＜リプレイ＞
コルドフリート大陸近郊の海……。
そのとある海域の上空に冒険者達は居た。
「この下にドラゴンが……ほんと寒そうね……？」
女王様志望・メイ（a75704）の見下ろす遥か下の深海に、ドラゴン達が潜んでいる。
暗く静かな、コルドフリート大陸近郊の海の底。
いや、海の底……などという言葉すら生温い、暗く深い深海の底。
通常の人間では近づく事など叶わない場所だが、ドラゴンウォリアーである彼女達にならば侵入可能であった。
「平和な世界にする為に、ボクらが頑張らなくっちゃ……油断できる相手じゃないもんね、最初から最後まで全力で行くんだよ！」
双星の邪竜導士・ヤーミィ（a53834）の言葉通り。
眼下に潜むドラゴン達を倒す事が、世界の平和への第一歩となる。
「よし、行こうよ。アタシ達冒険者の全力、あいつらに見せてやろうじゃん！」
霧霞む朝方の竜胆・ラセン（a44292）の掛け声と共に、冒険者達は眼下の海へと突入すいていく。
目指すはドラゴン……残された、兇暴なる悪の力。
「……海底に光りがある様は美しくもあるでしょうけれど、それが災厄の兆しとなるのなら。こちらの都合で消すことも、やむを得ませんか」
海中を剣で掻くようにして進む白き大鴉・セシル（a72318）の周りは暗く、冷たい。
「寒くはないけど……暗い。この感じ……先日の混沌に少し似てるな……」
最も、絶望の暗闇には遠く及ばないが……白翠狼の牙・ルド（a43380）は、この深海の暗闇の中にあの混沌を見た。
そして、払うべき希望の光は、彼等の手の中に。
深く、深く潜っていくと……静かな、声が響いた。
「こんな所までやってきたか」
「驚嘆すべき執念だ」
「だがその執念、仇となる事を知るがいい」
「骨の一欠すら残さぬ」
集まる光の奔流。
其処に居たのは数体のドラゴン。
冒険者達が降りてくる事に気づいていたのだろう。
「光の前に滅びよ」
放たれたブレス。通常ならば完璧な不意打ちだが、冒険者達とてドラゴンが居る事を承知で降りている。
「来る……避けろ！」
変遷する紺青・ジィル（a39272）の掛け声で、全員が散開する。
それは、戦いの始まりの合図でもあった。
「明日を賭けて勝負だ、ドラゴン野郎共！ いくぜ、ホワタァァァッ！」
燃龍ブ・ルース（a30534）に続くかのように、全員がドラゴンへと向かっていく。
「いい加減邪魔です！ 空気読めない皆さんは滅びるがいいのですよ！」
親愛の白霜・セルト（a36973）のデモニックフレイムが一匹のドラゴンに食らいつくと、銀夜・イクセル（a45091）が追撃をするべく黒鐵を構えてデストロイブレードを放つ。
「……別に恨みはねぇが、お前らが生きてると、平和な明日ってのが来ない……さっさとくたばれ……」
「それを言うべきは我等だ。くたばるがいい」
更に追撃をかける夕眺陽炎・トラップ（a52495）のシャドウスラッシュを受けつつも、ドラゴンは光のブレスを放つ。
同時に別のドラゴンから放たれた無数の光の槍の１本がトラップやダンディ・クロコ（a22625）に突き刺さるが、幸運の舞い雪・クィリム（a62068）の高らかな凱歌が傷を癒す。
「その攻撃は危険です……最優先で倒させてもらいますよ！」
「やれるものならやってみるがいい！」
砕けぬ刃・ニザーム（a28931）のサンダークラッシュをギリギリの所でかわしながら、ドラゴンは深海を舞う。
「我等『荒鷲に連なる者』の力を見よ」
「私のとっておきを見せてあげます！ 薔薇の剣戟！ ハル☆ファンタジーア・スペシャル！」
賢鷲侯・セラシオン（a62546）のサンダークラッシュと豪鷲侯・ゼパニオン（a62547）のデストロイブレード、凛鷲侯女・ハルジオン（a62548）の薔薇の剣戟が見事な連携で炸裂し、たった今光の槍を放ったばかりのドラゴンが揺らぐ。
「俺達が揃えば敵なしだぜ。さぁ！ ぶっ飛ばされたいのはどいつだ!?」
