ドラゴン掃討:決戦、想いを乗せて



   


<オープニング>


●ドラゴン掃討
 ゾフィラーガ・ヴァンダルから魔石のグリモアを託され、地獄の全てを統合して強大な力を得た王妃との戦いに、ドラゴンウォリアー達は勝利した。
 そして、全てを飲み込まんと迫り来る『絶望』を、溢れんばかりの『希望』と共に打ち破ったドラゴンウォリアー達は、インフィニティマインドと共に、地上へと帰還した。
 大きな脅威が過ぎ去り、戦いは終わったのだ。

「ですが、冒険者のなすべき事が、すべて片付いた訳ではありません」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、改まってそう冒険者達に告げた。
「円卓の間で話し合われた『解決すべき案件』は、まだ多くが未解決なのですから」と。

「最優先順位であった『魔石のグリモアの剣の探索』は完了しました。次に優先順位の高かった『地獄への対応』も、結果的に完了したと言って良いでしょう。つまり、我々が次にすべき事は、3番目に優先順位の高かった案件……つまり『ドラゴン、ドラグナーの発見と、その討伐』です」
 インフィニティマインドがあれば、擬似ドラゴン界を使うことなくドラゴンウォリアーになれる。
 つまり、大勢で一気にドラゴンやドラグナー達を掃討する事が可能なのだ。
「ドラゴンに関しては、すでにルラルさんの超霊視によって、すべての所在が判明しています」
 ドラグナーに関しては数が多いため、もう少し時間が掛かりそうとの事だが、そちらも全容が明らかになり次第、すぐに掃討作戦が決行されるとの事だ。

「あとは、倒すだけで良いのです。この世界からドラゴンの脅威を完全に払拭しましょう」
 その為の作戦に、どうか皆様の力をお貸しくださいと、ユリシアは深々と頭を下げた。

●決戦、想いを乗せて
 威風堂々、トサカなびかせながら登場、情熱と信念の人、フラウウインドの霊査士・フライド(a90396)が姿を見せた。
「諸君、私はフライドである。初対面の者は以後よしなに。旧知の者は改めてよしなに」
「フライドさーん!」
 はじまりは・プルミエール(a90091)が嬉しそうに声を上げている。
「うむ。小娘、具合が悪いとか聞いていたがもう復したのか?」
「フライドさんの顔を見たら元気になりました♪」
「むむ、おだてても何も出んぞ」
 と言いながら少し嬉しそうなフライドである。
 だが顔をほころばせたのは一瞬、すぐに真顔に戻って告げる。
「フラウウインド大陸に出現したドラゴンロード・碎輝を覚えているか。激しい戦いの末きゃつは滅びたが、その残党はまだ生存し復讐の牙を研いでおる。ゆえに我らは先手をとって、碎輝配下であったドラゴンどもを一気に掃討することとなった」
 見よ、とフライドは地図を取り出した。彼が指さすその先にあるのは、
「沼ですか。しかもかなり大きい」
「おお、小坊主もおったか。その通り、さらに言うならばここは毒沼地帯である」
 小坊主とは、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)のことだ。
「広大にして底を知らぬといわれるこの毒沼地帯は、有害な沼気を絶えず噴き出し、泥土は腐り生物の姿はまるでない。尋常の身であれば留まるはおろか、足踏み入れることすら難しい場所であろう」
 だがそれほど過酷な地であっても、超常の存在、すなわちドラゴンならば耐えることができる。ゆえに竜たちはここに結集し、じっと潜伏しているというわけだ。
「ここに討伐軍を向ける。それが諸君である」
「討伐軍はインフィニティマインドと共にある……つまり、私たちはドラゴンウォリアーと化して戦うということですね。沼の毒は、ドラゴンウォリアーには無効なのでしょうか?」
 プルミーの言葉にフライドは首を振った。
「ドラゴンどもも知っておるよ。対策なく突入すればドラゴンウォリアーとて無事では済まん」
 だが、と言ってフライドは拳を突き出し、指を上にして掌を広げてみせた。
 そこに乗せられているのは、植物の種子のようであった。ただの種とはあきらかにちがう。種は、やわらかな光を自ら発していたのだ。
「この光……どこかで見たような気がします」
 ユウキは眼を細めた。光を浴びていると、母親の懐に抱かれているような穏やかな気持ちがする。
「これは『光の種』、女神フォーナの祝福が込められている。祈りを捧つつ沼に投ずれば、浄化の力をもららすことができよう。皆、知っておいてほしい。現在の汚れきった姿は、沼本来の姿ではないのだよ。擬人化して述べれば、沼も苦しんでおるのだ。懊悩の極みにあるといっていい。だが光の種を用いれば穢れは消え、在りし日の美しい沼に戻すことができよう」
 沼は広大なので一粒ではとても足りない。そのため複数の場所にて同時に浄化を行うことになる。数カ所に軍を配置し、一斉に種を投げ込むことで作戦開始の合図とする。ここに集まった顔ぶれもその一部だ。他に複数の軍が編成されている。
「諸君が向かう地点には、邪悪な竜が多数潜伏している。色は、黒や紫の者が多かろうな。天を覆い尽くす巨身、牙は金剛石のごとく硬く、鋭く、爪もまた易々と鋼鉄を切り裂かん。灼熱の火炎も強力だ。一斉発射されると危うい」
 しかし、とここでフライドは声色を強める。
「この竜たちは心がけが良くない。実力の割に陰険な性格の者が多く、力弱そうな者を集中的に狙う傾向があるらしい。同族同士もあまり信用しあっていないが、冒険者に対抗するため仕方なく連合を組んでいるようだ。このあたりの性質を逆手に取るという作戦も取れるのではないか。考えてもらいたいところである」
 フライドはワインを呷った。深く息を吐き出すと、燃える瞳で告げる。
「圧倒的な力を有するドラゴン……恐るべき侵略者であった。思い出せ、きゃつらのなした蛮行の数々を、散っていった命を……。このフライドも胸が痛んでならぬ……」
 フライドの言葉に嘘はない。彼の目に熱いものが浮かんでいた。なすすべもなく虐殺された民がある。この日の来るを見ぬまま、遠いところへ逝った仲間たちがある。プルミエールは涙ぐみ、ユウキも唇を噛みしめていた。
「あまたの犠牲を払うことになったが、我々は抵抗を続けドラゴンの野望を砕き、ついにこれを追い詰めるときが来たのだ! 敵ももはや後がない。死に物狂いの抵抗を見せるであろう。打ち破れるか、それとも再度、形勢の逆転を許してしまうのか、運命は諸君の手にかかっていることはいうまでもないッ!」
 激昂するフライドは、強く握りしめる余りグラスを砕いてしまった。血が流れるが構わない。声を振り絞るようにして告げた。
「皆、誓ってくれ。必ず勝利すると。必ず、生きて戻ると。問う、否か応かッ!」
「応ッ!」
 プルミエールが腕を振り上げた。
「応ッ!」「応ッ!」
 たくさんの声が続く。声は場を満たしていった。
「必ず!」
 皆の思いは、一つ!


