時の果ては遙か



<オープニング>


●2019年の世界
 インフィニティマインドが星の世界への旅から帰還して4年が過ぎた。
 世界は相変わらず平和で、冒険者達は変異動物や怪獣と戦ったり、人助けをしたり、旅に出たり、第二の人生を歩み始めたりと、思い思いに暮らしている。
 そんな中、誰かが言った。
 魔石のグリモアとの最終決戦から10年。世界が平和になって10年。
 この節目の年に、久しぶりにみんなで集まるのはどうだろうか。
 互いの近況や思い出話など、話題には事欠かないはずだ。
 さあ、冒険者達の同窓会へ出かけよう!
 
 2019年――『ランタン亭』

 とある町の片隅で、ひっそりと営まれているちいさな食堂、それが鍛錬の霊査士・ジオ(a90230)の店『ランタン亭』である。
 その日、この店にも冒険者たちが集まっていた。
 ジオは髪にも髭にもだいぶ白いものが混じり、畑仕事のせいで体格の衰えはさほどではないが、それでも、老いた。目尻の笑いじわはいっそう深く、だが穏やかな物腰だけはそのままで、今日もなつかしい仲間を迎えるだろう。
 もちろん『ランタン亭』の料理もいつもどおりだ。店主の畑で穫れた野菜をコトコト煮込んだやさしい味のスープに、自家製ベーコンを乗せて焼き上げた熱々のピッツァ……。
 空腹を満たし、喉の渇きを潤せば、つもる話をするうちに10年の歳月も飛び越えてしまう。
 料理を運び、飲み物を注ぎながら、ニコニコとみなの話を聞いていた店主は、扉が開くたびに、そちらに目を向け、そして笑顔で新しい客を迎えるのだ。
「やあ、いらっしゃい。……久しぶりだね!」
 
●2109年の世界
 世界が平和になってから、100年の時が過ぎた。
 年老いた者もいれば、かつてと変わらない姿を保っている者もいるし、少しだけ年を取った者もいる。中には寿命を迎えた者も少なくない。
 そんなある日、冒険者達にある知らせが届く。
 100年前に行った、フラウウインド大陸のテラフォーミングが完了したというのだ!
 昔とは全く違う姿に生まれ変わったフラウウインドは、誰も立ち入った事の無い未知の場所。
 そうと聞いて、冒険者が黙っていられるはずがない。
 未知の大陸を冒険し、まだ何も書かれていないフラウウインドの地図を完成させよう!
 
 2109年――フラウウインド大陸のある海辺

 ふむ、と、風景を見渡して、海風の追人・モーリ(a90365)は頷いた。
 そこは、静かな入江だった。
 左右を岬に抱かれるようにしてできた湾内は、青く澄んだ遠浅の海で、寄せ返す波は穏やかである。砂浜は白い砂が青い海と鮮やかな対比を見せて美しい。砂をそっとすくってみれば、驚くほどきめこまかい砂が、指のあいだを零れ落ち、きらきらと陽光にきらめきながら風にさらわれてゆく。どうやら細かく砕け散った水晶のようなものが混じっているらしいのだ。
 岬の岩場を歩いてみれば、そこかしこに、さまざまな鉱石の層が露出しているのを目にするだろう。そしてその合間に、かつてこの大陸にいた生き物の骨組みを移しとって刻みつけたような化石が見つかることもある。
「モーリさーん」
 浜を駆けてきたのは、走る救護士・イアソン(a90311)だ。その姿に加齢の様子はまったくない。
 対するモーリは、ゆるやかにだが歳をとったようで、壮年と呼んでも差し支えない程度にはなっていた。
「お待たせしました。……綺麗なところですね。そうだ、モーリさん。場所に名前をつけて欲しいそうですよ。今回の探索の結果を地図にまとめるのだとか」
 イアソンがそんなことを言ったが、モーリは気のない返事をよこした。
「それはおまえたちに任せる。俺は木を伐り出してこなくては。筏がいる」
 モーリは湾内の海に出るつもりようだ。
 その背に、一帖の大型盾があるのに、イアソンは気づく。武道家のモーリのものではないだろう。だがずいぶん使い込まれた盾だ。
「それ……」
「……俺の知っているある土地では、漁師が死ぬと遺品を海に沈めた。……あの男は漁師ではなかったが、俺は同じだけの敬意をもって送りたいと思う。この大陸は、冒険者の戦いの成果で生まれ変わったのだから、冒険者のひとりとして、この地にもあいつの足跡を遺しておいてやりたい」
 珍しく饒舌に、モーリは語った。
 
