<リプレイ>
●双子山の狼グドン 「わぁ、ほんとにお山が途中で双子になってるの」 まるで綿菓子のような桃色のふわりとした髪を揺らしながら、ぶどう科・リルル(a52901)が声を上げた。 冒険者たちが乗り込むインフィニティマインドが向かう先には、霊査士から聞いていたとおり、山頂が2つに分かれている山が見える。 「さぁ、ランドアース最後の大掃除と行くか……」 青年の姿となった百草を嘗めし本草学者・ヴィクトル(a66102)が黒き炎を身に纏いながら仲間たちへと声をかけると、その仲間たちも頷きあい、インフィニティマインドを飛び出していく。 A班は向かって右の山へ、B班は向かって左の山へと向かった。 山頂付近に近付くと、思い思いに過ごしている狼グドンたちの姿が見えてくる。 城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)は得意のポーズを取って、気を高め、己の纏う桜色の装甲ドレスの強度を高めた。狼グドンの群れの中にピルグリムグドンの姿を見つけると、その近くへと降り立った。 急に群れの中へと降りてきた冒険者の姿に、狼グドンたちは驚き、戸惑いながらも、それぞれが棍棒や弓、さび付いた剣などの武器を手にして、サクラコへと襲い掛かる。 普段のサクラコならすっぽりと隠れてしまうような大きな白い盾。ドラゴンウォリアーとなり、身体が成長している今では完全に隠れてしまうようなことはないけれど、身を護るには充分なその盾で、狼グドンたちからの攻撃をサクラコは只管受け止めていく。 『サクラコさん、そのまま右方向へ!』 上空からサクラコの姿を見て指示を出すのは、月光の狙撃手・ライア(a77640)だ。 指示通り動いたサクラコの周りに更なる狼グドンたちが群がっていく。 「ジャスティスレイン、撃ちます!」 群がった狼グドンたちを標的に、ライアは頭上に向けて太陽の如く光り輝く矢を放った。 矢は頭上で無数の矢に分裂し、狼グドンたちに向かって降り注ぐ。 相手はただのグドンだ。ドラゴンウォリアーとなった冒険者たちの力に叶うわけもなく、降り注ぐ矢に身を貫かれ、次々と倒れていく。 「そっちは任せたぜ、リルル!」 言ってヴィクトルは範囲から漏れた狼グドンたちに向かって、描いた紋章から幾筋もの光の線を飛ばした。光の線は狼グドンたちを貫いて、その場へと倒していく。 「任されたの」 リルルも逃げ出す狼グドンに向かって、鱗粉のような煌きを放つ刀身を持つ蛮刀を振るった。 サクラコが倒れたグドンの間を突き進んで、更に山頂へと進み、狼グドンたちを誘き寄せる。仲間が倒れたことにより、サクラコへと復讐と言わんばかりに襲い掛かってくる者も居れば、怖気付いて木陰から様子を見るだけの者も居る。 そういう者も自分へと襲い掛かってくるよう、サクラコは迅速な動きで戦場の要となる場所に陣取った。 山頂に近付けば、腕の代わりに触手が生えていたり、狼にはあるまじき角が生えていたりするピルグリムグドンたちも動き出す。 狼グドンたちが集まったところで、ライアによる範囲攻撃、リルルとヴィクトルによる逃れた者の追撃を繰り返し、そう時間のかからぬうちに、双子山の狼グドンの群れは壊滅した。
●谷間に猪グドン 一行が次に向かった先は、谷間だ。猪グドンの群れが20体のピルグリムグドンに率いられているという。 南側から攻めるというA班に対し、B班の4人はその反対――北側から攻めることと鳴っている。 「……未来の為にも……頑張らないと……ね……」 猪グドンの群れの間に降り立った漆黒の鎮圧者・クウェル(a46073)は、その頭部を激しく光らせた。 猪グドンたちの視線が、突如降り立った彼女へと向き、更に光る頭部へと注目が集まる。 クウェルに攻撃せんと集まる、その猪グドンたちを襲ったのは、巨大な竜巻であった。 「さぁこれが開戦の狼煙だ! ド派手に暴れようじゃねぇか」 巻き込まれて、宙へと舞い上がっては落とされていく猪グドンたちの様子に、その竜巻を起こした狂風の・ジョジョ(a12711)が不敵に笑みながら、叫ぶ。 『ショウ! 正面右よりのグドンたちが巻き込まれてないようだ!』 倒れていく猪グドンたちの様子を上空から確認していた業の刻印・ヴァイス(a06493)が心の声を伝える。 「了解! 精々悔いの残らぬようにめい一杯暴れさせてもらおう!」 言いながら、貪欲ナル闇・ショウ(a27215)は斬突両面に優れる逆刃の両手剣を横に薙いだ。薙いだ剣から放たれる見えない衝撃波は、竜巻から逃れた猪グドンたちへと襲い掛かり、瞬く間に彼らを倒していく。 クウェルも竜巻が収まると共に、残る猪グドンたちをまた惹き付けるために、群れの内側へと駆けた。頭部を激しく光らせ、注目が集まったところで、ジョジョが範囲攻撃を打ち込みやすいように、誘導していく。 引き寄せられたグドンたちの中には、蛇のような下半身を持つものや、蝶のような羽根を背負っているようなもの、そして子どもらしき小さな個体も居た。 「悪く思うなよ!」 先の竜巻の反動で四肢が麻痺してしまっていたジョジョであったが、その麻痺を振り切ると、彼の身の丈を越すほどの巨大剣へと込めた闘気を開放するかのごとく、大きく振るう。それに見合うような、大きな竜巻が再度起こり、クウェルが引き寄せてきたグドンたちの群れへと向かっていった。 巻き込まれて宙を舞い、地面へと落ちてくるグドンたちは大抵事切れている。けれど、中にはしぶとく、かすかに動く身体で逃げ出そうとするものも居て、それを見つけたヴァイスは手にした弓から1本の矢を放った。矢は吸い込まれるようにそのグドンへと向かい、容赦なく、その命を奪う。 「赦してくれとは言わない。悪いな……怨め」 ぽつと呟いて、他に逃げていくものがないか、彼は上空から探す。 ショウも竜巻から逃れたグドンたちを1体1体確実に倒して行き、そう時間の経たないうちに南側から倒してきたA班の4人と合流することとなった。
