≪刀剣管理店『魚竜荘』≫剣を求めて



<オープニング>


「この洞窟の奥に……伝説の剣が」
 そっと呟く魚鰭の重銛使い・マグロ(a73202)。そんな彼女を待ち受けていたかのように、岩肌に小さな入り口をぽっかりと開けた洞窟が存在している。
「どんな剣なのかなあ。早く見てみたいなあ」
 実際のところ伝説の剣、とはマグロがそう解釈しただけであり、嘗て辺境のとある村で守人と慕われた人物の遺品である剣、とのことらしい。外敵から村を守り続けた剣とは、一体どのようなものなのだろうか。
「それにしても、何でわざわざこんなところに剣を……」
 マグロ自身は知らないことであったが、この先の洞窟は元々その人物の住居として使われていたものであり、辺鄙な場所ではあるが剣が残されているには自然な場所であったりする。
「と、とにかくっ、皆行くよー!」
 同伴していた旅団の仲間達に声をかけ、洞窟へと足を踏み入れた瞬間である。なにやら糸らしきものを踏んでしまうマグロ。
 ――ぱしゅっ、と何かが弾むような音が鳴り、マグロの足元に小さな矢が突き刺さる。
「……え、えーっと」
 なお余談であるが、この人物は大層心配性であったためか、住居として使っていた洞窟――中は結構広いらしい――のあちこちに自衛用のトラップを仕掛けていたらしい。そして客観的に見るならば、現在のマグロ達は侵入者という立場であり。
「す、すっごく嫌な予感が〜……」
 よくよく目を凝らしてみれば、至る所に怪しげな糸やら何やらが洞窟内に網羅されている。ここまでする必要があるのだろうか、ともマグロは思うのだが、ここを抜けない限り肝心の剣には辿りつけない。
「行くしかないよね……!」
 覚悟を決め進んでいくマグロ達。果たして無事剣の場所まで到達できるのだろうか。


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参加者
無限為ル蒼鱗ノ龍門冒険者・リューン(a36277)
貧乏貴族・クレヴ(a42695)
白幻影・ジュウ(a57846)
逆位置の運命・ブリザック(a60343)
風と共に木霊する旋律・ライナード(a72081)
魚鰭の重銛使い・マグロ(a73202)
白鱗女顔の紋章術士・フロウ(a78693)



<リプレイ>

●まずは落ち着いて
「だ、大丈夫かなぁ? ですー……」
 両の手にカンテラを1つずつ引っさげた蒼焔ヲ纏フ龍門探索者・リューン(a36277)が、不安そうに辺りを見渡す。一見岩肌とただただ奥まで広がる空洞しか見えないのだが、よーく観察してみると張り巡らされた糸や不自然なでっぱりなどが見て取れ、それが一体どんな罠なのかと想像するだけでも不安が煽られてしまうのだろう。
「大丈夫かは置いておくとしても、こうもトラップが張り巡らされてるってことは、剣にしろ何にしろ何かが眠ってんだろうな」
 トラップを踏まないように気をつけながら、どうしたもんかとでもいうように頭をガリガリと掻きながら進む逆位置の運命・ブリザック(a60343)。頭上ではホーリーライトが煌き、辺り一面を照らし出している。
「こう数があると、気をつけていても引っかかりそうですよね」
 足元から伸びる糸が、岩陰に設置されている弓に繋がれている事を確認し頬を引きつらせる白幻影・ジュウ(a57846)。作動させさえしなければどうということはないが、緊張のためか少し進むだけでも疲労感が襲ってくるのを実感する。
「油断大敵怪我一生、皆くれぐれも油断するでないぞ」
 辺りを忙しなく見渡す貧乏貴族・クレヴ(a42695)。全員無事に笑顔で帰る、そう意気込んでいたクレヴは、傍から見れば少々過剰ともいえるほどに警戒をしながら仲間達に続く。
「気を引き締めて行かないとね」
「って、言ってる傍からラードン、足元足元!」
「ん?  ……っとと、危ない危ない!」
 無造作に前方にある不自然な茂みを踏みつけようとしていた風と共に木霊する旋律・ライナード(a72081)を、慌てて魚鰭の重銛使い・マグロ(a73202)が引き戻す。そしてその茂みを手でどかしてみれば――。
「落とし穴、だね」
「下の方に竹槍がいっぱい……落ちたら痛そう〜」
 はたしてこれらのトラップの設置にどれだけの労力が必要になったのだろうか。想像する気も起きないが、設置した人物は相当に用心深いか心配性かのどちらかである。
「この落ちてる縄とかも……トラップですよね?」
 恐々と縄をよけて歩く白鱗女顔の紋章術士・フロウ(a78693)。薄暗いために、足元に無造作に置いてあるトラップに気を遣るのは非常に疲れる行為である。それも全てが巧妙なトラップというわけでもなく、あからさまにトラップではないのか? と思えるものも多く、まさかそんな単純なの仕掛けてるわけがないだろうし……ブラフ入り? とでも思ってしまうほどである。尤も、実際に作動させてとりかえしのつかない事になっては困るため、確かめることすら出来ないのだが。
 そうして一同がゆっくりとそれでいて確実に洞窟を進んでいると、道が3又に分かれた場所に到着する。

