≪白秋の庭≫ワイルドファイアでうきうきピクニック



<オープニング>


 ランドアースでは季節が夏から秋へと移ろい過ぎゆくけれど、ここワイルドファイアは常夏の楽園だ。
 空はあくまでも青く、雲はもくもくと白く、そして太陽は何もかも焼き尽くさんばかりにまぶしく熱く、タロス達の装甲に反射する。木々はジャングルになり、花は咲き乱れ蝶が舞う。

「綺麗なチョウチョだよ、ウヘヘヘヘヘ……!」
「タロちゃんとピクニックだよ、アハハハハハ!」
「僕は漢なのですウフフフフ……!」
「美少女を探すぞエロロロロロロロ……!」
 後半、やや意味の不明瞭な叫びも混じっていたけれど、とにかく旅団『白秋の庭』の面々はこの地上最後の楽園に降り立ったのだった。

 そして………数時間後。
 それぞれのワイルドファイアを全力で満喫した結果、見事にバラバラ、旅団員達はすっかりはぐれてしまっていた。どこまでも広大かつ雄大なワイルドファイアでは再び巡り会うことは不可能に等しい、ような気もする。
 それはまずい!
 超マズイ!
 このままでは1人だけ夜ご飯のバーベキューに間に合わない!
 どうせ点呼も取らず、誰が居るか居ないかも把握せず残らず肉を食ってしまうに違いない……嫌だー! 否! 絶対無理!
 何としてでも仲間を見つけ、合流しなければならない。

 ある者は密林の木々の向こうに見える空を仰ぎ見ながら、ある者は怪獣の背に仁王立ちしながら、また別の者はヒトノソリンのお嬢さん達を探す足を止め、ある者は飛び込んだ湖から顔を出し、決意を胸に秘めて小さくうなずく。

 君は夜ご飯までに間に合うのか!?


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参加者
空の夢・セト(a47397)
ノソ・リン(a50852)
執行者・エッセン(a52445)
銀翅灯・リゼッテ(a65202)
誇鋼の騎士・セレナード(a65333)
時の流れに任せる流水・レラ(a70801)
重武装主戦型高機動タロス・ゼロ(a77439)

NPC:タロスの重騎士・デュンエン(a90399)



<リプレイ>

●うきうきピクニック?
 冒険者達には周知の事だが、ここワイルドファイアは常夏の楽園だ。空はあくまでも青く、雲はもくもくと白く、そして太陽は何もかも焼き尽くさんばかりにまぶしく熱く、タロス達の装甲に反射する。木々は枝葉を広げジャングルになり、花はかぐわしく咲き乱れ蝶が舞い飛ぶ。命の謳歌が聞こえそうな祝福されし大地、それがワイルドファイアであった。しかし今、ワイルドファイアに未曾有の危機が迫っている……かもしれなかった。
「みなさん、どうなさったのでしょうか?」
 火を熾し煮炊きの準備はすっかり済んでいるのだが、タロスの重騎士・デュンエン(a90399)以外、そこには誰もいなかった。

 旅団『白秋の庭』の現旅団長である白花天・リン(a50852)も広大なワイルドファイア大陸の中でポツンと一人きりでいた。自慢の尾もなんとなくしょんぼりと垂れ下がり、かすかに風になびくばかりだ。旅団の皆と仲良く遊ぼうと企画した旅行なのに……なんでこんなに寂しいのか。だが……ここでリンは落ち込んでいるだけの娘ではない。ぎゅっと両の拳を握り足を踏みしめ立ち上がった。
「ふはは! 団員達を深く愛する慈母の如き犬団長は、皆の行動など全てお見通しなのだ! どの団員ちゃんが、どんな場所に居るかなど、その場を見るが如く、手に取る様に解る……のだ。さぁ、困った団員ちゃん達を誰から回収に行くかな!」
 自信満々にリンは歩き出し……そして数十分後。軽やかに歩き出した筈の足はワイルドファイアの大地をバンバンと踏みつけていた。
「ウキー!! どいつが何処に居るんだか、サッパリ解らねぇ! あいつらあれほどお母さんから離れちゃいけませんよって言ったのに!」
 言ってないしそもそも母でもないのだが、リンは癇癪のまま地団駄を踏んでいた。

