≪密林の楽園Gパンポルナ≫極彩色の外



<オープニング>


 半透明の翅、頭部に生える触角、物に色を付ける能力。
 湖底に沈んだ壁画にだけ、存在を記されていた未知の種族――インセクテア。
 新たな隣人となったインセクテア達は、テーブルマウンテン内の湖底を潜った先、隔絶された地底に住んでいた。
 幾度かの訪問と交流を経て、徐々にインセクテアの皆と打ち解けていく護衛士ら。訪問の度、外界のことを話し、同盟のことを話し……初めは、興味よりも不安が勝っていたのか、それとない外界の誘いにも迷いの素振りばかりを見せていたインセクテア達だったが。
 三度目の訪問の折、長のクィエは独り言のように漏らした。
 もっと地上のことを知りたい。出来るなら、この目で確かめたい――と。

「脅威も去った事でございますから、皆様が希望されるのなら、同盟入りを積極的に進めても良い時期に来たのかも知れませんわね」
「もう危ない事も無いしな〜」
 樹霊・シフィル(a64372)の言に、しっぽふわふわ・イツキ(a33018)も頷く。
 折りしも、同盟は様々な問題を片付け、未来へ……子々孫々の代へ送る平和の礎を築こうと動き出した所。
 黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)や、ゴースト・フォッグ(a33901)が、インセクテアのグリモアのありかについて色々と思いを巡らせる中、星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)ふと。
「10月10日に予定されてる祭りの日に連れ出すのもありだよなー」
「お祭りの日に連れ出すのに賛成です」
 ガラクタ製作者・ルーン(a49313)もなるほどと頷く。
 とはいえ、地上から繋がる道が湖底の横穴しかない以上、潜水服を用いての移動しか現状の所方法はない。そうなると、連れ出すことのできる人数はおのずと限られてしまう。
 とはいえ、現時点では何人くらいのインセクテアが本当に行きたいと希望しているのかまだ未知数。しかしながら、出来る限り希望する人数を連れ出せるようにしたいとも思う。
 イツキはふむ、と考えを巡らせ。
「汎用型潜水服とか出来れば、問題は結構簡単に片付きそうなのだが……」
 そうだよね、といった様子で、白鱗奏恍・ラトレイア(a63887)も暫し思案。
「潜水服の数を増やしとくと、連れて来られるインセクテアさんも多くなるのかなー?」
「増やすのは賛成ですけど……結構作るのに時間かかる気が」
 湖底の通過にだけ耐えられるように簡素化して、製作を短縮することはできるないのだろうか。ルーンのそんな呟きに、蒼穹の翼・フィード(a35267)はなるほどと頷いてから。
「今からでも作れるだけ作ってみるとか。仮にひとつでもだいぶ違うと思うんだ」
「複数で迎えに行って、ひとりかふたりが着て来た潜水服を貸して、貸した人はインセクテアさんとこでお留守番……とかはー?」
 待っている間に新たに交流もできるし、一石二鳥ではないだろうか。そんな、空殻・ユーティス(a46504)の意見には、黒豹吼下月・ナオ(a26636)も心惹かれるものはある。
「俺もこの機にワイルドファイア探検したいから、別に構わないけど……あれやっぱ難しいかね」
 何にせよ、打てる手は早めに打っておくべきだろう。ナオは続けて言葉を重ねる。
「潜水服、とりあえず期日までに出来るだけ作ってみた方がいいんじゃね?」
「潜水服作成は可能ならばもう着手しちゃってもよいかなーと思うわよ」
 異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)の後押しもあり、追加の潜水服製作依頼は、速やかに先方に伝えられることになった。