●右へ
「また落とし穴か……」
 竹槍に串刺しにされただの土に戻った土塊の下僕を見、ため息をつくブリザック。これでもう5体目である。
 分岐地点で2チームに分かれた刀剣管理店『魚竜荘』の面々の内の片割れ、仮にAチームとする彼らは、ブリザックの召喚する土塊を先頭に右側のルートを進んでいるのだが……。
「こっちのルートは落とし穴ばっかりですー」
 リューンの言うように、このルートは落とし穴ばかりなのだ。それ以前にあった糸式のトラップなどは殆どないのだが、代わりというようにそこら中に落とし穴が掘られている。それも直進を阻むかのように掘られているため、蛇行しながら少しずつ少しずつ進まなければいけないというのがいやらしい。
「わたっ!」
 石に躓いたジュウが、それはもう綺麗に落とし穴へと飛び込んで――。
「ぬうっ、だ、大丈夫か!」
「な、なんとか……」
 いくところを、クレヴがギリギリのところで足首をつかんで引き止める。勿論ジュウの真下では鋭い先を備えた竹槍の山が並んでおり、間一髪であったとジュウもクレヴも嫌な汗をかく。
「ああもう、全然前に進めないな!」
 回り道ばかりさせられ、段々とイライラしてきたブリザック。それは残りの3人にしても同じで、一向に成果が見られない行為とは精神的にキツイものである。
 しかし洞窟であるが故に終わりはちゃんとあるもので。
「あっ、なんだか壁みたいなのが見えてきたですー!」
 ようやく見えた終わりに、喜びの声をあげるリューン。だが肝心の剣はどこにもなく……。
「ここは……寝床か?」
「朽ちててわかり難いですけど、多分そうじゃないでしょうか」
 伝説の剣が置かれている場所なのに、何故寝床が、と眉をひそめるクレヴ。その理由に答えられる人間はこの4人の中には居らず、そして剣がない以上このルートはハズレなのである。

●左へ
「んぎゃー!」
「ああっ、ダメだよ! 走り回ったらまた罠が発動し――うわわわわわ!」
 飛来する矢に右往左往するライナード。既に服などには掠った矢に開けられた穴や、そもそも矢自体が刺さっていたり、と見事にトラップに引っかかりまくっていた。
 最初はマグロの召喚する土塊に先頭を任せていたのだが、全てのトラップをそれで回避できるわけでもない。そして結果回避できなかったトラップの1つをライナードが踏んでしまい、今に至るわけである。
「落ち着いて、落ちつい――うわああっ」
 逃げ回るライナードに気を取られ、足元を疎かにしていたフロウが縄に引かれ逆さ吊りにされる。思わず服の裾を押さえるフロウであるが、恥らっている余裕などなかった。何故ならば。
「矢が、矢が僕の方にも飛んで! ひっ、ひぃっ、危ないっ!」
 必死に体を揺らして飛来する矢をかわしていくフロウ。どうやら連動式のトラップだったようだ。
「こ、こんなトラップだらけの所を勇者さんはどうやって進んだんだろう……ねっ!」
 必死に矢をかわしながら呟くマグロ。彼女達に知る術はないのだが、勇者こと守人はトラップを仕掛けた張本人であり尚且つここで生活していた主でもあったため、完全にトラップの位置を把握していて生活には困らなかったとか。
「ぶひゃっ!?」
 走り続けていたライナードが、洞窟の行き止まりの壁にぶつかり情けない声をあげる。それと同時に罠も終わりであったのか、矢が飛んでくることはなかった。へたり込んで休憩するライナードとマグロ。そこに泣きそうな顔のフロウが、ふらふらと追いついてくる。
「お、置いていくなんて酷いですよ〜……」
「あ、あはは……ごめんねー」
 目をそっと逸らすマグロ。自分も逃げるのに必死で、助ける余裕がなかったのである。
「あれ、これ何だろう」
 話を変えるようにややわざとらしく大きな声をあげるライナード。彼の指差す先には、幾つもの積み上げられたタルが置いてあった。
「うわっ、なんだかすごい臭いがする」
「な、何か腐ったような臭いですね」
 勇気を出してタルを開けてみる3人。するとその中には最早原形すら留めていないほどに腐りきっている魚などが入っていた。
「何だか此処、とっても生活臭を感じるね〜」
 実はこのタル。守人の所持していた食料入れなのである。腐臭を撒き散らしているのは、干物に加工前の魚がそのまま放置された結果である。
「ううぅ……こっちはハズレだね」
 結局剣を見つけることは出来ず、すごすごと3人は来た道を引き返していくのだった。

