星空より来たる:メテオブレイカー



<オープニング>


●星空より来たる
 その知らせは唐突にやってきた。
「みんな、大変だよ!」
 インフィニティマインドの神命維持機能に接続し、地獄やドラゴンロードについて霊査を行っていた、ストライダーの霊査士・ルラル(a90014)が、インフィニティマインドの放送装置を利用して、冒険者達に呼びかけたのだ。
「ドラゴンロード・プラネットブレイカーの攻撃が、もうすぐランドアース大陸に降ってくるの!」
 と。

 ルラルの説明によると、ドラゴンロード・プラネットブレイカーは『空の彼方の向こう側』から膨大な魔力を使ってドラゴン化させた多数の隕石を、ランドアース大陸に向けて発射し、全てを滅ぼしてしまう計画を発動させたのだという。
 このドラゴン化した隕石の落下によるダメージは『大神ザウスが使用した空中要塞レアの大陸破壊砲』にも匹敵し、数個落下するだけで大陸の半分が消失する程の威力らしい。

「このプラネットブレイカーの攻撃を阻止できるのは、みんなしかいないの! 迎撃ポイントまでは、ドリル戦艦で送り迎えできるから、隕石の破壊、絶対成功させてね!」
 ルラルはそう言うと、冒険者達に祈るように頭を下げたのだった。

 幸い、隕石はドラゴン化している為、周囲に近づけば『擬似ドラゴン界』を形成して、ドラゴンウォリアー化して戦う事が可能になっている。
 だが、隕石は護衛のドラゴンがいたり、特殊な力を持っていたりする為、任務の達成には困難が伴うに違いなかった。
 
●メテオブレイカー
「さて、君達に担当してもらう隕石だが……」
 集まった10名の冒険者を前に、緑柱石の霊査士・モーディ(a90370)が話を切り出した。
「プラネットブレイカーの魔力でドラゴン化しているとはいえ、それ自体が攻撃してきたり、回避行動をとったりする事はない。普通の隕石だ」
 冒険者達はインフィニティマインドの中で聞いたルラルの説明を思い出す。隕石が特殊な力を持っていないとなれば……、
「そう、隕石の誘導と防衛を行うドラゴンが1体ついてくる。君達の仕事は、そのドラゴンを倒し、隕石を破壊して、ランドアースを守ることだ」
 1人の冒険者が手を挙げた。
「参考までに聞くが、ドラゴンはどの辺りで隕石から離れるか分かるか?」
 ドラゴンが自身の安全の為に離脱するとして、その後でも迎撃が間に合うのならば、ドラゴンとの戦闘と同時にこなすよりは確実に隕石を破壊出来る、おそらくそういった意図の質問だったのだろう。しかし、霊査士は首を横に振る。
「離脱は、しない。ドラゴンは最後の最後までより多くの人間が集まる地点を目指して隕石を誘導し、共に落ちる。それが今回の奴らの仕事だ」
 戦慄――いかなドラゴンとて、それがもたらす結果は『死』以外には無い。
「最初から死ぬつもりで来るのか……」
 呻くような声に、霊査士は無言で頷いた。
 
「戦闘におけるドラゴンの恐ろしさは、どういう所にあると思う?」
 霊視により得られた情報を全て伝え終えた後、モーディは冒険者達にそう問いかけた。
 単純な戦闘能力の高さ、アビリティによる状態異常が効かないなど、冒険者達は次々にドラゴンの特性を口にする。そして1人が、それは知性だと答えた。
 刻々と変わる戦闘状況を把握し、常に最善手を打とうとする姿勢。此方の弱い部分を発見すれば、迷わずそこをついてくるだろう。
「そうだな……。だがそれでも、私達は勝たなければならない」
 霊査士の言葉に、冒険者が力強く頷く。
「絶対に負けられない」
 当然だと、鼻を鳴らす。
「私からの話は以上だ。各自出発までの時間を有効に使い、万全の態勢を整えてくれ」


マスターからのコメントを見る

参加者
蒼氷の忍匠・パーク(a04979)
願いの言葉・ラグ(a09557)
詩歌いは残月の下謳う・ユリアス(a23855)
朱の蛇・アトリ(a29374)
蒼麗癒姫・トリスタン(a43008)
ラトルスネーク・ングホール(a61172)
紅風・リヴィール(a64600)
銀翅灯・リゼッテ(a65202)
闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)
天穿つ黒の斬撃・アトラータ(a77405)


