ワイルド星祭り〜刹那の星見舟



<オープニング>


●ワイルド星祭り
「ランドアースよりもっと遠い所ではお星様のお祭りがあるって聞いたなぁ〜ん」
「お星様なぁ〜ん? キラキラなぁ〜ん♪」
「でもって笹の葉っぱで舟を作って流すとお星様にお願いを叶えてくれるらしいなぁ〜ん」
「舟なぁ〜ん? ウレタン舟より面白そうなぁ〜ん」
「どうせだから一緒に流されるなぁ〜ん」
 ワイワイと話をしているのは何人かのヒトノソリン達だった。どこかで風の噂に聞いたのか、星に願いを捧げるお祭りの話になっているようだ。
「お祭りで着る服もあるってことなぁ〜ん」
「何てったっけ……ユタカなぁ〜ん」
 ……それを言うならユカタ、と突っ込む人材は残念ながらまだいない。
「そういえば、実際にお祭りを体験した人達もいるんじゃないかなぁ〜ん?」
「ランドアースの人達なら、何か知っているかもしれないなぁ〜ん」
「是非ご教授して欲しいなぁ〜ん!」
 そうして矛先はワイルドファイアの霊査士・キャロット(a90211)へと向き、ヒトノソリン達は星祭りについての説明を受けるのであった。
「流すと言えば、麺も流れるらしいなぁ〜ん」
「一緒に流されて食べるなぁ〜ん?」
 これまた何処かから仕入れてきた食べ物の話も手伝って、ヒトノソリン達は期待に胸を膨らませるのであった。

●刹那の星見舟
 エルフの霊査士・マデリン(a90181)は明らかにイソイソとしていた。足取りも軽く、小さく鼻歌なんかも唄っている。
「マデリン、何か悪い物でも食べたのか?」
 そんな不作法な声に一瞬、マデリンの表情は厳しくなったがすぐに笑顔に戻った。
「あらあら……世間知らずのアロンさんはもうすぐワイルドファイアで星祭りが行われるの、きっとご存じないのですわ。知っていたら、そんなのんびりとはしていられない筈ですもの」
 ダークな笑顔を浮かべ、マデリンは碧水晶の吟遊詩人・アロン(a90180)を見上げた。
「星、祭り?」
「ワイルドファイアの美しい自然の中で、笹舟で川下りをするのですわ。空には満天の星、そして水面には空を映した地上の星……幻想的な蛍だっているかもしれませんわ」
「それは『ろまんちっく』とかいうものだろうか?」
 身を乗り出してアロンは尋ねた。
「当然ですわ。信じられないくらいロマンティックでしてよ。こう、素敵な浴衣など着て……ってアロンさん! アローンさーーん」
 どこかに大急ぎで走りゆくアロンの背を見つめ、マデリンはまぁ良いでしょうと冒険者の酒場へと向かって歩き出した。

「ここにたーくさん浴衣があるからね。帯や下駄、髪飾りや提灯もあるから好きな衣装に着替えていいよー!」
 キャロットは大きな声で言う。川辺にはどこから調達してきたのか、沢山の笹舟と沢山の装束が準備されていた。皆が持ち寄り揃えたのだろう。持参してきたものを使うのも勿論自由だ。着替える場所も十分に用意されている。ここで準備を整えて、笹舟に乗り込み星見の川下りをするのだ。友達同士でわいわいと乗っても良いし、恋人同士で静かに星を眺めるのも良い。誰かの用意を手伝っても良いし、笹舟を補強してもいい。なにせこの場所から出る笹舟は必ずしばらくすると水没するのだ。泳ぐ準備や、浮く物を持参してもいいかもしれない。

「お手伝いが終わったら、皆で川に集合だから忘れないでね。星が出たら皆で笹舟に乗って、流されながらお願い事しちゃおう!」
 キャロットはそう言って、勢い良く拳を天に突き出すのであった。


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参加者
NPC:エルフの霊査士・マデリン(a90181)



