<リプレイ>
●そして祝勝会が始まる 「まさかカディスから祝勝会に招待されるなんて、考えても見なかったな」 緋焔童子・シュウは、そういいつつ、ノルグランドから運び込んだ樽酒を、どっこいしょと宴会場となる大広間に下ろす。 「ご苦労様ですね」 そう言ってシュウを労ったのは、マリアとティア。 カディスへの手土産という事で、幾つかの酒樽をノルグランドから持ち込んだらしい(酒樽には寸志という札が張ってある)。 既に会場には、カディスの酒蔵から持ち出したのか大量の酒が用意されており、外の広場で焼いていた豚の丸焼きの匂いとあいまって、アルコールの匂いも心地よい。 「せっかくの招待だから楽しまなければな」 肉体労働をさせられたというのに、シュウはかなり嬉しそうにそういったが……。 「あら、あなたは未成年だったわよね?」 ティアにやんわり釘を刺されていた。 そのティアは、自分で持ち込んだラム酒を楽しむ気まんまんらしいのが不公平な気もするが……。 「……わかってるさ」 とても残念そうな声。 そんなシュウを慰めるように、マリアが口を開く。 「カディスの護衛士さんでも、城門の警備にあたっている人はお酒は飲めないと思います」 だから、美味しい果汁も用意しているんですよ。 そういってにっこり笑うマリアは、まるで天使のようだったが……。 「ということで、シュウさん。もう一働きです」 どうやら、シュウは、宴に参加できない護衛士の人達に飲み物を運ぶというお仕事もさせられるようである。 「大丈夫、働いた後の果汁は、お酒よりもおいしいのですわ」 そして、彼女達は当直の護衛士達に飲み物を配りに出発したのだった。
3人がカディスを一回りして戻ってきた頃には、豚の丸焼きもこんがりと焼けて運び込まれ、祝勝会会場では司会を買って出たアザリーが、軽いトークで場をもりたてていた。
「それでは、エリーゼ様、ラドック様。乾杯の音頭を」 アザリーに言われて、おずおずと進み出るエリーゼ。 心得たとばかりに堂々と台上に進むラドック。 小柄なエリーゼとラドックが並ぶとまさに子供と大人という風情だが、まぁ、それはそれで萌えである。 「えっと、あの。皆様、楽しんでください」 「カディスの栄誉と、そして、ノルグランドの友人達に!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
多くの酒盃とグラスが掲げられ……そして、記念すべき祝勝会が始まったのだった。
●護衛士と護衛士と 祝勝会が開かれている大広間の真ん中では、ラドックとエリーゼとがカディス周辺の村の村長達からお祝いの言葉を受けている。 というか、ラドックがエリーゼと村長達とを引き合わせているという所か。 「少し…つまらない……」 そんなラドック達をみて、そうつぶやいたのはミストティーア。 ラドックと話して仲良くなろうと思っていたようなのだが、どうも、そんな雰囲気では無いようだ。 「…しょうがないの……でかけるの。イナンナおいで」 そう言うと、ミスティはイタチのイナンナを連れて目立たないように広間の外へ。
「キミは、あの時の?」 その広間で見知った顔を見つけたのは、月光蝶・レイ。 「ん、なんだ?」 酒盃を煽っていた青の鱗の護衛士の一人が、そのレイの言葉に答えたが、どうやらレイを覚えていないようだ。 「私はパナイザの森で、キミに倒された」 レイが加わった第3小隊はパナイザの戦いでは全滅の憂き目に会っているのだから……。 「知らんなというか、正直、見分けをつけるのが大変でな。だが……遺恨試合なら受けて立つぜ」 にやりと笑って酒盃を置く護衛士。酒を飲むよりも戦う方が性にあっているのだろうか。 だが、レイは小さく首を振ると、こう続けた。 「ありがとう」と。 会戦のルールを受けて守ってくれた事。 そして、世界にはまだまだ強い冒険者がいるという事を教えてくれた事に……。 相手のリザードマンは、少し面食らったような表情をしたが、鼻のあたりをポリポリと書いて、杯を差し出した。 「まぁ、飲もうぜ」と。 そして付け加えた。「一対一なら、お前の方が強かったぜきっと」と。
