地獄列強追撃戦:囲まれて、なお



<オープニング>


●地獄列強追撃戦
 死者の祭壇から侵攻した地獄列強の軍勢を、黄金霊廟、エギュレ神殿図書館、カダスフィアフォートの3つのドラゴンズゲートで迎撃した同盟諸国の冒険者は、見事、その攻撃を退け撤退させることに成功した。

 しかし、ノスフェラトゥ以外の地獄列強、ディアブロ、セフトシルフ、シャドウスナッチの中には、そのまま死者の祭壇まで撤退せずに独自の行動を取り始める者が出てきているのだ。

 このまま、地獄列強の好きにさせておけば事態はどう悪化するか判らない。
 そこで、精鋭の冒険者による『追撃部隊』が派遣されることとなった。

※※※

「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、冒険者達に一礼して、状況の説明を始めた。
「ドラゴンズゲート防衛戦の勝利、おめでとうございます。しかし、一部の地獄列強は死者の祭壇に逃げ帰らず、独自の行動を取り始めています。皆さんには、この地獄列強達を撃破してもらいたいのです」
 ユリシアは、真剣な口調でそう語った。
 これ以上、地獄列強にランドアースを蹂躙させるわけにはいかない。
 ランドアースに住む全ての住民の為にも、地獄の勢力は撃破しなければならないのだ。

「ノスフェラトゥ以外の地獄列強は、個体として同盟諸国の冒険者を凌駕する力を持っています。かなりの危険が予想されますので、用心してかかって下さい」
 ユリシアは願いをこめて、冒険者達に頭を下げるのだった。

●囲まれて、なお
 冒険者たちの顔を見ると、いつになく重い表情で、ストライダーの霊査士・ルラル(a90014)は語りはじめた。
「あのね、みんなに倒してもらいたいのは、ディアブロなんだよ」
 そういって片方の手を伸ばしたまま、もう一方の指先を手のひらに添える。その両の手が表すのは、地獄へ戻らずにランドアースに残った、今回冒険者たちが相手することになるディアブロの数なのだろう。そして、その数は6。
「ディアブロは、とある村の裏山に広がる洞窟に入り込んだみたいなの。そこで強敵が来るのを待って休んでるみたい」
「強敵、ですか?」
 冒険者の一人の怪訝そうな声に、ルラルは力一杯頷いてから答えてくれた。
「そうなの。満足いくまで戦いたいディアブロの相手を務められる人たち――つまり、みんなみたいな冒険者がやってくるのを待ってるんじゃないかなぁ」
 ルラルはここで再び真剣な顔になり、冒険者に向き直る。
「でも、あんまり待たせるとイライラして村に行って暴れちゃいそうだから、できるだけ早く倒しにいってあげてね。村人さんは家に閉じこもってぶるぶる震えてるそうだから」
 さらにルラルは続ける。
「ディアブロは、剛弓を背にした壮年に率いられ、大斧使い、蛇腹剣使い、連珠使い、儀礼用剣使い、鋼糸使いでいっしょに動いているんだよ。一人一人でも強力なのに、同盟諸国のみんなみたいに、しっかり手伝いながら戦うことを知ってるみたいだから油断しないでがんばってね」
 ここまで説明すると、果汁水の入った椀を両手で丁寧に挟み込み、喉に中身を流し込んだ。
「この追撃線がうまくいけば、今度は死者の祭壇を取り返しに行けるんだよ♪ 地獄の人たちに怖がらされないよう、みんなランドアースから追い払ってきてね。ルラル、みんなのためにがんばって応援するからねっ☆」
 ルラルは赤茶色の瞳を湿らせ、手を振って冒険者たちを見送ってくれた。
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!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 ストライダーの霊査士・ルラル(a90014)の『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『献身(devote)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。
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参加者
白銀の山嶺・フォーネ(a11250)
城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)
永久に我が舞姫の側を望む者・ファル(a33563)
烏珠の剣・ヒースクリフ(a34207)
濡れ羽色の閃光・ビューネ(a38207)
魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)
闇色の・モニカ(a46747)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

