はじめての誰もいない日〜ユバの誕生日〜



<オープニング>


 拝啓、冒険者様。
 
 お掃除をするのでみなさん奮ってご参加しろなのですというかこれは命令なのです。
 
 敬具。

●ひとり
「しかし、刈っても刈っても終わる気配がないのです」
 鬱蒼とした木々の中で蠢く影(注:屋内)。
 巷では割と大変なことになっているような気がするが、今のこいつにとっては、目の前の生え放題の草花、飛び放題の虫のほうが大事か。
「大体この砦は私の家ではないのです……ものすげえくせえのです……」
 傍らには繁殖しまくっているラフレシア。
 その臭いたるや鼻がひん曲がるのを通り越し、すっとびそうな勢いである。
「それにしても手紙を出してからもう3日も経っているのに誰もこないのです」
 とりあえず応援要請の手紙を片っ端から出しておいたのだが、一向に誰も来る気配がない。
「……仕方がないのです。みなさんも何かと忙しいのです。そうとなったら私1人でもなんとかしなければなのです」
 ポコンポコンと少し痛む腰を叩くと、再びその場にしゃがみこむ。
「こことここを持って……よっこらうっ、うっ、お、おも、い、のうぎゃあああああああ!!」
 伐採したラフレシアを抱えたかと思いきや、そのまま押しつぶされるそいつ。
「ちっきしょおおおおお!! なんで私がこんな目にあわなければならないのです! あったまくるのです!! ごあああああっ! というか誰か助けてほしいのです! なんで誰もこねーのです!!!」
 仰向けで両手に鎌を握り締めたまま、ラフレシアの下で暴れてはみるものの、誰かが訪れる気配は、相変わらずこれっぽっちもなかった。


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参加者
NPC:ヒトの霊査士・ユバ(a90301)



<リプレイ>

「……お腹、すいたのです……」
 何度お日様がのぼり、そして沈んでいっただろう。
「うっ……うっ……」
 最後の力を振り絞り、手を伸ばしてはみるけれど。
 認めざるを得ない現実が重くのしかかっていることに変わりはなく、
「……短い命、だったのです……最早これまでなのです……むね……ん……」
 そしてその手はふっと力を失うと、糸の切れた人形のようにぱたりと地面に横たわった。

 無限のユバンタジア〜完〜

●それはそうと
「ユバー、いないのかしらー? 聞こえたら返事してー」
 手紙を片手に、庭と言う名の混沌劇場を歩くラシェット。
 まだ真昼間だというのに隙間無く生える木々のおかげで、辺りは異様に薄暗い。
「世間様はなんだか大変みたいですが、飲み歩いて気がついたら、この鬱蒼とした森へ迷い込んでしまいました。このままじゃあ眠れる森の美女になっちゃいます。どうしましょうどうしましょう?」
 頬に手を当てあたふたするリナリー。
 当然のようにセリフは棒読みですが何か。
「以前来た時よりも廃墟度が増している様な……何とかしなければ。酒場に、ユバさんの家に魔物が現れたので退治しろ――などという依頼が出た日には笑えません」
 クオンはまた別の場所でユバを探し始める。が、家に魔物とか美味しすぎるので、近日キマイラ依頼大公開予定である! 大嘘である!
「まあ、ユバだし……世の中そういうこともある」
 地肌に直にレザーアーマーを装備するアナボリック。
 ワセリンを樹液と勘違いしたバグ(虫)どもが生足にたかっているが、大した問題ではない。
 そして大概のことは『ユバだから』で許されてしまうことも、どうってことないむしろ大歓迎。
「うは……どうしたことでしょう。確か私は新作のケーキを買いに来たつもりでしたが、ま、迷子? ……しかもなんだか見覚えのある森……気のせいですねぇ。うはー、それにしても物凄いジャングルと言いますか異次元」
 美味しいメロディアスフルーツが散りばめられた新作ケーキのビラを眺めながら歩くリツ。
 ケーキはないけれど、木系の植物ならたくさんあるからいっぱい食べていってね!
「ユバさんのお家へ来たはずだけど……。ワイルドファイアに負けず劣らずワイルドなフォレストね。だけど、あたいこの位じゃ負けないわ。目指せゲットワイルド! 一人では解けない愛のパズルも、二人なら解けるわよね!」
 アンドタフなミシャエラは、まだ見ぬ白馬の王子様を胸に暗闇を走り抜ける。色々と切りつけながら。
「冒険者の生業は困っている人を助ける事。ならばこのオレ様の出番だッ! 今回は……何だココ!? 愛しのユバを助けに来たらヘンな森に迷いこんじまったぞ! でも折角だからオレは此処で思う存分愉しむ事を選ぶぜ! さァこの森をどう制覇するか……ククク……掃除だけで簡単に終わらせると思うなよ!?」
 遠くから凄い勢いで走ってきたウィルダントは、とにかくこの腐の森を選ぶと、上に気をつけながら階段を駆け下りる。
「ケッ! 全裸でウロウロしていた位で、自警団呼ばれて堪るかってんだ! こちとら(色々)マグナムサイズのワイルドファイア生まれよ! 裸族舐めんな! バカヤロー!」
 身体中汗だくになりながら、惜しげもなく遠吠えを吐くイツキ。
 誰に追われていたのかはわからないが、言うまでもなく全裸である。
「しかし逮捕されるのも嫌なので、ほとぼり醒めるまで、この良く解んねー繁みに身を潜めているでござるよ。ニンニン」
 そのままがさがさと草を分け入り、いそいそとねぐら確保に精を出す。
 尻を突き出し四つんばいになりながら作業をするあたりには、菊の華がそこはかとなく咲き乱れていた。