●岩山の山羊グドン 次に一行向かったのは、ゴツゴツとした岩場の多い山であった。 山全体の岩場に広がるように、山羊グドンと、それを率いるピルグリムグドンが散らばっている。 突撃前にインフィニティマインドの中からそれを改めて確認した一行は、山の東側をA班が、山の西側をB班が受け持つこととして、両側の麓から山頂に向かって攻めていくという作戦を今一度確認しあった後、山へと向かって駆け出した。 (「どんな生き物で、どんな武器を使い、どんな方法で攻撃してくるのか……」) 東側を担当するA班のサクラコは、先の2箇所同様、己の纏う装甲ドレスを強化した後、グドンの群れの1つの中に、迅速な動きで降り立つ。グドンたちの怒りを己の身に向かせると、此度の殲滅戦で消え行くだろうピルグリムグドンたちの様子を彼らの攻撃を受け止めながら、記憶していく。 「消し飛べ!」 彼女の惹き付けたグドンの群れに向かって、邪竜の象徴である黒き炎を身に纏ったヴィクトルが上空から、幾筋もの光の線を描いた紋章から撃ち出した。光の線に貫かれたグドンたちは容易く倒れていく。 「まだ次もあるから、アビリティ使い過ぎないようにしなくちゃね」 そう口にして、残数に気をつけながらも、範囲攻撃では倒れないようなピルグリムグドンたちに対して、リルルが体内にて極限まで高めた闘気を一気に解放し、竜巻のような渦を作り出して、それへと巻き込んでいく。 1箇所の群れが全て倒れれば、次の岩場へと向かった。 再度、サクラコが囮となって彼らの怒りを己の身へと集めると、次は上空から指示を飛ばしていたライアが弓の弦を引き絞った。 太陽の如く光り輝く1本の矢を頭上に向かって放つ。その矢は、頭上で止まると、たくさんの矢へと分散して、グドンたちへと降り注いだ。矢たちはグドンの身を貫いて、絶命させていく。 「逃げる敵は見失わないように、優先して対応をお願いします」 ライアの指示で打ち漏らした山羊グドンたちを班員たちは倒していく。 山の東側の山羊グドンの群れたちを1箇所1箇所、殲滅させていき、山頂へと辿り着く頃には、反対側から登ってきたB班の4人も辿り着いていた。残る山羊グドンたちが居ないの確認してから、最後の山へと向かうべく、一行はインフィニティマインドへと戻る。
●緑生い茂る山の猿グドン 霊査士から聞いてきた最後の討伐場所は、先の岩山とは打って変わって、緑が山全体を覆っていた。その全体に、猿グドンの群れが点在しているというのだが、緑による隠れ場所は多く、上空から指示を飛ばしながら倒していくのは難しそうであった。 けれども一行は先ほど同様、2班に分かれて、それぞれが山の東側、西側の麓から山頂へと向かうように、作戦を開始した。 木々のすぐ上を飛ぶように、B班4人は移動していく。クウェルがある程度、分け入っていくと、猿グドンたちも彼女へと気付いて、手にした棒や石ころ、さび付いた剣を手に、襲い掛かってくる。けれど、それを軽々と交わして、クウェルは猿グドンたち皆の注目が己へと集まるよう、頭部を激しく光らせた。 「明るい未来の為に憂いは全て荒れ狂う風がなぎ払う!」 ジョジョの振るう巨大剣から、巻き起こった風が竜巻と化す。彼の四肢は麻痺してしまうが、起こった竜巻により、多くの猿グドンたちが巻き込まれ、宙を舞い、地面へと叩きつけられるように落ちていくのを見た。 竜巻から逃れた個体をショウが近付いて、逆刃の両手剣を振るい、木々の上からヴァイスが矢を射て、倒していく。 ピルグリムグドンの下に集まる群れの1つ1つは小さいことから、何度も引き寄せては竜巻で全体を倒し、打ち損じをちまちまと倒していくことを繰り返した。
山頂に辿り着く頃には、日も暮れ始めていて、空はオレンジ色に染まっている。 「やれやえr終わったか……」 打ち損じたピルグリムグドンが居ないことを確認したヴィクトルがぽつと呟く。 「退治したグドン達はそのまま自然に返ってもらう……って言うのはダメでしょうか?」 「近くに村とかあるわけじゃないから大丈夫だろう」 倒したまま、始末していないグドンたちの亡骸に、それまでの場所のことも思い出しながらライアが呟くように訊ねれば、ショウが応える。 「グドンとピルグリムグドンの殲滅は、地獄の脅威とホワイトガーデンの脅威……双方が完全に拭いきれた証と言えるでしょうか」 サクラコの呟きに、皆頷きあい、また1つ未来への憂いを拭えたことを実感する。 暮れ行く夕日を見た後、一行は討伐箇所全てを回り終えたことを報告すべく、帰途へと着くのであった。
終。

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参加者:8人
作成日:2009/10/09
得票数:冒険活劇5
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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