グレスター発進! 花と光のグレスター・カーニバル!



   


<オープニング>


●グレスター発進!
「円卓の偉いひとから預かってきたのです!」
 夏のある日にハニーハンター・ボギー(a90182)が酒場の冒険者達のもとへ運んできた物は、鈍い銀色の槍だった。無論ただの槍ではなく、ある意味同盟で最も有名な槍とも言えるもの。
 見覚えのある者はあっと声を上げ、初めて見る者も円卓という言葉で即座にピンと来た。
 先日の円卓決議に関わる槍といえば答えはひとつ。――グレートツイスターの槍だ。
 巨大な竜巻の中に巨大な岩を浮かべた形のドラゴンズゲート・グレートツイスター。
 儀式を行うことで自由に移動可能なグレートツイスターは、機動力を持つドラゴンズゲートという特性を活かし、コルドフリード大陸でのドラゴンロード戦を始め、様々な戦場で同盟諸国の力となってきた。そしてインフィニティマインドの完成によって遂にグレートツイスターはその役割を終え、元あった場所へ返還されることが決まったのである。
「と言う訳で、一緒にグレートツイスターをワイルドファイアへ返しに行きませんかっ?」
 居合わせた冒険者達を見回して、ボギーは楽しげに尾を揺らした。

「それでは、具体的な説明をさせて頂きますのです!」
 言いつつボギーが広げたのは、ワイルドファイア大陸の地図。
 目的地はここなのですよと彼が指し示したのは、地図に描かれたマリンキングボスの南西にあたる部分――ストライダーの国の近所の荒野だった。そこは一番最初にグレートツイスターがあった場所。つまりグレートツイスターは本当に、『元あった場所』へ帰ることになったのだ。
 移動の儀式に必要なのは、『目的地の地面にグレートツイスターの槍を刺す』、『槍の周囲で楽しく元気に踊る』、『グレートツイスター内部の操縦室でレバーを操作し、発進させる』という手順である。
「なので、ワイルドファイアで楽しく元気に踊ってくださる方がたくさんと、グレートツイスターの操縦室でレバーを操作してくださる方が何人か必要なのです。ボギーひとりじゃ絶対無理なので、ぜひぜひご協力お願いしますのですよ〜!」
 ぱたぱたと忙しなく尾を揺らしながらボギーはそう語り、折角ですし皆で思いっきり楽しんできちゃいませんかと話を続けた。
 実に一年数ヶ月ぶりとなるグレートツイスターのワイルドファイア帰還を祝って。
 そして――幾つもの戦いで同盟諸国の力となってくれた、グレートツイスターへの感謝をこめて。
「元気に楽しく皆で踊って、ぱーっと幸せなお祭りにしちゃいましょう!」

●花と光のグレスター・カーニバル!
 終わらない夏を謳歌するワイルドファイアに広がるのは、真夏の輝きそのものをあつめたみたいに鮮やかな青空だ。天頂に輝く太陽は眩い陽射しを世界へと投げかけて、真白な雲さえも眩い煌きを抱いて空を流れていく。空と大地の狭間すらも眩い光の粒子で満ちる、常夏の大陸。
「青空の下で元気に踊るだけでも楽しいと思うんですけど、水や花を撒きながら踊るともっと楽しいんじゃないかなって思うのです! 鮮やかな色の花やきらきら光る水飛沫がいっぱい空に舞えばきっと綺麗ですし、冷たい水飛沫が降る中で踊るのってすごく気持ちいいと思うのですよ〜♪」
 楽しげに瞳を輝かせてボギーは再び尾を揺らす。
 夏の陽射しが満ちた空で水飛沫は硝子や水晶のかけらのように煌いて、鮮やかな色を宿した南国の花々は空からの祝福のように舞い降りてくるだろう。ワイルドファイアだから時折やたら大きな花が混じるかもしれないけれど、それすらもきっと楽しい余興になるはずだ。
 踊りながら花や水を振りまくのもいいし、誰かが振りまいた花や水の中で踊るのだっていい。
 辺りはきっと陽気な音楽と賑やかな笑い声で満ちるから、心ゆくまで楽しく踊って、踊り疲れた時には舞い降りる花々やきらきら輝く水飛沫、そして明るく元気に踊る皆の姿をのんびり眺めて。
 一休みしてまた心が弾みだしたなら、再び皆の踊りの輪に加わればいい。
 賑やかに笑いさざめき心ゆくまで楽しく踊って、それでも足りなければ――夜の帳が降りるまで。
「儀式としてはそんなに踊り続けなくてもいいみたいですけど、折角の機会ですし、もっとたくさん踊りたいってひとがいらっしゃるなら、篝火焚いて夜まで皆で楽しんだっていいですよねっ」
 極上の黒瑪瑙のような夜空には金砂銀砂の星達が煌いて。
 眩く燃え立つ篝火からは火の粉が零れ、風に流れて光の河となるだろう。
 夏夜の気だるさと艶かしさを抱く夜風の中で踊るのも、昼とは違う楽しさがあるはずだ。
 要は、皆でとことん楽しく踊ることができればそれでいい。

