助けて! カボチャマン!! 〜秋の味覚☆王者決定戦!〜



<オープニング>


●秋の味覚☆王者決定戦!
 正義の使者・カボチャマン。
 君はこの名前を知っているだろうか。
 そう。それはフィーネの街に現れる、正義の味方の名前である。
 街に危機が訪れるたび何処からともなく数十人単位のカボチャマンが押し寄せて、怒涛の如く街を救って去っていく。その光景は最早フィーネの街の名物でもあった。ちなみにこの秋で四周年。
 だが、それでも街にはびこる悪が消え去ることはない。寧ろ近隣から押し寄せてくる始末。
 この秋もまた、まるでそれがお約束であると言わんばかりに――フィーネの街に危機が訪れた。

 涼やかな秋の風吹くフィーネの街は美しい薔薇色に紅葉し始めた街路樹に彩られ、一年で最も幸福な季節を迎えようとしていた。
 世界が豊かな実りに満ちる、秋。
 それは――南瓜とカボチャマンを愛するフィーネっ子達が心待ちにしている、カボチャ祭の季節だ。
 暖かなパンプキンオレンジ色にほんのり染まる南瓜マフィンや南瓜クッキー、林檎やオレンジ果汁と合わせて甘く爽やかな風味に調えた南瓜ジュースに、蕩ける南瓜フィリングにやっぱりオレンジの風味を利かせたパンプキンパイ、そして心も身体も温めてくれる南瓜のシチューやポタージュに、中身をくりぬいたミニカボチャに玉葱やベーコン、ホワイトソースを詰めて焼き上げた南瓜グラタン。
 街の通りや広場など至るところで南瓜料理や南瓜菓子が振舞われ、街中カボチャマングッズで飾り立てられるカボチャ祭は、すっかりお祭り体質になってしまった催し大好きフィーネっ子達が何よりも楽しみにしているお祭りである。
 南瓜グラタンの試食で舌を火傷し療養中の町長に代わり『代理カボチャ祭管理委員長』に就任したヨハン爺、そして気がついたら街一番の大商人にのし上がっていたエティゴ屋の指揮のもと、フィーネの街ではカボチャ祭の準備が着々と進められていた。
 普段から賑やかなフィーネの街が更に活気づき始めた、そんなある日のこと。
 街に突然、おかしな集団×2が現れた。

「喰らえ! 葡萄百連発!!」
「ふっ。そんな技、この舞茸の舞の前には児戯にも等しい……!」
 葡萄色をした全身タイツ姿の男達が幾つもの葡萄種を口から連射し、両手に大きな舞茸を構えた男達がそれらをはたき落とす。かと思えば双方いきなりカボチャ祭用の屋台へと襲いかかり、屋台の調理器具を使って作り上げた舞茸とベーコンたっぷりのキッシュや瑞々しい果実とヨーグルトクリームが爽やかな葡萄タルトを街の人々へと配り始めた。
「えーとつまり、これはどういった事でございましょう……?」
「はっはっは、聞いて驚け! この街は『秋の味覚☆王者決定戦』の決勝戦会場に選ばれたのだ!」
「光栄に思いなさい。勝利した側――すなわち秋の味覚王者が、この街を支配するのです……!」
「な、何ですとー!?」
 得意の揉み手で探りを入れたエティゴ屋は、彼らの返答にとりあえず大袈裟に驚いておいた。
 善良なる一般の人々のあずかり知らぬ間に、この付近一帯では『秋の味覚☆王者決定戦』なる抗争が繰り広げられていたらしい。そして世界を救う洋梨団やイガグリマン友の会を余裕で蹴散らした『必殺・葡萄組』と、焼き芋愛好会や牡蠣にメロメロになってみ隊をあっさり撃破した『舞茸倶楽部』がこの街で激突することになったのだという。
 何だかとても訳のわからない事態だったが、最早これしきのことで動じるフィーネっ子など何処にもいない。ここ数年で驚嘆に値するノリの良さと順応力を身につけた彼らは、恐るべきスピードでこの事態に順応し始めた。
「うわああん、僕の南瓜クッキーがー! でも葡萄ジャムクッキーも結構いけるね!」
「ああっ!? 私の南瓜シチューが! けれど舞茸シチューもなかなかの味だわ!?」
 南瓜菓子や南瓜料理を奪われ葡萄菓子や舞茸料理を押し付けられたフィーネっ子達は、正直かなり美味しいそれらにあっさり篭絡されたと見せかけて、
「てやー! 喰らえ南瓜あたっくー!!」
「うふふふ、南瓜の種の海に沈むといいわ……!」
 葡萄組や舞茸倶楽部の隙をつき、硬い南瓜で彼らをどついたり南瓜の種を大量にまいて彼らの足元を掬ったりして一斉に反撃に転じたのだ。何せ葡萄百連発や舞茸の舞は彼らだけでなく街の人々にも被害を出しているし、葡萄菓子や舞茸料理を作るためという名目で屋台や街の料理店が次々と襲撃されている。遠慮する理由などかけらもない。
 そして――。
「くそっ! 南瓜に惑わされた愚民どもが!」
「不粋な南瓜如きはすっこんでなさい!!」

