ひつじがとおります



<オープニング>


 ワイルドサイクル平原のとある広大な獣道。
 その道幅、もし水が流れてたら、他の大陸ならば大河と呼んでも差支えがないくらい。
 そんな獣道を土煙を上げながら怒涛の進撃を続ける巨大羊たちの一団があった。
 何かに追われているわけでも、何かを追いかけているわけでもない。何のために怒涛の進撃を行っているのかは誰にもわからない。
『ベぇーぇ』
『ベぇーーーーぇ』
 今日も進撃絶好調。そんな獣道の先に、道の両脇に広がる原住民の集落があった。

「依頼を持ってきたよ」
 ワイルドファイアの霊査士・キャロット(a90211)は酒場に駆け込み勢いに任せて引き受ける依頼を決めかねてる冒険者をかき集めた。
「ワイルドサイクルのある村では、広大な獣道に落とし穴を掘って怪獣を捕まえているんだ。
 そこにもうすぐ巨大羊が群れをなして通り過ぎようとしているんだけど、今回は落とし穴の作成が集落の人だけでは合わないみたいで、応援を募集しているんだって」
「応援って落とし穴作成のか? 冒険者を雇うなら普通にた……」
 南国の太陽・オープスト(a90175)が突っ込みを入れようとしたが、キャロットが目で黙殺した。そして何事もなかったものとして、キャロットは依頼の説明を締める。
「そこで落とし穴その他諸々を手伝ってくれる冒険者を募集しているわけだけど……どう? 一口乗ってみる?」


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参加者
麗氷黒茨・シャリオ(a08734)
朱の蛇・アトリ(a29374)
忍び・ユーセ(a46288)
ノソ・リン(a50852)
春夏冬娘・ミヤコ(a70348)
女王様志望・メイ(a75704)
三元八力の掌・ハイル(a77468)
ひよっこ紋章術士・アロ(a77773)
NPC:南国の太陽・オープスト(a90175)



<リプレイ>

●迷子の子猫
 パカラッパカラッパカラッパカラッ。
 蹄の音を広大な大地に響かせながら、冒険者たちは資材を持っていざ落とし穴工事現場へ。
 照りつける太陽の暑い日差しが照りつける肌を、正面からの風は気持よく冷やす。
 ワイルドファイアを走る3頭のグランスティードは召喚主と同乗者を乗せ、鬣を風になびかせ地を馳せていた。
「ここで小休止しようか」
 材料の採取場から村へ戻る道中にある大きな池で休息提案をする南国の太陽・オープスト(a90175)。他の冒険者も召喚獣の足を止めて、水の補給や休息に入る。
 白花天・リン(a50852)のグランスティードにしがみついて横乗りをしていた女王様志望・メイ(a75704)は召喚獣の足が止まると、滑り降りるように足を地につける。
「……あら、アロがいないわ」
 メイの言葉にぎょっと振り返るリン。召喚獣のお尻の部分にロープを巻きつけて乗っていたはずのアロが、ロープごと消えている。
「どうりで途中から快調に走りだしたと思った」
 アロをどこで落としたのか。軽くなった感覚は採取地を出発してからそう経ってなかった辺りの気がする。今にして思えばなんだか叫び声が聞こえたような聞こえなかったような。
 やや間を置き、メイは溜息を大きく付くと目の前に一匹のフワリンを呼び出して騎乗した。
「わたしはフワリンで進んでおくから、今頃迷子でピーピー泣いてるアロを迎えに行ってきなさいよ」
 ゆっくりパタパタと前ヒレを動かし泳ぐように出発するメイのフワリン。
「わかった。急いで拾ってくる」
 リンはフワリンとは反対側にグランスティードを全速力で駆った。
 彼がトボトボと歩いているひよっこ紋章術士・アロ(a77773)を見つけたのは、それから数刻後のこと。
「リンさん、探したんですよぉー!」
 珪化木の杖を大きく振り回しながら走り寄るアロ。怒っているようなほっとしたような情けないような、複雑で色々な感情が声に宿っている。
 なお彼の名誉のために書くと、特には泣きベソをかいてはいなかった。

●突貫工事
「うおっしゃ、破壊は狂戦士の領分だぜ!」
 ドガーン! と武器である大鎌をつるはしのように地面に突き刺し爆発を起こしている麗氷黒茨・シャリオ(a08734)。
 デストロイブレードによる爆発の煙が風に吹き消されクレーター場に抉れた地面が顔を出し、さらに爆心地の中心目がけて鎌を振り下ろすことでさらに掘り進める。2発目のデストロイブレードで出来たクレーターは、1発目の状態より深くはなっているものの、広さはほとんどかわっていないようだ。
(「さて他のヤツラはどんな状態かな、っと」)
 シャリオが穴から顔を出し、同じ穴を掘っている他の仲間の様子をうかがう。

