<リプレイ>
てるてる坊主、軒にたくさん並んでる。それは白い翼の天使・イリア(a30653)が下げたもの。 その祈りが通じたか、昨日の雨模様が一転、今日は朝から好天候だ。 「急いで舞台を仕上げてしまわないと……」 朝一番に到着したイリアは、さっそく準備を開始している。 急がねばなるまい。だって今日を、楽しみにしているたくさんの子どもたちがいるのだから!
●開演 児童施設の庭に、大きな野外ステージが組み上がっていた。イリアたちの急ピッチ作業は間に合ったらしい。その開幕を待つのは、たくさんの子どもたち、ぎっしり詰めて座っている。 「もうじき幕が上がる。立ち歩いてはいかんぞ」 星空渡る風の翅・レティリウス(a72807)は臨時教諭に扮している。数日前から施設に入って、引率を手伝うという念の入りようだった。普段意図的に低く抑えている声も、心持ち高めに出すようにしている。彼の献身的な努力は実を結び、すっかり児童たちにも懐かれているようだ。 幕が下りたままの舞台に、明るい声が響きわたる 「皆さん、お待ちかね〜!」 夜と暗黒の世界の天使・ノゾミ(a57530)だ。彼女の登場をファンファーレが彩る。 「今日はフローリア学園による出し物を開催するわよ。みんな、良い子にしてたかな〜?」 思わずノゾミも気圧された。子どもの数は百人近い。そのすべてから力強い返事が返ってきたのである! まるで大波だ。 「ありがとう! それでは楽しいショーの始まり始まりっ!」 ノゾミの挙手にあわせて幕が、さっと上がってリズミカルな音楽が鳴り響いた。 舞台裏にて楽隊を率いるは音楽監督、手のひらの鼓動・アールコート(a57343)だ。 (「思う存分はっちゃけてくださいね☆」) カスタネットのリズムでリードし、明るい雰囲気を盛り上げる。アールコートの腕は一流だ。 幕が上がった舞台には、さぞや楽しげな光景が待っているかと思われた。 だがしかし!?
●秘密結社ロベリア団の襲撃 子どもたちは指さして声をあげている。なぜって舞台の上には、おどろおどろしい要塞が展開されていたからだ。暗い色づかいで、鎖で飾られている。邪悪丸出しの玉座もあった。 これにあわせアールコートの楽団も、音楽を暗く転調させるのである。 「ステージが!?」 目を丸くするノゾミに応える声は、ドスの効いた高笑い。ステージではなく劇場の後ろから。 「フゥハハハー!」 皆一斉に振り向く、いつのまにか劇場背後にも高台が設置され、マントなびかせる、恐ろしげな人影がそこにあるではないか。 「この劇場は我々『ロベリア団』が占領した!」 我は破滅を断つツルギなり・ルビナス(a57547)だ。かぶる兜から野太い角が、左右にグイとひろがって、両肩のトゲもあり威圧感満点! 尖ったバストの水着風衣装、恐ろしげなメイクも、子どもを怖がらすには十分すぎる。 「あなたたちは悪の秘密結社『ロベリア団』っ!?」 ドギュゥゥゥン! しかし悪漢はルビナス一人ではなかった! その左右にも一体ずつ、不吉な男たちが控えているッ! 左は、朝と夜の剣士・ヴィクス(a58552)、両腕を頭上で交差させて組み、足もやはりクロスして立つという奇妙なポーズだ。 「貴様等も我々の駒にしてやろう。悪の先兵にな」 巨大剣を背負い、黒光りする鎧をまとっている。ゴゴゴゴゴゴ……ド迫力ッ! 左は、絶対拒絶・トーラス(a51761)、やはり妙にイカスポーズであることは言うまでもないッ! 「泣こうが喚こうが助けは来んぞ〜」 実は彼、開演前までは緊張でガチガチだっていたのだが、登場するなりノリノリである。本番に強いタイプと見た! ヴィクスに負けぬ不吉な装備のトーラスなのだ。 演出は決まりすぎたようで、結構な数の子どもが本気で怖がっている! レティリウスは気丈に振るまった。 