 かっちーん。

 葡萄組や舞茸倶楽部のこの言葉が、南瓜を愛するフィーネっ子達の闘志に火をつけた。
 秋の味覚☆王者決定戦優勝の座を賭け、凄まじい攻防を繰り広げる葡萄組と舞茸倶楽部。そして、自分達の街とカボチャ祭を守るため猛然と彼らに抵抗するフィーネっ子達。三者の戦いは三つ巴の様相を呈し、日毎に激化していった。しかし随分と逞しくなったフィーネっ子達だが、やはり常軌を逸している集団にはなかなか敵わない。それでもフィーネっ子達は、たったひとつの想いを支えに戦い続けていた。それは――。
「フィーネの街がピンチになったら、カボチャマンが助けにきてくれるもん……!」
「おお、おお、嬢ちゃんよう言うた……!」
「お代官様!」
 葡萄組と舞茸倶楽部にそう啖呵を切った少女を拍手で讃えるヨハン爺。ちなみに『代理カボチャ祭管理委員長』略して『だいかん』。当て字を気にする者は最早フィーネの街の何処にもいない!
「なら早速、手紙を書かんといかんのう」
「うん、任せて!」
 いざという時に何時でも助けを求める手紙を書くことができるよう、と街の有志達が子供達の教育に尽力した結果、フィーネの子供達の識字率はなんと100%に達している。
 少女も迷いなくペンを取り、さらさらとカボチャマンへの手紙をつづり始めた。

●助けて! カボチャマン!!
『フィーネのまちに 必殺・葡萄組と 舞茸倶楽部が やってきました
 葡萄と舞茸は まちの あちこちで たたかって みんなに めいわくを かけて います
 みんなも いっしょうけんめい たたかって いますが なかなか かてません
 このままでは カボチャ祭ができなくて みんな とっても こまって しまいます
 たすけて! カボチャマン!!
 葡萄と舞茸をやっつけて また へいわなフィーネのまちに もどしてください』

「……うちにこんな手紙が届いたんです」
 そう言って藍深き霊査士・テフィン(a90155)を訪ねてきたのは、毎度お馴染みの旅芸人一座の座長であった。カボチャマンとはこの一座の人気芝居の主人公。カボチャランタンを模したマスクを被った男が世にはびこる悪を斬る――つまり勧善懲悪モノのヒーローなのである。
 フィーネっ子達はこの旅芸人一座に手紙を出せばカボチャマンが助けに来てくれると思っているのだが、実のところカボチャマンとなってフィーネを救っているのは旅芸人達ではなく冒険者達だ。
「な、なんという大ピンチ……!」
「う。でもちょっと、や、かなり葡萄も舞茸も美味しそうやんね……!」
 愛用のカボチャマスクを抱えた蜂蜜カボチャマンことハニーハンター・ボギー(a90182)が驚愕る傍ら、明らかに「ときめきました」という風情でカボチャマン長官こと湖畔のマダム・アデイラ(a90274)が頬に手をやった。
「ダ、ダメなのです! 悪の誘惑に負けちゃダメなのですよ!?」
「いやだって、あたしも好きで捕まってるわけやないんやけど……!」
 敵に心惹かれた様子のアデイラにボギーが言い含めるが、敵に捕われ二段構えで攻められては彼女も簡単に堕ちてしまうだろう。実に恐ろしい敵である。なお、長官はいつも敵に捕まっていたり篭絡されていたりするような気もするが、気のせいったら気のせいだ。
 兎も角、助けを求められてはこれに応えずにはいられない。
 必殺・葡萄組と舞茸倶楽部、街にはびこる悪を一掃し、平和を取り戻すことがカボチャマンの使命。
 必ずカボチャマンが助けてくれるという想いを支えに戦い続けているフィーネっ子達のために。
「カボチャマン、行ってきますのです!」
 蜂蜜カボチャマンは仲間を募るために駆け出していった。