「あれ? みんな……どこ?」
 とんでもなく激しく強烈な既視感がある。とある湖で思う様遊泳を楽しんだ銀翅灯・リゼッテ(a65202)は、水面から顔だけを出して周囲を見渡す。前にも横にも後ろにも、全方位を見てみても、旅団の仲間達は誰もいない。
「うぬぬ……ここで全裸になって3時間泳ぎまくれば、どんな貧相貧弱でも男の色気むんむんの漢になれると聞いてきたのに。そんな伝説の湖に心奪われている間にみんなとはぐれてしまうとはなんたる不覚……!」
 いかにも無念という様子でリゼッテは顔を伏せた。厳しい表情をしているが、首から上しか水面から出ていないので、端から見ていると恥じらう乙女のようにしか見えない。脱いだ服でも取られたのかと心配してしまいそうな風情だ。
「こうしていても風邪をひいてしまいそうだし……みんなを探しに行くしかありませんね」
 ちょっとためらった後、リゼッテは思い切って岸へと泳ぎ始めた。

「ど、どこだここはー!? 皆どこ行ったのかー!?」
 叫ぶ声に返事はない。叫ぶ疲れたわけではないが、空の夢・セト(a47397)は小さくため息をつくと、声を張り上げるのを止めた。生命に溢れる恵み豊かなワイルドファイアにはきっと良い釣り場もあるだろうと、うっかり水辺にさしかかった時に魚影を探してしまったのが敗因だったのだろうか。気が付くとセトはたった1人になっていた。7人の仲間達の姿はどこにもない。
「とりあえず探すだけ探してみよう。それにしてもお腹減ったなぁ」
 がっくりと肩を落としながら、ともかくセトは歩き始めた。本当だったら、今頃熾した火で大きな肉の塊を焼いたりあぶったり、大きな鍋に大きな具材をぶちこんだりした豪快で潔い野外料理を皆で作っていただろう。
「えーっと、ゼロさんは……」
 セトがまず探しに向かったのは重武装主戦型高機動タロス・ゼロ(a77439)だった。

 そのゼロもやはりひとりぼっちになっていた。
「皆さんはどうしているでしょうか。私1人がはぐれてしまったのだとしたら、皆さんにご迷惑をかけてしまっているのかもしれません。それは……どうにも心苦しい状況です」
 あれほどまぶしく輝いていた真夏の太陽は少し陰り西に傾いている。まだまだ日暮れまで時間はあるが、夕食は是非とも全員揃って迎えたいものだとも思う。
「或いは皆がてんでバラバラである可能性もあるわけですが、そうであるのならば皆が一堂に会するまでに相当な時間が掛かると憂慮されますね」
 ゼロは首をひねる。
「理論的な裏付けがあるわけではありませんが、セト殿がデュンエン殿を発見する可能性が最も高いのではと思われます。そしてセレナード殿は、セト殿、リゼッテ殿、レラ殿を高確率で発見すると推測されます」
 そうとなれば誇鋼の騎士・セレナード(a65333)を探すのが最も効率が良いかもしれない。ゼロは特に周囲の物音に注意をしながら探索を開始した。

 ゼロに最も探し出すべき人物と評されていたセレナードは、たった1人で考え込んでいた。古い木の切り株が丁度言い椅子代わりになっている。闇雲に走り回ってみても、この広大なワイルドファイア大陸の中から仲間達7人を見つけだすのは至難とも言える。砂浜に落ちた7粒の宝石を探すよりも、まずは彼らの性格から行動を類推し居場所を絞り込むのが得策だとセレナードは考えたのだ。
「まずはリンリン先生だが……アホの子、ガラクタ好き。デュンエンは真面目っ子、お茶目。ゼロは更に真面目っ子、たまに難解な言葉を話す。レラはツッコミ要員。地味にエロい奴。エッセン、可愛い……だがエロい。セトにゃんはタロス命! リゼッテ、男の娘。珍しい植物が好き。チョコ好き……ふむ」
 ぶつぶつとつぶやいていたセレナードの言葉が途切れ、沈黙がこの場を支配する。さやさやと風が吹き抜け。
「……これだけでどうやって推理しろというんだ!!」
 絶叫がワイルドファイアの高く澄み渡った空にこだました。正直、先ほど後にしてきた村に戻れば皆、戻っていそうな気もしたがそれでは面白くない。だが、自分1人でも満喫出来そうだと、セレナードは今来た道を引き返していった。