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参加者
NPC:はじまりは・プルミエール(a90091)



<リプレイ>

●一
 水柱が立つ。圧倒的な高さまで。水柱から怒りに満ちた目が覗いたかと思えば、空を覆い隠す程の翼が両側に開いた。その姿の禍々しさを、比すべきものが地上にあろうか。
 それは竜――世界に仇なすもの。身を捩り焔を吐き、地鳴りの如き怒声を上げると、空気という空気はその粒子に至るまで震えた。
 しかも一体ではない。あろうことかこの場のドラゴンは、十を超える数が存在する。実に十五体。
 世の終わりを思わせる光景だった。空間を邪竜が埋め尽くしている。
 だが今日は世界最後の日ではない。断じてない。邪竜の力に迫り、今やそれを超えんとする存在、ドラゴンウォリアーがこれを迎え撃つのだから。
 邪竜は自分たちが罠にかけられたのを知った。沼の変化に驚き飛び出したところに、全方位から攻撃が飛んでくる。
(「此処まで来て死ぬ気はないけれども……」)
 赤銅の光の尾を曳き、音速に迫る勢いで飛ぶ。彼女は久遠槐・レイ(a07605)、ドラゴンウォリアーの一人だ。
(「全力を振り絞る。誰も死ぬ事なくこの戦いを終わらせるため!」)
 威力十倍、レイは手近な一頭に飛燕の刃を見舞い急速離脱する。
 竜はレイの姿を見失う。その虚を逃さず、白兎の耳した重騎士が飛び込んだ。
「私たち十一人は、まずこのドラゴンを仕留めましょう!」
 白銀の山嶺・フォーネ(a11250)だ。突撃槍を両手に抱え突進、竜の腹部を突き刺している。
「了解」
 応えるは黎燿・ロー(a13882)、爆発的な推力で錐揉み飛行し、一本の矢の如く天翔ける。灰色がかった黒い髪、煌めく瞳は金の色。冴簫の刃を見舞った。
(「彼の地で眠る方々よ、私は貴方たちの分も……戦う」)
 深朱の鎖が空になびき、ぶつかり合って金属音を立てている。
 ローの刃に腕の肉を裂かれ、苦悶の声を上げる竜の眼前、紅いものが走り抜けた。
「さて、同盟の希望に打ち負かされる気分は如何かしら?」
 紅薔薇の翔剣士・ベアリクス(a29524)だ。うんと近接、竜の息がかかるまでに迫り、幻影の剣で追い打ちする。それでも竜は体勢を立て直した。首を捻ってベアクリスを遠ざけると、
「小癪な人間どもめ!」
 吼えて素早く目を走らせ、最も飛行速度の遅い女性を見つけた。
 しかし竜の吐き出した炎は、黒猫の花嫁・ユリーシャ(a26814)を掠りもしない。
「あら怖い……御しやすい相手と認識して下さって感謝します」
 くすっと微笑したユリーシャの口元は、清楚ながら凄味がある。
「弱きを狙うとは性根が腐ってますわね」
 ユリーシャは急旋回して指天殺、素手ながらその破壊力は想像を絶する。竜は翼を撃ち抜かれた。
 林の・ルーツ(a10241)の姿は、変身前と寸分変わらない。ただ、雲に到達するほどの高みに静止していることが、彼女が覚醒したことの証左であった。
(「ドラゴン……永らくこの地に潜んでいた巨悪なる存在。邪心が無ければ、歴史の語り手足り得たでしょうに」)
 身を包む黒き炎から、片手に収まる程度を掬い取る。たちまちそれはルーツの片腕を覆い尽くすほどの量となる。これを投じた。
(「語り手は私たちが継承します……仲間の元へお還りなさい」)
 ルーツの炎が、竜の翼に燃え移り巨大な火となる。
 このとき、閃花一竟・サガ(a41503)は危険を感じて旋空した。
「油断大敵ですね!」
 九尾が風にはためく。サガは別のドラゴンから向けられた焔を避けたのだ。竜の火炎はサガの正面の竜に命中し、これを紅蓮の炎に包む。竜の悲鳴が聞こえた。たとえサガが回避しなくても、この惨事は発生しただろう。
「仮にも竜同士、仲間でしょうに……」
 サガは思う。もし竜が冒険者のように団結していれば、人間の未来は危うかったかもしれない。
 炎のなか藻掻く竜の胴を、殴りつける腕があった。それは巨大な虚無の腕、
「うふふ、もう貴方達の舞台の幕は下りはじめていますのよ」
 藍薔薇の・ロゼリア(a60370)が喚びしものである。髪に咲く藍色の薔薇が鮮やかだ。
「役者様はもうそろそろご退場願いますわ。そうではなくて、アコ様?」
 朱刃・アコナイト(a56329)は応えない。戦闘となると彼女は極端なまでに無口になるのだ。
 しかしロゼリアの「アコ様」は、言葉よりも流暢な刃を有する。見よ、大鎌のこの切れ味、竜の前脚を一刀のもとに斬り落とす。
 金色の光が降り注ぐ。それは正義の光、広大な範囲に激しい痛みを与える。
「これまでの怒りと、これからの生活への期待……全部をぶつけて戦うよ!」
 その声は風狐の便り・クオーツ(a52276)、狐耳と狐尻尾、透明な緑の翅が震動している。光をもたらしたのは、クオーツが掲げる金の錫杖だ。
 同じ竜に白い珍獣・メルルゥ(a51958)が挑みかかる。
「白い珍獣・メルルゥ、見参なぁ〜ん!」
 妨害しようとする別の竜を飛び越え、ユリーシャが開けた翼の穴めがけ、
「沼の掃除が終わったと思ったら、まだドラゴンがいたなぁ〜ん! やっつけないと、おちおち冒険が楽しめないなぁ〜ん!」
 威力絶大デストロイブレード、さらにこれを拡大する。右前脚を落とされ、翼を破られた竜はもう絶命必至だ。

