≪密林の楽園Gパンポルナ≫流されるのではない、流れるのだ



<オープニング>


 アルガトロス湖探索を終えたその夜。
 ポリゴンの森を背に、微かに響く水音を岸辺に聞きながら、護衛士達はその日採れた金色の巨大魚を、焼いたり炊いたり煮込んだりした料理で空腹を満たす。
 今夜一番の話題は、つい数時間前に出会った、謎めいた……というか、不思議な習性を持つ金色の巨大シャコ怪獣。
 水中で器用に石を成形し、人工物に似た物を拵えるその芸術性と発想力は、他の怪獣と比べても……いや、むしろ比べるべくもないのかも知れない。それくらい、意外性があった。

 そして、空腹も満たされ、食事の後片付けが始まる頃。
「をし、全員一旦注目なぁ〜ん」
 呼びかける霊査士を振り返れば、その後ろにはアルガトロス湖探索でどっさりと持ち帰られた品々が山盛りになっていた。どうやら、霊査が終わったらしい。
「結論から言うと、俺らの欲しい情報は見つからなかったなぁ〜ん」
 分隊として欲しい情報。
 現段階で言えば、ランドキングボスの足取り、遊び方。
 もう一つは、見知らぬ種族や、文明の消息。
 そして、結果が意味するものは、今日の探索で得た品がそれらとは無関係である……ということ。
「先ず洞窟での拾いモンだ。鍾乳石が一欠片と、湖底に落ちてた石、引っぺがした植物、それから魚のうろこ」
 それぞれ、別々の洞窟から持ち帰った品。
 一つ一つを重ねた山から拾い上げて焚き火の前に並べ……一度葉巻をくゆらせると、一息吐くように細く煙を噴く。
「まず見えたのは見事な大自然だなぁ〜ん……あと、この石っころ見た時に人影がちらっと見えたが、尻尾の具合から見てストライダーだ。多分、この辺に住んでた頃に使ってた食器の欠片か何かだったんじゃねぇかなぁ〜ん」
 結論は出ているのに、人影、と聞いて一瞬期待してしまうのが、ちょっとだけ悔しい。
 そんな幾人かの様子を色眼鏡越しに見遣り、霊査士は今度は金色の匙や器や煉瓦や皿や……魚っぽいオブジェを並べていく。
「これァ全部あのシャコがくれたモンだ」
 一つ一つが一抱え程もある巨大な造形。
 あのシャコが作ったと知らなければ、間違いなく未知の種族の遺産に見えただろう。
 むしろ、何も知らない人に巨大オブジェを見せて、『アルガトロス湖には昔巨人族が住んでいた』なんて言ったら、素直に信じてしまいそうである。
「確かに、シャコが作ったモンみてーだな……っつか、湖の中の金色の景色ぐれーしか見えてこねぇ。あとァ……そう、この色ってーのァ、金の藻の色素が吸着したモンみてーでな、芯の方は普通の石の色してるっぽいぜなぁ〜ん」
 どうやら、石を造形したあと暫く放置して、金色になってから建造に使ったりしている……らしい。何処まで芸の細かいシャコなのか。

 こうして、一応の結論は得られた。
 急ぎで進行再開の声も結構あがっているし、明日からはまた、ランドキングボスを探して南下を始めることになる。
「をし、全員地図を広げろなぁ〜ん」
 号令一過、旅のしおりと共にかさかさと広げられていく地図の写し。
「今居るのがアルガトロス湖ほとり。このでけぇポリゴンの枯れ木の近くだなぁ〜ん。明日は枯れ木の南にある流れを使って三角州まで移動、そっから更に南下できるところまで進行するのを目標とするなぁ〜ん」
 告げられる言葉と共に、護衛士達の視線も、自然と地図の川を下っていく。
「三角州の東っ側にァ海があるが……そこまでいくと行き過ぎだ。川下りはプリン山地帯から流れて来てるアウラリバーとの合流点までだなぁ〜ん」
 最短で南へと渡るならば、三角州には下りずに真っ直ぐ南……地図にある、『塔』の北側へ着岸できれば上々だろうか。
 とはいえ、アウラリバーとの合流点はとりわけに川幅が広い。一気に渡るのもいいが、一旦流れにのって三角州に停留してから南側へ渡ることもできる。
 或いは、ドン山が見えた時点で西寄りに進路を修正し、『塔』の北側ではなく、『しましまキリン』の居る草原地帯側に着岸するという手もある。
「まァ、その辺の細かい進路は貴様らに任せるぜなぁ〜ん。アウラリバー自体は下から上に……プリン山地帯を支流に、南から北への流れだ。川の東西どっちに着岸しても、どの道こっからの南下はまた徒歩になる。流れにァ逆らえねぇかンなぁ〜ん」
 流れに逆らって動ける算段があるならば話は別だが。
 20人近くを乗せた筏を逆流させる方法は……まず、ない。
 それこそ、怪獣のような大きな牽引役が要りそうである。
「探索中に留守番組が材料切り出しだきゃァしといたかンな、もう一艘作るか、探索で使った筏を改造するかすりゃァ、直ぐ出発できるだろ。後ァ、道中の心配ぐれーかなぁ〜ん?」
 言い終え、霊査士は広げていた地図を畳んで荷物へ。
 それから再び、護衛士達を見回す。
「とにかく、そーゆーこった。ンじゃ、明日に備えて、しっかり休んどくんだぜなぁ〜ん」