●庭のお掃除だし
「とりあえず刈ればいいんだよな? じゃあ若いやつ頑張れ。マジ頑張れ。おっさんは後ろからサイドチェストをしながら見守ってあげるからね♪」
 後ろのほうでミリミリとポージングを始めるアナボリック。
 いつの間にレザアマを脱いだのか、ビキニ一丁のテカる身体にまとわりつくバグが、当社比で1.5倍ほどになっている。いわゆるレザアマでもつらくない! というやつである。何が。
「ユバさん誕生日おめでとう! っても贈り物するほどの甲斐性もないから労働力を提供しようと、ユバさんを見つけて、やってほしい仕事とか掃除の内容について指示を貰おうと思ったんですけど、ジャングルで進めないし道迷ったっぽいし、そもそも玄関にも辿りつけないようなー」
 うろうろと腐海をさまようニザームは、完全に迷っていた。
 しかしポンと手を打つと、
「じゃあ、道、作っちゃばいいんじゃね? といわけでですとろーい!」
 と、道を塞ぐラフレシアをぐちゃりぐちゃりと破壊しながら、ひたすら真っ直ぐ突き進み始める。向かう先に玄関があるかは知らん。
「……まぁ、掃除してろって事だし、掃除しているうちに会えるかしら。会えるまで少しでも片付けておきましょうか」
 とりあえずいつもの杖でざっぱざっぱ大ざっぱと草をなぎ倒しつつ進んでいくラシェット。
「へぶんっ!」
 途中、草のチクチク感を一心不乱に身体全体で楽しんでいたマグナム全裸の人を巻き込んだ気もするが、ささいなことである。

「なんだか臭いますね〜? 臭くなかったら良い所なんですけど、砦……」
 ハンケチで鼻を押さえるケロ。
 『何も臭わなくて、砦……』みたいなキャッチコピーみたいなのに妙につぼったのは余談である。
「この大きな花も一度刈ってしまったほうが良いでしょうか〜? 刈っても、また新しいのが育ちますよね〜? そういえば、お隣の平屋はどうなってるでしょ〜?」
 ふと突き動かされるものを感じ、平屋を見やるケロ。
「あれっ? ホコリかぶっちゃってますね〜? こっちの掃除しましょ〜」
 そのまま何事もなかったかのように平屋の掃除を始める。
 してやったりなんてことは、決してない。