「大丈夫、手出しはさせないから」 だが、 「ひゃーっはっは!」 意外! 声の出所はステージの柱! 黒い影がひそんでいたのだ。 影は、闇夜を舞う影・ヒリュウ(a28973)。真っ黒なタイツ姿だった。黒糸が蜘蛛の巣のように這い、胸に髑髏模様が白抜きされている。顔も覆面、逆三角に釣り上がった黒レンズの目、口の部分に鋭い牙の形が縫い付けられている。 「ついでだし子供たちを誘拐しちゃいましょう♪ やっておしまい!」 ルビナスが指令を下すと、ヒリュウは粘り蜘蛛糸でスイングし、観客席から子どもを一人、さっとさらってステージに着地した。子どもはキャアキャア騒いでいるが、この演出を楽しんでいる様子だ。(ヒリュウが事前にこっそり見繕っておいた子だ) そして三悪人も、中央の花道を通ってステージに上がる。 「あっけないもんだな、ルビナス」 だがステージ上、玉座に座ろうとしたルビナスを冷笑する男が袖より出た。 緋のライン持つ黒いツナギだ。彼――界廻る選定の志・エルス(a01321)は冷笑して、 「こんなもんで満足なのか?」 「エルスか、我々の組織を抜けた裏切り者」 トーラスが武器を抜き、 「満足とはどういう意味だ」 返答次第では許さぬ、とヴィクスが吠える。 その二人をルビナスは制し、ニヤリと笑った。 「わかってるわ、あなたの言いたいことは。『彼ら』と決着をつけろ、っていうのね」
ステージ下、ノゾミが告げる。 「彼らとは、正義のヒーロー『冒険者戦隊フローリアン』のことよ」 彼女は両手を拡げ、呼びかけるのだ。 「さあ皆、『助けてフローリアン』って呼ぼう!」
●ヒーロー登場! 「助けてフローリアン!」 会場を子どもたちのシャウトが満たした。舞台すらビリビリ震えるほどの大音声! 「ちょっと待ったぁ!」 その声、紅炎炎舞・エル(a69304)! 「何者だ!」 トーラスが問い返した。ヒリュウもあわせて、 「あそこだぞ!」 元々旅芸人の軽業師だったヒリュウだ、舞台操縦はお手のもの、観客の視線が舞台中央に集まるように首を巡らす。 「正義の味方、颯爽と見参!」 静かに蒼く燃ゆる・ホムラ(a20500)も鋭く呼ばわり、それと同時に要塞セットの中央扉を、バン! と派手に吹き飛ばす。白いスモークの演出は、イリアが煙を焚いたものに違いない。 エル、ホムラ、そしてはじまりは・プルミエール(a90091)が飛びだしてくる。三人、デザインお揃い色違いのボディースーツ、やんやと大喝采が飛ぶ。 「ボクは、燃える炎『フローリアンレッド』!」 とぅ、とエル、キックしてトーラスをどかしポーズを取る。 「プル、もとい、神秘の海『フローリアンブルー』! 私達が来たからにはもう安心よっ」 少し台詞を噛んだがホムラ、すぐに人質を奪い返してクールなポーズだ。 「さあ逃げてください♪ ここは愛の力『フローリアンピンク』が引き受けます」 人質を逃がしてプルミーが、「がお〜」と言いたげなポーズで決める。 そして三戦士、声あわせて宣言するのだ。 「我ら三人、『冒険者戦隊フローリアン』! 平和を乱すものを成敗してくれるー!」 再度、もくもくとスモークがあがる。音楽も派手に鳴り響く。 そのころ引率教師のレティリウスは、 「フローリアンが来たからもう大丈夫だ」 と子どもたちに言いきかせていた。だが果たして、そう上手くいくだろうか? 歯ぎしりするヒリュウに、ヴィクスが言いきかせている。 「うろたえるな。最終的に、勝てばよかろうなのだッ!!」 ルビナスは玉座についたまま、 「ふふふ……まずはお手並み拝見といこうかしら」 と手を振った。
舞台裏。 「……うっかり見入りそうでした……お仕事しないと!」 イリアは大忙しだ。スタンバイさせていた土塊の下僕たちを、舞台にどんどん送り込む。 アールコートも音楽演奏を楽団に任せ、この作業に加わった。 「さあ、出番ですよ〜☆」