そして広場のもう一方では、レイと同じ第3小隊に属していたエリーシャが自分を倒した部隊の指揮官であるジルイゾを見つけていた。 「エリーシャだ。覚えてないかもしれないが、パナイザではあんたの隊とやり合った」 だが、それは謙遜が過ぎたかもしれない。 「お前はバカか? 戦場に最後まで立っていた男の事を忘れる筈が無いだろうが。お前の言葉もお前の誇り高さも……覚えているぞ」 そういわれて、エリーシャは頬を上気させる。その言葉は、美女の告白よりも嬉しいものだったろう。 「俺も年だからな、お前のような若者が羨ましいぞ」 ジルイゾと一騎打ちをしたかったらしいエリーシャであったが……。どうやら祝勝会の間中、酔った年寄りの話相手をさせられる運命らしい。 そんなエリーシャを見て、カディスの護衛士の一人がこう言った。 「今日のジルイゾ爺さんの犠牲者はあいつか。ご愁傷様」と。
そして、こちらは広間の外に出たミスティ。 彼女は、自分と同じように外に出ていた仲間を見つけたようだ。 「この城壁からの風景を眺めて、お酒が飲めるとは思わなかったわね」 城壁にもたれかかって酒盃を傾けるミリティナは感無量という風情。 「ミリティナ…見つけたの」 かくれんぼをしていた訳では無いのだが、ミリティナは少しびっくりしてミスティに振り向いた。 「仕事してるリザードマンの人…差し入れもってくの」 一緒に行く? というミスティの問いにミリティナは頷いた。 「いろいろ話も聞きたいしね。それじゃ厨房で何かもらってこよう」 そして厨房へ行った2人は、 「特製甘いリンゴタルト完成だ! さぁ、運び込んでくれ!」 厨房で忙しく働くシュバルツを見つけたのだった。 「こっちも出来たわよ。さくらんぼのラムムース、シュバルツ食べてみないかい?」 どうやら彼は、あちこちの村から手伝いに来たのだろう賄のオバサマ達のアイドルと化していたようだが……。 パナイザ会戦の立役者の一人の彼が、裏方に徹しているというのは意外だが、これはこれで似合っているかもしれない。
ミルティナ達は、そんな厨房から軽いつまみを拝借して、差し入れにする事にした。
●宴もたけなわ 一方その頃、祝勝会会場。 シュバルツの作ったデザートが運ばれる頃には、すっかり場が暖まっていた。 「47番ロゼ、カディス心中歌いまっス〜♪」 12歳の女の子の歌う歌じゃありませんって。 やんやの喝采と笑いに、ティンの伴奏がついてスタート。 「ララララ〜(事情により歌詞は割愛)♪」 まだまだお酒の飲めない年齢のティンは、どうやら隠し芸大会の伴奏係で大忙しのようだった。 さすが吟遊詩人大活躍♪
ティンだけでなく、ノルグランドの護衛士団は平均年齢が低くてお酒を飲めない者も多い。 その一人である、ミハイルは豚を一匹まるまま食べるような勢いで食って食って食いまくった後に、ふらりと広間の片隅に足を運ぶ。 そこでは……。 「はぁ…幸せぇ」 お菓子とリヒトに囲まれて甘い一時を過ごすエクリアの姿が……。 「今日は飲むぞぉ」 ボトルを横に手酌で飲むのはリヒト。そんなリヒトに「リヒト様、お酒だけじゃ体に悪いのですわ」と、お菓子を食べさせようとするエクリア。 「はい、あ〜ん」 「む…(しばしの沈黙の後)…あーん(小声で)」 なんだか凄い退廃的な感じがする、そんな中、勇敢にもミハイルは声を掛けた。 「ナニやってんですか師匠!」と。 すると……一瞬、エクリアの表情が恐ろしい姿に変貌をとげたのだ。 もし、ミハイルがバグウォッシュ王ならば、怖さで失神するような表情だ。 「って……ナニに決まってますよねぇ。お呼びじゃないお呼びじゃない……」 ミハイルは脂汗をたらしながら、そういって撤退したのだった。
「何をしとるんだ、奴らは」 そんな呆れた表情は、バートランド。 浮かれ騒ぐ若者とは違い、こちらの席は上品な老人達。 カディスの主だった武将達も、こちらに集まっている。 カディス副将ジャルイマも、こちらでゆっくり飲んでいるよう。 「若い者に混ざると互いに気詰まりでしょうしね」 「そりゃそうだ。まっ、ウチの若い奴にはアンタ位の奴が説教してくれる方がいいんだがな」 豪快に笑うバートランドに、ジャルイマもにやりと笑って答えた。 「それでは、合同訓練でもしましょうか?」と。 「それはいい。カディスとノルグランドは対ソルレオンの双璧。息は合わないよりもあった方が良いともさ」 「厳しいですよ」 「いい薬になるな」 「ハハハ」 「フフフ」 どうやら、この2人も気があってしまったようだ。
