【グラスランナー】通せんぼは眼鏡っ娘?



<オープニング>


 デル・ヴァーン――性別、男。年齢、33歳。種族、犬尻尾のストライダー。職業、ルベリア村産眼鏡職人。結婚5年目にして、去年の9月に待望の愛娘が生まれている。
 愛娘の1歳のお祝いにお守りの鼻眼鏡を作るべく、冒険者達と貴石の沢に向かった彼は、見事にお目当てのサファイアの原石をゲット。意気揚々と帰途についた……筈だったのだけど。
「困りました……このままでは帰れません」
 冒険者と別れて幾らも経たない内に、また冒険者の酒場に駆け込んできたデルは、心底困惑した表情だった。
「ルベリア村に帰るには、セオ山の峠を越えなければならないんですが」
 本当に困っているのだろう、いつものハイテンションと打って変わった深刻な面持ちで、ボソボソと事情を説明する。
「その峠が、閉鎖されてしまっているんです」
 最寄りの村で聞いた話では、何でも化け物が出たとの事。遭遇した行商人は命からがら逃げ帰ったので難を逃れていたが、そんな危険な道をそのままにしておく訳にはいかない。
 セオ山の峠は近辺の交通の要所であり、ルベリア村は地域の纏め役。それで村長の息子でもあるデルが、依頼人を買って出たという。
「早く帰らないと、娘の誕生日に間に合いませんから!」
 まあ、本音は別の所にあるようだが。
「……どっかから流れて来たモンスターやな。セオ山の峠には山小屋があるんやけど、いつもはその屋根の上におる」
 姿は――と、そこまで言い掛けて、明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)は何とも言えない表情になった。
「顔は人形みたいな無表情やから、すぐ異形のもんやて知れたみたいやけど……雪みたいな白い肌で、切れ長の赤い瞳のメイドさんや。プラチナブロンドはふわふわの巻き毛で、耳は猫耳。ちなみに、靴はエナメルのピンヒールや」
「……」
 突っ込みどころ満載な外見である。
「どうやら、峠を自分の縄張りに決めたみたいでな。通ろうとする人を……山小屋の屋根から飛び降りると、通せんぼして邪魔するんや」
「通せんぼ……」
 それはもう、しつこく纏わりつくように行く手を遮ろうとするらしい。だが、見た目はどうあれ、正体はモンスター。すぐ凶暴な性質が露わになる。
「無理に峠を通ろうとすれば、怒ったモンスターは攻撃をしてくる」
 攻撃は3種類。どれも光線による攻撃だ。
 1つ目は、連続して光線を単体に叩きつけてくる追撃攻撃。
 2つ目も単体対象だが、湾曲した光線が予測しにくい方向から攻撃してくる為、防御困難だ。
 3つ目は、拡散した光線が広い範囲に降り注ぐ。
「まあ、どの攻撃をしてくるかは多分判るんとちゃうかな」
「それは……?」
「そのモンスター、首に下げとる眼鏡を掛け替えて攻撃してくるさかい」
「……目からビーム?」
「シャドウスナッチかい!」
「ちゃうちゃう」
 真剣な表情で頭を振るララン。
「『眼鏡』からビーム、や」
「……」
 ちなみに、追撃光線はトンボ眼鏡、湾曲光線はビン底眼鏡、拡散光線は鼻眼鏡が対応しているらしい。
「…………素晴らしい」
 形容しがたい沈黙の中、ぼそりと呟く依頼人。
「何という様式美! これは是が非でも一目拝まなければ!!」
「で、デルさん?」
 バターーンッ!
