<リプレイ>
花々が町を彩り、競うように咲きほこっている。 桃色の振り袖姿、マユリも飾りつけの一員として腕をふるっていた。 「それは星華流ですか?」 と着物姿の少女に声をかけられた。彼女はセイと名乗る。 「はい。あるところで学んだもので」 「やはり……私も同じ流派ですの。その力強い活け方……兄弟子を思い出します」 アザミ、オミナエシ、竜胆――花を飾りながら、華道について、また、その指導者について、マユリとセイは尽きることのない思い出を交わすのだった。彼も、どこかに来ているかもしれない。 近くにジースリーの姿もあった。黙々と作業をするも手先は器用、美しく町を飾ってゆく。 「花で一杯の街並は幻想的だ」 ルジットが笑ったので、エリザベスは空に舞い上がりそうな気分だった。 (「……お誘い、して良かった」) 花で飾られた通りを進めば、そこがフォークダンスの会場である。 スタインからの丁重な挨拶を受けた後、アストとアイは照れくさそうに顔を見合わせる。 「たくさんの人が結婚祝いの挨拶をしてくれるなぁ……」 アストはずっとはにかみっぱなしだ。 「照れるが嬉しいぞ……アストと一緒に祝福されるというのは」 そのときアイは、旧知の友に気づいて手を振った。 「リル殿」 「結婚おめでとうなぁ〜ん☆ 結婚式の友人スピーチは任せといて♪」 アコーディオンを軽快に弾き、リルは最高の笑顔を贈ってくれた。 「そういや去年……」 というアストに頷き、 「うん、二人にあやかりたいって言ったけど、わかったんだ。幸せって、やっぱり自分で見つけるものだよね! だからがんばるよ」 手を振ってリルは去る。 「来年は、大切な人と一緒に来るから!」 という頼もしい言葉を残して。 「ティムちゃんまだかなぁ」 リルルは単身、大通りでまだ来ぬ人を待っている。
木陰にてユウキは、そっとダンスの練習中、ところが見ていた青年があった。 「相手がいたほうがやりやすいでしょう?」 「あ、シャリオさん! これは、別に……」 ごまかそうとするが、シャリオは追求せず、 「私が女性側を演じます。カッコいい所を見せて下さい」 と手を取り、ユウキにステップを指導してくれるのだった。 秋の花々とて、今のリンシュには及ばない……デュアルは確信した。彼女の柔らかな笑みは、自分にだけ向けられた宝だ。 「楽しみにしてたよ」 「期待しててや。じゃあ始めるで」 ええかな? と楽団にデュアルは告げる。そして滑るような手つきでニ胡を奏で始めた。 輪舞曲、流麗な音色が流れだす。 「ティー、フォークダンスってはじめてっ☆」 ティモカリスは嬉しくて仕方ないようだ。両手にフォークを握り、 「ぐさぐさやって、最後におっきなフォークでご飯なんだよね!」 「ち、違うよティーちゃん」 コッコは仰天した。 「コッコの分もちゃんとフォーク持ってきたよ。ほらー!」 ティモカリスがいきなりブン投げてきたので、コッコはワーっ、とブリッジでこれをかわした。 「最初のお相手つとめるよ」 真っ先にプルミーの手を取ったのはマサトだ。 「喜んで♪」 握り合った手が温かい。彼女は甘い香がした。 「プルミエールはアイが羨ましい?」 マサトが問うと、 「もちろんです☆」 彼女はてらいもなく返事する。 すぐ後ろで、レギルが緊張気味に踊っていた。 (「ダンスなんて経験ねーけど、リツと一緒ならなんとかなる……よな?」) リツに辿り着くまでにマスターしたいところだ。 「してあの者は……なに、贖罪の旅に出ている? 心を入れ替えたようであるな……でもいきなり道を間違えて帰ってきてまた三日前に去ったと? 変わってないでもあるな」 暗黒騎士のフェイトは、セイの手を取り頷いていた。 