉に促されるように一行は一気に蛇怪獣たちの群れを突破したのだった。

 時間稼ぎにクリスタルインセクトを背後に置いていこうなどと考えていたレジィだったが、特に追ってくる蛇怪獣も居ないし意味が無さそうなので止めた。
 後は正面にある見上げるほどに高い岩壁を上りきれば、山頂へ着けるだろう。
 ユリアたちは用意した登山道具やらを駆使し、お互いに支えあいながら頂上を目指す。そして、最後の一足を岩壁にかけ、体を大きく引き上げると――
「お〜!」
 やっと頂上へと辿り着くことが出来た。
 そこは岩が綺麗に切り取られちょっとした平地のようになっており、護衛士たちが休息を取るには十分な広さがある。
 そして頂上から遥か下方を見渡せば、今まで自分達が進んできた岩山の姿を一望する事ができる。
 さらにその先……ずっと奥には森の中に埋まるようにガルベリオンの姿があり、その先には青い……それこそ空と溶け合うように真っ青な海が広がっている。
「やはり頂上からの景色と風、登った達成感は格別ですね……!」
 強風に煽られて乱れる黒髪を押さえフォーネは眼下に広がる雄大な自然の光景に溜息をついた。
「ヤッホー」
 そんなフォーネの横でフィードは山に登ったらお決まりの叫びを上げてみる……普通の声で。そして普通の声だったためか残念な事に山彦は返ってこなかった。
 フィードはフォーネと逆……海の見えない方向を向くと、そこには一面に大小さまざまな岩山が聳え立っている。
「大大怪獣ワイルドファイアは見当たらないわねー」
 視界いっぱいに広がる岩山の数々の更に向こうを、緑の向こうにある海の先を眼を細くしながら凝視していたレジィはそういうと息を吐いた。
 如何に大大怪獣ワイルドファイアが大きいとは言え、ワイルドファイア大陸の規模を考えれば何処からでも見えるというものではない。
「見覚えのある場所もないな」
 そんなレジィと同じように周囲を見回した後、ザルフィンもこの場所が見覚えの無い場所であると結論付ける。
「周囲に村なども無さそうな……」
 マイシャは人工的なものが無いかどうかを見ていたが、どうやらそのような物は無さそうだ。
「大陸の北っぽい……?」
 眼に見えるものを細かく地図に描いていたリンとスゥベルは、真っ直ぐ西から東へ伸びる海岸線と太陽の位置から予測する……だとすると東に向かえば、見知った土地へ出ることも可能かも知れない。

 一行は夜になったら何か火の光などが見えるかも知れないと、念のためその場で夜を過ごしたが特に光が見えるといったことは無かった。
 ただ、何も邪魔する物が無い山の上から見る朝日の色は、とても澄んだ金色で……これから進む先に希望の光が溢れているような、そんな気にさせてくれたのだった。

 【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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作成日:2009/03/12
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