 追加の潜水服の報酬準備は平行で進めることにして。
「ンじゃァ、取り急ぎ招致の準備をしねぇとだなぁ〜ん」
 煙を噴きつつ、集まった護衛士らを色眼鏡越しに見回す霊査士。
「行きたい気はする……たァ言うものの、泉を潜るのァ怖ぇっつってたかンな。今回の貴様らの仕事は、招致に応じる気がある奴の不安をできるだけ取り除いて、外界に出られるよう背中を押してやるコト……だなぁ〜ん。無論、湖中や外界移動中の護衛もだ。まァ、コレは言うまでもなく判ってるたァ思うがなぁ〜ん」
 地底湖に繋がる泉は、誰一人として生きて戻ったことがなく、また、水葬にも利用される――インセクテアにとっては、死にもっとも近い存在。たとえ専用の潜水服が用意されていても、ここに今から潜ろう、とインセクテア達が決心するには、相当な勇気と覚悟が必要になるはずだ。
「本心から行きたいと思ってる奴なら、真摯に受けとめて話を聞いてやりゃァ、じき心の整理もついてやる気になれンじゃねぇかと、俺は思うがな。だァら、貴様らはしっかりその手助けをしてやれなぁ〜ん」
 一体何人くらいが本当に、心から地上へ行きたいと想いを抱いているのか。
 その見極めも、今回の訪問では重要となるだろう。
「本土への移動は、コルドフリード定期便でなんとかなるはずだかンな、貴様らはインセクテアの皆が安心して外界に出る気になるように、でもって、その言葉通りにばっちり安全に連れ出してきやがれなぁ〜ん」

 そして、護衛士達は既に見慣れた、テーブルマウンテンの地底湖へと向かう。
 目前に迫った祭り――『希望のグリモア感謝祭』へ、新しい隣人達を招待する為に。


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参加者
空游・ユーティス(a46504)
怪獣王使い・ラウル(a47393)
ガラクタ製作者・ルーン(a49313)
三賞太夫・ツァド(a51649)
白鱗奏恍・ラトレイア(a63887)
樹霊・シフィル(a64372)


<リプレイ>

●底
 湖面に漂う浮きから伸びる、四本の縄。
 二本は、地底湖の岸辺へ。
 残る二本は、真っ直ぐ湖底へと続く。
 その周囲を白い首長怪獣達は暫く物珍しげに泳いでいたが。
「って怪獣さんコレ齧っちゃ駄目ー!?」
 慌てて魅了の歌を響かせるのは、白鱗奏恍・ラトレイア(a63887)。
 頭上に灯った自然光ホーリーライトに照らされ……しかし、湖中の見通しは余りよくない。照らされた藻が光を溜めている様で、そこに誰か居るのが判るといった具合だ。
 怪獣王使い見習い・ラウル(a47393)も、インセクテアの国にまで続くガイドローブを手際よく設置しながら、藻だらけの頭上を見遣る。
『この辺り視界が悪いし、浮上する時怖いかも知れないな』
『ロープも時間が経つと藻が絡み付いて見え辛くなりそうだねー。気をつけないとー』
 藻だけ食べて貰えるように首長怪獣にお願いするのは……難しそうだ、空殻・ユーティス(a46504)はそんな事を考える。
 インセクテアにとっては、久し振り……それこそ、何世代、何十世代か振りになるであろう地上。出来ることなら、外に対して怖いという印象が無いようにしたいと、ガラクタ製作者・ルーン(a49313)も思う。
『下の方はそうでもないのですけどね』
 網を手に下降しながらタスクリーダーを返す、三賞太夫・ツァド(a51649)。湖の底、排水口代わりになっている亀裂に向かう流れ。その付近になると、群生する藻はいつの間にかなりを潜め、ホーリーライトの灯りに浮かぶ景色――といっても、中々に殺風景ではあるが――を見渡すことが出来る。
 亀裂は湖底と、インセクテアの国へと続く横穴の底に横たわるように細長く続いている。人が入れるほど広くはないが、流入する水の速度はほんの数十cm違っただけで何倍にも加速する。一度嵌りこんでしまったら、抜け出すのは難しい。
「一般人の方にしてみれば、まさに現世からの排出口でございましょう」
 樹霊・シフィル(a64372)のそんな独り言は、水中に泡となって消える。
 スウェットスーツを着込んで万全で臨むシフィルの脳裏に、今日のためにと業務の合間を縫っては、急流で行った素潜りの訓練が思い出される。足を掬われ流されたり、魚怪獣に餌と間違われて襲われ掛けたり、釣りをしていた近所のヒトノソリンに釣り上げられたり……色々あった。
 甲斐はあってか、インセクテアの国側から横穴の半ば程までは、潜水服なしで往復できる事を確認。勿論それは、亀裂への嵌り込み防止にラトレイアやツァドがしっかり網を張って、ユーティスが予断なく動きを見守っているお陰でもある。
 だが、仮に無理をしても、届くのは横穴の出口まで。それ以上は意識を保てる自信がない。
「やはり潜水服は必須で御座いますね」
「外側から行っても穴の入り口が限界だなぁ」
 仮に素潜りした場合を想定し、ラトレイアも潜水服の中で息を止めて湖潜行を試してみるが、結果は芳しくなかった。
 やはり、頼みの綱は潜水服……インセクテア用に追加で用意できたのは三着。背負子に収めて今は背にあるそれを思いながら、ルーンはインセクテアの国へと続く泉から顔を覗かせた。

