命の連鎖



<オープニング>


「ちくしょう……」
 一夜にしてすっかり荒れ果てた畑を目の当たりにした男はその場に崩れ落ちる。
 昨日まで青々と茂っていた蔓は千切れて泥にまみれた無残な姿へと変わり、掘り返された痕に残るのはわずかな根のみで収穫目前であった作物は見る影もない。
「猪どもめ!」
 男の村では、近くの山に棲む猪たちによる畑への被害が深刻なものとなっていた。春の出産期に数を増やした猪たちは、山の餌をあらかた食い尽くすと付近の村々の畑を荒らし始めたためである。
「このままじゃ俺たちが生きていけないんだ」

「近くの山で大量繁殖した猪に畑を荒らされているという村から猪退治の依頼が入っています」
 冒険者の酒場に颯爽と現れたエルフの霊査士・ユリシアは、冒険者たちに依頼のことを告げると、周囲の冒険者たちが集まってきたのを確認して依頼の詳細を語り始めた。
「猪たちは夜になると山裾の村々の畑へとやってきては作物を食い荒らしていくそうです。しかも、出産を終えて子連れになった猪たちは攻撃性が強くなり、猪を追い払おうとした村人たちが傷を負わせられて、とても村の人々だけでは対応できない状況となっています」
 村人の中には大事な畑を荒らされ生活の糧である作物を一夜にして失った心労によって床に伏せる者も少なくなく、収穫も生産も減る一方という状況になっているという。
「さらに、霊査によって猪たちを狩る犬グドンたちの姿を確認しました。今は20体ほどの群れのようですが、繁殖力の強いグドンが猪という潤沢な食料を得たらどうなるか……想像するのは容易いかと思います」
「猪に続いてグドンもってことか」
 そんな冒険者の言葉に頷いたユリシアがさらに話を続ける。
「そこで皆さんには、少しでも多く猪の数を減らしていただくと共にそれらを糧にしている犬グドンたちを退治していただきたいのです」
 深々と礼をしたユリシアは最後の一言を冒険者たちに告げた。
「村の人々が生きていくためには必要なことなのです。よろしくお願いします」

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参加者
バニーな翔剣士・ミィミー(a00562)
深緑の眠り・エフ(a05027)
斬魔刀・ルネ(a06632)
暁天の武侠・タダシ(a06685)
寝惚け眼のナイフ使い・パラノイア(a07036)
万寿菊の絆・リツ(a07264)
疾風迅雷・ギア(a08577)
灰刻躯・ドギー(a09679)


<リプレイ>

「こんなもんで十分だろ」
 自分の胸ほどの深さの穴から這い上がった朝焼けの刺客・ルネ(a06632)は、頭に巻いた捻り鉢巻を解くと汗を拭った。
「この人、大丈夫なの?」
「……問題ない」
 バニーな翔剣士・ミィミー(a00562)が見下ろす穴の底にへたりこんだ奇形儡・ドギー(a09679)が気分悪そうな声を返す。
「ほっとけば直るらしいぜ」
 苦笑いを浮かべて答えたのは、その横で穴を掘っていた疾風迅雷・ギア(a08577)だった。彼が記憶しているだけでドギーは既に4回は倒れていた。
 そんな彼らがいる場所は、村の外れにある畑の一つだった。
 村人と相談した結果、猪との戦いは収穫の終わったこの畑でということになり、冒険者たちはその準備を進めていたのだった。
「こちらは完了だ」
 村へと帰っていく村人達を背に運命を嘲う・タダシ(a06685)がやってくる。
 畑にはタダシが猪の餌とするべく持参した食料や村人から提供されたクズ野菜などが撒かれていた。
「もうすぐ日が沈みますね」
 万寿菊の絆・リツ(a07264)が見つめる先で沈みゆく夕日が辺りを赤く染めていた。

「ん? 今の音ってもしかして……」
 月明かりに照らされた茂みに身を隠していた深緑の眠り・エフ(a05027)は、かすかに何かの鳴き声を聞いた気がして耳を澄ませた。
「さてさて〜、猪さんはうまく罠にかかりますかねぇ…」
 エフの隣で寝惚け眼の埋葬者・パラノイア(a07036)が眠たげに呟くと、その直後にけたたましい猪の声が辺りに響き渡った。
 ミィミーとリツによって覆っていた布を取り外されたカンテラが辺りを照らす。
 すると、畑の周囲に掘られた落とし穴の中でもがく猪やその周囲で様子をうかがっていた猪たちの姿があらわになった。
「来るぞ」
 タダシが見据える先で、興奮した様子の猪たちが仲間の落ちた穴を飛び越え畑へと侵入を始めていた。
 闇の向こうからも次々と現れた猪たちが我が物顔で畑を駆け回る。
 しかし、それを待っていたかのように響いたタダシの眠りの歌によって、猪たちは次々と勢いを失い眠りに落ちていく。
「眠れよ〜眠れ〜」
 ルネの子守唄のような眠りの歌が終わる頃には、畑の上にいた猪たちのほとんどは眠りについていた。
 そんな中、一頭の猪が村の方へと向かっていた。
「そっち行くわよ」
「任せろ」
 しかし、村への進路はエフが作り出した土塊の下僕によって塞がれており、それに気づいた猪は進路を変えるが、その先に待ち構えていたギアに正面から掴みかかられて剛鬼投げの餌食となった。
「この先は行かせないよ!」
 闇の中から新たに現れた猪の群れの前にミィミーが立ち塞がる。
 構わず突っ込んでくる猪の群れ、その先頭の一頭をミィミーのスピードラッシュによる鋭い連撃が切り裂き、それと同時に響いてきたリツの眠りの歌が残りの猪を眠りへと誘うと群れはあっという間に力を失った。
「大丈夫ですか? 無茶しないでください……」
「平気、平気。リツの歌がバッチリ効いたおかげよ」
 心配そうに駆け寄ったリツは、笑顔のミィミーに迎えられて安堵の胸をなで下ろした。
 猪と冒険者では力の差は歴然だった。
 数で勝る猪たちも冒険者たちによって次々と鎮圧されていく。
「これが最後かなぁ?」
 向かってきた猪の突撃を軽くかわしたパラノイアがその手から伸びた鋼糸が閃かせる。すると、彼女の後ろへと駆け抜けた猪が勢いを失い倒れる。
「こりゃ、始末すんのも一苦労だぜ」
 畑を見渡せる木の陰で木にもたれて様子を眺めていたドギーは一人呟いた。