 南瓜を愛するフィーネっ子達を護り、そして、フィーネが永久に南瓜を愛する街であれるように。


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参加者
NPC:ハニーハンター・ボギー(a90182)



<リプレイ>

●助けて! カボチャマン!!
 薔薇色の紅葉に彩られたフィーネの街は、只今未曾有の大混乱の中にあった。
 何しろ気がついたら『秋の味覚☆王者決定戦』の決勝戦会場に選ばれていて、葡萄を至上の味とする『必殺・葡萄組』と、舞茸を至上の味とする『舞茸倶楽部』なる集団が争い始めたのだ。そこに街と南瓜を守らんとするフィーネっ子達が加わって、戦いは三つ巴の様相を呈していた。
 けど予選会場にならなかっただけまだマシなはず!
 己に言い聞かせながら建物の屋根から屋根へと飛び移り、アルムはフィーネの街を疾駆する。
「助けて! カボチャマン!!」
「カボチャマン・フォックステイル、参上!!」
 危急を告げる街娘の声を聞くが早いか飛び降りて、当身一発で舞茸を構えた男を撃沈し、土塊の下僕に舞茸男を縛るよう指示を与えて彼は次なる悪のもとへと駆けて行く。
 竹筒入り南瓜羊羹で抗戦してた彼女も充分強いよねと思えば、自然と口元に笑みが浮かんだ。
「舞茸入りチーズオムレツの味に恐れ戦くがよいのです!」
「減らず口はこの葡萄入りパンプティングを食ってから叩くんだな!」
「お前達、そこまでだ!」
 一方、葡萄と舞茸が激突せんとする街角にはカボチャマン・ホワイトエッジことヴォストが降臨し、
「悪いことは言わん、今すぐその手に持っている食べ物を置いて逃げるんだ!!」
 切羽詰った声で彼らに避難を促した。だが、時既に遅し。
「悪い人達の食べ物はこのカボチャマンイエローのおなかに没収ですよー!」
「ふふふふ……さぁ大人しくその舞茸オムレツを寄越しなさぁい!」
 食べ物の気配を察して駆けつけた欠食児童、もとい、カボチャマンイエローことフェルティシアと黒炎を燃え上がらせたカボチャマン・ブラックサイズことリーアが問答無用で襲いかかった。――が。
「ちょっと待ったあ!」
 新たに現れたカボチャマン、オランジュの放った蜘蛛糸がリーアを絡めとる!
「しまった〜! 黒炎覚醒したら通常攻撃がブラックフレイムになっちゃうから、一般人相手でも手加減できない……そういうことね〜?」
「そういうことです! さあ姐さん、どうぞ!!」
 説明的なリーアの台詞に頷きながら、オランジュはもうひとりのカボチャマン、シャオを促した。相棒たるドリアッドやパンプティングを頬張る伝声管つきカボチャマンを見遣り、シャオは肩を震わせる。
「ふふ、ふふふふふ……いいよな思う存分食える若者達はっ!」
「え。いやあの姐さんだって充分若」