 ぷらぷら揺れる酒場のドアを眺めて、ラランははぁぁっと溜め息を吐いた。
「取り敢えず、デルさんの方を何とかしてから、モンスター退治頼むわな」
 セオ山の峠の道幅は、ノソリン車もすれ違えるくらいに広い。片や絶壁が迫り反対側は谷間へ真っ逆様の断崖で開けた尾根伝いだ。山小屋は絶壁を背にして建っている。
「峠にいる限り、モンスターが逃亡する事はないやろな。逆を言えば、仮に撤退してもモンスターが深追いしてくる事もない。けど、人が通る所やさかいに」
 そしたら頑張ってな、とラランはヒラヒラ手を振った。


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参加者
観察者・ヒリヨ(a02084)
降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)
凪・タケル(a06416)
メガネマイスター・コロクル(a08067)
赤烏・ソルティーク(a10158)
ヒトの剣聖・ジュダス(a12538)
全開・バリバリ(a33903)
茶色の小瓶・シャルロッテ(a69110)


<リプレイ>

 今回の依頼は、まず追いかけっこから始まった。
「何が楽しくて男と……」
 ブツブツ愚痴りながら、グランスティードを駆るヒトの剣聖・ジュダス(a12538)。
「少しの我慢ですから……それにしても、デルさんはまったく。いてもたってもいられないのは解りますが、モンスターはモンスターなんですから」
 少しは自重して貰わないと、と相乗りしている赤烏・ソルティーク(a10158)も溜息1つ。
「でもまぁ、だからこそデルさんなんですよね」
「ふん。今回の依頼内容は、変態を守れ、なんだな」
 面倒臭げなジュダスの身も蓋もない呟きに、ソルティークは苦笑を浮かべる。
「せめて『変人』と言いませんか」
 正確に言えば、モンスター退治が今回の仕事。だが、先に依頼人を確保しないと、後々厄介なのは確実だろう。
 ともあれ、グランスティードの早駆けなら、一般人に追い付くのは雑作もない。懸命に駆け足な依頼人が見えてくれば、追い抜き様に流れる眠りの歌。
「……グゥ」
 忽ちデルは足をもつれさせ、パッタリ眠り込んだ。

「うおおおん!! デルさん、超久しぶりやんけ!!」
 がっくんがっくん揺すぶられて、デルはハッと眼を開く。
「見てこれ、見て!」
 デスメガネにウェルカム・グラス、象牙色の眼鏡ケースにビーズのグラスコード、果ては眼鏡洗浄機に至るまで……珠玉の眼鏡グッズをデルの眼前に突き付ける(正確には見せびらかす)のは、メガネマイスター・コロクル(a08067)。
「こ、これは!?」
「超ナイスメガネェェェェ!!!」
 親愛の挨拶と共に迸った粘り蜘蛛糸が、容赦なくデルをぐるぐる巻き。
「パツキンメイド眼鏡っ子の姿を見る権利、僕がいただいた! デルさんには後で亡骸の眼鏡でもあげるわ!!」
 フハハー! とばかりに駆け去るコロクルを、皆揃ってポカーンと見送る。
「……まあ、手間が省けたという事で」
 簀巻き用の麻縄を律義に仕舞い直し、ソルティークは再び大地と仲良くなったデルをひっくり返す。
「だからあなたに何かあったら、エルマさんとリリシャちゃん、そして眼鏡っ娘達に、私は会わせる顔がないと言ってるでしょう」
「モンスターは、見た目が普通でもとっても怖い存在です。もしデルさんに万が一があったら、奥様とお子さんがどんなに悲しむか……」
「そ、それは……っ」
 まあ、今回のモンスターが「普通」かはさて置き。茶色の小瓶・シャルロッテ(a69110)の眼鏡越しに揺れる茶色の瞳に、思わず言葉に詰まるデル。
「見た事もない眼鏡には憧れもしますけど、命あっての〜ですからねぇ」
 だが、苦笑交じりの凪・タケル(a06416)の言葉に、ハッと身を起こ……そうとして、敢え無く撃沈。
「だって、素晴らしいじゃないですか! 眼鏡からビーム! それも3種類もですよっ! ビームが出せる眼鏡なんて、僕でさえ成功した事が無いのに」
「……」
 作ろうとしてたんかい、と誰もが突っ込みそうになった瞬間だ。
