≪薫柚亭≫結輪亭茶話・番外 〜晩秋の琥珀梨〜



<オープニング>


「梨狩り、ですか?」
「うん。マッピングであちこち行ってるネイネージュなら、何処か知ってるかなぁて」
 薫柚亭の昼下がり。店主の朱陰の皓月・カガリ(a01401)から相談された放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)は、うーんと考え込んだ。
「そろそろ紅葉の頃ですからね。今時分なら、柿とか蜜柑とか……林檎なら、色々あると思いますけど」
「梨がええんよ」
 どうやら、カガリは『梨』に深い思い入れがあるらしい。
「旦那様の大好物で、旦那様と初めて一緒した依頼も梨で、旦那様が好物やからって梨狩りも行って――」
「とってもよく判りました」
 話が長くなりそうなのを察して、にこやかにやんわりと断固として話を遮るネイネージュ。
「今年の秋も何かと忙しかったですしね」
「うん。けど、やっぱり梨狩りにはどうしても行きたいんよ」
 判りました、とネイネージュは穏やかに頷いた。
「今はちょっと思い付きませんが、詳しい人に当たってみます」
「よろしお願いするんよ」

 数日後――再び薫柚亭に顔を出したネイネージュは、カガリに会うや「見つかりましたよ」と笑みを浮かべた。
「琥珀梨、と呼ばれているのだそうです」
 両掌で持つ程に大きなその梨は、蜜のように濃い黄金色。触った感じが些かごつごつしている所為もあり、貴石の『琥珀』に喩えられているのだという。
「でも、それは皮が分厚いからなんですよね」
 厚めの皮を丁寧に剥けば、現れるのは瑞々しい純白の果実。上品で甘い香りが立ち上り、柔らかな果肉を頬張れば、歯ごたえはシャリシャリと心地よく、とろけるようにジューシーな甘さが口一杯に広がるのだとか。
「旬は11月。丁度、今頃に収穫されるそうですよ」
「それ、何処で獲れる梨なん?」
 思わず勢い込むカガリの前に、ネイネージュは地図を広げる。
「カーシャ山の奥にある小さな村で作られているんですが、冒険者の足ならさして苦労はないと思います。ただ……」
「何か問題でもあるん?」
「カーシャ村は本当に小さいので、宿屋の類はないそうで」
 日帰りで梨狩りして味わう分には問題ないかもしれないが。
「琥珀梨は、お菓子や料理に使っても絶品だそうですから……色々試してみたい方もいますよね」
「まあ、それは……」
 折角の今年最後の梨ならば、堪能し尽くしたいもの。悩ましげなカガリの表情に、ネイネージュは何だか楽しそう。
「『結輪亭』を覚えていますか?」
「えっ!?」
 その店の名は、カガリも覚えがあった。
 結輪亭――エルフとヒトの兄妹が切り盛りしている細工物と喫茶の店。かつては依頼を何度か持ち込んでおり、縁のある冒険者もいる。カガリやネイネージュもその1人だ。
「懐かしい名前を聞いたなぁ」
「実は、今回の情報源は『結輪亭』のパティシエさんなんですよ」
 名前は、リドル・ネーゼだったか。気風のいいヒトの女性で、菓子作りの腕前も抜群だった。ちなみに兄のシードルは腕のいい細工師である。
「リドルさん曰く『琥珀梨を持って来てくれるなら、うちの厨房を使ってもいいわよ』だそうです。結輪亭なら広いですし本職の方もいますから、梨も色々と楽しめると思いますよ?」
「行きたい! 琥珀梨も結輪亭も!」
 即決即答。早速、「カーシャ村で琥珀梨狩り&結輪亭でクッキング」ツアーを仲間に持ち掛けるカガリだった。


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参加者
赫風・バーミリオン(a00184)
語る者・タケマル(a00447)
朱陰の皓月・カガリ(a01401)
自然と昼寝愛好家・ファンバス(a01913)
琥珀の狐月・ミルッヒ(a10018)
陽煌の剣風・シフォン(a17951)
野良団長・ナオ(a26636)
霹靂斬風・アーケィ(a31414)
哉生明・シャオリィ(a39596)
空游・ユーティス(a46504)
紫眼の緑鱗・ボルチュ(a47504)
氷雪の舞姫・フィアナ(a76729)
月華氷人・ミシェル(a78505)