 一夜明けて、冒険者たちは猪とグドンの住処となっている山へとやってきていた。
「徹夜で連戦かー、面倒ねぇ。お肌に悪いじゃない」
「もう少しの辛抱だ頑張ろうぜ」
 茂みの中に身を隠しながら眠さを堪えるミィミーとギアの二人。
 眠りの歌などによって一時的に無力化された猪たちであったが、また動きだしては村人たちの手におえるものではないため、冒険者たちも猪の処理を手伝うことになって休む暇もなかったのだった。
「ふぁぁ〜」
 眠そうにあくびを漏らすパラノイア。戦いが終わったらいつのまにかいなくなってたのに……という周囲の心の声を彼女が知る由もなかった。
 彼らが潜む茂みのその先に、3頭の猪たちがいた。
 それらは、グドンの囮とするためにギア、ルネ、タダシの3人が運んできたものだった。
 ドギーの提案により傷ついたものが選ばれたため、猪たちはその場から動くこともできずにただ鳴き声をあげているだけだ。

 その頃、別の場所に身を隠していたルネは、囮の猪へと忍び寄るグドンたちの姿を捉えていた。
(「1、2、3……6っと。ずいぶん少ねえな」)
 ルネはグドン姿を求めて辺りを見渡すが、辺りに他のグドンの姿を見つけることはできなかった。
(「こっちは任せるぜ」)
 ルネは仲間たちが隠れている辺りを一瞥すると、残りのグドンを求めて移動を開始した。

 一方、傷ついた猪を見つけて浮かれたグドンたちは、ルネに見られたことなど気づかず移動を続けていた。
 やがて、猪のそばへとやってきたグドンたちは、動くことのできない猪たちに容赦なく槍を突き立てていく。
 6本の槍に貫かれた猪たちは、これまでよりさらに大きな鳴き声をあげるとやがて動かなくなった。
 歓声をあげてはしゃぐグドンたち。しかし、その声はまもなく悲鳴へと変わることになる。

「先ずはお前らからだ」
 茂みから姿を現したタダシが放った流水撃がグドンの身体を切り裂き、はしゃいでいたグドンたちの歓声を恐怖の悲鳴へと変えた。
「これでも食らいなさいよ!」
 続いて姿を見せたミィミーもグドンたちに流水撃を放つ。
 そんな二人の横をパラノイアとギアの二人が駆けていく。
(「せめて安らかな眠りを……」)
 リツが描いた紋章から幾筋もの光線が放たれ、その身を貫かれたグドンたちがその場に崩れる。
 その時、3人の頭上に次々と矢が降り注いだ。

「予想的中か」
 離れて様子を見ていたドギーは、背を向けて弓を撃ち始めたグドンたちを発見すると、その背に向かってエンブレムシャワーを放った。
 背後から攻撃を受けて慌てふためくグドンたち、そんな只中にパラノイアとギアの二人が突っ込んでくる。
「たったこれだけかぁ。なんか物足りないかも〜…」
「さっさと片付けよう」
 ミラージュアタックによって高速化したパラノイアが鋼糸を閃かせ、ギアが手にしたデュアルアクスが振るう。それらの攻撃を受けたグドンが一体また一体と倒れていく。
「そんなモノでどうするつもり?」
 ギアの背後で錆びた剣を抜いたグドンに、エフが気高き銀狼を放つ。脇腹に銀色に輝く狼の一撃を食らったグドンが立ち上がってくることはなかった。
 武器を放り出し逃げ出す1匹のグドン。しかし、木の向こうから現れたルネがその前に立ち塞る。
「はっ、逃がしゃしねぇぜ グドンが!!」
 ルネの連撃蹴による連打を食らったグドンはよろめきながら仰向け倒れた。

 一行がグドンとの戦いを終えて戻ると、村はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
 近隣の村から猪肉と野菜などを交換するためにやってきた人々で村は活気にあふれ、あたりに肉の焼ける香ばしい匂いが漂う。
 そんな村に戻ってきた冒険者たちは……
「全員見てやるから、そこに並べっての」
 最初は村人たちに胡散臭そうに見られていたドギーであったが、食事もせずに治療をする彼はいつしか村の人気者になっていた。
「まじ食わねえって?」
「美味いのにな」
 焼いた猪肉を頬張るルネとその隣で猪汁を味わうギアは、村人に囲まれるドギーの様子を不思議そうに眺めていた。
「まだまだありますからねぇ〜」
 鍋を片手にしたエフは空になったルネとギアの皿に猪肉を盛っていく。
「もう一杯どうだ?」
「はい、頂きます」
 タダシが持参した酒をすすめると、それにリツが笑顔で杯を差し出す。そんなやり取りが続く下では、リツの膝を枕にしたミィミーが幸せそうに眠っていた。
 その頃、村人たちの料理手伝っているはずのパラノイアも鍋の前で眠っていたとか……。


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参加者:8人
作成日:2004/07/16
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