●迎
 既に慣れたもの……寧ろ、待ち焦がれていたかのように、護衛士達の出迎えに続々と集まってくるインセクテアの人々。今日の人員の中では会うのは初めてで楽しみにしていたユーティスは、そんな反応に柔らかい笑みで応える。
 まずは恒例となってきたお土産進呈。
 ラウルは花籠、ツァドはメロン、ラトレイアは楽器や鏡を手渡す。
 そして、クィエの屋敷へと向かう道すがら、シフィルは先日渡した植物の生育状態を訪ねてみる。一通りレクチャーは受けているものの、やはり不慣れなせいか上手く行っていないようで、是非にも様子を見て欲しいと国の一角に新たに設けられた花壇へと案内される。
 他愛ない会話と共にシフィルが助言をするのを見守り……ラトレイアはふと、世間話のように切り出す。
「もうすぐ大きなお祭りやるんだ。それに皆を誘いたいと思ってさ」
「外界のお祭りかね?」
「はい。遠い未来にまでずっと続くものにしようと、同盟を上げて行われる祭りです。その記念すべき第一回の開催が迫っておりまして」
 言葉を継ぐツァドに、興味深そうに頷くクィエ。絵を描く位しか娯楽のなかったこの国に持ち込まれた様々な文化を知れば、『同盟を上げて』とまで称される祭りに心惹かれるのは当然だろう。
 勿論その話には、周囲で聞いていた人々も、沸き立つようなざわめきで以って応える。ラウルはそんな様子を見遣り、特に興味有り気にしている者を幾人か確認しつつ、
「皆様をお連れする準備も整えて参りました」
 告げて、背負子に備えてきた真新しい潜水服を取り出して見せる。これはインセクテアを招待するために拵えたものであるとも。
 しかしやはり、泉への不安は拭いきれないようで……時が経つにつれ、ざわめきはどよめきに変わり、次第に混じる不安の囁き。そんな様子に、ラトレイアはあくまで気さくに。
「……あ、勿論無理に連れ出したりはしないよ。外に出たいと思ってる人のお手伝いをするだけ」
「急に外に行こうって言われて、驚いちゃったかなー?」
 ユーティスも自身が備える特性を余す事無く発揮するかのように、柳のように柔らかく穏やかに、人々に声を掛ける。
「もし良かったら、気になってる事や不安に思ってる事を聞かせてくれると嬉しいなー」
 胸の内に秘めてあれこれ考えるより、一度口に出せば案外心の整理が付いたりするものだ。そうやって少しでも不安を取り除けたら……それは、外に出たいと思う人だけでなく、外に出る人を見送る立場の人についても同じ。全ての人の心配が無くなることが、ユーティスが一番望むことなのだ。