湧いて出るのは戦闘員たち、これが土塊の下僕であることはいうまでもない。 だがこれはやられ役、数こそ多いものの、 「お前達の悪行もここまでっ!」 と大立ち回りのエルにはかなわない。プルミーも、敵をキックでやっつける。 「てやー!」 プルミーこと『フローリアンピンク』の衣装のみスカートだ、ひらりひらり見えるものがあるが、 「ピンクのこれはパンツじゃないから恥ずかしくないのよっ!」 とホムラがアドリブでフォローを入れてくれていた。 奮闘するヒーロー三人の姿に、エルスはつい拳を握りしめている。 「それでこそだ、フローリアン!」
●逆転につぐ逆転! 下僕が一掃されたこのとき、ルビナスがすっくと立ち上がった。 「本気を出したほうが良さそうね」 告げるやいなや、鎧進化を用いる。 突然の変貌に、子どもたちは再び恐怖のどん底に落とされた! ルビナスだけではない、ロベリア団の悪漢たち、その鎧が禍々しく強化されたのである。鎧進化の効果によるものだ。これと同時に、さらに大量の下僕が出現したのである。 たちまち形勢は逆転する。演奏に戻ったアールコートも音楽を暗転させた。 「俺様のこの姿を見るとは、運のない奴らだ!」 と叫び躍りかかったヒリュウの蜘蛛糸が、ホムラを縛ってしまう。 トーラスの一撃、エルを吹き飛ばす。 「これが我らの真の実力よ! ルビナス様に逆らおうなどと思わんことだ」 そしてヴィクスは、 「弱いッ! 貴様等はそれでもヒーローか。無駄無駄ァ!!」 とプルミーを組み敷いている。 「ほ〜ほほほ、見た、エルス?」 あざけるようにルビナスは問う。 「正義の味方といえ、しょせんはこの程度なのよ」 だがエルスは動じない。 「そうかな?」
ここでノゾミが再度立ち、メッセージを客席に送る。 「さあ皆、フローリアンの皆を応援してあげて、その応援が彼らに力を与えてくれるわ!」 このような演出ははじめて見るのだろう。子どもたちはすごい勢いでエキサイトしている。 「フローリアン! フローリアン!」 筆を振りあげ、声あわせコールする。 「フローリアン! フローリアン!」 トーラスはせせら笑う。 「声援がどうしたというのだ。死ぬがいい、フローリアンレッド!」 彼が剣を振りあげ、打ち下ろそうとした瞬間、 「貴様、やはり裏切るか!」 派手な音がして、剣は宙で止まる。 身をもって剣を防いだ者……それはエルスだった。 「助けてくれたのか!」 フローリアンレッドことエルが顔を上げるも、 「勘違いするな……俺は、お前が俺以外のヤツに負けるのが許せないだけだ」 しかしその言葉は、彼なりの強がりに過ぎない。エルスが手で空をつかみ横に引くと、彼の姿はフローリアンの一員へと変化していたからだ。 「破壊女帝ルビナス、やはり俺は悪を好まない。この瞬間から、闇つく雷光『フローリアンブラック』と名乗らせてもらおう!」 「よし、二人で戦うぞ!」 レッドとブラックのダブルキック! これにはさしものトーラスも、派手に吹き飛び気絶する。 声援に応えるようにホムラも蜘蛛糸を引きちぎり、ヒリュウに反撃した。 「みんなの声があるかぎり決して負けない! 必殺、ブルーフラッシュ!」 正体はただのホーリーライトだが視覚効果はすごい! 「この気迫……、ちぃ!」 ヒリュウは大きく後退し客席に飛び込んだ。 「こうなればガキを盾にしてくれる!」 「やめろ!」 と妨害に入ったレティリウスは投げ飛ばされてしまう。 ステージに投げられ、セットに頭から突き込むレティリウス。子どもたちから悲鳴が上がった。 しかし、悲鳴はたちまち歓声に変化したのである。 「我は……」 瓦礫の山を押しのけて、再び姿を見せたレティリウスは、フローリアンのスーツに身を包んでいたのだ。 