星空より来たる:明けの冥星



<オープニング>


●星空より来たる
 その知らせは唐突にやってきた。
「みんな、大変だよ!」
 インフィニティマインドの神命維持機能に接続し、地獄やドラゴンロードについて霊査を行っていた、ストライダーの霊査士・ルラル(a90014)が、インフィニティマインドの放送装置を利用して、冒険者達に呼びかけたのだ。
「ドラゴンロード・プラネットブレイカーの攻撃が、もうすぐランドアース大陸に降ってくるの!」
 と。

 ルラルの説明によると、ドラゴンロード・プラネットブレイカーは『空の彼方の向こう側』から膨大な魔力を使ってドラゴン化させた多数の隕石を、ランドアース大陸に向けて発射し、全てを滅ぼしてしまう計画を発動させたのだという。
 このドラゴン化した隕石の落下によるダメージは『大神ザウスが使用した空中要塞レアの大陸破壊砲』にも匹敵し、数個落下するだけで大陸の半分が消失する程の威力らしい。

「このプラネットブレイカーの攻撃を阻止できるのは、みんなしかいないの! 迎撃ポイントまでは、ドリル戦艦で送り迎えできるから、隕石の破壊、絶対成功させてね!」
 ルラルはそう言うと、冒険者達に祈るように頭を下げたのだった。

 幸い、隕石はドラゴン化している為、周囲に近づけば『擬似ドラゴン界』を形成して、ドラゴンウォリアー化して戦う事が可能になっている。
 だが、隕石は護衛のドラゴンがいたり、特殊な力を持っていたりする為、任務の達成には困難が伴うに違いなかった。

●明けの冥星
「あなた達が破壊するのは大きな『遺跡』よ」
 古城の霊査士・トート(a90294)の説明はその言葉から始まった。
 いつ創生し、滅亡したのかさえ分からない文明の遺物。如何な経緯を辿ってか、それとも最初から宇宙を彷徨っていたのか。ともかくその遺跡そのものがドラゴン化を受け隕石となって落ちてくるのだという。
「……それを、壊せばいいのか」
 壁際から声がとどいた。深淵樹海・ザキ(a90254)が伏せ気味だった顔を上げ、問うている。
 かぶりを振って答える。
「外からの攻撃だけでは無理よ。もっと良い方法が……そうね、そいつを仮に『宵の女王』とでもしましょうか」
 霊査士の声がいくぶん厳しい色を帯び始めた。
 ほぼ球形に近い遺跡型隕石は、ちょうど中心の核にあたる部分に大きな空洞を抱えているという。そこに遺跡の『主』がいる。そいつさえ倒せば、遺跡は勝手に崩壊するはずだ、と。
 『宵の女王』と呼んだその存在は、まるで羽蟻のような姿だと霊査士は言った。
 鋭利な刃物のような外骨格を纏うのは十本の足。魔力を照射せんと輝く七色の翅が背後に広がる。生半可な攻撃は跳ね返してしまう装甲が巨大な腹部を覆い、そこから前部へ繋がるのは黒布を着た寡婦のような歪な姿の上半身――。情報はそこまでしかない。
 確かに強い、でも、戦って勝てない相手ではないわ、と続け、
「そして、女王の部屋に辿り着くには障害がある」
 付け加えた。
 遺跡の表面にはたくさんの通路が抉れた裂け目のように露出している。どこからでも進入できるが、狭い通路が縦横無尽、上にも下にも枝分かれして、もはや方向さえわからなくなるほど惑わされてしまう。
「言ってみれば立体迷路よ。もっとも、ドラゴンウォリアーなら壁の破壊くらいなら可能……まあ、普通に通路を進んだほうが早く中心に到達できると思うけれど。他にあなた達を邪魔するものはないはずよ。あとはそう、遺跡の崩壊に巻き込まれないよう急いで脱出すること、と、こんなところね」
 ちゃり、と鎖が鳴った。説明を終えた霊査士が佇まいを正した音だと冒険者は気付いた。
「必ず破壊して戻ってくると信じてるわ。だって、あなた達は希望のグリモアの冒険者だもの」
 そう最後に言って、トートは笑顔を見せた。遥か空の彼方へ出撃する者達の足音が、やけに長く耳に残った。


