ドラゴン掃討:氷海に深く昏く



<オープニング>


●ドラゴン掃討
 ゾフィラーガ・ヴァンダルから魔石のグリモアを託され、地獄の全てを統合して強大な力を得た王妃との戦いに、ドラゴンウォリアー達は勝利した。
 そして、全てを飲み込まんと迫り来る『絶望』を、溢れんばかりの『希望』と共に打ち破ったドラゴンウォリアー達は、インフィニティマインドと共に、地上へと帰還した。
 大きな脅威が過ぎ去り、戦いは終わったのだ。

「ですが、冒険者のなすべき事が、すべて片付いた訳ではありません」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、改まってそう冒険者達に告げた。
「円卓の間で話し合われた『解決すべき案件』は、まだ多くが未解決なのですから」と。

「最優先順位であった『魔石のグリモアの剣の探索』は完了しました。次に優先順位の高かった『地獄への対応』も、結果的に完了したと言って良いでしょう。つまり、我々が次にすべき事は、3番目に優先順位の高かった案件……つまり『ドラゴン、ドラグナーの発見と、その討伐』です」
 インフィニティマインドがあれば、擬似ドラゴン界を使うことなくドラゴンウォリアーになれる。
 つまり、大勢で一気にドラゴンやドラグナー達を掃討する事が可能なのだ。
「ドラゴンに関しては、すでにルラルさんの超霊視によって、すべての所在が判明しています」
 ドラグナーに関しては数が多いため、もう少し時間が掛かりそうとの事だが、そちらも全容が明らかになり次第、すぐに掃討作戦が決行されるとの事だ。

「あとは、倒すだけで良いのです。この世界からドラゴンの脅威を完全に払拭しましょう」
 その為の作戦に、どうか皆様の力をお貸しくださいと、ユリシアは深々と頭を下げた。

●氷海に深く昏く
 今は大小の氷塊が浮くのみとなったコルドフリード大陸――その近郊の深海の底で、奴らは息を潜めている。
「コルドフリード大陸近郊の海底に、地形が複雑な所があってな。その一帯にドラゴン共が潜んどる事を、ルラルさんが掴んだんや」
 資料を手に、明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)は集まった冒険者達を見回した。
「ドラゴン1匹がギリギリ通れそうな入り口、というか岩盤の亀裂があって、そこから侵入すればええ。海底洞窟と言えば判り易いやろか」
 ドラゴンウォリアーは、どのような環境にも適応できる能力がある。水中でも地上と同じような行動が可能だ。勿論、カナヅチであっても溺れる事はない。
 それに、複数のドラゴンが集まっている場所であるから洞窟内部はとても広い。大勢のドラゴンウォリアーが突入しても、戦闘に支障はないだろう。
「まあ、光の射さない深海の底やけど、星の海でも戦えたドラゴンウォリアーなら何とでもなるやろ。中は、幾つもの亀裂が迷宮さながらの枝道のように走っとる。その亀裂の奥にドラゴン共が潜んどるさかい、注意深くしらみつぶしに狩り出していかんとな」
 上手く隠れる為に『性格や性質の似た者同士』が集まる傾向にあるようで、かつては『ドラゴンロード・ブックドミネーター』の配下だっただけに、狡知に長けた性質のドラゴンが多いようだ。熟知している入り組んだ地形を駆使して、ドラゴンウォリアーを迎え撃つだろう。ドラゴンは、ドラゴンウォリアー10人分の戦闘力を持つ。孤立してしまえば返り討ちも免れない。
「ブレスや特殊攻撃も直接の大ダメージより、麻痺や毒、混乱や出血などのバッドステータスをもたらす搦め手が多いようやな。イメージは、深く昏く……まあ、誰に統率されとる訳やないけど、生延びる為なら戦いで連携くらいは取ってくるやろな」
 今回はインフィニティマインドと一緒であるが、万が一に備え基本的にインフィニティマインドは後方待機となる。マインドの援護は無いものと考えるべきだろう。それでも、擬似ドラゴン界のような人数制限無く、ドラゴンウォリアーを投入できる事は大きい。
「人海戦術、ですか?」
「せや。それもドラゴンも目やないとびきりの連携が可能な、な」
 放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)の呟きに、ラランはいっそ不敵にも見える笑みを浮かべる。
「ドラゴンを確実に倒す事が、まず平和な未来への第一歩や。仰山のドラゴンを相手にする事になるけど……絶望に打ち勝った皆なら絶対に大丈夫やさかい。頑張ってな!」


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参加者
NPC:放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)