<リプレイ>

●Flash
(「星落としとはまた、無茶をするドラゴンロードですわね……」)
 ドリル艦隊の一角。蒼麗癒姫・トリスタン(a43008)は、肩に掛かるストールに視線を落とした。細くしなやかな指を這わせると、その表面はまるで夜空に瞬く星の如く煌めき始める。
(「美しい星は、このストールのように愛でてこそですのに……」)
 微笑を浮かべながら、トリスタンは星空を見上げた。
 艦に搭乗している冒険者の多くが、彼女と同じようにソラを見上げている。
 そして、彼らは気付いた。目の前に広がる星の海に生まれた僅かな異変。
「来た!!」
 響き渡る声――敵発見の報が艦内に轟く。
「どこだ!?」
 色めき立つ冒険者達――競って窓に詰めかける。
「あそこ!!」
 蒼氷の忍匠・パーク(a04979)が指差した先――飛来する数十の隕石群。
 ドラゴンロード・プラネットブレイカーが放った最凶最悪の特攻部隊。その接近を確認するや、闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)は仲間に鎧聖降臨を掛け始める。
「あの調子だと、ここまで来るのもすぐだな」
「ええ、あまり余裕はありません」
 願いの言葉・ラグ(a09557)が手を振ると、冒険者達の頭上に次々と守護天使が舞い降りる。
「命を捨てての特攻……、ほんと無茶するよね」
 煌風・リヴィール(a64600)の呟き――接近する隕石群から目を離さずに。
「でも、守るためなら、こっちだって命張るよ」
 固く握り締めたその手を、銀翅灯・リゼッテ(a65202)の柔らかな手がそっと覆う。
「うん、全身全霊をかけて守るよ。皆様と過ごしてきたあの場所も、此処にいる仲間も……」
 眼下に広がる大地。上空から見るそれは、とても小さく、儚いものに感じられた。だがそこには、掛け替えのない宝物がたくさん、たくさん詰まっている。
 絶対に守る。ここに来るまでも、ここに来てからも、何度も口にした言葉。
「冒険者だもんね」
 リヴィールの言葉に、仲間達は力強く頷いた。
「それじゃ、行くか」
 迫る隕石群を睨め付け、ラトルスネーク・ングホール(a61172)が、ごきりと指を鳴らす。
 瞬き。疑似ドラゴン界が広がっていく。
 壁も、床も、天井も、最早空間に映る景色に過ぎなかった。

●Wish
 今日、私は死ぬ。
 この隕石と共に、幾千、幾万の虫共の死をもたらして散るのだ。
 ドラゴンロードの命である以上、それに異を唱えるつもりはない。
 大体、唱えた所で殺されるだけであり、結局死ぬ事に変わりはないのだから。
 ならば、せめて一つでも多くの命を道連れにして盛大に散ってやろう。
 ああ、見えてきた。もうすぐだ。もうすぐ……。
 心残りがあるとすれば、虫共の死に往く様をこの目で見る事が出来ない事か。
 恐怖に歪んだ顔、断末魔の叫び――あれは良いものだ。
 しかし、まだ望みはある。
 このような事態を『彼ら』が黙って見過ごす筈がない。そうだろう?

 やはり、『彼ら』は現れた。現れてくれた。
 私が見る事の出来ない幾千、幾万の死。それに代わるものを見せてくれる者達。
 彼らの苦しみ藻掻く姿が、私の魂を救ってくれるだろう。
 あちらも気付いたようだ。私の体はあっという間にある種の結界に捕らえられる。
 彼らが向かってくるのが見える。ありがとう、君達には感謝している。
 私の名は竜星軍・ヴェルファ。
 さぁ、共に死のう――。