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参加者
楽園の大地に生きる・サーリア(a18537)
清浄なる茉莉花の風・エルノアーレ(a39852)
星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)
異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)
怪獣王使い・ラウル(a47393)
黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)
樹霊・シフィル(a64372)



<リプレイ>

●流
 向かう右手に山並みが続く川面。
「一つに全員が乗ると、転覆したときに一蓮托生ですけれど、その時はその時ですわ。いざとなれば、『いつでもフワリン』でどうにかなりますわ。さあ、行きますわよ♪」
 清浄なる茉莉花の風・エルノアーレ(a39852)の言通り、総勢18名は一つの大きな筏の上に居た。
「変な所に流されても、戦闘さえなければ、わたくしの『いつフワ』で……」
「こんなこともあろうかと作っておきましたなぁ〜ん♪」
 クロカのしっぽに憧れて育った・サーリア(a18537)も、丈夫そうな板から切り出したオールを手に。
「私たちの冒険は始まったばかりですなぁ〜ん。何事にも絶対諦めないで……必ずランドキングボスさまを見つけますなぁ〜んっ」
「どこへ流れ着くのやら〜俺ら〜♪」
 と、調子よく口ずさむ、星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)と一緒に、筏の加減速や、ちょっとした進行方向の補正に努める。
「それじゃ今回もレディィィ・ゴゥッ!!!」
 時には上下に激しく揺れることもある筏。今日もやる気十分にシャウトする、異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)の脳裏には、少し前に本土へ戻っていった仲間の顔が過ぎる。次に会う時には絶対笑顔で報告をするのだ!
 そんな中、黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)は筏が揺れるたびにびくっ! 大きな魚の影が見えるたびにびくっ!
 ……臆病者の勘の欠点は、危険の大小に関わらずに全部同じ『嫌な予感』として察知してしまうことだ。一般人であればともかく、冒険者しか従事できないような作業は、常に『危険』――つまるところ全部が嫌な予感。これこそが『臆病者』たる所以。
「今はやめておいた方がいいかな……」
 使うにしても、陸に上がってからの方がまだよさそうである。
 あらかじめ、取っ手代わりのロープを脱落防止に筏周囲に張ってはあるが……やはり、誰かが落ちるのはお約束なのだろうか。
 なんてことをふと思う、樹霊・シフィル(a64372)の周囲には、救助用の縄付き浮き輪や救命具が配置されている。そして、筏の中央に霊査士と、カレー色巡視隊員・スースを乗せ、護衛士達はその周囲を囲むように乗船していた。
「見覚えがある風景とか思いだしたら小さなことでも大丈夫だから教えて頂戴な♪」
「判りましたなぁ〜ん」
 ガマレイに頷きを返すスース。直後、先頭付近で櫂を漕いでいた、怪獣使い・ラウル(a47393)が、居並ぶ山脈の向こうを指差した。
「煙が見えてきたぜ」
「あれがドン山でございますね」
「でけぇー。まだ大分あんのに」
「あの山を左手になるように進んだ記憶がありますなぁ〜ん」
 今はまだ穏やかに。
 筏は川面を流れていく。