 作戦次第ではブックドミネーターに特攻していたかもしれず、スイートメロディアとの戦いで敗北していれば失われてしまう可能性もあったグレートツイスター。一時はダイウルゴスに取り込まれていたことをも思えば、こうして無事にワイルドファイアへ戻れることは奇跡にも近い。
 グレートツイスターをワイルドファイアへ帰還させるため。
 グレートツイスターの無事を祝い、感謝をこめて。
「とにかく皆で楽しく踊ることが、グレートツイスターへの御祝いで感謝になると思うのですよ〜♪」
 元気に賑やかにいっぱい楽しんできましょうね、とボギーは再び冒険者達を見回した。


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参加者
NPC:ハニーハンター・ボギー(a90182)



<リプレイ>

●グレートツイスターの槍
 眩い陽射しを孕んでなお真っ青に澄み渡る青空は、ワイルドファイアが抱く終わらない夏の証。
 鮮やかな紺碧の空を真白な雲が気侭に流れ、色濃く落ちた雲の影は遥か彼方まで続く大地をのんびり旅していた。雲の影が荒野へ至れば陽の匂いを孕んだ風が吹き渡り、荒野に息づく丈の低い草々をそよがせる。細波にも似た唄を響かせる草を踏みながら、大きな銀色の槍を携えた冒険者達がやってきた。
「うっほっほ、えっほっほ、うっほっほ、えっほっほ」
「ちょ、ルシアさんうきうきすぎなんだよぅ」
 何処ぞの伝統様式っぽい踊りを交えつつ進むのは、世界を救う希望のひとしずく・ルシア(a35455)。一緒に槍を運ぶ銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251)は苦笑したけれど、彼女の猫尻尾も負けず劣らず楽しげに揺れる。最後までの探索の続行は叶わなかったけど、この槍をワイルドファイアへ戻すのも、自分達元護衛士の仕事――。
「私はウィアトルノを辞めたつもりも離れたつもりも無いからね……」
 まるでシルファの胸の裡を読み取ったかのようにルシアが呟いて、掌でぐいと眦を拭う。涙を払って前を向けば、荒野を華やかに彩る鮮やかな花々が瞳に映った。
「だって今日はお祝いでしょぉ〜?」
 なら華やかにしなきゃと紋章の踊り子・ブランシュ(a79381)がこの日のために用意された花々で大地にぐるりと輪を描き、春陽の・セラ(a60790)とヒトの武人・ヨハン(a62570)がひときわ綺麗な花を加えて彩りを添えていく。この中心がいいだろうと砂漠の民〜風砂に煌く蒼星の刃・デューン(a34979)が指し示すのに頷いて、紋章打の使い手・エリス(a00091)がシルファ達と一緒に槍へと手をかけた。
「グレートツイスターの槍、行きます!」
 鮮やかな花々の中心に大きな銀色の槍が突き立てられて、周囲の花弁がふわりと舞いあがる。
「さあ、みんな、おどろーっ!」
 満面の笑顔でルシアが振り返ったのを合図に、荒野に集った冒険者達が一斉に花を振りまいた。