●3009年の世界
 世界は1000年の繁栄を極めていた。
 全てのグリモアを搭載した『世界首都インフィニティマインド』には無敵の冒険者が集い、地上の各地には英雄である冒険者によって幾百の国家が建設された。
 王や領主となって善政を敷いている者もいれば、それを支える為に力を尽くす者もいる。相変わらず世界を巡っている者もいたし、身分を隠して暮らしている者もいて、その暮らしは様々だ。
 1000年の長きを生きた英雄達は、民衆から神のように崇拝される事すらある。
 今、彼らはこの時代で、どのような暮らしを送っているのだろうか?
 
 3009年――旅団『楽園の風』

 魔石のグリモアをめぐる戦いから、もう1000年――、イアソンは、書きかけの日記から顔をあげて、窓の外へと視線を投げた。
 町の灯は星のようで、そのひとつひとつに、人々の平穏な暮らしがあるのだと思うと、不思議な気持ちになる。
 イアソンは『楽園の風』と呼ばれる旅団を率いて、世界中を旅していた。
 団員は、以前からの友人や、新しく知り合った冒険者仲間もいるが、半分は「新しく冒険者になりたてのエンジェルの少年少女たち」だ。
 かれらを連れてホワイトガーデンを発ち、それから数年をかけて、ランドアースの各地を見聞し、行く先々で困っているひとがいれば助け、やがてワイルドファイアや楓華列島、フラウウインド、コルドフリードにまでも足を伸ばす。
 ある程度経験を積んだエンジェルの冒険者は独り立ちして旅団を離れていく。そうして数が減ってくるとホワイトガーデンに帰って、また新しい仲間を迎える。
 そんな暮らしを何年も何年も続けてきた。
 イアソンはいつまで経っても様子が変わらないが、最近は、夜に、日記を書くときだけ眼鏡をかけているようだ。
 書き続けて、もう何十冊、いや、ひょっとすると百冊以上になったかもしれないイアソンの日記には、旅団が訪れたさまざまな場所、出会った幾人もの人々、経験した出来事のことが記されている。かつての冒険者仲間が国王となって治める国を訪ねたこともあれば、旧知の場所がすっかり様変わりしているのを見たこともある。
 千年もの時間が流れても……、冒険者の旅に果てはなく、日記のページは増えていく。
 そのことに、イアソンは、人が生きるということのもつ深遠な意味を思わずにはいられない。
 そうだ、今夜は、日記を読み返してみようか。そんな思いつきに微笑みを浮かべたイアソンの横顔を、使い古したランタンの灯火が暖かく照らしていた。
 
●数万年後の世界
 永遠に続くかと思われた平和は、唐突に終わりを迎えた。
「あれ、海の向こうが消えた?」
 異変に驚いてインフィニティマインドに集まった冒険者達に、ストライダーの霊査士・ルラルは言った。
「あのね、これは過去で起こった異変のせいなの。過去の世界で……希望のグリモアが破壊されちゃったんだよ!」

 とある冒険者がキマイラになり、同盟諸国への復讐を試みた。
 彼は長い時間をかけて、かつて地獄と呼ばれた場所にある『絶望』の力を取り込むと、宇宙を目指した。
「えっと、これ見てくれる?」
 ルラルは星の世界を旅した時の記録を取り出した。
『2009年12月10日、奇妙な青い光に満ちた空間を発見。後日再訪したその場所で過去の光景を目撃。詳細は不明』
「この記録を利用できるかもって思ったみたいだね。そして、実際にできちゃったの」
 どうやら、この空間は過去に繋がっていたらしい。男はここから過去に向かい、希望のグリモアを破壊してしまったのだ!
「世界が平和になったのは、希望のグリモアがあったからだよね。だから希望のグリモアが無かったら、今の世界は存在しないって事になっちゃう。ルラル達、消えかかってるの!」
 今の世界は、希望のグリモアが存在しなければ有り得なかった。
 だから希望のグリモアが消えた事によって、今の世界も消えて無くなろうとしているのだ。
「これは世界の、ううん、宇宙の危機だよ! だって、みんながいなかったら、宇宙はプラネットブレイカーに破壊されてたはずだもん! だからね、絶対に何とかしなくちゃいけないんだよ!」
 ルラルにも方法は分からないが、事態を解決する鍵は、きっとこの場所にある。
「でも、この空間……えっと、タイムゲートって呼ぼうか。このタイムゲートの周囲には、絶望の影響で出現した敵がいるの。これはね、全部『この宇宙で絶望しながら死んでいった存在』なの」
 彼らが立ちはだかる限り、タイムゲートに近付く事は出来ない。
 彼らを倒し、タイムゲートへの道を切り開くのだ!
 