<リプレイ>

 深く昏く――氷海の底を目指し、インフィニティマインドは静かに潜航する。
『ルラル・エリンシャより、目標地点到達を報告する。冒険者は随時出撃すること』
 その報を耳にした放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)は、無言で踵を返した。
 次の瞬間、藤色の髪のエンジェルに寄り添っていたキルドレッドブルーが消え失せる。尤も外見は特に変わりない。武器が蔓薔薇模様の美しい深緑の長弓となったくらいか。
「ドラゴンウォリアーになっても、変わらぬ姿が頼もしいこと」
「おや、ミルッヒさん」
 振り返れば、三十路過ぎの女性が金の双眸を細めていた。頭には白金龍の双角、蛇のような二尾が揺れる。
「未来に戦の種火を残さぬよう消し去らねばな。繋がる命の流れの為……私は老後の為にカを尽くそうぞ」
 零れた不敵な笑みに、ネイネージュはいつもの穏やかな表情。
「お互い、全力を尽くしましょう」
 やがて――バトルデッキより幾筋もの水流が弧を描き、ドラゴンとの最後の戦の一端が今開かれる。

 そこは凍える冷たさと押し潰さんばかりの水圧に鎖された深闇の世界。
 だが、ドラゴンウォリアーに適応出来ぬ環境はない。望めば武器を光らせ、暗視すら叶う。人跡未踏の深海の亀裂へ、30名を越えるドラゴンウォリアーが潜行する。
「単独行動は……」
「ああ、控えるべきだろう」
 幼げなレイの呟きに、両腕の腕輪と鎖を揺らしてローも頷く。単独で参加した者もいるが、自然と共闘体制が出来上がる。
 各々仲間同士で一団となり、敵地の只中を潜行する。緊張と警戒を孕んだ眼差しで、バーミリオンは油断なく哨戒する。
(「氷海の昏い底は、本来なら清廉な水の眠る場所。竜には相応しくない」)
 その厳しい横顔をちらりと見やり、ウィーがゆらりと寄り添う。
 エルフの夜目が異質を捕える事もなく――やがて、行く手の亀裂が三叉に分かれた。
(「海中の洞窟に潜むドラゴン……ひと時の大暴れが嘘のようですね」)
「今度は私達が追い詰める側。油断せず行きましょう」
 フォーネの言葉に、強弓『テンペスト』を引き絞るライア。
「入る前に撃ってみましょうか」
 三方それぞれに矢を放つが、反応はない。
 本来なら音もない世界。耳に痛い程の静寂に沈む闇の中、互いの顔を見合わせる。
 体長100mを越えるドラゴンが複数潜む場所ならば、亀裂と言えどかなり広い。幾筋もの枝道でさえ、その幅はドラゴンの行動に支障を来さないだろう。逆を言えば……大きさはあくまで人間サイズのドラゴンウォリアーには広大が過ぎる。奥の奥までを見通すには深過ぎた。
 敵はドラゴン。グドンを狩り出すのとはスケールが違う。それでも、やらねばならない。
(「僕の大事な世界、憂いは決して残さない」)
「右の偵察、行って来る」
 決意を胸に最初に名乗りを上げたのはイク。
「わたしも行こう。タスクリーダーが使える」
 続いて、荊の黒髪に血塗れの翼を負うミツバがボソボソと呟いた。
「あまり人数が多いと警戒されるにゃ」
「……ならば、真ん中は私達が行こう」
「こちらで引き寄せますので連携して倒しましょう」
 次にタンゴ、レイザス、ヤミーの【蒼黒】の3人が、真ん中の亀裂へ向かう。
「左は私が」
「単独では危険です。クリスタルインセクトで支援します」
 イオリにはソルティークの偵察型クリスタルインセクトが寄り添う。
 三様の先行偵察が亀裂に消えて暫く――最初はミツバの心の声。
『イクがドラゴン1体発見。急ぎ攻撃を――っ!?』
 息を呑んだのが感じられた。
『気付かれている!?』
 俄かに緊迫する中、ソルティークの声が響く。
「数は1体。こちらに気付いています。皆さん迎撃の用意を!」
 クリスタルインセクトは一呑みだと、ソルティークは歯噛みした。同時に左から爆発の振動――イオリのナパームアローだ。
 やや遅れて、中央の深奥に一瞬輝きが走る。ヤミーの放ったサンダークラッシュか。
 敵地の只中に在って先制攻撃を目指すなら、最初から全体の隠密行動を徹底すべきだった。ドラゴンウォリアー10人分の敵に寡兵の先行偵察が見付かった場合を、もっと危険視するべきだったかもしれない。
 それでもドラゴンウォリアー達の動きは迅速だった。
 イオリが属する【月彩】の9人は左へ。【神緑】の6人及び【猫の手】の3人は中央へ。そして、残り9人は右の亀裂へ急ぐ。
 図らず戦力はほぼ3等分され、三方同時に戦の火蓋は切って落とされた。