「調子に乗るな……！」
ゼパニオンの言葉に挑発されたのか、１匹のドラゴンが光のギロチンを放ち。
「隙だらけだな……お前達にも随分苦しめられたが、今回で最後だ！」
その隙を狙い、赤雷・ハロルド（a12289）の指天殺が撃ち込まれる。
「合わせろ……行くぞ」
「……誰に言ってるのです……？」
黎燿・ロー（a13882）のミラージュアタックと燬沃紡唄・ウィー（a18981）のヴォイドスクラッチが続けて炸裂し、ギロチンを放ったドラゴンが距離を取る。
「……終りを始めましょう……新しい始まりの為に……降天せよ、虹臨纏し星の劫火」
それに月詠み賢女・シリア（a23240）が追撃のエンブレムノヴァを放つと、ドラゴンは苦痛の声をあげる。
「ふん……恥さらしめ」
別の場所で戦っていたドラゴンが、仲間の様子に侮蔑の眼差しを投げかける。
「お前もすぐにそうなるだ」
種をまく人・ウィルカナ（a44130）の言葉に、ドラゴンは憐みの視線を投げかける。
彼等ドラゴンにとって、冒険者達は小癪な羽虫にしか見えてはいない。
それ以上の感情を、持ちえないのだ。
「ドラゴンさ追っかけてたカーツさの分まで戦うだよ。みんないなくなってしまえ、だよ」
放たれたホーリースマッシュを受けつつも、ドラゴンは反撃するべく態勢を整え。
「おらーちまちませこせこ、もやしっ竜共、俺様が相手してやるぜ！」
突進してきた天使を守護する獅子の王・ラオコーン（a24556）のパワーブレードが、そこに炸裂する。
「貴様らにも、等しく敬意と感謝を」
「――我等は竜を狩るもの、邪悪とて敬意と尊敬を持って相手しよう」
続けて対峙する真っ赤なお伽話・デスペラード（a27803）と聖剣の騎士・アラストール（a26295）が、それぞれの武器を構えて立ち塞がる。
「くだらぬ能書きを……羽虫の敬意が何になろう、羽虫の一刺しが如何程のものか！」
吼えるドラゴンの身体が光に包まれシリアに向けて突進するが、その前に絶対堅護・バラッド（a32234）が立ち塞がる。
「――我鎧は浮沈の城塞、我盾は不動の城壁、我守り、容易く抜けると思うな」
「城壁など、我の突進の前では向かい風程の障害にもならぬわ……爆ぜて消えるがいい！」
ドラゴンの突進を正面から受けたバラッドは思わず意識が飛びかけるが、何とか踏みとどまり……そこに、デスぺラードとアラストールが反撃を仕掛ける。
「ロックンロール！」
「――この一刀は、千の雷に通ず」
放たれた達人の一撃とサンダークラッシュがドラゴンに突き刺さり、憎々しげな目でアラストール達を睨みつける。
「僕達冒険者にはドラゴンには無い絆や仲間がいる事を教えてあげましょうか。みんな行きましょう！」
「くだらぬ……！」
月下黎明の・アオイ（a68811）の言葉に応え月笛の音色・エィリス（a26682）のヒーリングウェーブが仲間達の傷を癒していくのを見て、ドラゴンは吐き捨てるかのように咆哮する。
アオイの護りの天使達が展開されていくのと同時、ドラゴンがアオイを攻撃するべく睨みつけるが……その眼前に、仲間達が立ち塞がる。
「さあ、焼かれて落ちろッ！」
「ボクらの未来に、お前達は要らないんだよ……！」
綾なす火炎の小獅子・スゥベル（a64211）のエンブレムノヴァとヤーミィのヴォイドスクラッチが放たれ、セシルのソニックウェーブが追撃をかける。
「思慮深いと聞いていましたが……積極的に連携してくるわけではないようですね」
そう、それがドラゴンロードというリーダーを失ったドラゴンの限界だ。
纏める者がいないが故に、対等であるが故に。指示を出される事を嫌うのだ。
誰かに委ねるという行為を嫌い、本来の思慮深さを奪う。
それがドラゴンというモノなのだ。
「少し緊張します……でも仲間と一緒に戦うのは心強いですね」
星の導き・チユ（a72290）の言葉。
それこそが、ドラゴンと人間の境目と言えるのだろう。
仲間などという言葉はドラゴンには無いのだから。