NPC:放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)



<リプレイ>

 結輪亭の朝は早い。
「おはよう」
「おはよう、兄さん」
 兄妹が挨拶を交わしている所にカランコロンとベルの音。
「おはようございま――」
「リドルはん、シードルはん、元気やった!?」
 放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)を押しのけん勢いの朱陰の皓月・カガリ(a01401)。
「3年半ぶりかな。久し振り」
「良い匂い。薫柚亭と一緒だねー」
 その後ろから、赫風・バーミリオン(a00184)と琥珀の狐月・ミルッヒ(a10018)が顔を見せ、リドルは漸く笑みを浮かべる。
「早いお着きねぇ」
「何人かはここで準備をという事で、先に挨拶をと」
「はじめまして。今日は宜しくお願いします」
 紫眼の緑鱗・ボルチュ(a47504)が会釈して、結輪亭が初めての面々も自己紹介。
「そしたら、午後からどぞよろしな〜♪」
 ぶんぶんと手を振って出発するカガリ達を、月華氷人・ミシェル(a78505)は「いってらっしゃい」と見送った。

 見上げれば晴天。山の細道を登れば、額に汗が滲む陽気だ。
(「あわわ……想像しただけでヨダレがっ」)
 足取りも軽い野良団長・ナオ(a26636)は見るからに楽しみな様子。
「ネイネージュさんは寒くないー? 上着貸そうかー?」
 けれど、空殻・ユーティス(a46504)の言う通り、頂からの風は冷たく小休憩も躊躇われる。結局、ほぼノンストップでカーシャ村に到着した一行だが、たわわな琥珀梨を前に一気に疲れも吹っ飛ぶ。
「見事な実りの秋だねぇ」
 自然と昼寝愛好家・ファンバス(a01913)は、早速、村人に声を掛けた。
「琥珀梨を是非味わいたくて……収穫を手伝わせて頂けませんか」
「遠路はるばる御苦労さん」
 笑顔の村人達は「好きなだけ持って帰ればええ」と太っ腹な返事。
「さくさく狩って……ってほんとにでっかいぞ、この梨! ふおお……すげえ!」
 ずっしりの感触にぷるぷると大興奮。大きな琥珀梨を頭上に掲げたナオの歓声が響く。
「子供の頃以来だよ、梨狩りなんて。今は余裕で枝に手が届くんだよな〜……って、昔の記憶より大きい!」
 霹靂斬風・アーケィ(a31414)も両手に余る実の大きさに仰天だ。
(「梨狩りって聞くと攻撃してくる梨を何とかして下さい、みたいに聞こえちゃうけど」)
 ワイルドファイアで長く護衛士している所為かな、とユーティス。熟した果実の心地好い香りと梨をもいだ時の重みに、秋の恵みを実感する。
「やっぱり来て良かったなー」
「ああ」
 たわわな光景を見て、幹や実に触れ、その重さと香りを楽しむ。梨の全てを堪能するバーミリオン。土の感触や木枯らしにも幸せを覚える。
「もぎ立てのぎっしりした感じと瑞々しさ。堪らないね」
 長身を活かして高い枝の実を獲るファンバス。でも、よく見れば1つ1つ違う梨の実。どれがいいのか目移りしきり。
「超大物が欲しいけど、実が締まってるのも美味しそうだし、綺麗な黄金色も……梨マイスター、ご指導ください!」
 村のおばさんの御教授で、アーケィの梨狩りも漸く再開。
「うん! もぎ立てむき立ては絶品!」
 味見すると溢れる果汁と心地よい歯応えにうっとり。
「ほんま琥珀みたいな色の子やなぁ。大きい分、美味しい幸せもおっきいな♪」
 やはり実の選び方を教えて貰いつつ、丁寧に獲っていたカガリも御相伴。
「旦那様、美味しい?」
 最初の一切れは、藁敷きの箱に綺麗に詰めていた語る者・タケマル(a00447)に。
「とても濃厚で、美味しいですよ」
 最愛の旦那様の笑顔にカガリもにっこり。大好きな人との味見は美味しさも倍増だ。
 冒険者の手に掛かれば収穫もあっという間。何箱もの木箱に琥珀梨がぎっしりと。
 結輪亭へのお土産も、薫柚亭で留守番している誰かさん用も忘れずに。背負った重さは幸せの重さ。意気揚々と下山する8人だった。