「人手が足りないと聞いたので、お手伝いに来ましたなぁ〜ん」
 掃除用具やら炊事道具、食料を載せ、全速で駆けつけたノソリン(中の人はフィフス)が一匹。
 全速といってもノソリンなので、着いた頃には既にお掃除が始まっているのはご愛嬌である。
「まずは炊事場と食事の場を確保するためのお掃除からなぁ〜ん。そこの掃除が終われば食事の用意なぁ〜ん。しっかり食べて、ちゃんと働けるように栄養のあるものを取らないとなぁ〜ん」
 とは言っても、いまだいたる所に繁殖するラフレシア群を、せっせと片付けていくよ。
「誕生日を祝うのだからせめて今日くらいは安らかにゆっくりすればいいのに……で、ユバはどこだ?」
 駆除したラフレシアを無骨に積んだ山にのぼり、辺りを見渡すフェレン。
 しかしユバの気配は感じられない。
「乱! 乱! 瑠ぅー!」
 いつの間にか白塗りのあいつに成り代わっていたウィルダントは、手当たり次第邪魔な木々をなぎ倒し空きスペースを確保すると、燃えそうな木々を集めキャンプファイヤーを設置する。
 その後得意の『雑学』をフル回転させ、食べられそうな草花を集め、謎の鍋を調理し始める。
 いわゆるユバへの愛★情☆鍋というやつである。
 燃え上がる愛をリアルに表現と言うか、なぜ木々が生える中で火を炊くのかな?
「とりあえず、何か色々騒がしいですけど庭の掃除をしましょう……あんな植物とかいたら困りますし、ね。主に臭いとか」
 毒消しの風を使用しつつ、まずは生え放題の雑草を刈るよう、土塊の下僕に命令をするフロウ。
「ついでに……こういうものは燃やして、と」
 そのまま何の迷いもなくラフレシアに向け緑の業火っぽいものを打ち込む。
 わーい、めらめらとよく燃えるねー。
 で、火とか流行ってんの? ん?
「え? 何? 今日ってユバ殿の誕生日だったの? ハッハッハ、拙者とあろう者が、そんな大事な日を忘れる訳が無かろうて。サプライズの為に潜んでいたのでござるよンナハッハ! ほれこの通り、ここにプレゼントのハンケチを……」
 なんだか周りが異様に暖かくなったことを受け薄れゆく意識の中、どこからかすちゃっとハンケチを取り出すイツキ。
「……あっ、間違えた」
 でもそれはハンケチではなくおパンチュだもん。
 ある意味黄色いので幸せであることには変わりないもん。
「春にやればよかったな……。いい加減、ユバが凄く可哀想に思えてきた。だが同情の言葉なんてかけない。言葉で慰めなんてしたくないしユバがさらに落ち込むだけだ」
 とりあえず、ただ無心にひたすら刈って刈って狩りまくるフォッグ。
 途中不穏な物体に粘り蜘蛛糸を放っては、ウサギ、鶏、ヘビカエルなどの今晩の食事をゲットし、まさに一石二鳥である。
「何生息してるんだよ、ここは」
 悩んだら、負けである。

●砦のお掃除だし
「汚物は消毒だ〜っ!!」
 先程まで真面目に掃除をしていたスタインは、突然世紀末を感じたのか髪を直角に立てサングラスをかけると、ところ構わず黒炎覚醒をぶっ放しはじめようとしたところで、ふと我に返る。
 突然キレる若者の弊害がここにも。
「理性を捨てた獣となりユバさんに襲い掛かる必要がないのならばわたしは淑女的に皆様のサポートにまわることにするのだわなぁ〜ん。砦を掃除したいらしいから重要っぽい柱をそっと引っこ抜いたりすることにするなのですわなぁ〜ん」
 超ご機嫌で、手当たり次第に太く大事そうな柱を引っこ抜いていくアコナイト。
「崩れたり壊れたり潰されたりしそうだけどまぁ問題ないね、わたしはあと2回凌駕を残していまへぶんっ!」
 天井が抜け、アコナイトのドタマにぶち当たる。
「なあに、わたしはあと1回凌駕をぐわっ!」
 柱が倒れ、アコナイトの後ろドタマにぶち当たる。
「……なあに、わたしは冒険しゃなんっ!」
 ガラガラと崩れ落ちる部屋。
 2回残っているのなら3回やってやればいい。なあに、簡単なことだ。
「昨年行いましたクラゲ講義の続編として、『シルキークラゲ講座・中級編』をユバさんにご教授しようと思ったのですが……肝心のユバさんがいらっしゃいませんね〜。まあそのうち出てくると思うので、会場設営を兼ね掃除を行いましょう〜。最低限このラフレシアだけでも、塵も残さず粉砕したいですね〜」
 質量のある残像を繰り広げながら、目に映るラフレシアというラフレシアを片っ端から塵と化していくシルキー。
 そこにユバはいるのか。
 いねえか。