●グレスター発進!
 一方その頃、グレートツイスターのレバー操作を担当する冒険者達は――。
「今日も怪獣達元気だったね〜」
 白鱗奏恍・ラトレイア(a63887)の言うとおり、生命力に満ち満ちた怪獣達をちぎっては投げちぎっては投げして、さくさくと操縦室へ辿りついていた。
 この場にいる者の多くが操作経験者であることを頼もしく思いつつ、駈け上る魂・ギイナ(a70690)は初めて入る空間に瞳をめぐらせる。壁一面にずらりと並ぶレバーを勝手に動かさぬよう気遣いながら壁を撫で、感謝を込めて、おかえり、と囁いた。
「いやおかえりはまだ早いですけど、もうすぐ、ようやく、言えるんですね……」
 眠らぬ車輪・ラードルフ(a10362)は感慨深げに操縦室を見渡して、ストライダーの国の方達も懐かしく思われるでしょうかと微かに口元を綻ばせる。移動後に生まれた子供がグレートツイスターを見ればさぞかし驚くだろうが、きっとすぐに子供達も慣れてしまうのだろう。
 旅の仲間を無事に戻せる事が、とても嬉しい。
 翼のモチーフを刻んだ方位磁石を取り出し眺め、本当に良かったとラトレイアが目元を和ませた。
「戦いに巻き込んでグレスターを失っちゃ、ミニュイ団長やニチェリア様に合わせる顔が無いもんね」
 だな、と軽く頷きを返し、魔戒の疾風・ワスプ(a08884)は名残惜しげにレバーへと手を伸ばす。
 ウィアトルノで『こいつ』を見出してから、今日の日までに様々なことがあった。
 多分――グレートツイスターの移動に関わるのも、これが最後になるのだろう。
「高いところのレバーはまた肩車でな」
「うん、お願いするね」
 ゴースト・フォッグ(a33901)と黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)がそんな言葉を交わしながらレバーの様子をざっと確認し、せせらぐ琴線・リナリー(a59785)が皆を振り返る。
「操作担当は各員配置へ就いてください。――用意、よろしくて?」
「OK。大丈夫だ」
「ばっちりにゃ♪」
「こっちも大丈夫。……で、そろそろ時間のはずだよ」
 凛と響いたリナリーの声にフォッグや猫魔術士・キラ(a01332)が応え、荒野へ向かった仲間達と打ち合わせた時間の到来をピヨピヨが告げた。現在ランドアースにあるグレートツイスターとワイルドファイアの荒野では、ウェポン・オーバードライブ等で瞬時に連絡を取ることができないと解っているから、ここは互いを信じるしかない。
 久し振りですと呟きラードルフがレバーを下ろせば、操縦室に明るい黄色の光が満ちた。
「これを下げれば良いんだよね」
 次々と手際よくレバーを下ろしていく経験者達に教わりながら、ギイナもおっかなびっくりレバーを下ろす。レバーが動かされるたびに光は様々な色に染まり、くるくる変化する光の色にやはり操縦室初体験のハニーハンター・ボギー(a90182)や湖畔のマダム・アデイラ(a90274)が感嘆の声を上げた。
 元ウィアトルノ護衛士として何だか誇らしい心地でそれを聞きながら、キラは護衛士として過ごした日々を思い返して尾を揺らす。マンモーは凄く大きくて、ガラスの実はとても甘かった。
「もっと色々なものを発見したり遊んだりしたいにゃー」
 大きくなっていく振動音の中でそう零しつつ、遂に最後の大レバーへと辿りつく。
 操縦室にいる全員の手が、大レバーへ重ねられた。
「……この感触もこれが最後か、ちょっと惜しいな」
 小さくワスプが呟けば、導きの翼を持つ者の幾人かが僅かに目元を歪めて唇を引き結ぶ。
「グレスター、発進!」
「ワイルドファイアに向かって――全速前進っ!」
 ピヨピヨとラトレイアの声に合わせ、確かな手応えと共に最後のレバーが下ろされた。
 ひときわ激しくなった振動音に負けぬよう、天井を見上げたキラが表示された文字を読み上げる。
「対象適正と確認……出たにゃ!」