「問答無用、喰らえ! 食べたくても存分に食えない女の切実な恨み節ー!!」
 本当は葡萄も舞茸も食べたくて仕方が無い乙女の嘆きが、紅蓮の雄叫びとなって炸裂した。
 しかし葡萄組や舞茸倶楽部の男達が裂帛の気合によって硬直させられた――その、瞬間。
「ぼははははっ!! ブラックスイカマン改、推参!! 喰らえスイカスラッガー!!」
 突如として街角に『秋』と書かれた西瓜を被ったゼムが現れ、「秋の味覚☆王者決定戦の邪魔は許さん!」とカボチャマン達へ襲いかかった。鋭く放たれるスイカスラッガーこと西瓜の皮がカボチャマン達を追いつめる! が!
「ねぇねぇ、どうして秋なのにスイカなの〜?」
「うむ、それは大変よい質問でござる」
 南瓜マフィンを頬張っていた青年に問いかけられ、うっかりゼムは足を止めてしまった。
「西瓜の旬は立秋! 秋の季語としても用いられ、今では秋西瓜もあるのでござる!!」
「へえ、ひとつ賢くなったよ! と言う訳で……変☆身☆!」
「ぼははは、ハッ……!?」
 柔和な笑顔で話を聞いていたキョウが突然カボチャマスクを被り、正義の使者に生まれ変わる!
 一撃で吹っ飛ばされたブラックスイカマン改は、街を流れる川へ消えていった。
 だが悪の暗躍はまだまだ始まったばかり、ねぇねぇ長官秋の西瓜も美味しいんだって〜、と傍らにいたカボチャマン長官ことアデイラを振り返ったキョウの視線の先では――、
「カボチャマン! 大人しくしないと貴様等の長官に葡萄のごちそうを振舞っちゃうんだから!」
「ご、ごめんなさいなんよ、御馳走って言われてつい……!」
 何時の間にか葡萄組の男達を従えていたスレイツに、さくっとアデイラが捕まっていた。
 昔村で旅芸人一座を助けた時から五年も経つのかと思えば感慨深い。長官ー! と叫びつつ通りをグランスティードで駆けてくるカボチャマンを見据え、彼はわくわくしながら身構えた。
「長官が篭絡されていることなど想定済みだ! 喰らえシリアスー!」
「シリアスちゃんの意地悪ー!!」
 長官は早々に陥落しているだろうと読んでいたカボチャマンシリアスことセイガがシリアスに蜘蛛糸を放つ。だがダークネスクロークを従えたスレイツは糸の雨を軽くいなし、
「てーい! 白い葡萄の蔓攻撃ー!!」
「ぎゃー!?」
 本家本元忍びの本領を発揮して、こちらも蜘蛛糸で反撃する。
 しかし蜘蛛糸にがっちり絡め取られたセイガも自前の幸運で縛めを振り払い、ならば此方も自前の技でと思いきり息を吸い込み裂帛の気合を込めた。
「正義は必ず勝つ! 覚悟しろ、シリアスーっ!!」
「うわー! や、やられたー!!」
 威力満点グランスティード持ち狂戦士の雄叫びを喰らい、スレイツは麻痺しつつも派手に倒れこむ。
 こうして街に蔓延る悪がひとつ潰えた。