「まずは雑草類を引き抜くことから始めるのです」
 ぶちぶち雑草を引き抜き始めるクゥ。
「引き抜き終わったらもっと沢山育てれるように何枚か壁をぶち壊し広い空間でお花を育てれるようにするのです」
 何枚か壁をぶち壊し広い空間を確保するクゥ。
「それが終わった後は僕から遅いですが誕生日プレゼントで甘い良い香りがして何かを隠すのに適してそうな形の植物を植えるのです」
 何かを隠すのに適してそうな袋状の植物を植えるクゥ。
「何かを壊すのに手間取っている人がいたらお手伝いするのです」
 何かを壊すのに手間取っている人を探すクゥ。
「はぅ……皆さんみたいにうまくお掃除できたでしょうか?」
 できてない。

「創造のために破壊は必要ですよね。というわけで、壁をデストロイにゃ〜ん!」」
 もっともらしいことをもっともらしく口にし、疾風斬鉄脚奥義で壁をブチ破りまくり、粉砕☆玉砕☆大爆砕(はぁと)を繰り広げるティセ。
 次々と壁をブチ壊していくその姿は頼もしいの一言に尽きるが、ただ1つ言わせてもらえれば、その行為自体は今回の依頼には全く関係がないし、
「斬鉄脚が足りなければ爆砕拳も一杯で安心にゃ〜ん!」
 何が安心なのかもさっぱりわからない。
「常識という壁をたくさん破れた感じ!」
 あらかた壁をぶっ壊し、いい汗をかいてスッキリしたティセは、そのまま次のターゲットへと向かっていった。
「……お腹がすいてきましたねぇ。まぁこんなこともあろうかとー! ちゃらららっちゃらー、まんがにくー! うはぅ、ケーキ屋さんにつく前に小腹がすきそうでしたしねぇ、持ってきて正解でした。早速いただきま……」
 がつっ!
「うはぅ、まんがにくが突然なくなりました……って、ん? 何このラフレシア動いたー!? 私のまんがにく返して下さいー!」

●そして
「ユバー!」
 変わり果てたユバの姿に、いてもたってもいられず飛びつくラシェット。
 あらかた掃除も終わり、大事な壁や柱が大体ぶっ壊された後、ついにユバは発見された。
 結局リツのまんがにくをぱくったラフレシアから伸びる足を、ミシャエラが白馬の王子様の足と勘違いして引っこ抜いたのが実は、純白の豆腐の人(ユバの意)だったという、なんとも悪運の強いお話である。
「……ぐえ、え……ラジェッドさん、ぐるじい、のでず」
 半分魂が抜けかけていたユバに、ラシェットの力強い抱擁はいささか荷が重かったようだ。
「高カロリーだから非常食にはいいよー、ていうか僕の主食」
 きっとお腹がすいているだろうと、ユバの口に惜しげもなくどろり濃厚を流し込むニザーム。
「んが、がお」
 ユバは完全にむせていた。
 美味しいのに。
「ユバ……きちんとアキバに見つからないように隠してある本は燃やしておいてやるからな」
「ななな何を言っているのですフォッグさん、私には隠してある本などないのですが、そんなことをしたらきっと夜道を気をつけることになるのです」
 そしてフォッグの心優しい復活の呪文により、ユバは体力半分で復活することとなったのだった。

●大! 成! 功!
「ん、そういえばユバの誕生日、だったらしいな。一応、ラフレシアの銅像を作ったから、ユバが普段寝室に使っている場所に置いといたぞ。これでいつでも大きな花が眺められるぞ」
「いらねーのです。持って帰れなのです」
「っと、喉が渇きましたね。一杯引っかけますか。ユバさんも一杯……と、未成年でしたね。あと一年したらアタクシのもとへいらっしゃい!」
「一年しても未成年のままなのです。そして私はこの豆乳が一等好きなのです。と思ったら私はいつの間にか19歳になっていたのです」
「まあ、とにかくお疲れ様だな。ちょうどいい西瓜があったから、皮で白和えを作ってみたんだ」
「うめえのです。ありがとうなのですフェレンさん」
 ひと段落して落ち着いたユバは、やっといつもの調子を取り戻していた。
 が。

 ドドドドドド……。
「ん? この揺れはなんなのです?」
 突如訪れる鈍い地鳴り。
「ユバさん、こちらへ!」
「ク、クオンさん!?」
 そう、手当たり次第壁をぶち抜かれ、大事な柱を引っこ抜かれ、あまつさえ飛び火に覆われた砦には、最早そこにそびえ続ける力など、残ってはいなかった。
「にゃ〜ん!」
「ぐわっ!」
「うはー!」
 崩れ落ちる砦から響く悲鳴と怒号。
 確かにユバは無事保護されることとなった。
 しかしお掃除についてはというと……。


マスター:湯豆腐 紹介ページ
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