そんな2人の横で、しかめっ面で茶色の液体をガブガブ飲んでいたサングバウは、近寄ってきたほろ酔い加減のアルビレオに気づいた。 「あっちの奴に聞いたぜ。カディスで一番飲む漢はお前さんだってな」 アルビレオはそういうと、大きなジョッキを2つ差し出した。 「飲み比べ! 勝負だ」 サングバウはやはりしかめっ面のまま、アルビレオが差し出したよりも2倍は大きいジョッキに自分が飲んでいたのと同じ液体をなみなみとついで、アルビレオに差し出した。 (「マヂか?」) ちょっとアルビレオはちょっとビビッたが、それでも勇敢にそのジョッキに口をつけて飲み干……せずに、倒れこんだ。
「これは?」 バートランドがジャルイマに問う。 「サングバウは下戸でね。それが悔しくて、こういう席ではウコン汁を大ジョッキで飲んでるのさ、こいつを大ジョッキで飲めるのは、この世界広しといえどサングバウしかいないからな」 ジャルイマはそう説明した。 「それにしても……訓練しがいのありそうな若造どもですな」 ジャルイマの言葉に、バートランドも力強く頷いた。 「全くもってその通り」と。
●幕間剣戟 「イニチェリさんは……ここにはいないようですね」 漆黒の魔剣士・シュウは、茶色の顔色で倒れているアルビオレに首をかしげながら、カディスの隊長格があつまっているテーブルを確認する。 バートランドとジャルイマが不気味に笑い合っている意外は、別段おかしな所は無いが……。 「イニチェリか? イニチェリなら赤い服の女に連れられて向こうに行ったぞ」 そう聞いて、シュウはそちらに向かった。 (「イニチェリさんとは、もう一度決着をつけたいですからね」)
だが、シュウの願いは叶えられなかった。 何故なら……。 イニチェリは赤い服の女、ラミアの手をとって号泣していたのだから。 「泣くな、それでもお前は歴戦の勇者か」 「これが泣かずにおられるものか……くぅ」 ラミアは少し困った表情をしたが、腕を広げてイニチェリの肩を抱いて言った。 「判った、泣きたいだけ泣け。それが供養にもなるだろう」 そして、イニチェリはラミアに抱かれるように……。 「なんだ、コレは?」 それは子供のシュウには良く判らない世界であるようだった。
だが、その時、シュウの耳に彼と同じような考えの言葉が聞こえてきた。 「さぁ喧嘩だ! この前の戦いはスッキリしなかったが……殴りあいですっきりするぜ!」 それは、幾人かのリザードマンの若いのと連れ立って中庭に向かうガリウス達の一団であった。 見物人も含めて、結構沢山の人が中庭に集まるようだ。 「……手合わせはできそうだな」 そう言うと、シュウは中庭へと移動した。
「それで終わりか!」 シュウの叱咤。 結局、ガリウスや他のリザードマンではシュウに敵う者はいなかったようだ。 なおガリウスの実力は、残念ながらカディス護衛士団の新米とどっこいという所のようだ。 (「冒険者は年齢では無く経験って事か」) ガリウスは、そう言うとガックリする。少しだけショックだったらしい。 「楽しそうな事をやっているな。では、俺が相手になろう」 その言葉と共に、抜き打ちざまに剣が放たれた。
「攻め鬼バーヤグっ!」 そう声に出したのは、ゲイブだった。 ノルグランド地方出身の彼にとって、冒険者の中でもカディス護衛士団は英雄の中の英雄である。 カディスの誇る無敵の黒将軍の昔語りを聞いて少年時代を過ごした彼だから……、カディスの攻撃隊長バーヤグの戦う姿は感動的ですらあった。 最初のバーヤグの剣撃は何とかしのいだシュウであったが、撃ち続けられる剣戟に防戦一方に立たされ、反撃の糸口が掴めない。