 己の全身を、そして周囲の大地を揺るがすような凄まじい音を響かせながら、グレートツイスターは故郷へ向けて動き始めた。

●花と水と光と踊り
 鮮麗な青と真夏の輝きを湛えたワイルドファイアの空に鷲と白梟が羽ばたいて、足に掴んだ花籠から色とりどりの花々を景気よく荒野へと振りまいた。
「そいじゃ相棒、今日はいっちょ派手に踊りますか!」
「ん、力一杯楽しむぞー!」
 眩いくらい色鮮やかな花々が降る中黒豹吼下月・ナオ(a26636)は暁の雨・ユングヴェ(a45920)と連れ立って、彼女が踏むステップと口遊む旋律に合わせて思いきり花を放り投げてくるりと回る。ひと抱えはありそうな大輪の花が宙に舞う様に素敵と声を弾ませて、歩揺の桜・リラ(a27466)もぺんぎんスーツ姿で色とりどりの花と澄んだ水を振りまいた。
 花籠ごと空へと放り投げた静かな所作に激しき心を隠すは・ローライン(a60213)が跳ねるように踊れば、草が含んだ水滴も軽やかに跳ね、翻る指の先まで優雅に舞う樹霊・シフィル(a64372)が流れる音色に合わせて回れば、水飛沫がきらきら降る中に振りまかれた花々が美しい花吹雪を描き出す。
 花や水の合間を泳ぎ回るようにして、こんな感じだと疲れにくいよと楽しげに皆へ踊りを披露していたルシアの手を取って、朱陰の皓月・カガリ(a01401)が一緒に回ろかと呼びかけた。
「皆でぐるぐる回って回すんよ〜!」
 手に手を取ってぐるぐる回って、相手をくるりと回して回されて。
 回れば回るほどに流れる音色も心も弾んで花と水が楽しげに宙に舞う。
 ありがとう、おかえりなさい、お疲れ様。
 海の彼方から帰ってくるグレートツイスターへ思いを向けて、くるくるくるくる楽しんで。
 弾むリズムに乗って足を踏み鳴らし、明るい色合いの花々を振りまけば、傷の痛みも忘れるくらい楽しくなって、ブランシュは満面に笑みを咲かせてくるりと回る。
「できれば夜も皆で踊りたいな、どうでしょぉ?」
「うむ。時間は気にせず、心行くまで存分に踊りつくそう」
 彼女が振りまいた花々に重ねるように水と花をまき、形無しの暗炎・サタナエル(a46088)は顔を綻ばせて頷いた。頬に降る水と翼に降る花の感触も楽しくて、心のままに踊れるほどに手も足も軽くなっていく。胸に去来するのはグレートツイスターと氷の大陸を渡った日々のこと。行けたのも帰ってこれたのもグレートツイスターのおかげだから、心からの感謝と労いをこめて。
 飛んだり跳ねたりとひときわ元気に踊っていたエリスは頭からざぶんと水を被り、悪戯っぽく笑って周囲にも思いきり水を振りまいた。
「ワイルドファイアなんだから濡れるくらい気にしちゃダメですー。どうせすぐ乾いちゃうんだから」
「あはは、お返しなのですよ〜♪」
 水飛沫降る中に虹がかかる様に瞳を輝かせ、春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)はえいっと両手いっぱいの花を彼女へと振りかける。風に浚われた花を追って空を仰げば綺麗な羽を広げた鳥怪獣達が目に入ったから、エリスと二人魅了の歌で呼びかけてみた。
『ボクらと一緒に踊りましょ〜♪』
「むむっ! 鳥のダンスなら負けませんよー!! さあレイナさんも御一緒に!!」
「当然ですわ。さ、追加の花をまきますわよ」
 花のように色鮮やかな鳥達が踊りに加わったのに対抗心を燃やし、ぺんぎんスーツに身を包んだ薬草遣いの・リーナ(a38286)はやはりぺんぎんスーツを纏った碧洋の翔剣士・レイナ(a37725)をぐいぐい引っ張り踊りの輪へと入っていく。それまで淡々とした様子だったレイナも瞳を細め、ぺんぎんの翼に花々を乗せ色とりどりの花をめいいっぱい辺りへと振りまいた。
「こういうのは楽しんだもの勝ちだからなっ?」
「確かに楽しんだもの勝ちかもしれませんね」
 咲き初める花のようにふわりと広がる陽だまりの花・グリュエル(a63551)のスカートから花々が舞いあがる様に瞳を緩め、紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)は彼女に手を引かれて踊りの輪へ加わった。
 空に舞った花は細かな水滴を纏い、きらきらと光を散らしながら降りそそぐ。
「楽しむのが大事です! ほら、尻尾の動きはこうですなぁ〜ん♪」
「なるほど、尻尾の動きはそう……って、いや俺ヒトだから!」
「解ってますなぁ〜ん♪」
 晦冥なる月・マヒナ(a48535)がそう言って得意げにピンクの尻尾を揺らす様も可愛くて、思わず破顔した緋閃・クレス(a35740)は鮮やかな花々をたっぷり振りまいた。花と共にありがとうと大好きの言葉を降らせれば、嬉しげに笑みを零した彼女が夜も踊りましょうねとこっそり囁き返す。
 流れる音色に合わせふわりと身を翻せば、浴衣の袂に仕込んだ花々が零れて風に舞いあがった。
 口元を綻ばせば南国の薔薇・ジョージィ(a44355)に手を取られ、氷月廻・コーリア(a00497)は柔らかに笑みを深めて彼女と一緒にくるくる回る。
「花も水も好きですけれど、ジョージィさんはもっと好きです!」
「おおう、両思いなぁ〜んっ♪」
 輝くような笑みを零してジョージィが回れば強い風が吹きぬけて、手に足に飾っていた花やリボンが浚われる様に二人で笑い合う。すごくすごく嬉しかったよと囁く彼女にコーリアは私も幸せと囁き返し、心ゆくまで踊って笑って空を振り仰いだ。
 瞳に映るのは、清冽な水で洗われたかのように澄みきった夏の空。
 ――さよならの後に見る空はいつも、痛いくらいに綺麗。