(「こんな所に潜んでいたとはな……哀れな気もするが、世界の未来の為にも倒さねば」)
 初手はクリスタルインセクトが呑まれる間にナパームアローを放てたイオリだが、今は仲間との合流が先。
 左の深奥から現れたドラゴンは正に深海の色。徐に開いた口から吐き出されたのは、海中でさえ溶けぬ氷結の奔流。
「くっ!?」
 イオリがブレスに呑まれるのと、その装甲が姿を変えたのはほぼ同時。彼の身を凍らせる氷結を砕くかのように、突き刺さった矢はすぐに消えた。
 ファンバスの鎧聖降臨とタージのヒーリングアローが間に合ったのだ。
「こんな戦闘は初めてですが、頑張らないとですね〜」
 ルミリアがヘブンズフィールドが展開する間に【月彩】のメンバーも次々と駆け付ける。
「だ〜♪」
 無邪気な声を上げる幼子の周囲を、複数の水晶球が巡り続ける。
(「主を亡くしたドラゴン達……放って置いたらどうしたのか、興味は少しありますけれど……」)
 それでも、戦いに往く者の手助けが役目と思うから。ローラインの静謐の祈りが、イオリを覆う魔氷を溶かす。
(「ドラゴンとも共存出来たら良かったんですけどね。不要だと言われるのは、やはり悲しいですから」)
 だが、民への被害は見逃せない。後世の憂いを絶つべく、セリアは黒炎を纏う。同じく黒炎覚醒したレムは、ドラゴンを睨みつけた。
「長い付き合いになるのは御免です。あなた方なんて大っ嫌いですもの」
 その声が聞こえたのか否か。ドラゴンの顎が再び大きく開く。
「来ますわ!」
 ホワイトアウト――氷結の奔流が荒れ狂う。だが、ヴァレリアの高らかな凱歌が仲間を癒す。
「多くの血を流し人を悲しませたのです。もう十分でしょう?」
「かくれんぼもお終いなのです! ここで倒されてもらいますですよっ!」
 接近したウサギのスピードラッシュが一撃、二撃……三撃目を爪で弾かれた所に、フォーネのホーリースマッシュが叩き付けられる。
 ヘブンズフィールドと静謐の祈りに守られた【月彩】隊は、ブレスの魔氷をものともせず次々畳み掛ける。ドラゴンも直接攻撃に切り替えるが、セリア達の厚い回復に為す術もなく。
「その爪で、もう2度と人々や大地が抉られる事が無い様に……断つ!」
 年相応の精悍な顔立ちはファンバスの魂の顕れ。斧刃となった蛮刀『フリッサ』からの大岩斬が、ドラゴンの命を断ち切った。