●唸れ人口密度
「掛け声かけて、えんやーとっと!」
「えんやーとっと!」
「えんやーとっとですなぁ〜んっ」
 俄に騒がしくなる筏上。ミズチの声に合わせ、ラウルとサーリアがフルパワーで櫂を漕ぎ、筏を急加速させる。
 その前方に、大きな岩が!
 すると、ピヨピヨを筆頭に、筏前半部分に乗っていた護衛士達が、一斉に棒を握り締め……。
「ふぁいとー!」
「「「いっぱーつ!」」」
 全力で岩を突き、衝突回避!
 だが、反動と急流に揉まれ急回転した筏が、すさまじい角度で傾く!
 その傾きを抑えるべく、ピヨピヨは再び棒を別の岩に突き立てる!
「ふぁいとー!」
「「「にはーつ!」」」
「二発なの!?」
 なんていっている間に、全員の体重移動を駆使して筏の傾きは無事に修正、急流を乗り越えた一行は、安堵の息と漏らす。荷物もしっかり筏に結び付けていたお陰で、脱落せずに済んだ。
「もう追いかけて来ませんなぁ〜ん」
 後方を振り返り、加速の手を止めるサーリア。ミズチとラウルもパワーダウン、加速ではなく方向修正のために櫂を漕ぐ。
「でっけぇワニだったなー」
「交渉用に何か獲っときゃよかったかな」
 とはいえ、群れが相手では少量の食料は余計ないざこざの元だ。蹴散らして逃げたのは正しい判断だろう。
「皆様、右手をご覧くださいませ」
 ガイド宜しく進行方向右前方を示すシフィル。そこには……いつの間にか間近に迫っていたドン山が、濛々と煙を噴出している。
 遠巻きに見た時とは違い、近付いた山はまさに見上げる高さ。実際には川から山裾までそれなりの距離があるのだが、それを差し引いても聳え立つ山の雄姿は見事なものだ。
 見れば、川幅も随分と広がっている。
「そろそろ方向修正したほうが宜しいですわね」
 手すりとして付けられた縄の端を、フワリンの胴に結び付け、東側へ進むようにと指示を出すエルノアーレ。平気そうな顔をしつつも一生懸命なフワリンを支援するべく、ミズチは再びフルパワーで進行方向へ櫂を漕ぎまくり。
「方向は合っておりまして?」
「オォォゥライトッ! そのまま真っ直ぐでいいわよ」
 方位磁石と地図を見比べていたガマレイが、シャウトで返す。
 筏は徐々に徐々に、南へ向かい始めた流れの中を、東寄りに進んでいく。
 ――やがて。
 水面に怪しい影が見えたのは、合流地点が間近に迫った折のこと。
 いや、今までもそれなりに見えてはいたが。
 明らかな敵意だと判ったのは、エルノアーレが新しく召喚したはずのフワリンが、即刻消滅したことと、そして。
「何だよこの人口密度ー!」
「倍率どん、ですなぁ〜んっ」
 護衛士達の召喚獣が、戦闘の気配に一斉に姿を現し、筏の上は一瞬にして賑やかに!
 実際に場所を取ることはないのだが、視覚的に増えたという印象が大きいためか、なんとなく狭っ苦しく感じる。
 ……それはそれとして、大きくなれないグランスティードの置物が一杯並んでるのはちょっと可愛い。
 あと、離れた場所に出現する性質上、唯一筏に乗れないタイラントピラーが一体、こっちを見守りながら川岸沿いに出たり消えたりしてるのが健気だ。
 そして、召喚獣達の出現と同時に、飛び上がる巨大な魚!
 消えたフワリンを狙っていたのか、魚の口はむなしく空を切り、そのまま筏前方の水面へ。
 着水と同時に起きる派手な水飛沫。衝撃で発生した波に揺れる筏の上、魚の先制攻撃に失神した霊査士に、ピヨピヨが急いで鎧聖降臨と君を守ると誓うを施す。
 そんな中、ミズチの視界にはさっきとはまた違う別の大きな影が映る。
「なんか他にも居そうだぞ!」
「通してくださいなぁ〜ん!」
 進行方向へ、牽制のブーメランを投げるサーリア。
 こつんと打たれて引き返す影の脇……別に沸いた魚影へ、今度はラウルが血の覚醒により呼び起こした一撃を叩き込む。
「近付くと痛い目見るぜ!」
 水柱を上げるパワーブレードが、飛び上がりかけた魚の鼻っ面を打ち据え、強引に水に沈める。
 そしてその間に。
「医術士に拘束アビリティは期待しないでくださいましっ」
 エルノアーレはもうとにかく必至で櫂を漕いでいた。
 既に戦闘状態では交渉も難しい。ガマレイがすかさずギターで眠りの歌を爪弾くと、シフィルがそれを伴奏にして同じく眠りの歌を水面へと響かせる。
「相当に空腹のようで御座いますね」
 二人分の眠りの歌が、二匹の白蛇が吐く二体分の黒いガスと共に、さざめく水面に溶け、中で蠢く魚達の聴覚へと染み込んで行く。
 だが、静かになったかと思った次の瞬間!
「うわびっくりした!」
 真後ろから飛び上がった魚に、ミズチがカウンターでデストロイブレード!
 当たり所が悪かったか、爆発と共に魚の頭部は鰓の辺りから半分吹っ飛び、そのまま水の中へリリース。
 ……数秒後。魚の落ちた辺りが異常なほど波打つ。恐らく他の水棲生物が一斉に群がってきたのだろう。筏はその隙に、危険地帯を離脱する。
「食糧事情を考えますと、少々惜しゅうございますが……」
 遠ざかる自然の掟を見つめつつ、シフィルはそんな事を呟くのであった。