●誘発
「準備はどうだ? オレはいつでもいいぜ」
 どこか血走ったような気配を辺りに漂わせつつ、永久に我が舞姫の側を望む者・ファル(a33563)が問いかけた。
「こっちもばっちりっス」
「ってその格好、何だ?」
 黒い炎を身に纏った 魂に刻めその旋律・レシュノ(a45112)が、夜空の痕・モニカ(a46747)の怪訝な声に真面目な表情で向き直る。
「なんといえばいいでしょうか、奇抜というのもなんですね、種族不詳の怪しさを醸し出していますね」
 烏珠の剣・ヒースクリフ(a34207)が興味深そうな表情を作って、レシュノの全身のコーディネイトを見定めた。
「これ、ドリアッドだとばれないように準備してきたっスけど」
 レシュノの弁にもう一人のドリアッド――城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)が首を傾げている。
「ドリアッドの印を隠してこないといけなかったのですか? それじゃ、わたしも桜を隠さなきゃ」
 馬鈴薯菓子の残骸を払い落としつつ、サクラコがドレスを模した甲冑のなかに髪先を隠し始める。そこに、ファルが再び問いかけてくる。
「私はあらかた終わりました。
 ……さ、サクラコさん、ファルさんがお呼びですよ」
「さて、そろそろ敵陣も目前ですから、特徴隠しは気にせずに真面目に行きましょう」
 白銀の山嶺・フォーネ(a11250)、ヒースクリフに、サクラコは頷いてみせると、ファルに両腕で大きなマルを作ってみせた。
「では、準備完了……。ビューネ、お願い」
 白花天・リン(a50852)の言に応じ、濡れ羽色の閃光・ビューネ(a38207)は『トワイライト』と名付けられた強弓を抱え、洞窟正面に立つ。
 とある村の裏山に広がるこの洞窟には、先の戦いで敗れた地獄の残党――ディアブロの一隊が潜んでいるのだ。
「では、私の出番ですね、まいります」
 強弓から赤い矢が放たれる。洞窟の奥に広がる暗闇に飛び込んでいく。
 洞窟のなかに爆発音が響き渡る。煙がはれるや否や、飛び出してきた人影があった。
 それと前後して――、モニカの叫びがあがった。

●交刃
「くっ、洞窟の側までは大丈夫かと思っていたのだが」
 ヒースクリフが片膝をついて倒れ込む。彼の後ろからモニカがすかさず優しい光を放つ――『ヒーリングウェーブ奥義』が傷をふさいでいく。そのヒースクリフの茶色の瞳には、モニカも鋼糸使いも同じように映っていた。
「へぇ、この物陰からの一撃に耐えるとはねぇ。地上の冒険者と一番に殺りあえたのだから、たまには見張りもいいもんだなっ」
 鋼糸を構えたディアブロ忍びは、ケタケタ笑い出す。
「洞窟外の見張りに気づかれ、隠れられてた? こんなところに潜んでるだけあってせこいじゃん」
「なに、弱い奴らだからって手を抜いては、死にゆくおまえさんたちに悪いと思ったからな。そう感謝されると照れるな」
 モニカの言葉にこう返し、再びケタケタ笑う。

 一方、前方では憤怒の表情を浮かべた斧使いを先頭に、5人のディアブロの姿が見えてきていた。ただし、走っているのは、斧使いだけである。
「兄者だけに楽しさを独り占めさせはせぬ。っと、地面がこう光ってられると落ち着かぬな。はっ!」
 洞窟から顔を出した蛇腹剣使いが霧を呼び出す。『ミストフィールド』がリンの『ヘブンズフィールド奥義』を覆いつくす。
「どうやら斧持ちだけしか怒らせられなかったみたいですね」
『アングリーナパーム』の射手ビューネはこう漏らしながら、後ろからの忍びとの距離を模索している。
「ディアブロ……、何度か戦ったことがありますが強敵です。野放しにすると民に大きな被害を及ぼすことになります。なんとしてでもここで止めなければ……」
 サクラコの振るった儀礼剣から衝撃が走る。先頭を駆ける斧持ちの体皮に傷が開き、血が噴き出す。
 再び、後方。
「な、なにしやがる」
 モニカが叫び、右に身を投げ出した。だが避けきれなかったようで、ヒースクリフの槍先がモニカの腿の表面をえぐっていた。フォーネらが『鎧聖降臨』で防備を固めてくれてなければ骨が見えていたかもしれない――下手すればそれ以上だったかもしれない。
「おやおや、俺の獲物を横取りしようとは地上の冒険者も強欲だな……って、俺の一撃で混乱しちまってるからか。変な言いがかりつけちまってすまねぇねぇって……うがっ」
 ケタケタ笑いだそうとしていた忍びに稲妻の矢が突き刺さる。
「こうなっては斧持ちよりも後衛を狙う鋼糸持ちを狙うしかないでしょう」
 ビューネの『ライトニングアロー奥義』である。
「気合入れて行くっスよ」
 続いてレシュノが勇ましく歌い上げる。『高らかな凱歌奥義』がモニカ、ヒースクリフの痛みを減らしたうえに、混乱をも収めたようだ。
 歌うレシュノの近くに立つビューネめがけ、斧使いが迫る。そこにリンが立ちふさがる。
「こ、ここは通さない」
 召喚獣グランスティードにまたがったディアブロ斧使いの一撃を、同様の召喚獣の力を借りつつリンは斧で受け流す。続けて繰り出される打撃をすべて受け流すことはできず、何撃か身に受けてしまった。だが、仲間からの力が込められた鎧が彼女の細身の体を守りきる。
「奇襲に頼らねばならぬとは……、ディアブロの好む戦いとは醜いな」
 ファルの蛮刀が振り上げられる。刀身を覆い隠すように光る稲妻が、嵌められた紅玉の煌めきに見送られ、斧使いに迫る。『サンダークラッシュ奥義』の稲妻が斧使いの体中を駆けて駆け巡る。
 続けてそこに、フォーネの白銀の突撃槍『菊理媛神』が勢いよく振るわれた。彼女の漆黒の髪の上に現れた護りの天使の助けもあり、ディアブロ斧使いの胸板を貫くには十分な一撃だった。
「ただ戦うために、ですか……」
 槍を引き抜く際、フォーネの口からぽつりとこんな呟きが漏れだした。
「くっ、斧の兄貴をよくやりあがったな」
 叫ぶ蛇腹剣使いが急に脇腹を押さえる。リンの『ワイルドキャノン奥義』が脇腹を派手に変形させていた。
 その蛇腹剣使いの後ろから、赤く透き通った矢が飛んできた。
「いやはや怒りを呼ぶ技一つで誘い出そうなんてせこい手には呆れ果てた……、じゃなかったな、怒ったぞー、ぷんぷん」
 ビューネをかばうリン中心に爆発が広がる。
「これくらい、どうということない」
 リン、サクラコ、ビューネ、レシュノが巻き込まれたようだが、たいした痛みはなかったようだ。
「くっ、そういえば地上の冒険者たちは一人ずつ、じゃったな。蛮勇を誇った斧使いをも倒したものたちにはやはり本気を出さねばならぬか」
「では、本気、いっきますー」
 蛇腹剣使いの前に出てきたディアブロが連珠をかざす。冒険者たちの鎧が呪われる。ファル、サクラコのもの以外は着用者の身を守ってはくれないだろう。
 続いて、儀礼用剣を帯びたディアブロが光り、彼らの傷を癒した。