「これが……カディス最強の剣撃」 ゲイブはその2人の動きに同じ冒険者として見惚れてしまった。 連戦の疲れもあったろうシュウは、バーヤグの剣を捌ききれずに敗北を喫したのだった。
「次は俺が!」 ガリウスが叫ぶが「実力不足」とバーヤグに一蹴されてしまった。しょんぼり。 「次の相手は決めてあるさ。あの男を呼んできてくれ」 そのバーヤグの言葉に掛けだしたのはゲイブ。 そして、宴の片隅で佇んでいた一人の男を連れてきた。 「来たな……お前の実力を示してもらわんと、俺の立場も無いんでな……。来い!」 バーヤグの言葉に、その男も剣を抜き……。
●兵どもが夢の跡 宴の広間は死屍累々。 所変われど、それだけは変わらないのがお約束。 だが、それでも理性を保って話し合いなぞをしている人もいます。
「問題はやっぱりソルレオンの出方だわね」 羊皮紙に描かれた簡単な地図を指差してフーリィが言う。 「カディス護衛士団ではある程度の予測ができていると思いますが」 いかがでしょうか? と続けたのはフェルディナン。 答えるのはジャルイマ。 「あれだけの大作戦の後、少なくとも数ヶ月は次の戦いは無いでしょうな」 「その理由は?」 ディックの反問に、ジャルイマは地図の西の果てを指す。 「背後は常にトロウルに脅かされている。ソルレオンが大規模な戦いを仕掛けるには、その為の準備が必要になるのが理由だな」 外征に出ている間にトロウルに隙をつかれないような準備。 それが、どういうものかは判らないが、確かに時間は掛かりそうだ。 「なら、こっちから攻めるのは?」 と聞いたのはフーリィだったが、まぁ答えは予想とおり。 「ソルレオン領は責めるに難く守るに易い高地。そして、出戦で無ければ、トロウルを警戒しつつでも大きな戦力を割ける」 その答えに、ディックも頷いた。 「ソルレオンとの戦いはカディスが戦場と聞いたが……基本的に守りの戦なのだな」 難攻不落とされるカディス城塞。 だが、真に難攻不落なのは、ソルレオン領全体を構成する高地であるのだろう。 「ま、後数ヶ月猶予があるなら色々考えられるわね」 「まず決めなければならないのは、このカディス地方の防衛をどのような体制で行うのか……ですね」 フーリィの言葉にフェルディナンが続きジャルイマが頷いた。 「どちらにせよ、今のノルグランドは後方過ぎて役に立たないでしょうね」 「カディスに加わるか……前線の支城に移るか」 「場合によっては、我々が前線の支城を担当しても」 「いやいや、カディス防衛に関しては……」 「それは支城にしても……」 とりあえず、良い方法を考える必要がありそうだった。
こういう一部の例外を除き、死屍累々の広間では。 「まったく、しょうがないですわね」 シュリーチェが、やれやれという風情で、泥酔者を介護していた。 眠ってしまった人には毛布を掛けて、食器を片付け生ゴミを集めて……。やる事は幾らでもありそうだ。 よしっと腕まくりで取り掛かったシシュリーチェに、中庭から呼びかける声。
「ちょっと来てごらんなさい。シュリーチェ」 呼ばれて出てみると、そこは、広間にひけをとらない死屍累々。 殴りあったまま抱き合って眠っている者から、本当に気絶してる者。 傷だらけのまま、だらだらと酒を飲んでベロンベロンの者。 「まったく、酒は飲んでも飲まれるなって言葉をしらないのかしら」 シュリーチェに声を駆けたシファレーンは、腰に手をあてて嘆息する。 「とにかく、手当てが必要な人には手当てしなければね」 本当に、とてもとてもやる事は幾らでもありそうだった。
●余談 泥酔していたカディス護衛士達は翌日ジャルイマに、ノルグランド護衛士達はシファレーンにお説教されたのだそうです。
めでたしめでたし。

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参加者:26人
作成日:2004/07/24
得票数:冒険活劇2
ほのぼの43
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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