●Rush
 疑似ドラゴン界の中を、10名のドラゴンウォリアーが飛翔する。
 追随する天使、鎧聖降臨で強化された鎧――それぞれドラゴンウォリアーの影響で効果増大中。
 目指すは体長200メートル超のドラゴンと、更に巨大な隕石1つ。まっすぐに向かってくるそれらを、極限まで研ぎ澄まされた五感が正確に捕捉する。
「皆さん、気をつけて下さい。もうすぐ敵の射程に入ります」
 詩歌いは残月の下謳う・ユリアス(a23855)が仲間に警戒を促す。霊査士から得た情報によれば、敵はこちらの射程外でも攻撃が可能だと云う。先手を打たれるのは覚悟の上。
「攻撃、来ます!」

『私の名は竜星軍・ヴェルファ。さぁ、共に死のう――』

 声が、聞こえた、瞬間、光が、吹雪、視界、埋め尽――……。
 一瞬で全員の守護天使が消し飛ばされる。防御どころか反応すら出来ない。その一撃は、ここに集まったドラゴンウォリアー達の反応速度を明らかに超えていた。
 威力も半端ではない。ラグの護りの天使達で軽減されて尚、グリモアの加護で半減されて尚、ドラゴンウォリアー達の体を襲う凄まじい衝撃と苦痛。
 どうにか体勢を立て直した朱の蛇・アトリ(a29374)。
「『共に』って、おいおい……、なんつー派手な心中する気だアンタ! んなもん誰一人付き合わせるわけにゃいかねーよ。悪ぃが、塵になってもらいやしょお!」
 パークも続く。
「大体こっちはそんな捨て鉢作戦に付き合ってられるほど暇じゃないんだ! とっとと熨斗付けて送り返してやる!」
 傷だらけになりながら、アトリは、パークは、空を翔る。
「こんなので、落とされてたまるか!」
 ふらつく体に気合いの一喝。黒天穿つ黒の斬撃・アトラータ(a77405)。
 再び前進を開始する彼らを、ユリアスの高らかな凱歌が癒し、ラグの護りの天使達が支援する。
 敵の力は強大だ。仮に『回復』と『天使』無しで今の攻撃を続けて貰ったなら、おそらく半数は落ちる。当たり所が悪ければ一撃で沈む者も居るだろう。
「戦闘モードに移行。すべての力を解放する……!!」
 瞳の赤が鮮やかさを増すと共に、アトラータの心の奥底から力が沸き上がる。
 初撃を耐えきったドラゴンウォリアー達は、敵との距離を一気に詰めにかかった。
 すかさず、第二波。この時点で最もヴェルファに接近していたのは、パーク、ングホール、リヴィール、アトラータの4人。
 ドラゴンの巨大な口から吐き出された超高密度のエネルギーが、彼らの頭上で爆ぜた。
「うおっ!!」
 かろうじて防御が間に合ったのは、ングホールただ一人。雨の様に降り注ぐエネルギー片に、3人の体は為す術無く抉られていく。
 体中に走る激痛。歯を食いしばって耐える。必死で意識を繋ぎ止める。その様子を、
『あぁ……、良いぞ、そうだ、それだ……』
 ヴェルファは愉しそうに見ていた。
「黙りなさい!!」
 『雨』が止むと同時に、トリスタンの体から広がる癒しの波動。淡い光がリヴィール達を覆い始めた時、彼女は大きく目を見開いた。
 そこに居たのは攻撃を受けた4人のうち3人のみ。アトラータの姿が、無かった。