●州
 様子を覗うように寄ってきたワニ怪獣に、ガマレイが魅了の歌で声を掛ける。
「エェクスキュゥゥズ・ミィィ♪」
 ――現在、三角州への着岸に向け、フワリンが筏を逆方向へ全力で引っ張り減速、その間に皆して必死に櫂を漕いでいる所だ。
「多少左右に寄っても大丈夫だとは思いますけれど、海に流されたらシャレになりませんわ」
 フワリンの効果時間切れに留意しつつ、エルノアーレもひたすら漕いで漕いで漕ぎまくる。
 その間にガマレイはなんとか上手い具合に交渉を纏め、ワニ怪獣に引っ張ってもらうことで、筏はようやっと三角州に着岸を果たした。
 小休止の為、霊査士と筏を引き上げると、残る面々に痛んだ筏の補強を頼み、皆は三角州の探索を始める。
 サーリアはアウラリバー側の岸辺へと足を運び、浅瀬に入り込んでめぼしい物を探す。
「何が出るかなぁ〜ん♪」
「どれがよさそうかなー」
 なんてことはないものでも、霊査すれば意外となにか視えるかも知れない。ミズチも川の中を棒や櫂でまさぐる。
 よーく探すと、椀や匙に見えなくもないものが……
 それらを拾い上げつつ、ラウルはつい先日遭遇した金色のシャコを思い出す。怪獣本人には欺すつもりや悪気がなくても、紛らわしいとか、危機一髪、なんて事はある。
 それでも……外れの中に当たりが混じってるかも知れない。拾えるものはとにかく拾い霊査士の所へ。
「団長は霊査大変だろうけど頼むな」
「をう、まァ、その為に付いて来てる訳だしなぁ〜ん」
 ラウルに肩を揉まれつつ、集まってくる物品を片っ端から霊査していく。
 そんな中。
「この中洲で暫く暮らした記憶がありますなぁ〜ん」
 辺りの景色を見て、スースがおもむろに告げる。
「集落を構えたのはもっと海側ですが……魚を獲って、暫く過ごしましたなぁ〜ん」
「なーんかやけに器が見つかるのはそのせいか?」
 水辺から引き上げてきたミズチが手にした物をまじまじと見つめる。大抵は、木製か骨製だ。
「何か見つけたりした記憶ってある?」
「ええと……骨や石で出来た鏃や槍の穂先のようなものなら見た記憶がありますなぁ〜ん」
「骨か……」
「体内でそういった形のものを生成する動物の話も存知ております。やはり、現物を見つけて霊査して頂くのが確実でございましょう」
「金シャコみたいな常識外れな奴も居るもんな」
 とはいえ、目的地は南だ。ここに長居はできない。
 皆は手早く探索を切り上げると、南へ渡るべく再び筏に乗り込んだ。

●ぼす
「ふぁいと百発ですなぁ〜んっ!」
 岸辺に飛び映ったサーリアが、縄を引いて筏を一気に引き上げる。
 余談であるが、ふぁいとーは最終的に百八発までいった。
「この辺りには初めて来ましたので、どきどきしますなぁ〜ん」
「何が見えるかねー」
 筏を解体しつつ、南方へと視線を投げるミズチ。うっすら見えているのは、恐らく『塔』と呼ばれる枯れ木だろう。
 シフィルは体格などを考慮し、護衛士らにてきぱきと荷物を割り振ると、気候のよい時間帯を狙い、一気に行軍を進める……
 今の所、周囲の怪獣への聞き込みからも、めぼしい情報は得られていない。
 ピヨピヨもことあるごとに壁画を見せて見覚えがないかを尋ねまわっているのだが、今の所収穫はなし。目下一番欲しい情報であるだけに、全くかすりもしないというのは中々にもどかしいものである。
 無論、話を聞けずに喧嘩別れしてしまう怪獣も居る。
 むしろ晩御飯の一品に追加されることになってしまった、ちょっぴり切ない出会いもある。
「悲しゅうございますが、世は弱肉強食なのですわ……」
 荷物に混じって運ばれる怪獣の姿を前に、そんな事を呟くシフィルであった。