あるのはただ、上か下かだけ。
そしてそれは、ドラゴンの弱さでもある。
「こんな冷たい海で、期待する未来を待つつもりかね？ 来させるつもりもないがな、そんな未来」
「つもりは無くとも訪れる。邪魔はさせんぞ」
月無き夜の白光・スルク（a11408）の飛燕連撃が放たれるが、ドラゴンはそれを正面から受けながらも光線のブレスを放つ。
「ぐっ……！」
すかさず此岸に咲く緋の華・クスリ（a16757）の癒しの聖女が発動し、スルクの傷を癒していく。
「……そこっ！」
フォローに入った久遠槐・レイ（a07605）の飛燕連撃が炸裂し、ドラゴンはレイの方向へと憎しみの視線を向ける。
だが、そこに背後から漢・アナボリック（a00210）のデストロイブレードが繰り出される。
「羽虫め……蹴散らしてくれる！」
無数に生み出された光の槍が四方八方へと発射され、蒼銀月灯・リロード（a43900）がまともに受け、よろめく。
「これまであんまり役に立てなかったけど……今日は仲間と一緒だから！」
それでもリロードは気力を奮い起こし、ソニックウェーブを放つ。
「そうですね。それでも勝てると思うのは、仲間が共に居るからです……！」
「……未来にまったく明るくも暖かくもない光ですね。小さくても闇に灯るもっと強い光を知ってるのです。あなた達は、深海の闇の中で大人しく寝ていてください」
落陽を纏う朱剣・レイラン（a34780）のサンダークラッシュが放たれると同時、鈴花雪・ソア（a32648）のデンジャラスタイフーンが炸裂する。
「この戦いで、クィリムも変わりたいなぁん。みんなの未来を、守りたいから……」
幸運の舞い雪・クィリム（a62068）の高らかな凱歌が仲間達を包んでいき、銀夜・イクセル（a45091）のデストロイブレードとラセンの指天殺がコンビネーションで炸裂する。
「将来の子供達に武器なんか持たせたくねぇんだよ……悪い芽は余さずオレの斧で刈り取ってやる！」
「笑わせる。ならば自らを滅するがよいわ！」
吠えるドラゴンに向かい、音塊嵐・ジュージ（a63631）がパワーブレードを炸裂させる。
「アイツも頑張ってっからな。オレも負けてらんねェなぁ〜ん」
だが、まだ終わらない。そこに、狩人・ルスト（a10900）がライトニングアローで追撃をかける。
「ドラゴンとの戦いも、随分長かった気がしますね。良い頃合です、終らせるには」
「ええ。これで本当に終わりにしましょう」
願いの言葉・ラグ（a09557）のヒーリングウェーブが広がっていき、傷ついた仲間達を癒していく。
すでにドラゴン達と冒険者達の戦力差は覆しがたいところまで来ていて。
それでも、冒険者達は一切の気を抜かず。
それでも、ドラゴン達は闘志の陰る気配を見せない。
「貴様らに明日への光はないと知れよ。本日を持ってドラゴン戦争は真に終幕となる！」
「終わるとも。明日より先が無いのは貴様等だがな……！」
暁天の修羅・ユウヤ（a65340）の指天殺が炸裂し、傷ついたドラゴンは苦痛の呻きを漏らす。
「……終焉を告げるカリヨンは鳴ったのだ……この一太刀は、せめてもの手向けだ……持って行け……っ！」
「その手向けは貴様の墓に持っていくがいい！」
青雪の狂花・ローザマリア（a60096）のサンダークラッシュがドラゴンを貫き、ドラゴンは大きくよろめく。
すでに倒れたドラゴンも居る。
生き残っているドラゴンも、深い傷をおっている。
だが、それでも彼等は互いを顧みない。
そして、引かない。
その身に持つ、絶対的強者のプライド故に。
「これで終わりにするぜっ！」
ルースの破鎧掌が炸裂し、ドラゴンは海の底へと沈んでいく。
「我等の光が……おのれ、おのれ……羽虫共がぁぁ！」
ドラゴンが再び光に包まれ、突進する。
「光？ そのような不浄の光が、我等を止めることはできない」
「……現在も未来もお前たちの好きにはさせぬ……っ！」