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参加者
荷花紅・リウル(a00657)
アイギスの黒騎士・リネン(a01958)
猪突妄進・スズ(a02822)
旋律調和・クール(a09477)
医術士・サハラ(a22503)
暁闇・カナエ(a36257)
小さな海・ユユ(a39253)
陽だまりの花・グリュエル(a63551)
永久の蒼・フルス(a79163)

NPC:深淵樹海・ザキ(a90254)



<リプレイ>

●気海を穿つ星
 星が燃えていた。
 擬似ドラゴン界に捕らわれてなお、風を、大気を灼いて落下を続ける轟音がドラゴンウォリアーの鼓膜を打った。
「流れ星って願い事をするためにあるんだと思うのよ。……希望を踏み躙るものなんかじゃない筈だけど?」
 ばさ、と髪が煽られた。遥か目下の大海よりもなお鮮明に輝く、旋律調和・クール(a09477)の青髪である。
「このデカブツも粉々にしちゃえば綺麗かもね」
 口にしたのは、あるいは賞賛か。
 空は不気味なほど寒々として、銀氷色の星々が冷たく瞬いていた。
「大陸ごと消そうなんざ、随分とナメた真似してくれるじゃねぇか。……気にいらねぇな。ぶっ潰す」
 静かに歯を剥く猪突妄進・スズ(a02822)。
 続く医術士・サハラ(a22503)も、
「流れ星に祈ると願いが叶うっていうねー。んー……この場合は跡形もなく消えてねって願えばいいのかなー?」
 言葉に殺気を滲ませる。
 遠くからはただの凹凸にしか見えなかった隕石表面は近づいてみれば、そこらじゅうに露出した遺跡の『入り口』であった。本来はもっと広大な迷宮だったであろうものが、長い年月をかけて外側から削られて出来たものだと推測できる。
 そのうちのひとつにドラゴンウォリアー達は吸い込まれていく。
 着実に迫り来る大地を目に焼き付けて――。

●大質量迷宮
 10人が風を巻いて狭い通路を飛行、通過する。
 通路内に灯りらしき灯りは見当たらず、サハラのホーリーライトが一行の唯一の光源として機能した。
 後ろからペンキ缶を持って追随する小さな海・ユユ(a39253)はやや遅れ気味である。予想以上に分岐が多いのだ。左右、上下、時に六方向にもなる分岐路に、だが確実に目印を残していた。
 垂直に折れた角を下り、暗闇の向こうを見た荷花紅・リウル(a00657)が声を上げる。
「ダメ、ここも行き止まり……」
「このあたりじゃここが最深層だ。戻るより壁ぶち破ったほうが早い」
「まかせろ」
 アイギスの黒騎士・リネン(a01958)の斧が高々と振り上げられ、足元の壁に斬り付けられた。風化を受けてなお厳然と立ちはだかる分厚い隔壁に、その一振りで亀裂が入ったのは、さすがドラゴンウォリアーの膂力と言ったところか。助走をつけるように飛翔したスズの爆砕拳が叩き込まれ、岩壁が粉砕される。ぽっかりと口をあけた暗闇の穴に瓦礫が落下していくのを確認し、冒険者達はさらに深く潜っていく。
「これ、足跡……?」
 道すがら、月下の華・グリュエル(a63551)が壁面を観察する。内壁には刃物で擦ってできたような引っかき傷が無数に存在していた。足跡らしきものはこれ以外に見当たらないが……。
 もうペンキの残量も心許なくなろうかという頃、そのとっかかりは顔を覗かせた。
 それは暁闇・カナエ(a36257)の一声であった。
「こっちです!」
 カナエが導いた角の先は明らかに様子が違っていた。素っ気無いただの岩だった壁は彫り込まれた装飾の名残を見せるものに変わり、通路の幅も広がっている。
 再び立ちふさがった袋小路を難なく破り、飛び出した先の光景を見て、
「これは……?」
 最先・フルス(a79163)の声には僅かな驚きと、ついに、という思いも含まれた。
 今までとは比較にならぬ広い通路に降り立ち、幾ほども行かない先に目を向ければそこには、不意に途切れた通路。星空とは明らかに異なる闇が通路の先に鎮座しているのが深淵樹海・ザキ(a90254)の目にも見て取れた。それはこの先の暗闇が霊視にあった大空洞であることを意味している。
 今、冒険者達は『入り口』を潜り抜けた。