 梨狩り絶好調の頃――結輪亭組も厨房で準備中。
「何だか、柄にもない事をしているような気が」
「そんな事……ない物があったら大変ですし」
 ボルチュとミシェル、氷雪の舞姫・フィアナ(a76729)はオーブンに火を入れ、調理器具を並べたり材料の有無を確認したり。
「豚肉なら、近くの牧場に貰いに行くけど」
「そしたら、うちが」
 フィアナが買出しの間に、ミシェルは片付けと掃除。ボルチュは食卓に花を飾る。
「結輪亭とはいい名前ですね。人と人との『輪』を『結』ぶ『亭』でしょうか?」
「御明察。お陰で色んな人と会えたわ。冒険者さんともね」
「時間があったら、案内して貰っていいですか?」
「リドルちゃん、ヘルプ!」
「はいはい……大して広くないし、好きに見ていいわよ」
 準備も一段落でボルチュとお喋りのリドルだが、ミルッヒの声に厨房へ向かう。気安い許可にミシェルは彼女の大らかな性格を感じた。
「どうしたの?」
「火加減を見ようとして……」
 赤くなった手を水に浸し、陽煌の剣風・シフォン(a17951)はバツの悪い表情。
「そ、その……わたし、特に火加減が苦手で。焦げたり、生焼けだったり」
 折角の琥珀梨を無駄にしない為にも。シフォンは今度こそお菓子作りを成功しようと懸命だ。
「薪ストーブのオーブンは、確かに難しいかもね」
 今回はあっちを使えばいい、とリドルは大きな石窯を指差した。最初に十分に加熱した炉の余熱で調理するので放っておけるからだ。リドルはパンやパイを焼くのに使うという。
「練習代わりにロールパンでも焼いてみる?」
「はい!」
「リドルちゃん、僕にも気合と根性で何とかなるレシピ、教えて欲しいなっ」
 今度はミルッヒが挙手。
「お茶のお供になるのが良い」
「じゃあ、この辺りのレシピね」
 渡されたのはリドル特製のレシピ集。ミルッヒはこれはと思うメニューを書き出していく――ちょっと余所見の間に「梨の果肉入りゼリー&シャーベット」が追加されていたが。
(「芋掘りに続いて、梨狩りか……ま、体動かすのは得意じゃないから留守番だけどー」)
 追加の張本人、哉生明・シャオリィ(a39596)は気付かれる前に2階へ逃亡。
「帯飾りか、髪飾りがええのどすけど」
「こんな感じでしょうか?」
 工房には先客あり。フィアナが装飾品を依頼したらしい。デザイン中の細工師はこちらを咎める風もなく、シャオリィは陳列ケースを覗いた。
 ビーズの花飾り、天然石のアクセ、ドライフラワーのリース――素材もモチーフも様々な作品は素朴でいて繊細。細工師の人柄が窺える。
(「素材が高級なら良いってもんじゃないからね……作り手あってこその良品だし」)
「今日は賑やかやなぁ」
 そこへ顔を出したリス尻尾の霊査士に、シードルは優しい笑みを浮かべた。
「今日は冒険者さん達の貸切りです」
「じゃあ、早々にお暇せな」
 シャオリィとフィアナに会釈して、ラランは鞄からレースを出す。
「後はベールに縫い付けたら完成や♪」
「きっとリドルも喜びます」
 シャオリィもフィアナも、ララン達とほぼ初対面だから気付かなかった――顔を寄せ合う2人が、何だか幸せそうな事に。