セラシオンが、ローザマリアが。冒険者達とドラゴンが、互いに決着をつけるべく交差する。
「待ってくれているヒトがいる……それに、謝らなきゃいけない奴が……いるからッ……だから……終わらせよう、このドラゴンの戦禍を 」
ルドの言葉に、海底に落ちゆくドラゴンは侮蔑の視線を投げかける。
「……理解できん」
そう言って、この区画のドラゴンの全てが沈黙した。
「これで……終わったのですか？」
エィリスの言葉に、クスリが静かに頷く。
「ええ……終わりです」
静寂を取り戻した深海の底は暗く……とても、静かだ。
今までの激戦が嘘だったかのような静寂に、誰もが現実離れした感覚を感じていた。
ウィーも、この深海の底に、どこか懐かしくてずっと居たいと思うような……そんな事を考えていた。
「平和な未来に一歩近づけましたね」
「ええ、この世界の希望に繋がる未来……私達が、勝ち取ったんです」
チユの呟きに、アラストールはほっとした笑顔で返す。
まだ硬い空気をぶち壊すかのように、ラオコーンの大きな笑い声が響く。
「コマけーことを考えんのはやめようぜ！ 無事に終わったんだからいいじゃねえか！」
「確かに……そうですね」
セルトがクスリと笑ったのをきっかけに、辺りに笑い声が広がっていく。
「お互い、難局を無事生き延びれたみたいで良かった。また遊びに来てくださいね。先に逝ってしまった団員達も喜ぶと思うから」
「うん、御誘いとお宝があれば、ボクはいつでも飛んでいくんだよ」
ニザームとトレジャーハンター・アルカナ（a90042）が笑いあっていると、アナボリックがアルカナの頭に手を置いて撫でる。
「世の中そういう事もある」
「そ、そうだね？」
どう反応したものかと悩んでいると、今度はメイがやってくる。
「ねえねえ、アルカナさん？ 深海にすっごい宝物が沈んでたりしないかしら？」
「むむっ、その可能性は高いんだよ！」
「ちょっと見て行かない？」
お宝の話で盛り上がり始めた２人を見て、シリアは近くにいたソアに呟く。
「……あると思います？」
「……ドラゴンの死骸なら」
メイ達ににキッと睨まれてシリアとソアはそっぽを向いて。
「ひょっとしたら、あるかもしれませんね？」
「かもしれねぇなあ」
そんな事を言うレイランとジィル。
人の手の入らなかった場所だ。ひょっとすると、何かがあってもいいのではないか。
そんな気がしてくるのも当然の事だ。
そして、そういう考えが浮かんでくるのも……彼女達の緊張した心がほぐれてきた証拠だろう。
「思わぬ所で宝探しになりそうだな……どうする？」
ルースの言葉にデスペラードとハロルドは顔を見合わせ、肩を竦める。
「……いつもの事だ」
「……だな」
少しずつ海底に降りていく仲間達を見て、スルクとクスリも微かに笑う。
「仕方ないのう」
「これも冒険者の性……全力で果たしましょう」
どんどんと降りていく冒険者達。
こうなると、心のストッパーも外れてくる。
「オレ達も行くか？」
「じゃあ、あたしも……」
掴んだ結末、そしてその先に続く未来。
今、冒険者達は……考えうる限り、最良の結末を掴んだ。
その先にある未来は、今はまだ分からないけれども。
「そろそろ帰るぞ……」
ローに促され、再び海上へと向けて上がっていく冒険者達。
彼等ならばきっと、最良の未来を掴めるに違いない。
彼等に満ちた仲間を信じる心、希望を捨てない強さ。それらを兼ね備えた、彼等ならば。
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参加者：41人
作成日：2009/09/18
得票数：冒険活劇6
戦闘22
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冒険結果：成功！
重傷者：なし
死亡者：なし
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