(「……こういうのが、最近の流行なんでしょうか」)
 そんな事を考えた観察者・ヒリヨ(a02084)だが、すぐに頭を振る。
(「いや、違いますよね。デルさんは昔からそうでしたし」)
 眼鏡への情熱真っ盛りの生き様は、三十路を越えても衰える事を知らないようで。
(「人の趣味にとやかく言うつもりはないけど、それの為に死ねる奴は……本物だな、情熱だけは」)
 まあ、情熱だけ本物でも早死にするだけな訳で。
「死者は起きようが寝てようが興味を持たない。死んだら全て終り、モンスターの為にそうなるのもアレ、じゃないかな?」
 デルを見下ろし、ジュダスも淡々と声を掛ける。
「死んだら、家族にも眼鏡っ子にも会えなくなるし」
 まあ、巨大剣を抱えての言葉は寧ろ脅しぽい気もするが。
「でも……」
「では、モンスターの射程外から遠眼鏡を使って観戦、ならどうですか?」
「うってつけのゴーグルをお貸ししますし」
 一応、聞く耳はあるようなので、妥協案を提示するソルティーク。タケルもゴーグル型双眼鏡を取り出す。
「ほら、戦闘の素人さんが間合いを詰めて見ても、折角の手捌きというか、眼鏡捌きを見逃すかもしれません」
「後で眼鏡が手に入りましたらお渡ししますので、今回は我慢してくれませんか?」
 ヒリヨだけでなく、降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)も口々に。
「もし駄目でしたら、実力行使に出ないといけませんし」
 そうして、ロープを改めて取り出したスタインはあくまでもにこやかだ。
「それに、今のデルさんが作った眼鏡をまだ見せてもらっていませんよ」
「先日のサファイア、まだ眼鏡になってないですよね。貴方が作って、渡さなければいけないんですから」
「あ……」
 ソルティークとタケルの言葉に、デルはハッとなった。
 世の数多の眼鏡スキーとの違いは、デルが『職人』でもある事。
「……確かに、先の『お礼』もまだでしたね」
 世の中には役割がある。デルの仕事は眼鏡を作り続ける事であり、冒険者の仕事は。
「判りました。モンスターはお任せしますっ」
「……話はついたかなぁ〜ん?」
 それまで1番後ろで様子を窺っていた全開・バリバリ(a33903)は、呆れた表情で頬を掻いた。

 ――で、漸くお仕事本番。
「遅かったやんか」
 セオ山の峠を見上げる高台で、一応、単独突貫しないだけの理性はあったコロクルは待ちくたびれた様子。
「ここも久し振りですね……」
「ええ」
 ふと、懐かしそうに目を細めるヒリヨとソルティーク。内政拡充の折の盗賊退治――あれから、もう5年が過ぎようとしている。当時あった柵も今は無い。掘っ立て小屋も物見櫓も取り壊されている。峠に唯一残った山小屋の屋根には、遠眼鏡を覗けば果たして小さな人影があった。
「やれやれ、すごい趣味だね」
 霊査士の言に違わぬモンスターの様相に、ジュダスは呆れ顔。
「何だか凄くマニアックな感じのするモンスターですが……冒険者だった頃の趣味、でしょうか?」
 何となく触れてはいけないような気がして、スタインも歯切れが悪い。
「モンスター化した姿が生前を反映しているなら、鼻眼鏡とか持っている辺り、ああ見えて生前は相当愉か……油断ならない方だったんでしょうね」
「ヒリヨさん、猫耳メイドさんが持ってる鼻眼鏡は『パーティ用鼻付き眼鏡』じゃなくて『鼻に挟んで固定する眼鏡』です。僕が着けてるのと同じタイプですっ」
 早速、借りた双眼鏡を覗くデルは、勘違いの訂正も忘れない。
「モンスターはグリモアを奪われた冒険者の成れの果てなぁ〜ん? そんじゃ、あの、猫耳+メイド服+エナメルのピンヒール、なんて奇抜な格好した上に、眼鏡コレクターみたいな業の深い奴が、同盟以外に居たって事なぁ〜ん?」
 ランドアースも狭いようで広いなぁ〜ん――なんて、バリバリも変な方向で感心している。
「と、兎に角、出発を」
「この道は皆の大切な道ですし。頑張ってモンスターを倒しましょうっ!」