<リプレイ>

●星祭りの夜
 オウカはたった1人で笹舟に揺られていた。黒地に鮮やかな牡丹が浮かぶ浴衣と、揃いの簪に下駄。空には満天の星、そして川面に映るもう一つの宙。光に抱かれてゆっくりと進む笹舟は夢の中の様だ。
「……あ、蛍」
 空の星が降りてきたかのような淡い緑の光がオウカの視界を緩やかによぎっていった。

 空と川面に映る光はまるで夜空を飛んでいるかのようだ。蛍の光が2人の姿を淡く照らす。うっとりとしている美しいイーチェンの横顔を見ながら、クララはボンヤリと笑っていた。2人は浴衣姿で、イーチェンは菊が描かれた簪をしている。
「とってもよくお似合いですね、綺麗ですよ」
 目を伏せて謝意を告げるイーチェンにクララは後で渡す物があると、謎めいたことを言う。
「私は……いつでもあなたの無事を願っているですよ」
「私もです。あなたの幸せを祈っています」

 ハロルドは鉄錆色を基調とした渋い柄、リオネルは藍色の涼しげ浴衣姿だ。
「ハルが補強したから安定してるね」
「長く楽しみたいからな」
 涼しい風に吹かれながら舟で食べる素麺は格別だ。
「美味いな、リオ」
「酒の味?」
「素麺」
「そっちか……星まで大きく見えるんだね」
 その時、ガクンと笹舟が揺れた。中央が陥没し2人は一気に川に落ちてしまう。慌てて川面に顔を出すと白い素麺が流れて過ぎた。
「これが風流っていうんだろうな」
「……違うと思うよ」
 それでも素麺を食うハロルドにリオネルは笑った。

 エリシエルはその人を描いていた。
「今もお描きになるんですね」
 エリシエルが写すエリザベートは優しく微笑んでいる。
「お変わりなくて……安心しました」
「そうでもない」
 色々あったのだ。エリシエルは服の上からペンダントを握る。エリシエルは絵を描きながらぽつりぽつりと語る。黙って効いていたエリザベートは友の為に星に祈る。
「……さぁ」
 気が付けば笹舟は僅かに浸水していた。フワリンを喚んだエリシエルはエリザベートに手を差し出す。
「はい……」
 握った手は温かかった。

 鈍色の浴衣を着たルイと白地に金魚の浴衣を着たジェネは寄り添い手を握っていた。浴衣と同じ色の目を細め、ルイは美しい景色とその中にいるジェネに見惚れていたし、ジェネも二人っきりで過ごす美しい記念日に感極まっていた。
「ありがとうね」
 肩を寄せてルイはつぶやく。
「どうして泣くの?」
「幸せ過ぎるから……かな?」
「うん、幸せだね」
 ルイはジェネの頬を伝う涙をぬぐう。そっと小さな笹舟を流すと、2人は乗っていた舟が沈む前に岸に降りた。

 2人は静かに星空を見つめていた。笹舟の縁から投げ出した足に川の水が心地よい。
「もう流しますか?」
「はい」
 2人は願いを書いた短冊を舟に折り、そっと静かな川面に乗せる。
「エルスちゃんのお願いってなんですか?」
「え? ミレイナ様は?!」
「ひ・み・つ」
「ずるいです。そそそれなら私も内緒ですの」
 エルスがじたばた暴れると、あっという間に笹舟は水没した。しゅんとなったエルスにミレイナはニッコリと笑う。
「岸まで泳ぎましょう。運動も兼ねていいですね」
「はいです!」

 笹舟はもう浸水しはじめていた。
「エルノアーレさん、こちらへっ」
「あ、いやっ、ダメですわっ!」
 黒地に流水紋の浴衣姿で、しっとりとした大人の色香を漂わせていたエルノアーレは慌ててしまったのか、大きくバランスを崩した。2人は抱き合うようにして水没した。続けて笹舟の沈んでしまう。川に浮かんだまま顔を見合わせて笑いあう。
「あらあら。まさに『水もしたたるいい男』ですわね」
「今頃気づきましたの? わたくしはいつもこんなに髪が滴ってますのに」