「あれが敵か――」
 タロスの牙狩人・ウェグルス(a90407)――いや、今は幾度かの再起動のすえ、「別人」になっているようだが、タイムゲートへ向かった冒険者たちの前に、かれらが姿を見せた。
 それは一見して、コルドフリード艦隊と、ギアの大集団のようだった。
 むろん本物ではあるまい。よく見れば、それがどれもボロボロに壊れかけ、そのうえ凍りついてまともに動きそうにないことがわかる。だが、それらは軋むような音を立てて戦闘態勢をとり、冒険者を迎え撃つべく漆黒の宇宙空間にただよっていた。
 ふいに、咆哮が――宇宙空間に音があるのも不思議だが、たしかに、その常闇を揺るがすような声が響き渡った。
 大きく広げた翼は、星明りを反射する銀色。
 冒険者たちは遠い遠い過去の記録に、その姿を見出したかもしれない。かつて、まだコルドフリード艦隊を封印し、氷の大陸であったかの地で、同地を旅した冒険者を脅かした一匹のドラゴンを。
『……なにもかもが……凍りつく……絶望……闇……寒い……永遠に……』
 混沌の沼からわきあがる気泡のような、それは怨嗟のつぶやきか。
 星の世界を舞台に、冒険者と絶望の使途との、宇宙存亡を賭けた戦いが始まろうとしていた――。


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参加者
空を望む者・シエルリード(a02850)
幾穣望・イングリド(a03908)
凪・タケル(a06416)
白楽天・ヤマ(a07630)
晴天陽光・メリーナ(a10320)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
奏す灰白・ツェツィーリア(a20211)
蒼月焔舞・イオル(a24342)
氷雪の翼・パール(a26513)
蒼翠弓・ハジ(a26881)
朱の蛇・アトリ(a29374)
光の詠人・マールス(a29809)
蒼き天威・ハーゼ(a30543)
隠逸花・カルマ(a31235)
赤心紅翼協奏曲・ハルヒ(a31994)
ガラスのかもめ・オリガ(a32015)
かはたれのひかり・オーロラ(a34370)
青の焔・セイエン(a36681)
黒鴉韻帝・ルワ(a37117)
泡箱・キヤカ(a37593)
虚静なる形代・ロティオン(a38484)
煤の双眸・クローチェ(a38525)
深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)
種をまく人・ウィルカナ(a44130)
夢の通い路・リト(a44631)
形無しの暗炎・サタナエル(a46088)
五色薔薇・サクヤ(a49049)
森羅万象・ゼスト(a49272)
凍刻・ヴァイス(a50698)
金鵄・ギルベルト(a52326)
儚幻の対旋律・ゼナン(a54056)
陽炎の娘・イリヤ(a55629)
宵闇悲譚・エーベル(a57840)
黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)
黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)
血の海に咲く黒薔薇・アイノ(a60601)
夜の爪痕・シキ(a65585)
癒しのそよ風・ナティル(a65912)
玄天卿・クリス(a73696)
重武装主戦型高機動タロス・ゼロ(a77439)
歌い続ける機械の吟遊詩人・キルテラ(a78626)

NPC:走る救護士・イアソン(a90311)