 フォーネが「十一人」と宣言していることからもわかるように、結集した冒険者たちは十人前後で一つのチームを結成し、このチーム単位で一つのドラゴンを集中して倒すという戦法をとっていた。

 チーム『月詠』は七人編成、月下黎明の・アオイ(a68811)を中心に鉄壁の布陣を見せている。
「沼の浄化はフォーナ様の力で成し遂げました。ならば、ドラゴンの浄化は僕達冒険者の力で成し遂げましょう」
 と告げるアオイは、普段の柔和な姿から戦闘者としての風格を備えた姿へと転じている。
 アオイの号令一下、冒険者は紫色のドラゴンを包囲した。七カ所から攻め立てるも、
「お気を付け下さいまし! 敵の様子がおかしいようですわ」
 月笛の音色・エィリス(a26682)が喚起を促した。緋の髪揺らし、法衣を纏うエィリスはまさしく女教皇、後方より『月詠』を守護し、標的の一挙一動に注目していた。
 竜の不審な態度はすぐに明らかになった。何度か首を巡らしていたかと思うと、だしぬけに真下へ馳せたのだ。
「ドラゴンが逃げます!」
 久遠なる湖晶・ジリアン(a69406)が声を上げた。竜は一気に沼へと飛び込んでいる。
「水中でもドラゴンウォリアーであれば呼吸は可能です。追います!」
 月華氷人・ミシェル(a78505)がいち早く飛び込む。薄紫の翼を羽ばたかせ、一直線に沼へと降下した。水飛沫が立つ。チームメイトも次々と従った。沼の暗がりをジリアンのホーリーライトが照らしている。
 紫の竜は舌打ちした。追ってこれるとは思わなかったのだろう。沼の浄化は完了しており、毒が冒険者を傷つけることもない。もっと深く潜るか浮上するか――竜は逡巡するも、その背に無数の針が突き刺さり思考は中断された。
「我ら『月詠奏鳴曲』、悪に引導を渡しに来たでござる!」
 銀色の髪、ルビーの瞳、灰簾の冬牡丹・エクサ(a70271)の転じた姿だ。たてつづけに強烈な熱波が襲う。沼の水を蒸発させながら巨大な火球が落下し命中したのだ。
「フェイトさん、お見事!」
 セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)が手を振った。ユウキも『月詠』の一員に加わっている。
「いえあの……それほど注目しないでください」
 金色の閃光・フェイト(a50291)は恥ずかしそうに、金色の狐耳を折り曲げていた。
「ユウキ、ガールフレンドの活躍が嬉しいのはわかるが」
 ユウキの肩を叩くのは、第一室長・ナサローク(a58851)、彼は遊軍として各所を巡っていたが、以後はここに留まると決めたようだ。
「自分も良いとこを見せなくてはな。この戦でドラゴンを世界より消すぞ……突撃!」
 と言って超重戦斧を振り上げ先行する。
「はい!」
 ユウキは従った。負ける気はしなかった。