●結局正解は中央
 合流した刀剣管理店『魚竜荘』の面々は、2チームともハズレ……ということで残る中央の道を進んでいた。いい加減トラップの配置されてる癖がわかってきたことや、落とし穴がこのルートにはなかったこと、そしてその他の罠も比較的少なかったため、既に進んだ2ルートよりも楽に進むことが出来ていた。
「なんだか……ちょっと熱くないですー?」
 そう言って汗を拭うリューン。他の面々もそう感じているのか、しきりに服に風を送り込んだり、手で顔を扇いだりしていた。
「……うん? おい、アレって」
 先頭を歩くブリザックが、訝しげに前方を指差している。その先にあるものはといえば――。
「温、泉?」
 少し大きめの広場といった場所に小さな湖のように水が満ちており、そこからは朦朦と湯気が立ち昇っている。そしてその広場のような場所の更に奥のほうには、何やら木製の扉のようなものがあった。
「この扉は一体……って、もしかして」
 扉の奥には更に扉があり、それを躊躇いなく進んだジュウはそこに保管されていたもの――1本の剣と数点の防具を見つけた。
「んー……これが例の剣ですかね?」
「これが伝説の……」
 黒い鞘に入れられた大剣を手に取るクレヴ。ずしりとした重みが手のひらに伝わる。背後から仲間達の抜いて見せて! という好奇の視線が飛び、それに答えるように一気に鞘から引き抜く。
 くすんだ刀身。長年手入れをされなかった大剣はかつての輝きを失い、また保管場所もさほどよい場所と言えないためか錆びも浮いてしまっている。――しかし、だ。その幅広の刃に刻まれた無数の傷、それは幾度も磨がれたであろうに克明に残されている。擦り切れるほどに振られた柄。一体この剣は、何度修羅場を潜り抜けてきたのだろうか。嘗て幾人もの人々を救った名剣の果てが、そこにはあった。
「なんだか……すごくロマンを感じるよ」
 その剣から何かを感じ取ったのか、ライナードが少し興奮した様子で声をあげる。それは他の面々も同じなようで、大なり小なり何かしらの感銘を剣から受けている。
「とりあえず、帰ったら剣の手入れをしなくちゃいけませんね」
「元の輝きが戻るといいな〜♪」
 クレヴから剣を受け取り、荷物袋に入れるマグロ。折角手に入れたのだから、嘗ての輝きを見てみたいものである。
「……折角温泉もあるんだし、皆で入ろっか!」
 そう言いながら既に温泉の方へと駆け出しているマグロ。他の面々も特に異論はないのかそれに続く。尤も困ったことがあるとすれば、温泉があるとは思わなかったため、全員そんな用意など全く持っていなかったことであるが。
 こうして刀剣管理店『魚竜荘』の面々の、伝説の剣を探す冒険は幕を閉じた。手に入れた剣が本当に伝説の剣かどうか、それを確かめる術はないけれど……けれどそんなものは必要ないのかもしれない。
 何故ならば伝説とは、伝え語られるもの――それを聞きつけた彼らにとって、この剣は間違いなく伝説の剣なのだから。


マスター:原人 紹介ページ
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作成日:2009/10/31
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