 戦いは熾烈を極める。
 斧使いに続き、蛇腹剣使いを倒したところまではよかったものの、後方で動き回る鋼糸使いに隊形を乱され、なかなか冒険者たちの思うように戦いを進めることはできなかった。
 とはいえ、だからといってディアブロのペースで戦いが続いたかというとそうでもなかった。序盤に2人失ったことにより、ディアブロは4人――いくら個人個人の力量が同盟諸国の冒険者を凌駕するといっても、2倍の戦力比はそう無視できるものでもない。
「くっ、儂らの三の陣構えをくらってまで未だ生き延びておるか。だが、ぬしらの技もそろそろ打ち止めじゃろう? 先ほどの癒しの光、弱まりはじめておったぞ」
「けっ、今更死ぬのが怖くなったか? 戯言をほざき出すのは死期が近いからっていうぜ」
「そういえば、そんな歌がたくさんあるっスよ」
 ディアブロの一隊を率いる老狩人の言葉に、モニカ、レシュノが笑い返す。
「こちらはオレたち前で戦うものたちまで癒しの技を準備してあるから、癒し手たちが技を使いこんでも、まだまだ余裕なのだ」
 ファルの言葉に、儀礼剣使いが顔を歪める。
「っと、その様子ではそちらの癒しの技はそろそろ打ち止めのようですね。では、いきますよっ」
 ヒースクリフが鋼糸使いに斬りかかる。鋼糸がヒースクリフの首に絡まったかと思ったがそれは『ミラージュアタック奥義』の残像――鋼糸使いは突き殺された。
「これでどうです!」
 サクラコの衝撃波をくらい、儀礼剣使いが苦痛に全身を振るわす。その額にビューネの矢が突き刺さる。武骨な外皮を激しく振るわせながら、ディアブロ癒し手は倒れてこんだ。
「レシュノ、サンクス、お前を討つ!」
 ブラックフレイムの一撃で調子を崩した老狩人を、ファルの稲妻の刃が絶命させた。稲妻の激しさのせいか、倒れ込んだ後も一度全身を激しく振るわせた。
 いよいよ残るは連珠を構えたディアブロ邪竜導士だ。
「くっ、簡単に殺されないよ。これは洞窟奥にあった品物さ。おまえたちにとってきっと大切だからこそ、洞窟の外に誘い出そうとしたんだろう?」
 ヒトの顔ほどの木製の箱をかかげ、連珠使いは冒険者の動揺を誘う。
「くっ、下手に攻撃しては村のお祭りの道具が」
「こ、壊れたら謝って直せばいいのです」
 フォーネ、サクラコの手先はわずかに震えている。
 そこに、一本の矢が放たれた。矢の軌跡が光の線を描いていった。
「なん、だと」
 最後のディアブロの額に、ビューネの矢が突き刺さった。

●確保
 ディアブロの死体は冒険者たちの掘った穴に埋められた。
「貰っていくぞ。まだオレの戦いは終わりそうにないからな」
 ファルが大斧使いの斧を手に取った。今回の戦いで無数のひびが入っており、武器としてどこまで、新しい主を支えることができるかははっきりしない。

 村人たちはディアブロという脅威がなくなり、さらに祭具が無事だったことに、冒険者たちへ惜しみない感謝の言葉を浴びせた。
 その言葉に応えながらも、残る地獄勢力に思いをはせつつ、帰途へつくのだった。


マスター:珠沙命蓮 紹介ページ
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わからない
参加者:8人
作成日:2009/06/22
得票数:戦闘12  えっち4 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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