●二
 冒険者の強襲に足並みを乱しながらも竜は反撃を開始している。たとえ竜同士傷つける結果になろうと構わず、怒りと暴力とを撒き散らした。この攻めに対しラディカルジェントラー・ナハト(a38377)は、
(「……未来へと、禍根を残さぬために」)
 祈り捧げるようにして、癒しの波動をもたらす。
「さ、まだまだ先は長いですよ?」
 というナハトの励ましに、
「ありがとですなぁ〜ん!」
 元気に応える少女は、森の小さな護り人・ミルフォート(a60764)だ。ミルフォートはその明るさで仲間を鼓舞しつづけている。
(「人々を脅かしてきたドラゴンと、決着を付ける時ですなぁ〜ん……!」)
 心に誓いを、顔には笑みを、それがミルフォートの戦いだ。
 大胆な攻撃、仮面の女勇者・デアボリカ(a68150)は重甲剣イズ・マ・エルで、挑発気味に竜の真正面から斬り込んだ。
「ふふ〜ん♪ もっぱら追う側だったドラゴンさん、追われる側になった気分はどう?」
 黒い竜は追い払おうと首を伸ばすが、デアボリカは寸前で避けている。
「あら、そんなんじゃポロリにも及ばないわよ〜」
 ケラケラと笑うデアボリカである。スリングショット型水着は必要最低限の面積しかない。ミルフォートとは違う意味でチームに華を添える彼女なのだった。
 華といえば戦場の一隅に、可憐な一輪の花が咲こうとしていた。とはいっても今は少年が二人あるだけ、これより花咲く展開をご覧じろ。
「アスト……プルミーが言ってた風の噂って?」
 星喰らう蒼き闇・ラス(a52420)が問うと、
「オレ、この戦いが終わったら結婚するんだ」
 祖前霊止・アスト(a58645)はきっぱり白状したのである。
「この場で堂々と死亡フラグを立てるとは見上げたヤツ、これはほんの前祝いだ!」
 ラスがアストの背を叩くと、彼の姿は可憐なメイド娘へと変貌する。
「華々しく囮となれ!」
「おう! オレはか弱いメイドですーっ!」
 か弱いメイドが自分で名乗るかは疑問だが、アストはそう言って大空を舞う。彼の婚約者が声を見たら……やはり応援してくれることだろう。
 本当に「か弱く」見えたのか、それとも捲れ上がったスカートに腹を立てたのか、黒い竜はアストを追った。ラスも一緒に追われているが結果オーライであろう。おかげで包帯クイーン・アス(a70540)にとって、標的の背はガラ空きだ。
「禍根はここで根こそぎにしたるよって、覚悟せえや!」
 振り上げたるは黒白ニ狂、両の斧にて竜を撲つ。
「デストローーイッ、ってやつや!」
 その声と共に大爆発、アスは強力な破壊を与えたのである。
 しかし「か弱いメイド」コンビは敵の注目を惹きすぎたかもしれない。現在チームが標的としている以外のドラゴンも次々と集まってきた。
「やや拙いですね。散っていただきましょう」
 黒翼のウォリアーが、杖を両手に真っ直ぐ伸ばす。途端放たれる銀の針は四方に炸裂し、ドラゴンの目といわず口といわず、容赦なく獰猛に襲った。残酷なまでのこの攻撃を、火炎六花・ルーシェン(a61735)という麗人が放ったのだから恐ろしい。といってもルーシェンは男性であるのだが。
 一方、
「少々厳しいことになりそうだが覚悟はいいか、ソニア」
「問うまでも無きこと。妾も共に参ろうぞ、ディーン殿」
 ドラゴンウォリアーと化したこの二人を、普段から知るものはその変化に驚くだろう。
 まず、月吼・ディーン(a03486)の目にはトレードマークたるゴーグルがない。顔も若干幼くなっていた。
 そして疾風怒濤の流離人・ソニア(a60222)だ。年齢が上がり口調が変化したばかりか、髪は腰まで伸び手足は獣の毛に覆われている。本人曰く『半聖獣化』とのことだ。
「行くぞ!」
 ディーンの声に応じ、二人一丸となって竜のただ中に飛び込む。目的は、包囲されたアストとラスの救出だ。
 朱華・オーム(a74565)も救出に急いだ。包囲された囮メンバーの被害は厳しい。
 雲一つ無き青空仰ぎ、オームは凱歌を唱いあげる。天にも届け、この歌声。
「私は皆で過ごす日常を護る為に戦います。ヒーローの報酬なんて護り通すべきそれだけで十分」
 今、オームの鬣は黒色、体色は褐色に変化し、体格も一回り立派になっていた。全メンバー中ソルレオンは彼一人、英雄の如き彼の偉容は、勝利をチームにもたらす守護神のよう。