(「ここは罠でばっちり捕まえっとしやしょ!」)
 朱の蛇・アトリ(a29374)は土塊の下僕を立て続けに召喚しつつ穴を掘らせ、用意した棒や布を組み合わせて作ったもっこで土や石を運ばせる。
 また、アトリ自身も召喚や指示の合間にヴォイドスクラッチを熊手替わりに地面を掘っていた。
 掘削速度はシャリオよりも早く、深さに満足したのか現場は指示済みの土人形に任せ、同じく土塊の下僕で掘削を行っていたリン、メイ、アロと一緒に擬装用の草っぱの方に向かっていった。
「さて罠作り、張り切っていこう!」
 テンペストフィールドを展開した靄灰・ユーセ(a46288)は、槍で穴の縁をひたすら抉るように突き崩し、落とし穴を拡張している。冒険者の一撃だけに土壁は深くまで耕されていく。
「ふふふ……密かに抱いていた大きな夢が遂に実現ですわ!」
(「ミ、ミヤコが凄い迫力だ……」)
 日差しと土埃対策にチャドルに黒眼鏡をかけた春夏冬娘・ミヤコ(a70348)もまた、道に谷を作るように大鎌でガンガン掘り進む。三元八力の掌・ハイル(a77468)はミヤコの気迫に一歩腰を引きながらも彼女と協力して同じく谷を作っていく。
 こちらもユーセのテンペストフィールドの影響で掘削が勢いよく進んでおり、すでに道幅の約3割まで穴を横断させていた。ミヤコは岩や岩盤があれば爆砕拳で破砕するつもりでいたが、並の岩や岩盤は渾身の一振りで簡単に砕け散るためアビリティの出番は来ていない。いっぽうでハイルは掘削手段を爆砕拳にしており、2人の進行具合は今のところ差が出ていない。
 3人の作業した後には土がふっくら山盛りになっていたが、アトリたちの呼び出した土人形がそれを穴の外へと運び出していた。この土を使ってユーセは巨大羊誘導用の壁を作っていくつもりだ。

 しばらくして掘削が終わり、土人形のピラミッド体操で作った階段を上って地上に上がる冒険者たち。
 集落の人達に協力してもらって作った布や皮をつなげた覆いで穴を閉じ、擬装用に取ってきた草をそれらしく乗せる。覆いの端をロープにくくりつけ道の両端に立っている木にそれを結び付ける。
 擬装を行う傍ら、土壁作成はユーセが土塊の下僕を力の限界まで呼び出して行われ、穴が掘られていない場所やロープが見えそうな場所を隠していく。
 仕上げの作業も終わりに差し掛かったころ、見張りをしていたオープストの大声が作業中の仲間や集落の人達に聞こえた。
「群れがやってきたぞー!!」

●羊追い祭り
 作業を始めた時に見えた、深く青い空と赤茶色の大地の間で霞んで見える箇所。
 今や霞みは巻き上げられた土によるものだとわかる大地の色が見て取れる。
 そして大地に耳を澄ますと聞こえる、何頭もの大型動物が駆ける忙しなく重い足音。
「キタキタキタ!」
 遠眼鏡を覗き込み、土煙の中の巨大羊たちの姿を確認するアトリ。
「シャリオさん!」
「おう、乗りな!」
 準備万端、といった様子でシャリオがグランスティードに乗って駆けつけ、アトリのすぐ隣で急停止する。間髪いれずにアトリが後ろに飛び乗ると、シャリオは後ろを見ずに全速力で駆けだした。
「でかい、でかい! 腕が鳴る〜!」
「ハイル! 頑張って!」
 ハイルも自身のグランスティードを呼び出し、とてつもなく大きな投げ縄を器用に振り回しながら、アロの声援を背に羊たちと並走するべく群れめがけて駆け出した。
「仕掛けは、仕掛けはちゃんとできてるかな」
「ちょっと、今更ジタバタしてる暇はないわよ!」
 地上部に立てた土壁と土壁の間に飼料の草をぶら下げていたハイルは、仕掛けに不備がないか慌てて確認に走りだそうとするが、目前に迫る群れから安全な場所に身を隠れるべくメイがハイルの腕を引っ張っる。
 そして2人が他の居残り組と一緒に避難して数秒後、群れの先頭をひた走る羊がはっきり見える距離まで迫まる。そしてそれを追い込むべく走った3人の冒険者たちの姿も。
「みんな頑張って!」
 退避場所から身を乗り出し、ミヤコは精いっぱい声をあげて彼らに手を振った。