「は、ボクみたいな子供相手に隠れるなんて、最強のドラゴンが聞いて呆れるにゃ」
 挑発が効いたのか否か。突如亀裂の影が伸び上がるや、鋭い爪がタンゴに叩き付けられる。
「かふっ!」
 シャドウロックで身を固めてさえ肺腑を揺さぶる衝撃に咳込む。
「弱い者を狙うなんて卑怯もいい所ですわ」
 レイザスの高らかな凱歌が癒す間に、サンダークラッシュを叩き付けるヤミー。
 このまま誘き寄せ、他班と合流すれば……だが、漆黒のドラゴンは亀裂の奥へと身を翻す。
「敵に背を向けるなど、言語道断ですわ!」
 逃がさない――この地でタロス達に何をしてきたか、忘れたとは言わせない。罪はその身で償わせる。
 強い使命感が【蒼黒】の3人を動かす。咄嗟に眠りの歌を歌うレイザスだが、抵抗以前にドラゴン程の巨体には効かない。
「!?」
 再反転したドラゴンが吐いたのは紫暗のブレス。ジワリと肌を灼く毒の粒子は精神をも侵す。深く深く――心身を蝕むその毒は容易く抜けない。
「タンゴ、ヤミー!?」
 辛うじてブレスに抵抗したレイザスだが、毒と混乱に陥る2人を即座に解放出来ない。よもや先手の消費が、即跳ね返ろうとは。
 強敵に深入りした寡兵の脆さが露呈する。【神緑】と【猫の手】の増援がもう少し遅ければ、命さえも危うかったかもしれない。
「義によって助太刀しますわ!」
 ニーナの大音声が響き渡る。
(「ドラゴンの締め上げは腕が鳴りますわね。殺試合の始まりといきますか!」)
 長い黒髪と硬質の灰翼をなびかせ、アーリスは覚醒した血の滾りのままパワーブレードを叩き付ける。
(「自分の役目は前線の維持……身体を張ってでも守ってみせる」)
「我が故郷の海に棲み付く悪しきドラゴンよ。今こそ取り除いて差し上げましょう」
 金属のように硬質な羽根を展開させ、クロエも破鎧掌を放つ。
(「まぁ、コルドフリード自体既に無くなっている気もしますが、瑣末な事です!」)
 前衛がドラゴンに取り付く間に、ユウは重傷者を回収する。
(「これ以上、同胞達に被害を出さない為に。平穏な未来の為に」)
 タロスボディに描かれた蒼翼の紋様が煌めく。3人もの離脱には時間がかかりそうだが、仲間の援護を助けに死者は出さずに済みそうだ。
 一気に増えたドラゴンウォリアーを前に、漆黒のドラゴンが蠢く。毒のブレスが迸るのと戦場が淡く輝いたのはほぼ同時。
「状態異常の回復は俺に任せるがいい、そっちは傷の回復を頼む」
「だいじょーぶ。ボクがいる限り、誰も傷つけさせはしないからねっ」
 逆十字架の巨大剣を翳して静謐の祈りを始めるユーリグに頷き、ヘブンズフィールドを展開したアイリーンは白黒2対の翼を羽ばたかせる。
「回復はボクに任せて、皆は攻撃に専念してっ」
 その明るい声に押されドラゴンへ攻撃が殺到する。
 息を合わせたリッケの緑の業火とライアのガトリングアローがドラゴンを穿ち、ソルティークのエンブレムノヴァが竜鱗を焼く。
 ゴオォォォアッ!
 逃亡をも許さない前衛の猛攻に後衛からの大火力。尚も吐き散らされる毒のブレスは、ユーリグとアイリーンの医術士2人を中心に、各自の回復アビリティが中和する。
 これこそ連携――自己の為にしか力を使わない古代ヒト族の脅威に対する、ドラゴンウォリアーの真骨頂。
「あなたもブックドミネーターと同じように冥府の奈落へと堕ちるがいい」
 全身を朱に染めながら、瀕死の呈でドラゴンは身を翻す。死なば諸共と言わんばかりの突貫に、薄く笑みを浮かべるソルティークの手が淡く輝く。
 強烈なエンブレムブロウに抉られた喉元へ次々と刃が突き刺さり――千切れた竜の首はゆっくりと亀裂の底へと堕ちて行く。