「我は、生命の息吹『フローリアングリーン』! 子どもたちに手を出すことは許さん!」 跳躍し、逆襲の拳をヒリュウに見舞った! その姿勢のままポーズを取る。もちろん子どもたちは大喜びだ! かくて五人組となったフローリアン、たちまち下僕たちを粉砕し、ヴィクスも団結して打ち倒す。 ルビナスはたじろいた。会場は今や「フローリアン」コール一色だ! 「私達が押されている!?」 おのれ、とプルミーに飛びかかると激しいバトルを繰り広げる。 「皆の声援で元気百倍です!いきますよ〜!!」 さっきまでのプルミーとはちがう。ルビナスと互角に渡り合って見せた。そこにレッド、ブラックが加わると形勢は一気にフローリアンに傾き、グリーンとブルーが参加すると圧倒的となる。 「声援ひとつでここまで変わるものなのっ!?」 感極まって叫ぶルビナスに、 「もちろん!」 エルは応えた。 「大切なものを護ろうと思う心、それを、みんなの声が呼び起こしてくれたんだよ!」
「クライマックスです!」 イリアはスモークをガンガン焚き、 「行きますよ〜☆」 アールコートはドラムを叩いて「ドドドドド……」と効果音を立てる。
「よし、合体技で決着をつけよう!」 レティリウスが呼びかけると、五人は一団となって構えた。 「覚悟するのね」 ホムラが慈悲の聖槍を呼び出す。構えて、 「これぞフローリアン必殺技」 というエルスの言葉をノゾミが継いでくれた。 「皆、一緒に叫んでね! 必殺技の名前は『慈悲の聖槍キャノン』よ!」 「いきますよ〜!」 プルミーが合図する。 そして会場の全員が……子どもたちもフローリアンもノゾミも、裏方のアールコートもイリアも、倒れているロベリア団までもこっそりと……一斉に叫んだ! 「慈悲の聖槍キャノン!」 「発射ーっ!!」 エルの一声とともに、光の槍が飛ぶ! 実際にはホムラ一人が投じたものだが、動作をあわせ合体攻撃のように見せたのである! 「ば、バカな! コレが『何かを守ろうと思う心の力』だというのか!?」 攻撃はルビナスを玉座ごと吹き飛ばした。すさまじい効果音が会場を満たす。 その余韻、さめやらぬうち、がばと立ち上がったヴィクスは、いきなり! 「たったひとつだけ残った策があるぜ……」 ぐい、と背を向けて、 「逃げるんだよぉ!」 と宣言通りの行動に出る。 「覚えていろ!」 「これで勝ったと思うなよー!」 トーラスもヒリュウも、そして、 「撤退だ〜!!」 ルビナスも逃げ散ってしまう。 大きな拍手が場を満たした。 ステージは大成功だ。イリアも拍手をしていたがその拍子に、 「あっ!」 ぱたん、と、背景が前倒しに倒れてしまい、子どもたちの前に姿をさらすことになってしまった。 新たな演出かと思ったらしく、全員の視線が集中する。 「はわわっ☆ こうなったらイリアさん、なにかお言葉を!」 慌ててアールコートが袖から告げた。 「え、ええと……!」 真っ赤な顔をしながらイリアは、つっかえつっかえ告げた。 「これで終幕です。あ、ありがとうございました……っ!」
満場の拍手を聞きながらルビナスは言う。 「私が伝えたかった事。この劇で伝わったかしら?」 「この劇の事は思い出に残っているわよ。大人になればきっと伝えたかったメッセージもわかってくれるわ」 そう言って、ノゾミは笑顔を返した。

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参加者:11人
作成日:2009/03/21
得票数:ほのぼの3
コメディ9
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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