●秋の味覚☆王者決定戦!
 だが街中に散った悪はまだまだあちこちで騒ぎを起こしている。
 街の人々を救わんと、疾風の如くコウヨクは街路を駆けた。
 共に駆ける仲間の存在が心強い。戦いの中で協力技などを繰り出し、力と心を合わせることの素晴らしさを伝えられればとも思う。角を曲がればそこには葡萄組の姿。彼は早速ポーズを決めた。
「カボチャマン・レッドウィング!」
「カボチャマン・シロ!」
「カボチャマン・クリムゾン!」
 続いて名乗りを上げるのはショウとバガンだ。
 其々が得意のポーズを決めたところで彼らはフォーメーションを組み、
「皆揃って! カボチャマン・パンプキンズ! 悪党ども、覚悟しろ!」
 三人揃って葡萄組に襲い掛かる――と思いきや。
「ふはははは! かかったな!」
 何故か突然バガンがショウに襲いかかった!
「な、何をするクリムゾン!」
「我らは仲間ではないか!?」
 驚愕の声を上げるショウやコウヨクを睥睨し、バガンはおもむろに鎧進化で変身を遂げる。
 ある時は誇り高き重騎士、またある時はカボチャマン・クリムゾン、しかして彼の実体は――!?
「我こそは葡萄男爵! 貴様らの技も弱点も既に見切ったわ!!」
「そ、そんな! 道理でこの葡萄飴が美味しすぎると思ったのです……!!」
 満を持して登場した葡萄男爵が高らかに宣言した途端、偶々通りかかったカボチャマンライトブルーことクゥが唐突に胸を押さえてその場にくずおれた。どうやらピンチを演出してみたかったらしい。
 丁度そこに彼の兄であるカボチャマンパープルことラーズが現れるのもお約束。
「……私の弟に何をしました?」
「え。いや私はまだ何も」
「問答無用!!」
 憤怒の叫びと共に放たれた蜘蛛糸が、見事葡萄男爵を絡め取った。
 ここでまたひとつ悪が潰えた――が、この時街にはある変化が生じていた。
 葡萄男爵やスレイツの助力に奮起した葡萄組が一気に攻勢を仕掛け、舞茸を撃退したのである。
「ふはははは! 秋の味覚☆王者決定戦は我々葡萄組の勝利! あとは南瓜を駆逐するのみだ!」
「そうは行かないんだから!」
 誇らしげに勝利を宣言し、一斉に人々へ襲いかからんとする必殺・葡萄組。その前に立ち塞がったのはカボチャマン・ファンシープリンセスことグリュエルだ。
「争う事なんて無いのよっ。葡萄は南瓜とスイーツになって一体になってしまえばいいのっ!」
「何っ!? こ、これは!!」
 彼女が差し出した南瓜プリン葡萄シロップがけに葡萄組が怯んだ隙を突き、アテカが南瓜クッキーを配ってフィーネっ子達を勇気づける。葡萄なんて字読めないよと憤るこの少女の正体は――!
「カボチャマン・フェアリー登場だよー! カボチャマンがいる限り、フィーネではカボチャが一番なんだからねっ!!」
 華麗なる変身を遂げたアテカが頭上に聖なる光を燈す。
「みんな、カボチャマン・フェアリーに力を貸して!」
「よし、行くぞみんな! 南瓜あたっくだ!!」
「うふふふ、南瓜の種はまだいっぱいあるんだから……!」
 少女の呼びかけに応え、南瓜クッキーに勇気づけられたフィーネっ子達が一気に反撃へと転じた。
「秋の実りと街の皆のカボチャマンへの想いが今ここに集約し、敵を討つ……素晴らしいもじゃ!」
 人々の勇姿に感嘆の声を洩らし、カボチャマン・シュバルツことシュウは通りを駆け抜ける。傍らには蜂蜜カボチャマンことハニーハンター・ボギー(a90182)、そして肩にはさり気なく奪っておいたボギーのクマ! そして敵の大幹部らしき男を追い詰めた彼らは特大カボチャを振りかぶる!
「シュバルツと相棒のクマ君、そしてボギーの正義と勇気のスリープラトンが今ここに炸裂する!」
「え。クマもですかっ!?」
「カボチャマン最終奥義! カボチャ・ダイナマイト・スマーシュ!!」
 ボギーの問いはさておき、特大カボチャが悪に炸裂する!
 これで全ての悪は潰えた――そう思った時だった。
 街に一陣の風が吹き、砂塵の彼方から黒のドレスを纏った悪が現れる。
 現れた黒魔女てるみーことテルミエールは高らかに勝負を挑んだ。
「蜂蜜カボチャマン、今日こそ年貢の納め時よ! もし私が勝ったら……私と付き合いなさい!」
「……!!」
 彼が思いきり狼狽えることは解っていたから、心の声で呼びかける。
 一瞬だけ、飛びきり優しくふわりと笑んで。
 ――大丈夫、カボチャマンは無敵でしょ?
「わ、わかりましたのです……!」
 返る声が微かに震えているのに気づけば瞳の奥が熱くなったけど、それでも今日は悪役らしく高飛車に笑って、決着をつけてあげるんだからと南瓜と葡萄の料理勝負に臨む。
 彼が好きで、彼を取り巻く世界が好きで。
 だからこそ、全てを冗談に出来るこの舞台での決着は見えていたけれど。
 ――ごめんなさい。けど傍にいてくれて嬉しかったのです。ずっと大好きなのです!
「覚えてらっしゃい、いつかギャフンと言わせちゃうんだからね!」
 焼き立て南瓜パイと偽りない心の声を受け取って、敗北を喫した黒魔女てるみーは退散した。
 いつもの台詞を残し、いつものとおりに。
 最後まで、笑顔のままで。