 何となくこのまま帰りたい気分にも陥ったが、スタインとシャルロッテに促されて峠に向かう冒険者達。デルは高台に置いていく。距離もそれなりなので、早々に乱入の心配もないだろう。
 峠に辿り着けば、山小屋の屋根の上には、首に下げた眼鏡を弄ぶ猫耳メイドのモンスター。人形めいた面に表情は無く、双眸はガラス球を嵌め込んだような無機質。明らかに異形と知れる。
「それにしても、掛けた眼鏡で攻撃が変わるなんて、どういう仕組みかなぁ〜ん?」
 眼鏡自体にそんな力があるのか、眼鏡もモンスターの一部なのか、それとも、眼鏡なんて只の飾りなのか……モンスターを目の当たりにして、バリバリの疑問は尽きない。
「ひょっとすると、眼鏡を分捕ったらビーム出せなくなったりしないかなぁ〜ん?」
「奪えそうならやってみますか? こちらの眼鏡にも興味があるのか、出方を見るつもりですが」
 そうして、ツルは白金、レンズはインペリアルトパーズと如何にも高そうな黄玉之眼鏡を掛けるタケル。
「でも、眼鏡を奪って特殊攻撃が無くなるんなら、眼鏡が増えたら攻撃方法が増える可能性もあるなぁ〜ん」
 それは、かなり嫌だ。思い付きを口にして、自身のグラサン死守を決意するバリバリである。
「未だ見ぬ眼鏡の為……通せんぼを突破して僕は行く!」
 いい加減、痺れを切らせたのか、コロクルは意気軒昂に歩き出す。
 モンスターの射程外から一気に間合いを詰めて戦闘に持ち込めばと考えていたヒリヨだが、屋根の上にいられては近接攻撃が届かない。地上に下ろすには誰かが峠を越えねばならない上に……眼鏡ビームを弓の射程と考えれば、射程外からの移動で最初から攻撃できるのはコロクル1人。
(「そう言えば、戦闘に入るまでの段取り、打ち合わせてなかったですね……」)
 戦闘のタイミングをこちらで決められただけに、優位を図らなかったのは勿体なかったかもしれない。
「ヒリヨさん?」
「あ、はい……」
 結局、各自で黒炎覚醒、血の覚醒を発動させ、思い思いの間合いで歩けば、最前列はジュダスとなる。
『……』
 ジュダスが山小屋の前を通り過ぎる段になって、モンスターは音もなく屋根の上から飛び降りた。その身軽さからして屋根へも素早く飛び乗っているのだろう。
(「あ、『とうっ!』とかも言わないんですね」)
 気になっていた事を目の当たりにして、ちょっぴりすっきりのスタインである。
 さて、行く手を遮るべく冒険者に近付くモンスターだが、わざわざ纏わりつかせる義理はない訳で。戦闘の火蓋は、唐突に切って落とされる。
 ブンッ!
 しかし、頭部を狙った急所攻撃はかわされた。やはり部位狙いは分が悪い。
『……』
 モンスターの表情は変わらない。冒険者の行動より早く――掛けられたのはトンボ眼鏡。
「……結構きついな」
 ビームの連打がジュダスの身体を震わせる。鋭い連撃は装甲の薄い彼に少なからずダメージを与えたようだ。
 接近したバリバリが無風の構えをする間に、癒しの聖女でジュダスを癒すスタイン。
「早速トンボ眼鏡ですか……運が悪いと大怪我の元ですね」
 続いて間合いを詰めたタケルが眼鏡を奪おうと掴み掛るが、素早いバックステップ。スピードはストライダーの牙狩人であるコロクルと互角か、或いはそれ以上かもしれない。単純な力押しで眼鏡を奪うのは難しそうだ。
 尤も、モンスターがバリバリのグラサンやタケルの眼鏡に関心を示す様子もなく、正面からの戦いになりそうか。
 すかさず、モンスターの後退で些か開いた間合いを銀に輝く狼が疾く走る。
「獣耳に眼鏡にメイド服……萌えますね」
 しみじみと呟くソルティークだが、その一撃に躊躇いの色は無い。
「愛の前に男は無力……とでも言うと思いましたか?」
『……』
 真正面から噛み付かれるも銀狼の拘束から逃れたモンスターに、ヒリヨの粘り蜘蛛糸とコロクルの鮫牙の矢が相次いで放たれたが、軽やかなステップでかわされた。
(「わたしも眼鏡っ子だけど、人にはちょっぴりイタズラをするだけ……大あくびさせるくらいだもの」)
 まあ、プーカの『ちょっぴり』がどの程度なのかはさて置いて。
「人にケガをさせるのは絶対ダメっ。容赦しませんっ!」