 サガンの浴衣は藍、ヤチヨは紫と白の地に桔梗の花が舞い散っている。
「ワイルドファイアでの星祭りか……星凛祭とはずいぶん違うものよのう。祭り好きのヒトノソリン達らしいが……」
「こういう星見も良いですね。ヒトノソリンさん達には感謝しませんと」
 典雅な音が星を映した川面に響く。『高雅の風音』の銘を持つ横笛の調べだ。それはサガンの為にヤチヨがあつらえたものだった。
「……また、二人で星凛祭に行けたらいいな」
「えぇ」
 フワリンに移ると、笹舟はすぐに沈んでいった。

 愛用の藍の浴衣を着てラムナは笹舟に揺られていた。適度に補強をしてあるので、まだ浮力も十分にある。笹船の中で寝そべって、壮麗な星空をただじっと見つめていた。
「俺の願いは……」
 そのために平和が欲しい。いつしか眠り込んでしまったラムナは冷たい水に飛び起きた……もう笹舟は水没していた。

「みんな浴衣は決まったか?」
 スズは努めて平静を装っていたが、足の震えはどうしようもない。
「そういうスズパパは?」
 紺色の浴衣を着たソータは普段着のスズを見る。
「これで万端整ったのじゃ」
「キィン〜! ありがとうにゃ〜」
 ミュウの着付けを手伝ってやったキインは、スズと兄ソータへと手を振る。
「ミュウちゃん可愛いかにゃ〜?」
 ミュウはくるっと1回転する。
「3人ともよく似合ってるぜ!」
「うん! キインとミュウちゃん、似合うよ〜さすがだね〜」
「当然! 妾の見立てじゃ」
 キインは得意げに胸を反らせる。
「そ、そ、それでは乗り込むぞぉ」
 若干語尾が震えながらも、スズは渾身の精神力で最初に笹舟に乗り込んだ。
「……う」
「兄様。この舟は沈まないから……大丈夫じゃぞ?」
 兄の背をさする妹にソータは力なく礼を言うが、ミュウは絶好調だ。
「スズパパッ! ミュウちゃん、もっとお空近くでみたいにゃ!」
「よ、よーし!」
「あああああぶないぞ!」
「ちょ、え、あぶな……!」
 一瞬で笹舟は水没した。スズは大変な目に遭った。

「少しぐらい揺れても大丈夫だからね」
 寄り添って笹舟に乗るキールとシェルは、対になる翡翠色と茜色の揃いの浴衣を着ていた。川の水は冷たく綺麗で、夜空の星が移り込んでいる。けれど、少し揺れただけでシェルはキールの袖にしがみついた。
「大丈夫?」
 抱き留められてシェルは顔を赤くする。
「頼りさせて頂きます」
 抱きしめる腕をそっと抱き返す。星に託した願いも2人は口にしなかった。
「ふふ、今回はあえてヒミツです」
「……俺も、内緒」
 笹舟が沈んでしまう前に、2人はフワリンへと移動した。

 紺の浴衣を着てみた。金魚柄の浴衣を着たティーゼと並んでも違和感はない。
「誘ってくれてありがとう」
 不意にカトレアが言った。
「いいえ、一緒にいてくれて嬉しいです」
 ティーゼは素直な気持ちを打ち明ける。それがカトレアにはまぶしい過ぎる。
「何か願い事はしたのか?」
「一つはもう叶ったので、いいのです。残りは秘密なのです」
「そうか、残りの願いも叶うと良い、な」
 カトレアの笑みはティーゼにはかけがえのない宝物だ。笹舟を沈むとカトレアはティーゼを背負って岸を目指した。

 フィオが補強した笹舟は安定していた。
「もう3年近いでござるな。少しは大人っぽくなったでござるかな?」
「そうだな。でもヒイラギはヒイラギだからそれでいいんだ」
 照れ隠しかフィオは星を指さす。一際明るくまたたく美しい星だ。
「あの星に願掛けしてみるか?」
「某は此方に誓おう……不束者でござるが、これからもどうぞよろしくでござる」
「え、いや……その。あ、蛍だ」
 パシッと手の中に捕らえた……と、思ったら大きな水音がしてもうフィオは川の中だった。
「旦那様〜」
 あきれ顔のヒイラギにフィオは笑った。