●話
 俄に訪れた機会に一番関心を示しているのは、クィエのようだった。それはツァドには好都合。説得力ある者が行けば、今は興味があるだけの者も、きっと勇気が出せるはず。
 一方で、ユーティスは交流も兼ねて色々な人の話を聞いて回る。初対面ではあるが柔らかな物腰に安心するらしく、周囲には自然に人の輪が出来上がっていた。
 交わされる話題の大半はやはり、今まさに旬の『外界招致』と『祭り』。
「その、『せんすいふく』っていうのは、誰でも着られるの?」
「『冒険者』って人しか使えないものじゃないの?」
「大丈夫だよー」
 確かめてみるー? と笑って手招きすると、ユーティスは人々と連れ立って、泉のほとりへと移動する。そこには、空気管だけを泉の中に沈めた――その先は勿論、地底湖の湖面上のポンプまで続いている――中身が空っぽの潜水服。
「この管がねー、空気を届けてくれるんだー」
 風が来てるのわかるかなー? と、吸気口に手を当てて見せるユーティス。触ってもいいというユーティスの言葉に、今までは『客人の大切なものだから』と長から触れる事を禁じられていただけに、人々はおどおどしながらも興味津々。
「ね、大丈夫でしょう?」
「宜しければ、練習してみませんか」
 同じ泉のほとり、ルーンは水に慣れることから始めてみてはどうかと提案しながら、インセクテアの人々を誘ってみる。ラトレイアも頷いて潜水服を一着手に取ると。
「ま、いきなり向こうまでってのも不安だろうから、コレ着て少し潜ってみる事から始めてみない?」
「着た人は絶対行かなきゃならないとか、そんなことはないからー。興味があるから着てみるだけ、でも構わないよー」
 遠慮しなくていいということを重ねて伝えるユーティスに……暫く顔を見合わせていた人々の中から、ちらほらと着用希望者が現れ始める。実際の潜水練習はツァド達に任せることにして、ユーティスは引き続きそれを見守る人々と言葉を交わす。
 シフィルも祭りに先だって、同盟が大きな脅威の排除を成した事などを伝える。ワイルドファイアの食物連鎖に関しては、自然の摂理なので取り除くわけには行かないが、祭りの会場となるランドアースの脅威が取り払われたことは、インセクテア達を招致するにあたってもとても嬉しい知らせである。
「勿論、皆様の旅の安全はわたくし達が保障いたします」
「必ず無事に連れて行くし、必ず無事に連れて帰ってくるから、ねー」
「勿論です」
 場を和らげるように言葉を継ぐユーティスに、ツァドも大きく深く頷いて見せる。
 その言葉に安心したように目を細めるクィエ。しかしその表情も、次の瞬間にはまたやや硬いものとなる。何しろ。
「こ、このまま沈んでいいのだね……?」
「はい、まずは顔を浸けてみるといいですよ」
 潜水服に身を包み、ぎこちない動きで身を屈めるクィエに、ルーンも潜水服姿で手を取ると、一緒に泉に身を沈めていく。
 まずは息が出来るとわかれば大丈夫。ツァドも相手の手を……ぴかぴかの新品に袖を通して、緊張からかかカクカクした動きでレクチャーを受ける男性と一緒に、泉にゆっくりと浸かっていく。
「慣れてきたら、流れのある所に行ってみましょう」
「は、はい」
 そんな手習いの様子に、何か微笑ましいものを感じながら……しかし流石に口に出すのはどうかと思い。
『これは……背負子持ってきて正解ですね』
『自由に動けるまで、結構時間掛かりそうだよな』
 飛んでくるタスクリーダーに、ラウルもそんな心の声を返す。なんにせよ、練習位はやってみよう、くらいの興味を持ってくれた人がそれなりの数居たのは嬉しい。きっと今までの交流の成果だろう。
 そして、その中から……本当に外界行きに応じてくれる人を見つけなくては。
 一緒に話の輪に混ざりながら、ラウルはしっかりと人々の様子に気を配っていた。

●決心
 熱心とさえ言える懇切丁寧なユーティスの説明もあり、人々の不安げな表情は段々となりを潜めていく。勿論、レクチャーを受けたクィエを始めとする数人が、泉の潜水に慣れてきたことや、
「某方々にできて、冒険者にできないはずはございませんわ!」
 と練習する脇をスウェットスーツで素潜りして見せたシフィルの功績も計り知れまい。
 深部への潜水練習を終えた休憩中、魚料理をご馳走になりながら談笑するラトレイア。
「ね、どんな感じ? やっぱり怖い?」
「あの穴の向こうに、外界が……君達の住む世界があるのだね」
 ホーリーライトに照らされて尚、暗く口を空ける横穴を目にしたクィエはふとそんな事を零す。
 誰も戻らなかった道。
 奈落の穴。
「インセクテアのご先祖様は誰も戻らなかった……でも自分は四度この泉から出発して四度生還しました」
 おもむろに、ラウルは口を開く。
「地底湖外の地上を見て頂き、すぐ国へ戻り壁画に描けば、きっと描く絵が変わるでしょう。その絵が、戻ったインセクテアがいる事が、他の躊躇ってるインセクテアを安心させると思います」
「クィエさんが戻られれば……女性や子供などでも地上に出られる証明にもなります」
 だが、その最初の一人になること……それがもっとも難しいのだと、ルーンも判っている。
 思案に暮れる姿に、ユーティスはまた緊張をほぐすように。
「嫌なら嫌だって言ってねー」
 何処か軽い調子で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ただ、外は、あなた達にとって、とても素敵だと思えるかもしれない。何もなくても、何もないから外には行かなくていいやってことが判るから、交流は今後も僕達が此方にお邪魔する形で続けていけばいいだけだしさー」
 代わりに僕は留守番しようかなー。そんな風に気楽に言ってのける姿に、クィエも人々も緩く笑みを浮かべる。
「確かに水中は死と隣り合わせですが、死から逃れる方法はあります。自分達が必ず死からお護りします」
「急がなくていいから、少し考えてみて?」
 ラウルの言葉を和らげるよに、最後に付け加えるユーティス。
「有り難う」
 短く告げるクィエ。
 その中に何か今までとは違うものを感じて……ルーンは横顔を覗き込む。
「……行ってみようか」
 続けてぽつりと聴こえた言葉に、思わず顔を綻ばせて皆の顔を順繰りに見回す。
 すると、シフィルは集まった人々へと。
「では、改めて。外界へお越しになる方は、いらっしゃいますか?」
 その呼びかけに、クィエを含む五名が、はっきりとした意志でもって、名乗りを上げた。