●Smash
「まだだ! もう一度!」
 止まりかけた仲間の動きを、パークの声が引き戻す。集まる視線。言葉の意味を悟り、リゼッテは息を呑んだ。彼の体には、未だ無数の傷が残っている。
「一度のヒーリングウェーブじゃ全然追いつかない? なんて攻撃力……」
 リゼッテに集まる治癒の力が波となり、広げた腕から周囲に広がっていく。
 全ての傷が癒えたパークは、ドラゴンに狙いをつけ高速飛翔を開始する。
 全身の力を振り絞った螺旋特攻。しかし、ドラゴンは身を捩り、紙一重でこれを回避。
「こいつ、本当に強い……」
 急停止したパークの頬を、一筋の汗が伝う。
「ああ、つっても、やるこたぁ一つだけどな!」
 アトリの体から噴出する黒炎が、邪竜の手を形作る。
 ヴェルファ――右へ旋回。それを追って伸びる『手』。コンマ数秒の差で、『手』が届いた。
『ぐぅっ……』
 鱗を突き破り、深々と肉を抉る鋭い痛みにドラゴンが唸りを上げる。
「っしゃあ! 早いとこ決めちまおうぜ!」
 今この瞬間も、疑似ドラゴン界はランドアースに向かって『落ちている』。最終目的はあくまで隕石の破壊。いつまでもドラゴン相手に手間取ってはいられない。
「爆ぜろ……、爆砕牙!」
 ルキシュが剣を振り下ろす。耳を劈く音。盛大に上がる火花。鱗が何枚か弾け飛ぶ。
 距離を取ろうと動くヴェルファに、リヴィールはぴったりとくっついて離れない。
「逃げるの? そうはいかないよ!」
 挑発、と同時に放たれる蹴り。
 200mを越えるドラゴンからすれば、ドラゴンウォリアー達は皆豆粒ほどの大きさだ。
 しかし、そこから繰り出される攻撃の威力は、見た目ほど大人しいものではない。
 急降下――攻撃を躱し、そのまま前衛の下をくぐり抜ける。
 その動きに対し、後衛陣の対応は非常に滑らかだった。敵の急降下に合わせて急上昇――両者の位置関係を維持。ヴェルファが攻撃態勢に入った時には、先程までとさほど変わらない陣形が縦方向に形成されていた。
『ならば誰でも良い……、砕け散れ!』
 膨大なエネルギーが一条の矢となり、撃ち出された。
 矢の進む先――ングホール。避ける間もなく着弾。体中の骨がバラバラになりそうな衝撃。大きく弾き飛ばされる。矢はプロテクトコアの防御障壁に当たって軌道を反らし、虚空に消えた。
『何……?』
 矢がングホールを『弾き飛ばした』だけの上、『軌道が反れた』ことに、ヴェルファは驚きを見せる。あの矢は本来、『全てを貫通、粉砕』しながら『まっすぐに飛び去る』筈の能力であった。
 ふらつきながらも顔を起こし、ングホールは笑ってみせる。
「おい、何を呆けてやがる。今のが何だ? まさかあんなナマクラが無敵の能力だなんて思ってるんじゃないだろうな?」
 巨大の瞳に、僅かに混じる憤怒の色。
 ドラゴンウォリアー達の攻撃を凌ぎながら、ヴェルファは再度『矢』を放った。しかし、間に割り込んでその矢を受けたユリアスもまた、プロテクトコアに守られている。
「っと、残念ながら……私ってば割と頑丈……ですっ」
 ユリアスは自ら凱歌を歌い上げ、間髪入れず、トリスタンのヒーリングウェーブが続く。
『対策済みというわけか!』
「ビンゴ!!」
 パークのスパイラルジェイドが今度こそドラゴンを捉えた。ピンと伸ばしたつま先が、ドリルの様に大穴を穿っていく。
 苦悶の表情を浮かべながらも、ヴェルファは動き続けた。ングホールの指天殺をするりと躱し、前に出たラグの攻撃をも躱して、反撃。彼らに傾きかけた流れを一気に押し戻す。
 恐るべきは、その高い命中率、回避率が、何か特殊な能力によって生じる結果ではないという事実だ。単純な身体能力の差から生み出される圧倒的なアドバンテージが、ドラゴンウォリアー達が狙っていた短期決戦を許さなかった。