<リプレイ>

●10年後、やさしい夜に
「えーっ、ジオって霊査士だったなぁ〜んか!」
 ガラスのかもめ・オリガ(a32015)が頓狂な声をあげたので、凍刻・ヴァイス(a50698)は笑ってしまう。ヴァイスは『ランタン亭』は初めてだが、店主については聞き及んでいた。反対に、オリガは店は何度も来ていたが、今の今まで店主の来歴を知らなかったわけだ。
「最近は冒険依頼はほとんど出していないそうだからね」
 とヴァイス。
 しかし、それでも客には見知った顔ぶれも多い。特に今夜はそうだ。魔石のグリモアの戦いから10年を経て、世界のあちこちで、同窓会が行われている今だったから。
 ほら、またひとり、扉を押し開けて訪れたものがいる。
「久しぶりじゃな、ジオ。元気そうで何より」
 形無しの暗炎・サタナエル(a46088)だった。
 ジオが出迎え、サタナエルは畑の様子を聞いたり、昨日までどこそこにいたのだと話したり。オリガは耳をそばだてて、冒険者たちの話を聞く。この店にいれば、自然と、世界中の情報が入ってきそうだ。彼女は日記をとりだし、おりしもワイルドファイアから来ている妹家族を観光案内するために早めに席を立つまで、熱心にメモとりを続けた。
 わっと、子どもたちの声がして、どたばたとした足音とともに、店の板張りの床がぎしぎし軋んだ。
 狐尻尾の男の子がふたりに、その妹。そしてチキンレッグの男の子とエンジェルの女の子――。
「こら、お店なんだから大人しくするだよ!」
「仲良くしてあげなきゃだめだよ」
 子どもたちに声をかけるのは、種をまく人・ウィルカナ(a44130)と、赤心紅翼協奏曲・ハルヒ(a31994)。つまり子どもたちの親である。
 店主――鍛錬の霊査士・ジオ(a90230)は、ニコニコと親になったかつての冒険者たちの様子に目を細めながら、寸胴鍋に材料を放り込んでいく。
 ハルヒはカウンター越しに、ジオのつくるポトフのレシピを盗むつもりだ。妻の誕生日にサプライズパーティーを計画しているらしい。
「いつ結婚したんだっけ?」
「いやあ……」
 いまだにハルヒは照れがある。いろいろとあって、ずいぶん結婚まで待たせてしまったのだと、彼は語った。
「タケルさやメリーナさは変わらないべな〜」
 ウィルカナはカウンターの中に旧知の姿を見つけ、なつかしさに顔をほころばせる。不老のドリアッドの、往時と変わらぬ姿を見れば、あの頃が思い出されてくるようだ。
 凪・タケル(a06416)も晴天陽光・メリーナ(a10320)も、それにはただ微笑で応えつつ、洗い物をしたり下ごしらえをしたりして店を手伝う。今夜は客が多くて忙しい。
「メリーナ殿、いいんですよ。今日はせっかくだから懐かしい方とゆっくり話しておいで」
 タケルに促されて、メリーナはミートパイが焼けたのを機に、カウンターを出て、ウィルカナの隣に座った。
「でもウィルカナさんもお元気そうでよかったです」
「今はまだチビたちの面倒見なきゃいけないんだべ。けど……オラほうはいつかお婆ちゃんになって先にいなくなっちゃうべ」
 不老種族や、生命の書を使う冒険者が多くいる中、与えられた寿命だけを生きようとするものは、どうしてもそういった感慨にうたれてしまう。
「でもこの子たちやそのまた子どもたちとも、また仲良くしてあげてほしいだよ」
 続々と――。
 懐かしい顔ぶれが集まってくる。
 深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)は旅で手に入れたお酒やジュースを手土産に持ってきてくれた。
 黄色の羽毛・ピヨピヨ(a57902)はワイルドファイアから戻ったばかりのようだ。
 それぞれのテーブルで、久方ぶりの友人に再開した嬉しい声が弾けはじめている。