「同じ星祭でも星凛祭とは随分趣が違うのぅ」
 薄桃色の浴衣にゆるく髪をまとめたコトナは不思議そうに言う。
「この辺りの笹原は壮観だろうね」
 コトナが際だつよう、赤みを帯びた黒の浴衣を着たカルロは笹舟の材料に興味がある様だった。
「お星様も一緒にすくえそうじゃのぅ」
 指輪を気にしながらコトナは川に手を入れる。冷たいけれど、星を映した川面は夢の様に美しい。同意しながらもカルロはそっとコトナを抱きしめた。
「コトナさんは僕の太陽だから、星の煌めきも褪せてしまいそうですね」

 藍と白、片身替りの浴衣を着たデュアルはリンシュの黒い浴衣姿に見惚れていた。空と川面の星明かり、そして蛍の光に浮かぶリンシュの横顔は本当に美しい。
「こうやって一緒に星を見たかったんや」
「怖いくらい綺麗だね。デア、誘ってくれて……ありがとう」
 いつもより近くに見えるデュアルの顔。リンシュの心が温かいもので満たされる。それはとても心地がいい。
「……って、この舟、沈み始めてる?」
「わあぁ」
 いきなり傾いだ舟に2人はぎゅっと互いに手を握って水に落ちた。ずぶ濡れでも2人は幸せだった。

「笹舟でけー! これなら大丈夫そーだな」
 アッディーオは嬉しそうだ。浴衣に着替えたエーベルハルトとアッディーオは提灯を借りて笹舟に乗り込む。ゆったりと水の流れにまかせて動く舟の上は星空も川面だらけだ。ふと、考えてエーベルハルトは一息で提灯の灯を消した。
「すっげー綺麗だ」
「あぁ、綺麗だ」
「蛍! あっちにも、こっちに……あっ」
 アッディーオ、そして手を伸ばしたエーベルハルトも川に落ちた。どデカイ水音が響く。
「エイブ! 何してる!」
「よこしまな事だ」
「ば〜か」
 ずぶ濡れのままだったが、笑いはなかなか止まらなかった。

 リィとエクゥが補強した笹舟は随分と安定していた。星空に挟まれるかのようにして、緩やかに川面を下っていく。淡い山吹色に銀の薔薇が描かれた浴衣姿のリィは薄い水色の地に朝顔が描かれた浴衣のエクゥと並んで揺られている。
「ホタルや星空、綺麗だね。まぁ、リィの笑顔には敵いませんけれどね」
「え? お願い事、叶うといいですねぇ〜」
「私はリィが幸せでいてくれたらそれだけで幸せですよ」
「私もです」
 微笑み寄り添う2人の笹舟はそれからもしばらく、ゆったりと川を下っていった。

「プレス〜どこにいるなぁ〜ん?」
 キリアは髪を整え、背に『情』と刺繍した藍の浴衣姿だ。
「キーリアー! こっちなぁんよ」
 髪をおろしプレスは胸に『心情涙』と描かれた山吹色の浴衣を着ていた。
「その浴衣とても似合っているなぁ〜ん」
「ありがとう。これを着るのも久しぶりなぁんね」
 笹舟に乗り込むと2人は背中合わせに座って空を見上げる。小一時間もすると、笹舟はガクンと浸水し始めた。
「それじゃ突撃なぁーん!!」
「もう少し楽しみたかったなぁ〜んね」
 プレスはキリアの首に手を回し……一気にキリアと一緒に飛び込んだ。

 撫子柄の浴衣を着たユディールはアロンのために小さなウレタンを積んでいた。
「星ってさ、夜空の花ってのかな……綺麗だな」
 寄り添って座るアロンにそっと身体を預ける……温かい。
「あぁ、何もかも綺麗だ」
 手を握るとアロンは驚いた様だったが、すぐに強く握り返した。
「笹舟沈んでも、離すなよ。離したら……嫁さんになってやらないからな」
 一瞬の沈黙。驚いた顔をしたアロンはユディールに抱きついた。そのまま2人は川に落ち、しばらく水面に現れなかった。