●Finish
 疑似ドラゴン界は落下を続け、残された時間は着実に減っていく。
 プロテクトコアに気付いたヴェルファは攻撃の主軸を乱星雨と死超星に移し、繰り返される攻防の中で、狙うべき相手を確実に絞り込み始める。結果、最初に狙われたのはトリスタンだった。
「くっ……!!」
 鋭い痛みが体を走り、透き通るような肌に禍々しい五芒星が穿たれる。最悪なのは、そのタイミングだ。誰の祈りも届かない。自身の幸運を信じるしかない、一瞬の間隙。
「いやらしい攻撃ですこと……」
 眉を顰めるトリスタンの体が真っ赤に染まる。五芒星から溢れる大量の血液と、体内で暴れ回る強毒。トリスタンの視界はみるみるうちに暗転し、そこで彼女の記憶は途切れた。
 喜々とした様子で飛び回るヴェルファに、リヴィールは疾風の如く追いすがる。
「はあああっ!!」
 足の甲がめり込む感覚。直後、急に抵抗を失ったかのように蹴り足が肉を割って進む。
 ヴェルファとて全ての攻撃を避けられるわけではない。ドラゴンウォリアー達の地道な攻撃は、今やその巨体に数多くの傷を刻み込むに至っている。加えて、いかに膨大であろうとも、その生命力は無尽蔵ではあり得ない。
 アトリのヴォイドスクラッチが、ユリアスのブラックフレイムが、ルキシュのパワーブレードが、ドラゴンの命を削る。隕石への道を造っていく。
 ヒーリングウェーブを使い果たしたリゼッテが、まだ出来る事はあるのだと守護天使を召喚。しかし、降り注ぐ乱星雨が加護を次々と突き破る。リヴィールとパークが落とされ、ランドアースへの道が少し開く。
 狂ったように笑うヴェルファの胸を、アトリの虚無の手が切り裂いた。ラグの癒しを受けたングホールは、ぱっくりと開いた傷口に力の限り蛮刀をねじ込んでいく。
 ヴェルファの口から出る声は、最早哄笑か悲鳴か判別がつかない。至近距離からの死超星。回避しようとするアトリを、本日最高の鋭さを伴った一撃が葬り去った。
「もう半分か。普段ならとっくにケツをまくってる頃だな」
 血だらけのングホール。肩で息をしながら、不敵に微笑む。
 確かに、と頷いたのはルキシュ。
「だが、今回だけはそうもいかん。どのような状況になろうとも、隕石の落下は必ず阻止する!」
 誰も、撤退の二文字を口にする者は居ない。
『だが、勝つのは私だ!! もう時間が無い。早く見せてくれ。君達の無念を! 絶望を!!』
 ヴェルファの叫び。ングホールは負けずに声を張り上げる。
「俺は覚悟だなんて大層なものは持ち合わせちゃいねぇし、無念や絶望なんてくだらねぇものも持っちゃいねぇよ」
 握り締めた手を、どんと胸に叩き付けた。
「ここにあるのはもっと単純なもんよ。美味い酒を飲むために戦い、生きて帰る。それだけだ!!」
『もういい、黙れ!!!』
 ヴェルファは、自らの死が近づいているのを感じていた。
 自分は死ぬ。それはいい。だが、それはランドアースへの特攻を成功させる代償だった筈だ。このままでは負ける。負けて死んでしまう。そんなバカな。何故だ。自分の方が強かった筈だ。いつのまにここまで追い込まれたのだ。どうして。奴らと何が違うのだ。何が――、
『グアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
 巨竜の咆哮が轟く。辺り一面が猛吹雪と化し、ラグを、ユリアスを、ングホールを、リゼッテを、ルキシュを、そして自分をも呑み込んでいく。
「私達は最後まで信じて戦っていました。自分を。仲間を。勝利を……。あなたは最初から諦めていたでしょう? あなたの方が強かったかもしれない。でも、あなたはもう勝てません」
 ラグの22回目のヒーリングウェーブが、ヴェルファを絶望の淵に追いやった。

「早くしないと、もう時間が……!!」
 隕石の横っ面を目がけて、リゼッテが衝撃波を放つ。罅が入り、徐々に徐々に、表面が剥がれていく。ユリアスのブラックフレイムが破壊を加速し、ングホールも力の限り大鉈を振るう。
「砕けろ! 砕けろっ!!」
 もうあと一息、
「おおおおおおおおおおおおお!!!」
 あと一撃――、
「唸れ……、神狼牙!!!!」
 最後のデストロイブレード、ルキシュの渾身の一撃が隕石に叩き付けられ、大爆発を起こす。
「やったか!?」
 爆風が止む。
「やった!?」
 視界が開ける。
「ええ、やりました!」
 隕石は粉々に砕かれ、どの欠片も最早脅威たり得ない。
 眼下には、美しいランドアース大陸が広がっていた。


マスター:東川岳人 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2009/07/28
得票数:冒険活劇1  戦闘15 
冒険結果:成功!
重傷者:蒼氷の忍匠・パーク(a04979)  朱の蛇・アトリ(a29374)  蒼麗癒姫・トリスタン(a43008)  紅風・リヴィール(a64600)  天穿つ黒の斬撃・アトラータ(a77405) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。