●花と焔と光と踊り
 眩く鮮やかなオレンジ色に蕩けた夕陽が大地の彼方へと沈んでいく。
 黄昏の色に荒野が染まる様も夕陽が鮮烈に瞳を射る感覚も懐かしく、温・ファオ(a05259)は感じる眩しさのままに瞳を細め、踊り続ける皆へと優しい水と光を纏う花々をふんわり降らせた。
 胸に抱くのは感謝と祈り。
 夏の輝きを受け入れられる様、夜空と篝火が涙を隠してくれる様願えば、空に菫の色が流れ出す。
 澄んだ菫と紺青が溶き流された天穹はすぐに艶やかな漆黒に支配され、金砂銀砂の星達が煌く空のしたには鮮やかに燃え立つ篝火が燈される。
 朱金に輝く火の粉が風に流れ、光が舞う中で皆が踊る様にシフィルは微笑んで、
「何と素敵な宴か、いえ、ダンスパーティ……って、やっぱり宴会でございますの!?」
 可憐に身を翻したところでずらりと並べられた数々の料理に出くわし素っ頓狂な声を上げた。
「いや、みんな夜まで踊るならあった方がいいよねって……!」
「まぁこういうのもいいだろうさ。遠くへ行っていたワイルドファイアの住人が戻ってくる祝いだ」
 簡単に摘めるようにとおにぎりや手巻き寿司、サンドイッチに瑞々しいカットフルーツをたっぷり揃えた霹靂斬風・アーケィ(a31414)が皆にそれらを振舞って、チーズを提供したデューンはひときわ偉そうなぺんぎんスーツ姿で葡萄酒の杯を掲げてみせる。葡萄酒やら果汁やらで賑やかに乾杯し、おなかを満たしたなら再び踊りの輪の中へ。
「さ、アーケィもいっぱい回るんよ〜!」
「わあ!?」
 踊り足りない様子のカガリがアーケィの手を取りくるくると回りだして、楽しげに口の端を擡げてナオがニッケルハルパを掻き鳴らす。嬉しげに口元を綻ばせたユングヴェは梟と三日月の紋様焼き付けられたブズーキを爪弾いて、彼が歌う凱歌に合わせ即興で歌声を重ねていく。
 即興なら負けませんよとばかりにリラも歌声を溶け合わせ、ぺんぎんスーツの翼でマレットを握って弾む音色を木琴で紡ぎだした。花が弾み火の粉が舞う中で、ローラインは揺らめく篝火を見つめ水の髪を翻して緩やかに踊る。
 輝き流れる火の粉の中に花を振りまき踊って笑って。
 快い疲労と昂揚したままの心を抱いて、ヨイクとグリュエルは草の上に寝転んだ。
 何とはなしに顔を見合わせ、楽しいねと笑いあう。

 怪我を負った妻を気遣い短めの踊りと長めの休憩を繰り返しながら、ヨハンはセラの手を取り緩やかな動作で光と花の中をふわりと泳ぐ。君がいない人生は長すぎると囁き、でも僕は必ず君を置いていくんだよねと何処か困ったように微笑んで、妻の背にある翼を愛しげに撫でた。
 瞳を揺らしたセラは「大事な話があるの」と彼の袖を引き、人気のない篝火の陰で夫の手を握る。
「あのね――」
 包み込んだ手を自身のおなかへ触れさせれば、ヨハンが大きく瞳を瞠った。
 ありがとうと囁き妻を抱きしめて、なら余計無理しちゃ駄目じゃないかと白い額を指先で弾く。
 そして二人は、もう一度深く抱きあった。

 眩い金砂を散らした黒瑪瑙のように鮮やかな星空に、暖かな朱金に煌く火の粉が流れていく。
 奏で続けられる楽の音に合わせ弾むような足取りで踊りを楽しみながら、シルファは夜空を仰いで皆で勝ち得た平和を胸いっぱいに抱きしめた。
 願わくば、ワイルドファイアがずっと平和でありますように。
 大好きな緑の大地が、ずっとずっと今のままであり続けますように。

 流れる夜風が丈の短い草を鳴らして荒野を吹き抜ける。
 グレートツイスターがこの地へ帰るのは――もう、すぐのこと。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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