 気合一閃、シャルロッテがデモニックフレイムを浴びせるが、無表情からはダメージの程は図れない。
『……』
 無言のまま、モンスターの手が翻る。
「鼻眼鏡です!」
 居並ぶ全員を『敵』と認識したのだろう。左手でトンボ眼鏡、右手で鼻眼鏡――鮮やかな手捌きで掛け替えるや、拡散したビームが一斉に降り注ぐ。
「……っ!」
 特にバリバリはかわしきれば攻撃の反射も叶ったが、ダークネスクロークの力を借りたとして、一斉掃射の完全回避は難い。グリモアの加護でスタインのヒーリングウェーブで癒せるのが幸いだったが、医術士は1人。他にも回復アビリティは用意しているが、フォローに回れば火力が減ずる。やはり長期戦は避けたいところ。
 冒険者達は一斉に攻勢に転じた。
 ジュダスのデストロイブレードが爆ぜ、バリバリの空手のワイルドキャノンが連打する。タケルの指天殺がモンスターを抉れば、再度ソルティークの気高き銀狼が襲い掛かった。
「眼鏡が武器? 笑止、眼鏡とは文化を識る為の道具、戦いの道具ではない!」
 ……何だか、遥か彼方の世界に喧嘩を売ったよーな気もするが、それはさて置き。
「ええっ!? 粘り蜘蛛糸はぁっ?」
「どうも効き難いようですし……」
「そんなぁ、折角パツキンメイド眼鏡っ子がベトベトって、背徳感満載のシチュエーションがぁっ!」
 …………何だか、寧ろ後ろへブラックフレイムとか叩き付けたくなったシャルロッテだが、それもさて置き。
 トンボ眼鏡、ビン底眼鏡、鼻眼鏡――モンスターは、踊るように眼鏡を掛け替え続ける。
 その一撃一撃は、当たれば強力。集中攻撃されれば、回復が間に合わなかったかもしれない。だが、モンスターは眼鏡の掛け替えを楽しむかのように、多彩にビームを放った。
「見た目以上にタフだな……」
 冒険者の攻撃にもモンスターの表情は変わらない。顔色1つ変えない平静さが小憎らしい。
「いい加減……倒れろ!」
 直前、追撃光線の痛打を浴びたが気にしない。狂戦士の荒々しさそのままにデストロイブレードを叩き付けるジュダス。凝縮した闘気が一気に爆ぜ、ザックリ半身を抉る。
 続いてバリバリの剛鬼投げで大地に叩き付けられたモンスターは、数回バウンドした。
「今なぁ〜ん!」
 動けないモンスターに一気に詰め寄ったタケルの破鎧掌、ソルティークの緑の業火、ヒリヨのバッドラックシュートが次々と決まる。
 炎上したモンスターに、畳み掛けるべきと判断したスタインがブラックフレイムを浴びせる。コロクルの鮫牙の矢がメイド服を引き裂き、透明の体液が噴き出した。
『……』
 立ち上がろうとしたモンスターはガクリと崩れ落ちる。それでも手が探るのは、胸元の眼鏡。
「これで終わりです!」
 シャルロッテの儀礼用長剣が燃え上がり、デモニックフレイムがモンスターに喰らい付く。
『……』
 まるで紙人形のように、火花を上げてモンスターは燃え尽きる。最期まで声は無かった。

「あらへんなぁ……」
「ないですね」
 戦闘後、モンスターが燃え尽きた所を徹底的に探したコロクルとスタインだが、僅かな灰が吹き散らされれば跡形もなく。
「眼鏡もモンスターの一部だったんでしょう」
「どういった眼鏡だったのですかねぇ」
 肩を竦めるソルティーク。タケルも些か残念そうだが、ビームが出る眼鏡が誰にでも使えたら危なくて仕方ない訳で。
「まあ、デルさんは満足そうですし……」
 苦笑気味のヒリヨの向こうでは――。
「何と素晴らしいっ!!」
 シャルロッテ作モンスタークローンの『眼鏡でビーム』の実演に、狂喜乱舞するデルの姿が。
「変な奴らだったなぁ〜ん……依頼人も含めて」
「ああ……」
 何とも言えない表情のバリバリとジュダスの溜息が、峠の風に紛れて消えた。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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作成日:2009/09/19
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