やや前方にクーロとヴァドの姿がある。 「アイ様、幸せそうでしたね〜! 結婚……色々思い出します」 ヴァドと踊りながら、クーロは頬を薄く染めていた。 これはチャンスとヴァドは見た。「結婚」という言葉が出たのだ。思い切って告げる! 「これから毎日俺に油揚げの味噌汁を作ってくれないか?」 そうこれはクーロへの求婚……! ところが、 「あれ私……幻聴が聞こえました……」 彼女は上の空、しかもヴァドの足を踏んでいたりする。 レイジュは単身、特設カフェ『金色亭・華祭り支店』のテーブルにあり、彼らの顛末を見てホロリとしていた。 (「ヴァド……まだチャンスはあるよ……」) 「珈琲、おかわりはいるかな?」 というウェイトレスは、花嫁略奪事件でも馴染みのネーヴェではないか。二人は奇遇を喜び合う。 メイド姿のネーヴェが次に向かった先は、アイとアストのテーブルだ。 「改めておめでとう、このケーキは私からのおごりだ」 「ありがとう。ネーヴェ殿は踊らないのか?」 「さて……まあ、私も参加してみるかな。フェイト、少し店を空けるぞ」 金色の閃光・フェイトに一声残し、ネーヴェは輪に向かう。彼女は、背中を押してやるべき者(ユウキ)を見つけたのだ。 アイとアストのテーブルに花を飾ってくれた麗人がある。 「おめでとうございます」 アリエノールだ。席に腰を下ろし、しばし歓談する。 「ああ、そうだ。旦那さま」 去り際、意味深な笑みをみせてアリエノールはアストに囁く。 「黙って消えることだけはしないで。アイさんを悲しませてはなりませんよ」
ティムは激しく焦っていた。 「なんじゃキョロキョロとして?」 現在のパートナー、レイニーが怪訝な顔をする。 「え? きょろきょろシテナイヨ?」 嘘である。なんとティムは本日、レイニーの他にリルルとも約束をしていたのだ! しかしそこをレイニーは都合良く解釈してくれた。 「妾の美しさを直視できんのじゃな。お、一小節終わった。カフェでメロンでも買って参れ」 「がってん!」 凄いスピードでティムは飛び出していく。目指すは大通り! 「では私が、ティムさんの替わりにお相手しますね♪」 アールコートは事情を知っているので、気を利かせて男性側に入った。 「フォークダンスって、好きなんです☆ つないだ手の暖かさが、冒険者として守るものの大きさを、そして、出会いの大切さを、教えてくれる気がするから♪」 レイニーの手を握り、アールコートは微笑んだ。 くるっと回ってぴたりと停止、さすがアンジェリカ、ダンスは得意中の得意だ。 「もう一回転、いいですか〜♪」 「もちろん♪」 彼女に合わせるエルも見事である。巧みにポーズを取る。 「がおー?」 とレラがふざけて言ったので、エッセンは思わず笑ってしまった。 「一緒に踊るのは本当に嬉しいのじゃ」 「ふふっ、私もそう思ってますよ……」 レラとエッセン、二人は身を摺り合わせるようにして踊る。 呼吸も足並みもぴったりだ。絡め合う視線と視線が、淡い情熱の色を帯びていた。 せっかくお気に入りのワンピースを着てきたのに、リルルはすっかり待ちぼうけだ。 しかし、 「あ、ティムちゃん、ここなの〜!」 息きらせながらティムが駆けてきたのだ。彼は疲れを見せず言う。 「い、色んな花が咲いてるね。そういえばリルルの髪の花ってどんなの?」 「リルの髪のお花はねぇ、ピンクの姫百合なの。花言葉は『強いから美しい』なんだって〜」 数分ばかり楽しいデートになるが、すぐに風にのってどこからか鈴の音が聞こえてきた。 「喉渇いたよね? ちょっとジュース買ってくるよ!」 言うなり彼はまた走り去っていく。忙しい!