●カボチャマンよ、永遠に!
 平和を取り戻した街並みを見渡して、マサキは感慨深げに吐息を洩らす。
 子供達がカボチャマン・フェアリーの呼びかけに応えて立ち上がる姿は、彼にひとつの確信を齎した。そう、この街の人々は――悪に対する勇気を、もう十二分に持っている。
「これからの世界に必要なものは力ではなく心。このマスクを見る度、思い出してください」
 彼は子供達を集めて厳かに告げ、彼らに正義の心とカボチャマスクを託した。――その瞬間。
「つまり、引退して結婚ね!?」
 いつもの少女に背後を取られ、マサキはすかさず飛び退る。
「貴方の気持ちは嬉しい、しかし引退ではなく、私は正義のため次の街へ向かうのです!」
 反射的に駆け出してしまったが、正義のためならきっと彼女も別れを受け入れてくれるだろう。
 彼女もまた、このフィーネの子供なのだから。
「と思ったらまだ敵がいたのネー! 此度も参上ーぅ、カボチャマーン サンドグレー!(仮)」
 街の一角でマサキが駆け出すと同時に、突然街中で葡萄組や舞茸倶楽部達が復活した。唐突にわらわら出てきた彼らを放蕩の香りで引きつけ、カボチャマンサンドグレー(仮)ことリオンは眠りの歌で彼らを沈めていく。だが、何故か放蕩の香りの注目効果があまり効いていないようだ。
「数の暴力に負けてたまるか、ここに集えカボチャマン! って、何か敵の動きおかしくない!?」
「言われてみれば確かに妙かの、喝ーッ!」
 桃色の矢を炸裂させつつ悪を捕縛していたカボチャマンタンジェリンことアーケィの言葉に、眩い光で敵を拘束しながらカボチャマン・グラン・パことテツノシンが頷いた。先程まで美味な舞茸料理や葡萄菓子を食べさせてくれていた悪党達は、何故か互いに争いをやめ、猛然たる勢いで同じ方向目指して駆けて行く。
「喝ーッ! よいか、おぬし等には説教じゃ! タンジェリン殿、後は任せた!」
「うん、わかった!」
 頭部から放つ光で悪を捕らえ、必殺・年寄りの長話を喰らわせる彼を残し、アーケィは駆け出した。
「これはまさか……怒り!?」
 同様に敵の変化に気づいたアスティアが訝しげに瞳を眇めた。その瞳に映ったのは、互いに争う葡萄と舞茸の間に陣取り、思いきり彼らの邪魔をする動きを取っては逃げ出していく冒険者の姿。そう、タクティカルムーブで怒りを付与された悪は、術者を追っているのだ。
 果たして、その術者の正体とは!?
「そこまでです、トウナス仮面! カボチャマン・サンシャイン参上!!」
「始まりのカボチャ、カボチャマン・ゼロ! ここに推参!!」
 剣で大きく日輪を描いたカボチャマン・サンシャインことアスティアが蜘蛛糸を放ち、葡萄や舞茸達が束縛されたところをカボチャマン・ゼロことアークが駆け抜ける。目指すは怒りで悪達を誘き寄せたトウナス仮面ことノリソンのもと。だが――!
「ふはははは! 葡萄や舞茸がこの街を支配するなど笑止! 町長を確保した拙者こそが、この街の真の支配者でござる!!」
「くっ! ひ、卑怯な!!」
 何とトウナス仮面は町長を捕らえ、彼を人質に取っていた!
 実は町長とは事前に打ち合わせ済み、彼の安全を保証しつつ敵を一箇所に集め、カボチャマンの見せ場を作るというのがノリソンの策なのだが、無論カボチャマン達がそれを知る由もない。
 だが、打ち合わせなしでも呼吸を併せられるのがカボチャマンだ。
「このような卑怯な振る舞い、正義の使者カボチャマンが許しはしないッ!」
 逆光を背に街路樹から飛び降りたカボチャマン・スカーフェイスことワスプが蜘蛛糸を放ち、拘束された拍子にノリソンがよろけたところへすかさずアークが神威の雷を叩き込む。
「げふっ! む、無念でござるなぁん!!」
 派手によろめいたトウナス仮面がどさりと倒れ伏し、遂に全ての悪が倒された。

「俺は星の世界へ新たな悪を倒しに行かねばならない、これからも正義の心を忘れないでくれ」
 街を茜に染め始めた夕陽に向けて、フワリンに乗ったワスプが旅立っていく。
 こうしてフィーネは再び平和な日々を取り戻した。
 ありがとうカボチャマン、街の人々は君達の活躍を決して忘れない。
 正義を引き立てる悪役としての活躍を認められ、街の住人になることとなったトウナス仮面と適度に戦いながら、人々はこれからも正義の心を抱き続けていくだろう。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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双天牙・マサキ(a21623)  2010年06月30日 23時  通報
冒険者の背後をあっさり取るいつもの少女、すごいなぁ……(笑

それはそれとして、最終回ということなのでそれらしくしてみました
この後永きにわたって、トラブルに巻き込まれながらもフィーネの町の平和は守られることでしょう