 スパイラルジェイドを放とうとしたイクを、咄嗟に突き飛ばした。
「ミツバ!?」
「……時間を稼ぐ」
 ドラゴンの巨躯を前に、童姿のミツバは吹けば飛ぶ風情。だが、イリュージョンステップは短時間ながらあらゆる攻撃を受け流す。重量ある爪の一撃もゆらりとかわしてのけた。
 それでも、ドラゴンの攻撃は苛烈。
「く……」
 赤黒いブレスに痺れ、逆棘に似た粒子が出血を強いる。
 身動きもままならぬ2人を嬲るように、ドラゴンが口を開いた時――高らかな凱歌が響き渡った。
「間に合いましたねぇ」
 安堵するタケマルに、カガリも思わず唇を緩める。暗い海底で微笑んでいられるのは、傍らに最愛の人がいるからこそ。
「心強いねぇ……普段の形と違うけども、妾は妾。宜しくお願いするよ、且那様」
 颯爽とドラゴンへ向かう妻を見送り、タケマルは口付けを貰った頬に触れる。
「愛しい人が一緒ですから、ふんばりませんとね。殆ど見た目の変わらない私は迫力に欠けますけど、はは」
 だが、蠢くドラゴンに照れ笑いも一転、真剣な表情で次の回復に備える。
「何とも厄介な相手ではあるが、御相手いただこう」
 やはりドラゴンに接近してイリュージョンステップを踏むロー。鎧進化、血の覚醒、黒炎覚醒と、それぞれが戦力を増強する中で、ネイネージュのガトリングアロー、ミルッヒのスパイラルジェイド、カガリのライトニングアローが先陣を切る。
「深海の闇の中こそこそと……雷の煌きで照らしてやろうかね、これでも喰らいな!」
 連射と突撃に身を抉られ一条の光迅に貫かれながら、灰白のドラゴンは荒々しく頭を振る。
 荒れ狂う麻痺と出血のブレス。医術士不在にヘブンズフィールドや静謐の祈りはない。高らかな凱歌や毒消しの風で随時回復を図りつつも、回復に手が割かれればその分火力が減じる。
 戦闘は長引くもドラゴンウォリアーの攻撃は止まらない。イクのスパイラルジェイド、ミツバのミラージュアタックが幾度もドラゴンを切り裂き、通常攻撃を交えたローのミラージュアタックとアイレンのヴォイドスクラッチが厚い表皮を貫く。
 満身創痍、それでもドラゴンは倒れない。
「っ!」
「バーミリオン!」
 尾の一撃が朱髪の狂戦士を貫く。咄嗟にカバーに入ったレイがお返しとばかりに飛燕連撃を放つが、弾かれた。
(「此処まで来て死ぬ気はないけれど……誰も死ぬ事なく、この戦いを終わらせないと」)
「……一体残らず、消えてもらう」
 金色の瞳に強い決意を込め、赤き剣を構えるバーミリオン。
 手負いのままの構えは、デストロイブレード――極限まで凝縮した闘気が大爆発を起こす。
 ガアァァッ!
「ねぇ、どいてくれる……?」
 戦友の一撃に合わせた術扇の一振りに凍える様な殺意を乗せ、ウィーはクスリと嗤う。
 その巨大さ故にクローンが現れなかったが……大きく抉られた胸部に爆ぜたデモニックフレイムは、ドラゴンの命を喰らい尽くした。

 再び合流を果たしたドラゴンウォリアー達は、粛々とドラゴンの掃討を進めた。
 誘き寄せるのも複数の小隊でかかれば危険も少ない。枝道を探り、狩り出し、30人がかりの集中攻撃で殲滅する。
「そろそろ、アビリティが心許ないが……」
 常にアビリティ残量を気遣っていたアイレンは、些か厳しい面持ちでブラックフレイムを放つ。
 眼前には深緑と鈍色の2匹のドラゴン。既に集中攻撃で深緑のドラゴンは瀕死の呈だ。
「後少し……」
「死んでも死にきれねぇぐらいにブチのめしてやるぜ!!」
「穿つが如く!」
 レイの一撃にニーナとユウがパワーブレードを畳み掛ければ、深緑の影が深淵へと堕ちていく。
「せめて静かな眠りくらいは、約束してあげます」
 最後の追い上げとばかり、攻撃に加わるレム。アビリティが尽きたタージも黙々と矢を撃ち続ける。
「ウサギ達は世界を守る為の冒険者なんですから!」
 ウサギの一撃がドラゴンの爪を1本斬り飛ばした。
 残り1匹も満身創痍。だが、瀕死の芝居を警戒したリッケが回復すれば案の定。
 ヴォォォンッ!
 最後の足掻きか、放たれたのは封術のブレス。そのまま掴み掛るドラゴンに衝撃波を叩き付け、ヴァレリアは叫んだ。
「さあ皆様、この好機をモノにして下さいませ!」
 回復役へ突貫したドラゴンは包囲のど真ん中。ブレスから逃れた幾重もの静謐の祈りが、ドラゴンウォリアーに力を戻す。
「これで最後、悪意に満ちた存在は光溢れる世界から消えておしまい」
 殺到する攻撃。ミルッヒの最後の飛燕連撃が身を捩るドラゴンの喉笛を切り裂く。
「何万年も経ってやっと帰ってきた末路がコレでは可哀想な気もしますが……」
 最後まで油断なくヒーリングウェーブを放ったルミリアはクスリと笑む。
「来世では良い子になって幸せに生きられますようお祈りしますわ」

「これでドラゴンによって散った魂が救われると良いのだが」
「地獄に続いて竜の物語もそろそろ終局と思うと感慨深いですねぇ」
「だが、一歩間違えれば我々も……そう考えれば彼らは道を示した存在といえるかもしれない、反面教師として」
 ドラゴンウォリアー達は勝利の昂揚を胸にインフィニティマインドへ帰還する。
 最後まで残ったウィーは静謐な深海から見えぬ空を見上げ、ゆらり揺蕩う。
(「ずっと此処で眠ることが出来たら良いのに」)
 ドラゴンの屍は氷海に深く昏く横たわる――静寂が戻った。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
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参加者:32人
作成日:2009/09/18
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