再び金色亭のテーブル、 「平和ね〜」 とグラスを傾け、ルビナスはまどろんでいる。ときおりヴィクスやアールコートらに手を振った。 「おや、あれはユウキさん。彼女が意中の娘かしら?」 ユウキと踊っているのはソニアである。 「……やっぱり手を繋ぐのに抵抗があるのかな」 と遠慮がちなソニアの手を、ユウキは恭しく取った。シャリオが教えてくれた通りの動作だ。 「いえ、ソニアさんやディーンさんのおかげで慣れました」 「ふーん、逞しくなったね、恋人ができたせい?」 「こ、恋人だなんてそんな!」 瞬間で真っ赤になる彼を見て、残念なようなほっとしたような気分のソニアだった。手が滑り、ソニアとユウキは位置が入れ替わってしまった。そこでちょうど曲が切り替わる。 「ユウキさんではないですか」 全身甲冑、勇ましい姿はアドミニ、 「せっかくなので踊りましょう」 とエスコートしてくれる。 「鎧同士ですね」 自分と彼との姿を見てユウキは笑った。 「仮面舞踏会にならぬ鉄仮面武道会といった感じですか」 アドミニが洒落たのでユウキも兜を被り、重装甲者二名の勇ましいダンスが展開された。 少し向こうでは、ルーシェンがプルミーの手を握っている。 「あの……」 もじもじする彼女に、彼は優しく告げた。 「返事については無理には聞きません。こうして手を繋ぎ笑顔で過ごせるならば、私はそれだけでも構いませんから」 プルミーは彼のリードに身を任せた。 小さきその手よ、指先から伝わる鼓動よ……ルーシェンは彼女の「命」をしかと感じる。 (「どうしたんでしょうね。この気持は」) ルーシェンは自身の心を巧く説明できない。
フォークダンスは小休憩となった。 「ありがとう」 マユリからサンドイッチをもらい、エルスはこれを頬張る。 「エルスっ」 「お、エルも食べるか? これ美味いぞ」 「……のんびりしてていいの?」 「ルビナス? 何だよ二人して膝つき合わせて」 「私は……私の愛するプーミンにふさわしいか人かどうかチェックにきただけです〜」 と言って、ルビナスはぷいと横を向いた。 エルが前に出る。 「エルス判ってる? ライバル一杯だよ〜。エルスはケンキョだから、彼女が応えてくれるのをじっと待ってるように見えるけど……」 「ま、待て! つまり二人とも!」 つまり二人とも、アドバイスに来たということだ。 「あ、ティムちゃん帰ってきた」 「やー☆」 ちりんちりん。鈴の音。 「ち、ちょっと忘れ物〜!」 「えーっ!」
ダンス再開。 (「去年は男性側でしたが、こちらはこちらで大変ですねぇ」) リツのステップはやや危なっかしい。 「お待たせ」 その声にリツは顔を輝かせた。レギルだ。すいすいと彼女をリードしてくれる。 「お上手ですね」 「リツに辿り着くまで練習してただけさ」 ターンした拍子に、リツは思い切って告げた。 「実家に帰る機会が出来そうなので、よ、よろしかったらランララへご一緒できたらなぁ……と」 「え?」 さすがにこれは予想外、レギルは足をもつれさせてしまう。 「ご免なさい、無理を言ったのなら……」 「ち、違う……正直、すっげーうれしい」 はにかみながらレギルは承諾の意を示した。 セシルの胸は、愛しき人への想いで一杯。 (「今年も一緒できるなんて……」) 彼の名はヴィクス、今、彼女と踊っている男性。 セシルを優しく抱きしめて、ヴィクスはその耳朶に告げてくれた。 「ありがとう。出会えてよかった」 セシルも同じ気持ちだ。 エルスはプルミーの手を取るも、いきなり頭を下げた。 「なんていうかすみません」 「はい?」 「……いや、お祭りの春組で」 「ああ! あのことですか」 知られていたなら仕方ない。エルスは覚悟を決めた。これまでは全部どさくさ紛れだったが、エルたちの言うようにいつまでも謙虚じゃだめだ。正式に告白し……付き合ってくれと頼む! 「俺は」 「知ってます。でも、内緒にして下さい……」 「!」 (「酔ってエルスさんにお姫抱っこで運ばれたなんて、恥ずかしいので秘密にして下さい」) (「俺の気持ちを知ってて秘密にしろ、ってどうすれば!?」) 二人の思いは微妙にずれている。