●退廃の墓所
 断続的に響く隕石落下の震動を除いては、その空間はシンと静まり返っていた。温冷混在の湿った空気を肌に感じる。
「一体どこに……」
 その瞬間、空間が僅かに鳴動し、急に視界に光が満ちた。すぐに目が慣れて周囲の構造が把握される。
 大空洞は所々破損が見られるものの、美しいまでの完全な球形を成していた。一瞬息を呑むような気配が仲間に伝わる。
 そこにふわ、と声が降った。
『おお、お客人よ。いったい、幾星霜ぶりであろう、この石室に命あるものが訪れたのは』
 威厳に満ちた声音に思わず身を引く。冒険者達はその内容を全く理解できない。人間には発音不可能な未知の言語と思われた。
 空洞全体に光る文字のようなものが刻まれ、空間をあまねく照らしている。空洞にはいくつもの岩石と思われる球体が浮かび、それらにも隙間なく文字が刻まれていた。
 球体のひとつから声は聞こえた。
 そこに在ったのは、しどけなく横たわる肢体であった。ほのかに光る球面の文字を指でなぞり思索に耽るような姿は古の残滓に恋焦がれる詩人を思わせ、光の幻想と相まって優美とさえ言えた。宵の女王。退廃美の化身。そのような言葉が似合っただろう。
 ――下半身が巨大な羽蟻の姿でさえなければ。
 黒布を纏う上半身が艶かしく身体を起こし、こちらに向けてほそい腕を優雅に振る。
 スズが警戒するが気にも留めない。
 喉を震わせると耳に心地良い、不思議な声音を紡ぎだした。
『よい、ゆるりとなされ。我らは同胞じゃ。永遠の眠りを我らと共にするのだから』
「クール、わかる?」
「……わからないわ」
 ザキに尋ねられ、首を振った。
 言語体系が根本から異なるために、紋章術士であるクールにさえその意は汲むことができない。
「ユユ、鎧聖降臨は?」
「終わるよ。もうすぐ」
 とにかく、すぐに襲われないのはこちらにとって好都合だ。両者の距離は充分にあり、次々かけられていく鎧聖降臨に邪魔が入ることはない。
 言葉の意味は伝わらずとも、満身から迸る敵意は感じ取れたと見え、宵の女王は眉を顰めた。
 と、その体を一条の矢が直撃した。貫いたと見えたそれは不可思議な装甲に弾かれ、遥か下の足場へ落ちる前に消滅する。リウルの矢であった。
 矢に一瞥をくれ、ぎんとこちらを睨み付ける女王。双眸は怒りに満ちていた。先程までの優雅さはどこへ消えたか、乱杭歯を剥き出して発する声音も怒鳴るような調子に変わった。
『下賎な虫けらども。我が神聖なる墓所で何を致すか。妾が優しく死の安らぎを与えてやろうと申しておるに、おのれ、その身掻っ捌いてくれようか』
 ぐやぐやと何事か喋り終えたかと思うや、不意に巨体が跳躍した。
 次の瞬間に訪れたのは、隕石が身震いしたかと思われるような激震であった。
「クソッ……出口が!」
 間一髪、全員がその場を脱したものの、女王の突進が直撃した出入り口は無残な姿に変わり果てる。
「あんなのまともに食らったら……!」
 戦慄がユユの背を駆け抜けた。
 牙狩人の斉射を弾いて一切速度を落とすことなく、再び女王の巨体が突進した。
 短い悲鳴と共に持っていかれたリウルを追ってサハラのヒーリングウェーブが飛ぶ。
「させないよー」
 この最中にあっても、サハラののんびりした口調は変わらない。
 仕留め損ねたと見て、宵の女王は背後の翅を広げた。飛ぶためではない。虹色の光が脈系から皮膜に伝わり、やがて眩い光を放つ!
 衝撃がドラゴンウォリアーを襲い、全身の血管を捻り千切られているかのような激痛が駆け巡った。