●三
 大きく分けて七つのチームに分かれた冒険者だが、『絆』は中でも最大の規模を誇る。
 総勢十六名、素早くドラゴンを駆逐してゆく。既に相手は三体目だ。
「禍根を断ち切ります! 再度一斉攻撃、よろしいですね?」
 指導者として強力なカリスマ性を発揮しているのは隠遁者・アリエノール(a30361)、淑女として知られる彼女だが、亜麻色の髪振り乱し、豹柄の薄着にて滑空する姿は見違えるようである。
 青紫の竜は翻弄されている。闇に刃と舞う舞人・アケサト(a39642)が視線を奪い、星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)、剣の天使人形・マサト(a47419)が左右からぴったりとタイミング合わせ攻め立てるという連携戦法が成功していた。
「邪竜よ、我らの怒りを知るがよい!」
 アケサトは半人半竜のような姿だ。手の甲から肘にかけてを鱗が覆い、爪も長くなり硬い翼を持つ。しかし見た目が恐ろしくとも、その高潔な魂は不滅である。
「てめぇら全員まとめてロードの所に送ってやんよ!」
 ミズチの攻撃は切るというより叩く、叩くというより「しばく」というのがぴったりくる。
「もう貴様らの時代は終わってるんだ!」
 ミズチ同様、マサトも打擲する。エクスカリバー・イグナイトは燃え上がり、一撃一撃行うたびに、着実な手応えを彼の手に返してくれていた。
 チーム名『絆』にふさわしく、各自の連携は鋼よりも強い。竜がバランスを崩すや、すぐさま紅翔剣姫・ロザリアが馳せた。
「禍根を残さないように、災いの種になるものは一先ず潰しておかなくてはね」
 猫耳を生やしコケティッシュな魅力に満ちた今のロザリアだが、見た目に騙されてはならない。彼女もまた、夫のアケサトに劣らぬ強力な決闘者なのだ。
「……もらった!」
 移ろいゆく幻影と共にロザリアの一撃は竜の頸に撃ち込まれ、勢いを殺すことなく叩き斬った。どっと鮮血が溢れる。竜の巨体は制御を失って落下し、数秒遅れて頭部が後を追った。
「……危ない、マサト! ミズチ!」
 聖痕少女・イコン(a45744)が警告を発する。撃破の余韻に浸る間もなく、さらなる竜が突進してきたのだ。悪魔の火炎でイコンは応戦するが、突進を止めるには足りない。
「なんの! 一人より二人、二人よりたくさん! 一斉砲火でボコボコにするのです!」
 悪の妖術師・クーカ(a42976)・クア・レルカも『絆』の一員である。
 彼は悪の妖術師だ。だが愛される悪の妖術師だ。
 そして彼は、真の悪は決して許さない!
 クーカはさらなるデモニックフレイムを投じる。これに合わせて、翠竜魔女・ネフェル(a37127)がスキュラフレイムの体勢に入る。
「すごい……風圧です……」
 竜が巻き起こす突風がネフェルを直撃している。揚羽蝶の羽を懸命に動かす。
「大丈夫!? 一緒に頑張るよ−」
 しかしネフェルの身を、剣より解き放たれし者・シュテ(a56385)が支えてくれた。
「せーの、で一緒に当てるよー。いいね?」
 天性の明るさ、優しさ、それがシュテの強さ。彼と共にあって、心細くなる者は誰もいない。
「せーの!」
 二人は同時に叫んだ。ネフェルが火炎を発し、シュテもエンブレムノヴァを落下させる。
 竜の勢いは弱まったが、ミズチやマサトを弾き飛ばしてさらに突き進む。
 だがそこに立ちはだかる猛者あり。
「後ろの皆には指一本触れさせないなぁ〜んよ!」
 髪は金色、瞳は翠、耳から尻尾まで覆う鎧は重装甲、怒濤の戦鎚振りかざす。
「突撃鉄壁重戦車、ここにあり、なぁ〜ん!」
 猛者は突撃鉄壁重戦車・モイモイ(a51948)、なんと勇ましきその姿、全身鋼(はがね)、得物も鋼、盾を全力前に出し、右手のハンマーぐいと引き振り抜く。
 竜はついに止まった。モイモイ渾身の一撃を受けよろめいたのだ。
 豁然、竜の下方にて開眼した者あり。
「今日はプルミー殿とわしでダブルプルミーでしたが、披露できず残念至極」
 それは荒ぶる小坊主、なぜかプルミエールのコスプレをしていた小坊主、帰ってきてしまった・イッキュウ(a17887)だ。だがその姿は既に、
「チェェーーンジ・ドラゴン! スイッチ・オン!」
 なる雄叫びとともに一変していた。悪魔の翼広げて急発進。上昇、上昇、止まらない上昇! 狂気のスピードだ。
「とんちのパワー思い知れぇぇ! とんちデンジャラスタイフーン!」
 物凄い勢いでドラゴンの尾を掴むと、ぐんぐん回転させて放り投げた。
 とんち関係ねー! と竜が叫んだように聞こえた。
 月下樹影・ダイアナ(a45372)の対応は迅い、揚羽蝶の翅で飛び、できるだけ多くのメンバーを範囲に入れられるようにして波動をもたらす。
「あれだけドラゴンを倒したというのに、これほど残っているなんて少々絶句しました。つまりそれだけ、驕れる古代ヒト族の数は多かった……そういうことなのでしょうか」
 哀しみに胸がつぶれそうになる。自分たちは、そうならないと信じている。
 ダイアナの癒しにあわせ、蒼銀の癒手・ジョゼフィーナ(a35028)が陽を浴びて飛ぶ。彼女の翼は白、纏う衣も白、白銀の髪が風を受けて躍る。ジョゼフィーナは、特にダメージの大きいミズチを助け、ディバインヒールを捧げるのだった。
「ご無事ですか」
 神々しいまでのジョゼフィーナの姿に一瞬ミズチは言葉を失うが、すぐに告げた。
「気をつけて! 上!」
「……!」
 また別のドラゴンから、ジョゼフィーナ目がけ火球が降ってきたのだ。
 しかし彼女には友がいる。命を預け合った『絆』の盟友が。
「こんなもの……っ!」
 ジョゼフィーナを庇ったのは荒野の復讐者・リネット(a57940)だ。瞬く間に炎に包まれる。火炎に包まれるが歯を食いしばって堪える。気が狂いそうな熱さだが、堅牢なるフルプレートと鎧聖の力が防いでくれる。
「リネットーッ!」
 森林の彷徨者・デルヴィーン(a68935)が急降下してくる。炎のあまりの勢いに、妹が消し炭になったかと思ったのだ。しかしそのときにはもう炎は消え去っていた。
「良かった……リネットにもしものことがあったら、私……」
「大丈夫、術者の護衛が私たちの務め……それを果たしただけです。それに私、肌は強いんですよ。岩盤浴やヨガで鍛えていますから」
 それは私でしょ、とデルヴィーンは微笑した。生真面目な妹がこんな冗談を口にするのは珍しい。
 その間、アリエノールがクリスタルインセクトを放って竜の注意を分散させている。しかしインセクトは余りに弱い。すぐに撃破され、再び竜はこちらに向かうことだろう。
 導き手・カナ(a59024)が凱歌を口にした。
「すぐに癒しますからね」
 対象はリネットだけではない。いかに強靱な『絆』チームとて、度重なる竜の攻撃により肉体的なダメージは蓄積しつつある。
「ボクは、ボクに出来る事を!」
 カナは誓いを歌詞に乗せる。この難局、きっと乗り越えてみせよう。