 『塔』で霊査品の収集を軽く済ませると、一行は急ぎ足に南下を再開する。
 西側――向かって右手にアウラリバーを望み、昼過ぎには倒木の橋を通り過ぎ、更に南へ。
「あの倒木を渡りました。渡る前の草原の辺りから……が、私が覚えている移動ルートになりますなぁ〜ん」
「この橋で何か思い出すことってある?」
「いえ……あ、小さな子がはしゃいで川に落ちてしまったことくらいでしょうかなぁ〜ん」
 ガマレイがスースから話を聞いている間、ラウルは素潜りで倒木付近を調べていた。しかし、ざっと見回しても、川底や壁にめぼしいものは見つからない。
「駄目だなー……」
 これもまた大自然の神秘が作り出しただけのものなのだろうか。そんな事を考えながら、倒木の欠片を一つ持って、皆の待つ川岸へと引き上げていった。

 夕暮れが迫る頃。
 一悶着の末、霊査士を担いで戦線離脱する一幕もありつつ。
 再び合流してアウラリバー沿いを進みながら、ミズチは延々と続いて見える南方を見つめる。
「いつになったらランドキングボスが見えるんだ?」
「そもそもこの先に居るかも判らないからね」
 地図にあるのは、あくまで古い情報だ。
 どうせ移動しているのなら、近いほうに動いていて欲しいものではあるが……その瞬間、ピヨピヨがぴたりと立ち止まる。
「嫌な予感!」
 ――なお、臆病者の勘は、本当に予感がするだけで、脅威の強弱や方角は全く判らない。
 だが、こう宣言することによって、周囲を固める仲間が複数の目で索敵を行えば……。
「……通り過ぎましたわね」
 近付いて見えた怪獣の群れが遠ざかっていくのを見つめ、安堵の息を零すエルノアーレ。しかし、ピヨピヨの嫌な予感はまだ消えない。すると、サーリアは地図を開き。
「この先に『毒草地帯』があるせいかも知れませんなぁ〜ん」
 踏み込まないように気をつけよう。
 思いつつも、できるだけ気候のよい時間を狙って一気に進もうというシフィルの提案に沿い、日が暮れて暫くは、ガマレイ先導で星図と方位磁石を頼りに川沿いを進む。
 そして、毒草地帯を越えたあたりで、陰になる岩を探して、その側に野営の陣を張ることにした。
「まだ嫌な予感が消えないね……やっぱり毒草のせいかな」
「間違えて食べないように気をつけてくださいなぁ〜ん」
「この先には『丸い石』があるんだよな」
 段々と出来上がりつつある食卓。
 焚き火を囲み交わされる会話の後ろでは、霊査士が移動の間から続いて、今も集められた品物とにらめっこ中。
 その時。
 暗がりに見かけた怪獣を追い払うついでに、コンタクトを取っていたガマレイが、ミズチと共に駆け戻ってきた。
「この先で、アリクイ怪獣を見たらしいわ。『このあいだ』っていう曖昧な言い方が引っ掛かりはするんだけど……」
 相手は怪獣だ。
 10年以上前のことを言っている可能性もある。
 それでも、急げば何か手掛かりが落ちているかも知れない。
 だが、その時に、ミズチがふと。
「ガマレイ姉が話してる時にさ、向こー……うの方に、でっけぇ黒い塊が見えた気がすんだよな……」

 早くも遭遇か……!?
 唐突にもたらされた情報に、俄に沸き立つ一行。
 黒い影の正体は何なのか。
 未だかつてない不安と期待を胸に、皆は真っ暗く沈む、南の地平を見つめていた。


マスター:BOSS 紹介ページ
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ダーク ほのぼの コメディ えっち
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参加者:7人
作成日:2009/05/01
得票数:冒険活劇12  ミステリ6 
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