進行に手違いがないのは、しっかりテルミエールが運営してくれているからだった。食材の補充、タイムキープ、案内など、裏方に徹する彼女の手際の良さは賞賛に値する。 「そろそろ……ですね」 今もテルミーは、楽団に終演を伝えていた。 「誘ってくれてありがとうな。祭りの日が来るのが楽しみだったんだべよー」 このとき、消え入りそうな声でエリザベスが何か言った。 ちょうど音楽が止まった。だから、 「一緒に生きて、良いですか?」 その言葉は、はっきりと伝わったのである。 「おらも……おらも……ずーっとずっとベスと生きたいべ!」 ルジットは今、人生最大の幸せを味わっていた。 目の前をティムが駆け抜けていく。アンジェリカはくすくすと笑った。 でも、さすがに不審に思ったか、レイニーがこれを追いかけていくのも見えた。 「ノソリンさんに蹴られないように、見なかった事にしよ〜♪」 興味が湧くも、触れずにおくアンジェなのである。 その後、鉢合わせたレイニーとリルルは、ティムを二つに裂くことで合意に達したとか……? 弦を降ろしたデュアルは、ペチュニアの花一輪を手にしていた。 「この演奏と想いをずっと隣で聴いてくれた、一番大切なリンシュさんに」 「綺麗……」 「髪に飾ってくれん? きっと似合うと思う」 どちらからということもなく、二人は抱き合う。 「愛しているよ、デア」 それはリンシュの、心からの言葉。 ジースリーは立ち尽くした。プルミーは曲が終わっても輪から離れず、仲間と談笑している。これでは近づいて二人きりになるタイミングがない――貴女を愛しています、と告げるタイミングが。 楽団のリードをリルが受け継いだ。 「それではアンコール! 最速ナンバーでいくなぁ〜ん!」 アンコールは好きな人と踊る決まりだ。アストはアイをリードし、コッコとティーも連れだって輪に加わる。 「クーロ、さっきのは……」 ヴァドは駆け戻り彼女の手を取った。 「幻聴じゃなくて本当のプロポーズだー!」 一瞬目を丸くしたクーロだが、返すのはうっとりしたような笑顔である。 「はい。毎晩、ヴァドちゃんの為に心を込めて歌ってあげます……そのかわりこのフサフサ尻尾、一生わたしのものですからね?」 そんな二人を(寂しげに?)眺めているレイジュに、 「折角だ、俺たちも輪に加わるか?」 暗黒騎士フェイトがイイ笑顔を見せた。 「ちょ……兄さん、冗談きついよ」 「照れは無用。さあ往くぞ!」 「ひゃー!」
音楽はゆったりと転調した。恋人たちの時間だ。 レラがつま先立ち、エッセンに不意打ちの口づけをする。 ヴィクスとセシルも抱き合っている。 金色の閃光・フェイト、それにユウキも、手を取り合い流れに身を任せていた。 「あの、えと……わ、私は貴方の事がっ」 フェイトが口にしかけた言葉を、ユウキが継ぐ。 「好きです」 「ユウキ……?」 「僕はフェイトさんの事が、誰よりも好きです」 初々しい二人は頬を赤らめたまま、あとは無言で踊り続ける。 「ぷるみーさん?」 テルミエールに、プルミエールが手を差し出していた。 「行きましょ、アンコールに」 プルミーは彼女の手を取ると、 「私、テルミーさんと踊りたいんです♪」 にっこりと微笑みかけるのだった。

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参加者:38人
作成日:2009/10/15
得票数:恋愛8
ほのぼの14
コメディ2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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