 昼下がりになってカランコロンとベルの音。いよいよ琥珀梨の登場だ。
「沢山獲れましたね」
「いや、ほんとおっきいヨ!?」
 見事な梨に、ミシェルとミルッヒはビックリ眼。フィアナもシゲシゲと。
「これが琥珀梨どすか……味も楓華のと違うんどすやろか?」
「それは食べてのお楽しみ。厨房の準備は出来ているわよ。どうぞ」
 登山疲れも何のその。まずは皮剥きからクッキング開始。
「普通の梨は長さが2m超えれば皮剥きチャンピオン狙えるらしいけど……」
「皮が厚いと、皮と実の間の部分が1番美味しいんだよね」
 ギリギリまで食べられるよう、慎重に……アーケィもファンバスも真剣そのもの。
「ジャムは保存用に作りたいし、コンポートも美味しいかな……後、大人向けに赤ワイン煮と」
 やがて梨の甘い香りが広がる中、ひよこちゃんアップリケのエプロンを装備して指折り数えるナオ。
「ワインは取っておきを持ってきたし! ……あ!」
「これで共犯だね♪」
 すかさず摘み食いの一切れをナオの口に放り込み、ニンマリするミルッヒ。
「さてと……」
 例の追記はサラリとスルーして、取りかかるのは梨とレモンのコンフィチュール。
「薫柚亭ぽく柚子のも作ろうかな。相性は……ま、作ればわかる〜」
 楽観的に鍋を2つ用意。梨は賽の目切りと摩り下ろしが半々。レモンと柚子は皮まで刻む。それぞれ弱火で煮詰めて、こまめにアクを取り、焦げないように混ぜて。
「わわっ、意外と忙しい!?」
 やはりジャムを作るタケマルは梨は荒く切って食感を残し、レモン汁と砂糖で煮まくってみる。
「煮過ぎないように注意、と」
 大きめの鍋で作り始めたが、ついついの味見で出来上がりの量は未定。
「手が込んでる物は皆にお任せで!」
 アーケィが作るのは梨のカラメルソースあえ。鍋にスライスした梨とグラニュー糖を投入。わざと焦がしてラム酒で香り付けしたら、カラメルを絡めて出来上がり。
 一口に砂糖煮と言っても様々。ユーティスとボルチュが挑戦するのはコンポート。
「目でも口でも楽しめると思うんだけど……」
 ユーティスは芯を抜いただけの丸ごと大きな琥珀梨を、深鍋でじっくりと。使う甘味も三温糖やザラメ、蜂蜜と様々だ。
「あら、美味しそうね」
「本職の方の前でお恥ずかしい」
 ボルチュのコンポートは食べ易い一口大。リドルの褒め言葉に照れる様子が、ユーティスには微笑ましい。
 遊んだ経験が殆どないので、皆の輪に入れるか不安――以前のボルチュの言葉を思い出したのだ。
(「随分変わったよね? 彼も、皆も……多分、僕も」)
 見回せば、どの顔も楽しそうでいて真剣。
「何作ってるのー?」
 ナオはすぐに手を止めて周りを覗いていたりするけど。
「す、すまない。出来てからのお楽しみで」
 シフォンは慌ててボウルを隠した。カガリの感慨深い梨を無駄に出来ないし、これまでの失敗を励ましてくれた皆の為、午前の練習の成果でとびきり美味しい物を作りたい。
(「……ファンバスの為だけじゃないぞ、うん」)
 ちらと青髪の彼を窺えば、せっせと賽の目切りの梨を1つ1つ生地に包んでいる。
「スコーンかしら?」
「うん、梨だけでお腹一杯になりそうだから……少し時間を置いても食べれる方が良いなって」
 その手際の良さに、バーミリオンも感心の眼差し。
「生地を混ぜ過ぎると、メレンゲが潰れてふんわりにならないわよ」
「あ……」
 メレンゲでフワフワの生地に梨と林檎の角切り砂糖煮をさっくり混ぜてオーブンで焼けば、ふんわりマフィンの完成……の筈だけど。
(「聞くとやるのは、全然違うな……」)
 お菓子も細工も、職人の手は魔法みたいだとしみじみと思う。
「オーブンさん、よろしお願いっ」
 カガリのパイは秋の果実の競演。パイ生地にアーモンドクリームを流し込み、梨と林檎をたっぷり飾る。アーモンドクリームをカスタードに代えてもう1品。どちらにするか迷えば両方作ればいい――そんな素敵技も、皆で作るからこそ。
 ミシェルもデザートに梨とアーモンドタルト紅茶風味を作ったけど、メインは酢豚。
「パイナップルを入れるのは邪道という人もいますけど……梨はどうでしょう?」
「酢豚に果物を入れるのは甘味の代わりなの。だから、梨でも大丈夫よ」
 リドルの太鼓判に一安心。ついでに一工夫を伝授して貰う。
「父上や母上にも食べさせてあげたいどすな」
 そろそろランドアースの料理が覚えたいフィアナは皆のお手伝いだが、1人シャオリィは高みの見物。
(「仕方ないよね。梨を実験台にするのも忍びないし、テーブルのセッティングも済んでたし」)
 甘い物は苦手だけど、美味しい匂いについ食べたくなるから不思議。
「……はっ、珈琲の気配!? 回避せねば……!」
 だが、俄かに混じった芳ばしい香りに、挙動不審に。
「あら……飲めない人がいたのね」
「……うち、珈琲持ってきてないもん」
 ミルを手に困惑顔のリドルの隣で、べしょりと涙目のカガリだった。