 パラリラパラリラ♪
 一風変わった音が出る楽器を鳴らしながら、でかくて長い応援フラッグを振り回し羊たちを追いこもうとするアトリ。スティードの上に立ち、より高くフラッグをたなびかせる。
「落ちんなよ!?」
 後ろで立つアトリに形だけ注意しながらスティードのスピードを上げるシャリオ。群れの一部が落とし穴コースから外れようとしたところでシャリオはスーパースポットライトを灯す。
「ほーらラム肉ちゃん。さっさとまな板の上に来やがれよ」
「うわっ、うわっ、うわ#$%&!!!」
『ベぇーぇ』
『『『ベぇーーーーぇ』』』
 周辺の羊たちの気を一気に惹きつけたシャリオ。そして一時的に足が止まった2人に対し羊の群れの一部が2人に向かって突進。2人は羊たちの群れにもみくちゃにされ、る。アトリの悲鳴もベーベー羊たちにかき消されてしまう。その様子を目の当たりにしたオープストは、静かに天に祈りをささげた。
 群れの一部は停止してしまったものの、本隊は依然として獣道を爆進中。そんな巨大羊の群れの一頭に縄を投げたハイル。縄は見事に羊の角に掛かり、ハイルは羊に飛び乗ろうとグランスティードの背中を蹴る。
 だがハイルの跳躍力は爆走羊の脚力に今一歩で負け、ハイルはすっかり空を泳ぐ鯉のぼり状態。
 そして羊たちはそのまま罠地帯に突入。幾頭かはぶら下げられた草で足を止め、もしゃもしゃと草を食み、走っているのは後続の数頭となった。
「え、えらいことになってる!?」
 アロがハイルの様子を見て驚愕す横で、リンは逆光でできた自身の影で悪人笑いを隠す。
(「落とし穴の直前に編み草トラップを仕掛け、足を引っ掛けて穴に落とすという狡猾設計よ……。ククク……」)
 さぁ、どうだ! と目を最大に見開きながら集中力を総動員して羊の足元を見るリン。
 だが羊たちは非情にもトラップを上から踏みつけ、または蹴破り、粉砕していく。
「大きすぎンだチキショー!」
 思わず嘆きを口に出すリン。
 そんな嘆きの直後、羊数頭が落とし穴に踏み込んだ。偽装で張った布が大きく裂け、羊たちはそのまま下に落ちる。ハイルも一緒に。
『ベぇーぇ』
『ベぇーーーーぇ』
「うわー穴の中がもっふもふだ〜♪」
 落とし穴に嵌った羊は3頭。こうして冒険者たちは捕獲依頼を無事クリアした。

●羊肉BBQ
「うまくいって良かったね〜♪」
 機嫌良く笑うメイ。他の冒険者たちもまんざらでもないといった様子。
 冒険者たちが仕留めた羊を、集落の人たちは大きな焚火の前に運びこむ。3頭の内1頭をアトリとリンが運搬し、背負った巨大羊をそっと地面に下ろした。
「それじゃ、皮をはいで肉を解体しますわよ」
「この角、貰えないかな。武器飾りにしたいな」
「了解だよ」
 ミヤコが刃物で皮をきれいに取り、ハイルが肉を適当な大きさにカット。
 角を根元から切り落として欲しがるユーセに手渡し、ミヤコとハイルも毛皮や羊毛を欲していたので持ち帰りサイズに毛皮を切り取り、風呂敷に包む。
「それじゃ、焼きますよ」
 串に通した大きな塊をアロが火にかけると、羊肉独特の香りが辺りに広がり始めた。
 それとともに火を囲んで歌い踊る集落の人たち。糧を得られることに感謝する祭事らしく、冒険者たちも誘われて踊りの輪に加わる。
 香りも最高潮に達し肉が程良く焼け、冒険者たちは肉を火から下ろす。
 焚火を囲んで串を手に取る一同。肉にかぶりつき、熱い肉汁が口の中で弾ける。
 やや草の香りがする羊肉は、労働でおなかを減らした冒険者たちの腹をいっぱいいっぱいに満たすのだった。


マスター:falcon 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2009/06/05
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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