 不意に時の流れに任せる流水・レラ(a70801)は自分が一人っきりな事に気が付いた。圧倒的なまでに美しいワイルドファイアの自然に目と心を奪われ、我に返った後は誰の姿もなかったのだ。
「むむ……さっきまで一緒にいたはずなのじゃが気づけば妾一人とは」
 ついさっきまでは皆一緒だったとレラは思っていたが、それはもう数時間も前の事だった。つまり、数時間もレラは周囲に一切関心を向けず自分と大自然だけの世界に浸りきっていたのだ。だが、我に返ればレラの行動は速い。早速自分以外の『旅先で迷子になった不届きな大人達』を探すべく動き始めた。こんな時に役立つのは、やはり日頃の人物観察眼だ。
「セレナード殿は美形なるヒトノソ娘を探しているだろうし、ゼロ殿はコルドフリードには無かったであろう密林を珍しがったりしておるだろう。セト殿はゼロ殿が可愛すぎて我を忘れ、リン殿は……まぁ、いつも通りな気もするが、リゼッテ殿は可愛さ故に不心得者に追い回されたりしてそうなのじゃ」
 その不心得者が身内なら、この際2人を見つけ出すのは簡単かもしれないと思う程、レラは大人びた思考の持ち主だった。

 皆からはぐれてしまったと落ち込む執行者・エッセン(a52445)は、がっくりと肩を落としたまま歩き疲れて立ち止まった。丁度かたわらには椅子になりそうな形の岩がある。なんとなく表面が摩耗してまぁるくなっているのは、多分エッセンの他にも沢山の者達が椅子代わりに休憩していったのだろう。すべすべした手触りの岩に腰を降ろし、エッセンははぁとため息をついた。
「探すにしても、何も手掛かりがない……」
 旅団に来てさして時間の経っていないエッセンには、普段の言動から各々の行動を推測するにしてもかなり難しい。考えはなかなかまとまらず、けれど汗ばんだ額は吹き渡る風がすーっと冷やしていってくれる。空はまだまだ明るく、日暮れまで時間はたっぷりある。晩ご飯までには絶対に皆を捜し出せるはずだ。
「……うむ、何と無くだが目に付きやすい大きな湖の近くにいる気がする! セレナードさんとか! おそらく『何か』を求めて彷徨っているに違いない 」
 セレナードを見つければおのずとその先に光も見えてくるだろう。エッセンはグランスティードを呼び、その背に颯爽とまたがった。

●ワイルドファイアの邂逅?
 リンは急遽その辺りに転がっていた木材を使い、機転を効かせて絶妙な立て看板を作った。それを湖のほとりにグサッと力強く突き立てる。そこには少し癖のある文字で『男らしい肉体に苦労せずなれる湖』と書かれている。
「リゼッテはこの札を立てておけば、そのうちフラフラ寄って来るだろう。まったく、女の子がムキムキになりたいだなんて、はしたない……って、居た」
 リンが指さす方向には、木漏れ日を浴びながら、今まさに湖から上がってくる立派に全裸なリゼッテの姿がある。
「きゃ……」
「リゼッテさん、みーーつけました!」
「きゃーーー」
 リンが悲鳴を上げる前に、グランスティードに乗って疾風の様に湖の畔に現れたエッセンの声が高らかに響き、少し遅れてリゼッテの悲鳴としゃがみ込んだ水音があがる。
「どうしてエッセンさんが『男の色気むんむん』になれる湖にいるんですか! ってリンさんまで?」
「みんなを捜していたんだ」
 立てたばかりの看板を背負ってリンが近寄ってくる。
「どうやらバラバラになってしまったみたいですね」
 グランスティードに乗ったまま、エッセンは困った様子で首を傾げる。だが、3人になったのだから、他の仲間達を探し出す希望も見えてきた。リンとエッセンが相談をし始めると、しゃがんだままのリゼッテの顔は真っ赤に染まる。
「どうでもいいから着替えさせて下さい〜!」
 泣きそうな顔と声でリゼッテが叫んだ。