「リトちゃん! リトちゃんじゃない! 久しぶりね……、すごく綺麗になったじゃない」
 陽炎の娘・イリヤ(a55629)が、夢の通い路・リト(a44631)を見つけたのは、『ランタン亭』に向かう道の途中でだった。
「イリヤさん! イリヤさんこそ、ますます美人さんに……!」
「といってももう32歳よ? とっくにお肌の曲がり角も迎えちゃったわ。それより、どうしたの?」
 イリヤはリトの大荷物を見て笑った。
「へへ、約束してた、……村の地酒。会えるのが嬉しくって樽ごと持ってきちゃった」
 酒樽に加え、野菜のいっぱいに入った箱を運んでいるリト。
 ようやっと『ランタン亭』に着いたふたりを出迎えたのは、変わらない光の詠人・マールス(a29809)の笑顔だった。
 席に着き、互いの近況を報告し合おうとするが……話すべきことがありすぎて、なにから語ればいいのか。
 とりあえず、リトは豊作だったという野菜をふたりに分けてくれた。
「イリヤさんにはボクの畑でとれた、一番おっきな南瓜を持ってきたんだ。お子さんができたって聞いたから、家族みんなで食べて!」
「あの頃はいろいろ無茶したけど、そんな私が今じゃ母親だものね。人間、どこでどうなるかわからないわね。実は……二人目ができたの」
「わあ……おめでとう!」
「そうだったの? あ、そうだ。これ、それぞれお二人へ」
 マールスが差し出したのは、貝殻でつくったブローチと髪留めだった。
「あちこちをふらふらと旅して僕たちの物語を語り歩いてるんだ。この前まで、海辺の村で長いことお世話になってて、そこからこっちに戻ってきたんだけど……、『大切な人に会いに行くんだ』って伝えたら、村の子たちが思い思いの物を作ってくれたんだよ?」
「あら、素敵……」
 イリヤはさっそく、それを髪に飾った。
 子どものことがあるので酒はほどほどに……と思っていたイリヤだが、なつかしい顔に囲まれると自然と気持ちが浮き立ってしまう。
「ねえ。ここで一曲歌っても、迷惑にはならないかしら」
「いいと思うけど、聞いてみよう」
 店主の許可を得て、マールスが奏でるハープの音色を伴奏に、イリヤは歌った。
 リトは、久しぶりに聞く彼女の歌声に、言いようのない気持ちがこみ上げてくるのを感じた。
「不思議だなあ……つい、昨日みたいに、思い出せるね」
 数え切れないくらいの、楽しい出来事。みんなで笑い合った日々。冒険者として切り抜けたいくつもの死闘。
(「……これからも、ずっと、ずっと。しあわせでありますように」)
 歌声が、ひそやかな祈りが、やらかなランタンの灯りに満たされた店の空気を、いっそう穏やかなものに変えていく。

 かつて、ランドアースの至るところに「冒険者の酒場」と呼ばれる店があった――。
 むろん今もあるし、これからもあるのだろうが……、かつてのそれとは趣を変えていくに違いない。だが今夜のこの店は、よく知る「冒険者の酒場」そのものではないか。
 青の焔・セイエン(a36681)はそんなことを考えながら、賑わう店内に旧知の顔を探す。料理の良い匂いに、革靴だのどんぐりだのといった粗食(?)になれた胃が、きゅう、と鳴った。
 やがて、森羅万象・ゼスト(a49272)が見つけてくれて、手を振ってくれる。
 その傍にいるのは……夜の爪痕・シキ(a65585)か。
「あとはクローチェだけか」
「セイエンさん変わらないですねー! 今どうされてるんですか?」
「俺か? 俺は相変わらずの日暮テント住まいだ。……なんだこのバナナの山は」
「この4年間、いろいろありましたが、クロさんと行った新種バナナ探しの旅の波乱万丈さといったら」
「土産にもらった。ジャムにでもしてみるか。……来たようだ」
 最後のひとり、煤の双眸・クローチェ(a38525)が駆けこんでくる。
「遅れちまった。久しぶり――というほどでもないか。4年だな」
 ゼストとセイエンに、酒瓶をおしつけた。
「シキはバナナグラタン食うか。キノコ探しの旅以来か?」
「キノコって?」
「何って入浴剤バリエを増やすからってキノコ探して世界中……、え、お前も茸探してたんじゃなかったの」
「クロさんキノコ探してたの!?」
 思い出が食い違うのもそれらしいと、ゼストたちは笑った。
「相変わらず愉快な人生を送っているのだな、君達は……。で、良い旅だったのか」
「道中大変だったんだよ。藁人形祀る村に迷い込んだりシキがゴツい親父に惚れられて俺まで逃回ったり」
「ってさらっと人の黒歴史を……! 自分だってガチムチのおっさんに迫られてたじゃないか!」
「……忘れろ……」
 とにかくいろいろあったらしい。
 果たしてその冒険談は一晩で語り尽くせるものだろうか。