●潜
「最初は、背負子を使って皆さんを運びます」
 潜水前の最後の確認。ツァドは緊張気味な最初の三人を落ち着かせるように、静かな声色で告げる。
「三人一組、前後の人が組の人です。何かあったときは近くの人のメットを叩いて知らせてください」
「それから、横穴を抜けた先に、白くて首の長い怪獣が居ますが、安全なので慌てないで」
 続くルーンの言葉に、やはり緊張気味に頷く三人。ラトレイアはそんな肩を軽く叩いて。
「大切なお客様だもの、責任持ってエスコートするから安心してね」
「では、参りましょう」
 最後に。
 ラウルが守護の誓いを立てて、護りの天使達を付与する。
 やがて九人の姿は、人々に見守られながら泉の中へと消えていった。

 ホーリーライトに照らされ、浮かび上がるごつごつとした岩肌。
 しっかりと金具で撃ち付けられたロープを手繰り、順に流れの中へと引き返していく。ツァドは改めて網を張ると、先だって横穴へと身を潜らせる。
 既に慣れた感のあった通路。しかし、背負子に追った人々を気遣うように、殊更に慎重に、それで居て時間を掛けすぎないように……そして、タスクリーダーで常に話し掛けることで安否を気遣い、不安を和らげる。
『大丈夫ですか?』
 返って来る頷きに、更に先を目指す。
 もうじき、流れの速い所は終わる……本当は、この脇を素潜りで通り抜けられれば良かったのだが。
『穴を出ますよ』
 聴こえる声に、走る緊張と……広がる安堵。
 ここまでくれば、後は浮上だけ。大丈夫、問題ない。
 手にしたガイドロープ伝いに見上げた頭上、ホーリーライトで照らしてもその先は藻に隠れて見えないけれど……確かに近付いていく湖面の気配。
 やがて九人は。
 首長怪獣に囲まれながら、暗く広い湖面へと、浮かび上がった。

●世界
 地底湖のほとりに、薄っすらと差し込む光。
 ルーンは用意しておいた色眼鏡を取り出すと、連れ出したインセクテア達に手渡す。
「目を傷めるかも知れませんので、どうぞ」
 そして、恐る恐る。
 眩く輝く常夏の陽射しの元へ、新しい隣人は歩み出す。
「おお……!」
「なんて広い……」
「これが……外界!」
 感嘆の言葉を漏らして後、圧倒されたように立ち尽くす人々に、ラトレイアも何処か悪戯に微笑んで見せる。
「どう? 文字通り『世界』が変わったでしょ?」
「如何でございます? この青い空、白い雲」
 果てしない青を両手を広げて示した後、シフィルは一度姿勢を整えると……皆と一緒に改めてクィエ達に向き直った。
「皆様、ようこそワイルドファイアへ」


マスター:BOSS 紹介ページ
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ガラクタ製作者・ルーン(a49313)  2011年11月22日 22時  通報
……自分の全く知らない世界に出ていくというのは、
とても勇気が必要で難しい事なんだと思います。
でもそれはとても大切なことで……
だからこそ、勇気を見せてくれたなら僕たちもそれに応えられるように頑張らないと。