 流血で満身を染めたカナエの頭上に、さらに十本の足が迫る。
 瞬間、カナエは覚悟を決めた。帚星と名付けられた一振りの黒刃にアビリティの力が漲る。空を下る冥星にはっきりと否を突き付けるために。空にあるべきは明星、そうでしょう……?
 鼓膜をつんざくような雄叫びとも悲鳴ともつかぬ声音が上がった。
 ストライダーの武人の身体を巻き込んで壁に着地した巨体は、派手に崩れ落ちる石肌の粉塵を濛々と巻き上げた。
「カナエさん……!!」
 思わずフルスが名を呼び――その姿がどこにもないことに気づく。戦闘不能に陥ったドラゴンウォリアーは擬似ドラゴン界から放逐されてしまうのだ。
 そして宵の女王を見てみれば、おお、装甲に覆われた羽蟻の腹部に大きな亀裂が走り、なおも火花を噴き上げている。その無機質な瞳には憎悪の炎がめろめろと燃えて、視線の矛先が残った者たちに向かう。刃物のような足を揃えて、再び跳躍した先には――「サハラ!!」
 反応しきれず防御の体勢を取ろうとしたのを、クールが横から掻っ攫う。女王の凶器は轟音を立てて宙の球体に着地した。代わりに切り裂かれたクールの身体を柔らかな光が包む。
「誰も空になんて還さない。引き摺ってでも地上へ、全員で帰るよ」
 フルスの癒しの力が、傷ついたドラゴンウォリアーから傷を拭い去る。フルス、サハラ両名を合わせた回復力は宵の女王が与える痛みを上回っているのだ。
「皆が守ってる、遺してる。帰る場所なランドアース……壊させるわけにはいかないのデス!」
 リウルが叫ぶ。
「星は天に在ればこそ煌めくのであって、地に落ちれば唯の災厄。この空で、綺麗に散って貰おうか」
 フルスも続く。
 集いし冒険者の目的は一つ、ランドアースを守ること――!
 宵の女王の背後で再び七色の翅が広がった。脈管を走る輝きが加速し始めた刹那、苦鳴が上がった。潰れて弾けたような傷口を開けて後じさる女王に、スズの熱っぽい声が絡みついた。
「おまえの相手はこっちだろ?」
 不適な笑みが女王に向けられる。
「背負ってる命がある。だから、俺達がここで倒れる訳にはいかねぇんだよ。……悪ぃが、とっとと終わらせてもらうぜ」
 対斧から放たれる指天殺を連続で見舞おうとして、しかしそれは装甲に跳ね返されスズには手痛い傷となる。跳躍に追いつかぬ。
 逃げに転じた女王に追い縋るのはユユ、ザキのホーミングアローであった。クールのエンブレムノヴァもそれに追随する。
 武器飾りに触れたグリュエルの手が、そのまま弓を引き絞る。
「大事な人たちがいる世界を、壊させはしないっ!」
 グリュエルのそれは確かな意思から来る微笑み。放たれた鮫牙の矢が唸りを上げて宵の女王の肩に突き立った。手を回して抜こうとし、しかし咆哮のような叫びを上げて、銀色の血を噴出した。黒布が見る影もなく染まってゆく。
 永遠に朽ち果てることはないかのような退廃の主に忍び寄る終焉。白銀で全身を濡らしてよろめきつつも、双眸が死相を振り払って欄と輝く。かっと開かれた口腔に乱杭歯がぬらぬらと朱銀に光った。
 一瞬喉が震えたのちに迸ったのは――歌声。
 女王に吐きかけられたどの声音よりも優しい音色が彼らの鼓膜を揺るがした。紅玉のような涙が宵の女王の頬を染めた。
 誰もが恍惚とその不可思議な旋律に聞き入った。物悲しく、暖かく、歓喜さえ含んだ調べ。ドラゴンウォリアー達の構えは次々解かれ、得物を握る手が力なく垂れた。陶然とした表情で落涙し始めた者さえ――。