「レラさんですか?」
「おお、ゼロ殿ではないか」
 ヒトノソリンの集落を目指し、西へと向かってフワリンの背に揺られていたレラは背後から名を呼ばれて振り返った。そこには黒い装甲の見慣れたタロス、ゼロの姿がある。
「レラ殿ならば、何か歩く先々で痕跡や目印を残しているのではないかと思ったのですが、どうやら私の予想は当たったようですね」
「……その様じゃ。杖で地面に跡を残しておいた妾の目印、ゼロ殿だけにでも判っていただけたなら、重畳」
 ゼロとレラは顔を見合わせて笑みを浮かべる。ともかく近くの木陰で休憩し、これからの相談をする。
「セレナード殿ならばヒトノソリンの集落にいるやもしれぬと、西を目指してみたのじゃが、この様子ならば西には向かっておらぬようじゃ……」
 ほっーっとため息をつきながらレラが言う。
「そうですね。他の皆さんもそれぞれに別の方々を捜しているでしょうから、これ以上西へと進むよりは、引き返す方がいいかもしれませんね」
「……うむ」
 ゼロの言葉にレラは重々しくうなずく。

 東にあるヒトノソリンの集落にセレナードはいた。仲間達とはぐれてしまった場所からすぐ近く、そもそも今日の出発点だった村だ。
「さっき出掛けた人だなぁ〜ん。どうして戻ってきたなぁ〜ん」
 大きな壺を3つも抱えた娘さんに尋ねられ、セレナードは少し笑って答える。
「実は仲間達が道に迷ってしまってね。いや、私だけならなんとでもなるんだけど、他の者達が可哀想だから、ここに戻ってくれば皆帰って来るんじゃないかと思って……もう少しご厄介になってもいいかな?」
 キラ〜んと輝く歯を口元から覗かせながら、セレナードは自分が格好良く見えると思う少し斜めからの笑みを娘さんへと向ける。
「わかったなぁ〜ん。ワイルドファイアで迷子は大変なぁ〜ん。ここでみんなが迎えに来るのを待つといいなぁ〜ん」
「……いや、私が迷子なのではなく……」
「わかってるなぁ〜ん。冷たい水を持ってくるから待ってるなぁ〜ん」
 判っているのかいないのか、娘さんは笑いながら村の奥へと駆けだして行く。
「私も……」
 追いかけようとしたセレナードの背後で突然、大きな音がした。いきなり土砂が降り注ぐ……崖崩れだ。降り注ぐ岩をすり抜け、その途端背中に激しい衝撃が走った。
「わああああああ!」
「ぐえっ」
 落ちてきたセトはセレナードの身体を緩衝剤代わりとし、結構な高みから落ちた割には無傷だった。
「あれ? 断崖絶壁で震えるゼロさんは? デュンエンさんの手料理は?」
「知るか!」
 セトに踏みつけられたまま、セレナードはじたばたをもがいていた。

●晩ご飯は肉三昧?
 3人寄ればラウレックの知恵……だったのか、大きなぐつぐつと煮立った鍋の側で待つデュンエンの前に姿を現したのは、リンとエッセン、そしてリゼッテだった。
「皆さん、よくご無事で……」
 デュンエンは嬉しそうに3人を火のそばに手招きする。そこには炭化寸前なほど焼かれた真っ黒な肉の塊が幾つもかざしてある。
「デュンエンさん。僕達の他にはまだ誰も来ていない……のですね」
 台無しになる寸前の料理を目の当たりにすれば聞くまでもないことだが、リゼッテの言葉にデュンエンはコクリとうなずく。
「ここにはずっと私だけでした」
「残念ながら、レラさんとゼロさん、それからセレナードさんとセトさんもまだはぐれてしまったままなのですね。でも、これ以上煮炊きするともう食べられなくなってしまいますから……さっそく戴きましょう」
 素早くグランスティードから降りたエッセンは、素早い所作で椀を取り鍋の中身をよそい出す。早く取り出さなければ鍋の中身はただの煮こごりになってしまうし、あぶった肉は炭になってしまう。
「セトにゃんはきっとすぐ来るよ。色々と看板を立てて来たから」
 リンが苦心して考えた文言はきっとセトの心をわしづかみにするだろう。そうすれば、きっとここまで辿り着ける筈だ。

「セレナードさん、早く早く」
「セトにゃんのどこにそんな力が……」
 しばらくして、セトとセレナードがヒトノソリンの集落から駆けつけ、その後すぐにレラとゼロも西から戻ってきた。
「かろうじて野宿は免れたようじゃ」
「皆さん、遅くなりました」
 レラはホッとしたように笑い、ゼロは律儀に皆に詫びる。
「では、お食事を始めましょう」
 デュンエンは更に沢山の薪を焚き火にくべ、炎は大きく燃え上がった。


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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参加者:7人
作成日:2009/10/26
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