●四
 チーム『真龍』は最小単位のユニットだ。メンバーはわずか四人、遊撃を担い、あるときは味方の援護、あるときは敵後方の攪乱を図る。戦場の端から端まで駆け巡り、その都度戦功を上げていた。直接仕留めた竜はないが、その要因はいくつも作っている。戦場全体の流れに影響を与えているといえよう。
「気づかれました! 散開!」
 深緑の風に舞う舞闘家・シャリオ(a53552)はそのリーダーだ。ここまで上手くチームを引っ張ってきたが、そろそろ危うくなってきたと感じている。
「再集合は、首の落ちたドラゴンの死体の真下とします!」
 とシャリオが告げると、四人は思い思いの方向に散った。
 ドラゴンの一頭が、『真龍』の不穏な動きに気づいたのだ。この灰色の竜は、四人がその規模では推し量れぬほどの活躍をしていると見抜いたらしい。執拗に追ってくる。再結集してもそれは同じだった。竜の屍体を灼く炎は、灰色の竜が放ったものである。
「シャリオ兄、やっぱり気づかれてる!」
 木漏れ日に舞う舞闘拳士・シャロン(a32664)はイリュージョンステップを踏んだ。黄色の武闘着にズボン履き、活発そうなショートカットに変貌している。
「やっぱりやっつけちゃおうよ!」
 血気にはやろうとするシャロンに、蝶の傍らで奏でる旅人・ジョアン(a37411)も同調した。
「逃げ回るのは好みじゃねェ、ブッ潰してやろうぜ!」
 ジョアンはナイトソード『ガルム』を握りしめる。刀身から力が湧き出てくるように感じた。
 シャリオは意を唱えたが時間的余裕はない。こうしている間にも灰色の竜は再度攻撃をかけてくるだろう。狂嵐の翼・アストレード(a46861)が折衷案を出した。
「私がレイジングサイクロンでなぎ払いましょう。これでドラゴンに隙が生じれば、付近のチームに声をかけ総攻撃、失敗の場合は、即座に退避して次の機会を待ちます」
「それならば」
 計画は実行に移された。

●五
 真っ赤な髪の乙女、青い空の下を舞う。鳳のように。
 それが嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)だと誰が信じよう? ドラゴンウォリアーとなった彼女は二十歳前後まで成長し、髪も血の赤に変貌している。
「者ども、しっかりとエスコートするのじゃぞ! ……む、次の竜はあれにするか!」
「エスコートって何することなぁ〜ん?」
 全開・バリバリ(a33903)の髪も印象的な赤、普段は固めたリーゼントが、いまは炎の如く逆立っている。白の長ランはチームの旗のようにはためいていた。
「レイニーちゃん隊長〜、では号令お願いするんだよ〜♪」
 と言うのは春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)、彼女も数年分成長しているが、「いつもより大きくなっているはずなのに、お姉ちゃんやレイニーちゃんよりバストが小さいのが納得いかないよ〜」と主張していた。
「号令を頼む。隊長はチーム名を叫んで号令をかけるのがルールじゃからな」
 時の流れに任せる流水・レラ(a70801)が応じる。さも本当のように述べるのがポイントだ。やはりレラも二十歳前後となっていたが、もとより大人っぽい少女だったので違和感はない。
 黒百合の魔女・リリム(a50830)は三人とは違い、年齢に変化は生じていない。ただし普段のおどおどした部分は消え去り、なめらかな口調で述べていた。
「そうなんですか? でもみなさんが言うのだからそうなのでしょう」
「妾を崇めたいのであれば相応のチーム名と言うものがあろうに……」
 と言いながらもレイニーは張り切って、攻撃指令を下すのである。
「ではゆくぞ、チーム『レイニーたん』あたっくなのじゃ−!」
 本当にそんなチーム名、『レイニーたん』総勢七名、赤黒い竜に向かってゆく。竜はシャロンたち『真龍』に何度か攻撃を受けて弱っており、咄嗟の反応ができなかった。
 赤眼の紋章術剣士・アセルス(a74501)は、リリムに誘われてチーム入りしたのだが、すぐさまこのメンバーに馴染んでいた。彼らはふざけ合っているようで、その実、これ以上ないほど真剣だった。実の姉妹が加入しているせいもあろうか、お互いがお互いを補い合っている。
 姉妹――哀しいことを思い出したかもしれない。アセルスが義理の妹として可愛がっていたイルガは、魔石のグリモア追撃戦のさなか壮絶な戦死を遂げたのだ。
(「イルガが……、数多の冒険者達が守り抜いてくれた世界を、ボクらは未来へ繋ぐ」)
 アセルスはもう涙を流さない。自分たちには義務があるから。イルガたちの意志を継ぐ者として、
(「未来に不要なモノはボクらの手で摘み取る! 生まれてくる新たな命の為にも!!」)
 数百年、数千年後の人々は、かつてランドアースに存在した彼ら冒険者のことを、どう伝えてくれるだろうか。
 アセルスの六枚の翼が大きく羽ばたく。エンブレムノヴァ、そのあまりに巨きな威力によって、自分自身のバランスを崩さないようにするためだ。
 火球は、狙い過たず竜に命中した。
 首をめぐらせ吼えた竜の鼻面、
「俺の『エスコート』を喰らうなぁ〜ん!」
 と指天殺を決める。大胆不敵なバリバリだからできる強烈無比な一撃だ。
 竜は火炎を冒険者に吐きかけたものの、その勢いは本来の半分以下になってしまう。
 小さな薔薇の笑顔・ニンフ(a50266)は「そちも妾を崇めたいのじゃな? そうじゃな?」と『レイニーたん』に招き入れられていた。それも一興、というわけで、ニンフはチームの回復役をレラと分担している。
 竜が怒声を上げていた。
「人間どもめ、我らドラゴンと対等に立ったつもりか!」
「対等なはずないなぁ〜ん!」
 それにニンフはいち早く応えた。
「だってニンフたちは、この世界を大切に思っているからなぁ〜ん! あんた達と一緒にしてほしくないなぁ〜ん! この大陸と、世界の未来の為にあんた達を倒すなぁ〜ん!」
 この言葉に激昂した竜目がけ、
「隙あり、です!」
 リリムがヴォイドスクラッチを見舞う。アンジェリカが斬り込み、レラが駄目押しのヴォイドスクラッチだ。間髪を入れずにレイニーが突撃、その頃にはアセルスはもう、次弾の準備を終えている。
 どうやらこの竜も、長くは保ちそうもない。