 歌が唐突に途切れた。
 宵の女王が無表情に自分の胸元を見つめている。白い胸から斧が生えていた。

「私には効かん」
 勝利宣言は短いものだった。
 タイラントピラーをその身に宿したリネンに、魅了の歌はほとんど効果を示さない。
 宵の女王がふわ、と顔を上げた。逆しまに突きこんだ斧に力が篭っていく。薄い胸板を突き抜けて背中から刃が覗く。
『妾と、眠ってはくれぬのか?』
 たとえどんなに言葉を尽くしても、両者の間にその意思が通じることはない。
 ついに彼らは言葉を交えることのないまま――代わりに交錯したのは血潮であった。
 胸から頭頂部へ鈍い斬線が走り抜けた。銀と朱の交わる美しい顔が真っ二つに割れた。
『…………共に……』
 凄絶な微笑みをうかべて、すぐに事切れた。

●彷徨う時の終わり
 力をなくした肢体が地に伏せた瞬間、空洞を照らす文字達が激しく明滅し始めた。同時にひときわ大きな地響きが空間を揺さぶったと思うや、途方もなく巨大な岩盤が周囲からせり出した。迷宮の一部が崩壊したのだろう。
 空洞を埋め尽くさんと降り注ぐ質量を巧みにかわし、ドラゴンウォリアー達は空を駆ける。おのおの手にした武器が閃くや、出口を塞ぐ小さな瓦礫の山が粉々に消し飛んだ。
「急いで!!」
 轟音にも負けないグリュエルの声が仲間を促す。
 もと来た道を全力で飛翔する。来るときに開けた穴をひとつ越え、装飾の彫り込まれた通路を抜ける。いまや遺跡全体が激震を繰り返し、強固だった迷宮の壁はその表面に次々と亀裂を入れ、剥がれ落ちた礫が雨のごとく冒険者の体を叩いた。
「こっちだ!」
 ユユの施した目印を頼りに分岐を突き進む。リネンにつけられた壁の傷は崩壊に掻き消されてもうわからなくなっていた。
 スズ、サハラ、リネン、クール、ユユ。それに続こうとし、寸前でリウルが何かを察知する。
「危ない!!」
 にわかに大きな震動が襲う。通路が眼前で粉砕したのである。前を行ったはずの者達の代わりにそこには、先ほどとは明らかに違う通路が半分ズレて繋がっていた。一体何が起こったのか……、数瞬かけて理解する。迷宮がブロックごと大空洞に引き込まれる余波で、大規模なズレが生じているのだ。
 分断された……。そう思う間もなく、すぐ隣の壁にも亀裂が入った。
 進もう、とザキが言う。
「ここも危ない」
「そうデス。誰一人も欠けさせません、帰らなくちゃ!」
 リウルも力強く頷いた。新しく現れた通路に飛び込み、ひたすらに外を目指す。やがて訪れた袋小路に、
「脆くなってる、いける!」
 崩れかけた壁面を見てグリュエルが言う。
 放たれた鮫牙の矢の直撃に余剰な負荷を受けすぎた壁は耐え切れず、大きな突破口を開いた。

●宵の冥星
「良かった! ああ、良かった!! 全員揃ったのね」
 真っ先に出迎えたクールと、4人は再会の喜びを分かち合う。
 先の5人は既に遺跡の外で待っていた。元々通るはずだったルートを問題なく進行し、立ち塞がる瓦礫は破壊系アビリティを持つスズ、リネンが難なく粉砕していったのだという。
 手を取り合い喜ぶ面々を眺め、ほっと安堵するサハラ。カナエはドリル戦艦に戻っているはずだし、ともかくこれで全員助かったのだ。
 あとは隕石の崩壊を見届けるだけ。
 ぽつ、とサハラの呟きが大気のうねりに消えた。
「……これはご挨拶程度にすぎないんだろうねー」
 ドラゴンロード・プラネットブレイカーの力はこんなものではあるまい。次は何をするのやら。
 改めて見れば、出発時よりも大地が随分と近づいていた。……彼らの帰るべき場所、ランドアース。擬似ドラゴン界はなおも落下を続けているが、この分なら崩壊の方が早く済むだろう。少なくともこの隕石がランドアースに被害をもたらすことはなくなったのだ。
 『内側』に向かって崩壊を続けていた遺跡が、急速に径を縮め始めた。歪な球形を保ちつつも、例の大空洞を中心に引き込まれるように収縮し、潰れていく。
「終焉、か」
 リネンの呟きもまた、気海に千切れていく。
 一点に向かって潰れ続けた隕石はついには目にも見えないほどになり、最後には跡形もなく消失した。


マスター:紫蟷螂 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2009/07/28
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