「よぅ相棒! 老けたな!」
 黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)の拳を、黒鴉韻帝・ルワ(a37117)はがっし、とてのひらで受け止める。
「それはこちらの台詞だ」
 互いに三十路である。
 ルワはジョルディと、その妻――血の海に咲く黒薔薇・アイノ(a60601)とともにテーブルにつく。
 生命の書の恩恵にあずからないことを決めた冒険者も少なくない。
 そしてもとより永遠の生命をもたぬ種族のうえには、ひとしく時は降り積もり、その顔に相応の齢を刻ませてゆくのだ。だがそれも決して悪くない、とルワは思うのだ。
 武術の道場を開いているというジョルディの、壮年の貫録を増した姿と、彼に寄りそう細君を見るに、時の流れがもたらす変化には美しいものもあると感じる。
「まさか自分が32歳まで生きてられるだなんて、これっぽっちも思わなかったわ……」
 アイノがぽつりと言った。
「それと、結婚して平和な家庭を築いてるだなんてね……」
「子どもは何人だった」
「5人だ」
 ルワの問いに、ジョルディが応えた。
「そうか。……俺は子らに歌を教えているが……」
 酒杯を重ねながら、どこか遠い目で、ルワは言った。
「互いに歳を重ねればいつかは別離が訪れるだろう。だが俺は相棒の名と凱歌を子に伝えようと思う。星の世界で聞いたあの歌だ。そうすれば……いつか未来で俺たちの子孫が、それを導に出会えるだろう」
 それは悠久の時を越えて企まれた試みだった。
 数十年、数百年、数千年……。
 はるかに先の時代で、互いの子孫が、ひとつの歌を頼りに出会うのなら――、その絆を運命と呼ばず何と言おう?
 ジョルディは、妻を抱き寄せ、そして、万感の思いをこめて、友へと杯を差し出す。
「すべての出会いに……乾杯!」

「や。これもなかなか美味い」
「あー、本当だ。漬け込んでるんだなー」
 大皿の料理をつつき、飲み物を注ぎ合うふたり。
 月無き夜の白光・スルク(a11408)と蒼き天威・ハーゼ(a30543)のあいだに、今は何の違いも見てとることはできなかった。しかし。
「しかし、スルクは変わらないな〜」
「生命の書の影響もあるかのお? といっても、余りまだ、実感はわかんが」
 ほんの一瞬――。ハーゼの、食事の手が止まったようなのは、きっと気のせいだ。
 生命の書がいつかふたりを分かつ日がくるのはまだ先のことなのだから。
「ハーゼ殿も、お変わりなく元気そうで何よりで」
「……それでも少しは老けたよ。いまだに『童顔』って言われることもあるけどね」
「若く見られる事は良い事じゃて」
「最近は依頼はどう? 久しぶりに一緒に依頼にでかけたいな」
 他愛のない会話を聞いていると、10年もの歳月が流れたと誰が知ろう。
「……ところでスルク、いい人とかできてないの?」
「……そのお言葉、そっくりそのままお返しする」
 そんなやりとりも、また。
「HAHAHA! 気の置けない男同士で飲むのもいいもんさ。一曲どうだい?」
 歌い続ける機械の吟遊詩人・キルテラ(a78626)がリュートを掻き鳴らす。
「生命の書を使ったから、ずっと歌い続けるんだってさ」
 タロスの牙狩人・ウェグルス(a90407)が、キルテラを示して言った。