●六
 フローリア学園関係者と、フラウウインドで「フライドさ〜ん!」と叫んできた者を中心としたメンバー、及びその両方に関わっているはじまりは・プルミエール(a90091)は連合してチームを組んだ。彼らが名乗るは、フローリア(Floria)のFとフライド(Fried?)のFでチーム『F2』、互いの歯車が噛み合って快進撃を続けていた。
「さぁて、次の相手と行こうか!」
 竜の鉄爪をぎりぎりで回避し、界廻る選定の志・エルス(a01321)は仲間に呼びかけた。
 まさか避けられると思わなかったのだろう。竜は空中で静止するのに失敗し、歪んだ軌道を描きながらターンした。絶対拒絶・トーラス(a51761)はその隙を見逃さない。
「ガッカリさせんなよ。竜ってのは大空の覇者なんだろ、そんな無様な飛行、相手になんねーぜ?」
 挑発で竜を激させる作戦だ。狙いは成功、威嚇しようと竜が口を開けたまさにその場所に、飛燕連撃を叩き込む。
 宙で姿勢を戻したトーラスと、今から攻め上る紅炎炎舞・エル(a69304)とが交差した。
「頼りにしてるぜ。……自慢の弟なんだからな」
「ああ、知り合いも多い。無様な真似は見せらんねぇ」
 短い時間だが二人は言葉を交わす。互いにぶっきらぼうだが、信頼し合っているものだけができるやりとりだった。
 口調からわかるように、今のエルは彼であって彼でない。
「ほら、口、開けたまんまにしなよ」
 エルは吐き捨てるように言って、竜の首のあたりに雷撃を放つ。驚きと痛みで、竜はさらに口を大きく開けた。
 そこを狙い、
「はーい、じゃ、歯医者さんしちゃうわよ?」
 我は破滅を断つツルギなり・ルビナス(a57547)が、エルダーアーク水平に薙ぎ、竜の歯を次々叩き折る。なんという破壊力、ルビナスの剣はバラバラと歯の雨を生み出した。
 歯の雨を巧みに避けながら、迫るはちせ・ティセ(a68887)だ。ティセは変身して猫尻尾は消えたが、それでもなお猫の身のこなし、わずかにアップした露出度を気にするでもなく、
「とにゃーっ!」
 と蹴りつける疾風斬鉄脚、ガラ空きとなった竜の胴を打ち据えた。
「俺も『とにゃーっ』させてもらうぜ! とにゃーっ!」
 エルスは、いち早くティセの動きを学んで同じ箇所に幻影斬を刻む。
「エルスさん、なかなかの『とにゃーっ』っぷり♪」
「そうか、嬉しいぜ」
 ここで春夏冬娘・ミヤコ(a70348)が呼びかける。
「よろしければ皆さんもご一緒に」
 その言葉は、戦意を高め彼女の潜在能力を、二倍にも三倍にもするという。ドラゴンウォリアーとなり、目、髪、額の石の色が変わっても、そのマジックワードがミヤコを力づけるのは同じだ。
「はいっ☆」
 プルミーはいち早く賛同した。蒼く揺れる月・エクセル(a12276)も血風録の戦いでミヤコのことはよく知っているため参加する。ストライダーの牙狩人・ジースリー(a03415)はタスクリーダーで、セラの夫、ヒトの武人・ヨハン(a62570)は妻と未だ見ぬ子の分も込めて加わった。かくて『F2』のほぼ全員、メンバーは声を合わせて叫んだのだ。
「フライドさ〜ん♪」
 と!
 もちろんフライドの手ではないが、これに合わせ出てきた虚無の手が、それに思えても仕方のないところ。竜は撲たれ、無様に落下を開始する。落ち続けている……いや、そのまま逃走しようとしているのだ。必死で羽ばたいている。もはやそこに竜の威厳は存在しなかった。
「……絶対に逃がさないわ」
 それに気づかぬエクセルではない。すでに先回りして、豊かな肢体を魅せつつ告げた。
「……全力あの世に持って逝きなさいッ!!」
 断罪のデストロイブレードである。竜は哭き声を上げた。
 お手紙配送人・シルキー(a59995)も続く。彼女の服装は、鮮やかな白のドレスと化している。
「フライドさーんコールができて嬉しかったよ〜」
 あの言葉のおかげか勇気百倍だ。別チームだったレラさんの分も叫んだからね、とシルキーは付け加えて、
「ドラゴン襲来の怖さには、もうさよならするときだよ!」
 シルキーが宙に描いた紋章が、光る実体となって一撃する。
 ヨハンは胸に手を当てた。そこには、セラが持たせてくれたお守りが入っている。
(「君に朗報を伝えられそうだ」)
 そしてヨハンは雷光を放射する。その目映さに竜は怯えた。
 かつて竜は、人間にとって恐怖の象徴だった。それが逆転したのだ。皮肉だな、とヨハンは思う。
 プルミエールの背後から声がした。
「貴女の後ろは自分が守ります。だから前だけを向いて戦ってください」
 その主がジースリーだと、プルミエールは知っている。滅多に口を開かぬ彼が希に、彼女にだけ語りかけてくれる声――プルミーはその声を愛していた。
(「大好き。ジースリーさん……本当の、お兄ちゃんみたい……」)
 その気持ちは、ジースリーの求めているものとは異なるのかもしれない。
 ジースリーのガトリングアローが立て続けに竜の鱗に刺さり、その場所をプルミーは剣で払う。
 竜は狂ったように四肢を振り回す。これをチーム『F2』は遠巻きに囲んだ。
「さよならといこう……此処は懸命に生きる者たちが未来を紡ぐ世界故な……」
 他の生物の命を弄び続けた結末がこれだ。青雪の狂花・ローザマリア(a60096)に同情はない。
「それを壊させはせぬよ……」 
 四対の黒翼を広げた堕天使、これぞローザマリアの現在の姿である。
 彼女が竜に与える唯一のもの、それは、死。
 交差させた両刀から雷撃が放たれ、竜の頭蓋を砕いた。