「いただきまーす!」
 陽もとっぷり暮れる頃、食卓に並ぶ料理の数々。
「これだけ並ぶと壮観ですね」
「どれもすごく美味しそうだね!」
 ネイネージュが絞った梨のジュースで乾杯して、まずはミシェルの酢豚から。梨を芯に豚モモの薄切りを巻いたから揚げと黒酢ソースの相性は抜群。
(「剣程うまくいかないものどすな……」)
 フィアナが試作した方は改良の余地がありそうだけど、故郷の楓華と味付けが違うのだからこれからの精進次第だろう。
 次に、お菓子が続々と。ボルチュのコンポートやナオのワイン煮は見た目も艶やか。タケマルのジャムはパンに添えて。アーケィの梨のカラメルソースあえはヨーグルトにぴったりか。熱々ジャムを添えたバーミリオンのマフィンは焦げも御愛嬌。ファンバスのスコーンはこんがり焼き色が琥珀梨の黄金色のようだ。
「わーい、たくさんー♪」
「至高のスイーツも究極のドルチェも、どれも瑞々しくって美味しいっ!」
 梨そのものもいいけれど、皆で作った料理の食べ比べは美味しい幸せ。
「シフォンちゃんのお菓子も食べて良いかな?」
「あ、うん……」
 そのお菓子は、ビスケットというには軟らかく、ケーキにしては歯ごたえがあったけれど。
「うん、美味しい!」
 生地に練り込まれた梨の甘さが優しくて、シフォンにとって改心の一品。
「良かった……」
 思わず安堵の吐息。皆も大事だけれど、特にファンバスはこれからも一緒と言ってくれたから……少しでも幸せを返していけるように。
(「シフォンも色々と頑張っているよね」)
「あー、美味しい物を作って貰って食べるのは幸せだなぁ」
 2人を微笑ましく見守るシャオリィも、口を挟む野暮はしない。その代わり――。
「あ〜ん☆」
「はい、あ〜ん」
 皆の視線は自然とカガリとタケマルに。
「お2人のなりそめとか聞いてもいいですか?」
「そう言えば、じっくり聞いた事ありまへんどしたな」
 給仕も一段落したミシェルはワクワク顔。フィアナも興味津々だ。
「そ、それは……」
 口ごもる夫婦に、丸ごとコンポートを切り分けながらユーティスもクスクス。
(「幸せなんてどれほど居心地悪いだろうと思っていたのに……考えてたほど悪いものじゃなかったや」)
 今回のレシピをメモしながら、ボルチュも何だか感慨深げ。
(「今日は随分と、親しんでいない事をした気がします。これも、未来に目を向けよと言う天啓でしょうか……」)
 ナオのジャムとミルッヒのコンフィチュールは帰ってからのお楽しみだ。
「ラランもどうぞ」
「御馳走にもなったのに……おおきにな」
 バーミリオンに誘われ御相伴したラランは、お土産を受け取りペコリと会釈。
「ううん、お世話になりっぱなしだし、大勢のが楽しいしね」
「そっか……うちは、これからどんな依頼が世話できるか判らんけど。結輪亭は御贔屓に。うちの義姉さんになる人の店やさかい」
「え……」
 目を見開く青年にクスリと笑んで、今は団長夫婦を中心に大騒ぎの面々を見やるラランだった。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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参加者:13人
作成日:2009/11/20
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