 紺の浴衣を着たセイレーンの笹舟は静かに水没した。乗っていた者は何をするでもなく流されていく。星が見えた。けれどそれがなんなのだろう。沈んでいく身体を不意に強い力が抱きかかえた。温かいぬくもりには覚えがある。目を開けると濡れた銀色の髪と血色の瞳が見えた。抱かれるままのセイレーンを銀髪の武人は岸に抱え上げ、乾いた布を頭から掛けた。自分も布を取り上げ冷えた身体を拭く。2人は無言で座り込んでいた。遠くで歓声が聞こえるが、この辺りには誰もいない。
「このまま溺れ死ねたなら、良かったのに……」
 セイレーンは布をかぶったままつぶやいた。

「大きいすぎるわね」
 金魚が描かれた浴衣にベレー帽のレイは鈴音を鳴らして飛び回り、笹舟の作り方を伝授して、自分達の笹舟に乗り込んだ。
「レイ、浴衣とても似合ってるぜ。ジンエは、和服に着替えても顔を隠すんだな。見せて〜」
「……おやおや、サンク殿」
 薄物を羽織ったジンエは緩やかにサンクが伸ばした手を回避し、船尾辺りに座り込んで、片手に煙管を持ち空いた手に灯火を掲げる。
「楓華より星が多いわね、ジンエクン」
 サンクはレイの言葉に空を見上げる。降るような満天の星が空を飾っていた。
「レイ。取れたらあげようか?」
 サンクとレイはホタルを追って楽しそうに微笑みあう。それを座り込んだまま被り物越しに見るジンエの口元には淡い笑みがある。
 やがて笹舟は沈んだ。水に落ちた3人は笑いあって岸へと泳いでいった。

 レンが補強した笹舟は思ったよりも長持ちしていた。
「わー、ワイルドファイアってすごいんだね、ミィ改めて思ったよ」
 浴衣姿のミミィはすっかりはしゃいでいる。
「空の星と、水面の星……すっげー綺麗だなぁ」
 やはり浴衣のアルギュは空にもせわしなく川面にも顔を向ける。
「星の光も蛍の光も、急いでると気が付かないもんだよな……ほら」
 袖を払ってレンは手の中にホタルを1匹捕らえる。
「お星様みたい」
「綺麗だ」
 手を開くとホタルはす〜っと音もなく飛んで行く。
「レンおにーちゃん、これ美味しいね」
「レンはホントに得意だな」
 ミミィもアルギュも5色のフルーツゼリーや星形のクッキーを嬉しそうに食べている。
「さっさと食えよー、そろそろ沈むぞー」
 3人は頭に荷物をくくりつけて川に飛び込んだ。

 誓約の剣の面々は6人で笹舟に乗り込んだ。
「ワイルドファイアは何でもスケールが大きいんだねえ」
 こんな風にその土地によって少しずつ祭のやり方や呼び名が変わるのは、なんかいい。
「すぐ沈んだりしないかな?」
「ウレタンで底を補強しましたから大丈夫だと思います」
 心配そうなヨハンにソウェルが答える。今夜のソウェルは金魚の簪で髪をまとめ、藍の濃淡で縦縞柄の浴衣だった。ミヤコは薄紅色の浴衣に茜色の兵児帯、小振りのウレタン板も持っている。
「この帯が金魚ちゃんみたいで可愛いのです」
 見た目も安全対策もばっちりだ。昼は大笹採りをしていたシキヤも、藍地に藤の花が描かれた浴衣に着替えて笹舟に乗り込んでいる。
「これ、沈むぞ」
「わかってる」
 ゼロは普段着にままだ。
「ここではユタカっていうんですか?」
 セラが選んだのは、黒地に赤い大輪の花が踊る大胆な色遣いの浴衣だった。
「地味かな?」
「どうでしょうか?」
 セラとヨハンはクスッと笑い合う。
「どうぞ」
 ソウェルが弁当を広げ、梅ジュースを配る。空も水面も星は数限りなく漆黒にちりばめられ、鮮やかに瞬いている。ホタルは死者の魂だとは誰から聞いたのだろう……ソウェルはボンヤリ思う。
「大きなホタルもいるのでしょうか?」
 ミヤコが言った。
「俺たちが星に守られているみたいだな」
 ゼロがつぶやいた。好物の梅ジュースを片手にシキヤはそっとゼロに手を伸ばす。かすかに触れた手は温かかった。


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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作成日:2009/07/15
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