●七
 勢い、士気、作戦行動……そのいずれにおいても冒険者は竜を上回っていた。次々とドラゴンは敗れ屍を晒す。しかしその一方、無念な局面があったことも伝えなければならない。
 チーム『真龍』の全滅だ。
 アストレードがレイジングサイクロンで灰色の竜を惑わし、そこから一斉攻撃に移ったところまではよかった。少なくとも二度の攻防は彼らの有利だった。されどわずか四人、ドラゴン一頭を相手にするには戦力として不足である。他のチームとどう関わるかを決めていなかったことも不利益となり、最後まで助けを求める暇がなかった。
 まずシャリオが撃墜され、彼を救おうとしたシャロンも致命的な一撃を受ける。
「倒せるモンなら倒して見やがれ!」
 と言ってジョアンは奮戦したが競り負け、アストレードは粘ったものの、沼に沈むことになる。
 されど灰色の竜が、彼らにとどめを刺すことはできなかった。
「猛威を振るったドラゴンも残り僅か……悲しい気もしますが、全力で行きます」
 フォーネのチームが接してきたのである。灰色の竜は自分が包囲されており、もはや味方は残っていないと知った。
 アコナイトが無言で斬りつけてくる。メルルゥも斬る。竜は炎を吐こうと息を吸うも、首筋に斬り込まれたローの一撃によって空気が漏れる。ゆえに吐き出した火炎は、酷く弱々しいものだった。
「そんな想いじゃ、私たちには届かないわ……」
 灰色のドラゴンが最後に見たのは、冬の湖畔のようなルーツの瞳だった。
 ユリーシャ渾身の斬鉄脚が、竜の心臓を貫いたのである。

 アストは着地し、ラスと無事を喜び合う。
 ソニアとディーンが挨拶するも、「どなたです?」とユウキは目を白黒させていた。
 アンジェリカが胸の前で何かジェスチャーしているのは、リリムに世の中の不平等を訴えかけているところのようだ。
 アセルスは一人、沼の前で手を組んで祈りを捧げていた。
 重傷者も無事救出されたようだ。それを知り、ロゼリアは安堵してうんと伸びをした。
 戦いは終わった。今はただ、訪れた平安を楽しむとしよう。


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朱華・オーム(a74565)  2011年06月30日 23時  通報
ソルレオンが私一人だったことに少し驚いていたり。
普段とは違うこの格好ですけどやっぱり基本は支援、回復。
誰一人欠けることなく倒しきれてよかった……
……ちなみにSSの戦いはこの時のものだったりします。

春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)  2009年10月06日 23時  通報
おっきくなったはずなのに、負けていた……これが、「人生のふじょうり」なのですね??

帰ってきてしまった・イッキュウ(a17887)  2009年10月05日 23時  通報
わしの使ったデンジャラスタイフーンが、昔なつかしいデンジャラススイングになっているような気がしたが、別にそんなことはなかったぜ! ウオオオいくぞオオオ!