「お店やってるんだって?」
 飲み物を運ぶついでに店主が発した問いに、泡箱・キヤカ(a37593)はにっこりと頷いた。
「ほんと小さいんですけどパン屋さんを二人で」
 そういえば、最初に店を持つ話をしたのもここでだっけ。キヤカは懐かしく思い出す。
「……今夜はえれえ見たよな顔が集まってんな? こんだけ冒険者が集まってっとなんか大作戦の前みてぇだ」
 朱の蛇・アトリ(a29374)が笑った。
「あ、お料理、3人分お願いできますか? ハジさんもすぐ来ると思うから……。ね、外見変わったりしてるかな?」
「ハジのか? 知らねえよ」
 そんなことを言いつつ、アトリが、扉の開く音がするたびに入口に目をやっているのに、キヤカは気付いている。
「先に食っちまお。熱いうちがうまいからな!」
 ピッツァに手をつけようとしたそのとき――。
「あっアトリ! ハジさんじゃない!? こっちこっちー!」
 大きく手を振るキヤカ。その視線の先に――少年のままの、蒼翠弓・ハジ(a26881)が立っていた。
「……」
「おお、久しぶりじゃないか。さあ、待っているひとがいるよ」
 ジオが、ハジをアトリたちのテーブルへ案内する。
「お久しぶりです」
 ジオにも、そしてアトリたちにも、ハジは小さく笑ってみせたが、言葉は少ない。まるで、こういうときに何を話せばいいかわからないとでもいうように。
「よお! なんだ、おまえやっぱなーんも変わってねえなぁ!」
 そのぶんアトリは大声で言って立ち上がり、、両肩を叩いてハジの椅子に座らせた。
「ジオさんは歳とったよな?」
「わ、悪いですよ、そんなこと言ったら」
「聞えたぞ〜。ハジくん、飲み物何にする?」
「ハジさん痩せました? 今日はいっぱい食べてもらおうね! ハジさんからの旅の便り、いつもすごい楽しみにしてますよ。こないだ送ってくれた絵葉書のあの場所とか!」
「ああ、あれは確か……」
 ハジが旅先から送る絵手紙は、なんとキヤカが店に飾っているらしい。そうと知ると、ハジは拙い絵が大勢に見られていることに汗をかくが、キヤカの笑顔を見ているとやめてくれとも言いだせない。さらに夫妻からは大量のパンを渡された。これは当分、旅の食糧に困らなさそうである。
「……ハジ、これからはもちっと顔出せよ」
 矢継ぎ早にキヤカがしゃべり、笑い、アトリがいちいち突っ込んで、ハジが小さく笑う。
 その合間に、ぽつり、とアトリがそんなことを言った。
「……はい」
 ふたりが歳をとっていけば、その中に自分がまじると、まるで親子みたいになるだろうな――。そんなことを思いながら、ハジは、ふたりにパンづくりを教えてもらう約束をするのだった。

「良いお店ね。ヤマたちがいると思ったから寄ってみたけど……、見逃すところだったわ」
「もっと来ればいいのに。今度、誘うね」
 幾穣望・イングリド(a03908)と白楽天・ヤマ(a07630)がいるのは、片隅のテーブル。
「外で会うの、珍しいわよね」
 イングリドは海風の追人・モーリ(a90365)に言った。
「そうか」
「ええ。ヤマがうちに連れてきてくれなければ、案外、まだ出会っていなかったかも。そう思うと不思議。人の縁って」
「それは俺も思う」
 儚幻の対旋律・ゼナン(a54056)が話に加わる。
「ヤマたちとはじめて会った、海辺のグドン退治のことを覚えているか。あのときの霊査士が今は店を開いている」
「今度は何の噂?」
 ジオが空いた皿を片づけに寄った。
「……昔の依頼の話を。あの頃、俺はまだ経験も浅くてうまくいかんことも多かった。あれは少しずつ経験を積んでいく良いきっかけになった――俺にとって大切な依頼だったな。……ところで、訊いてもいいか」
 ジオは目で促す。
「生命の書を使わんようだが」
「そうなんだよぉおおお!」
 どすん、とジオの横っ腹に体当たりするように飛びついてきたのはピヨピヨである。
「うわっ、と!」
「平和になって強い冒険者が必要な依頼はなくても、霊査士が必要なことだってあるんじゃない? 百年でも千年でもジオさんに長生きして欲しいよ……」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけどね」
 ジオは目尻に笑いじわを畳んだ。
「知りたくなっちゃったんだよ。老いるってどういうことか。死んでいくってどういうことか。……ま、それがわたしの最後の冒険ってわけだ」
「だったらさ、料理のレシピ全部、僕にみっちり仕込んでよ。僕がジオさんの味を受け継ぐから!」
「わはは、それはちょっと厳しい道のりだぞぅ」
 空き皿とグラスをいっぱい抱えて、大股に厨房へ戻っていくジオのうしろを、ピヨピヨが追った。
「…………ゼナンも使わないのだろう」
 モーリが、口を開いた。むろん生命の書の話だ。
「ああ。俺は今までと同様に限りあるヒトの一生でいようかと思う。未来はその時代に生きる者達を信じて託したい」
「ヤマも使わんのだな。……イングリドもか? なんだ。それでは――」
「ね、モーリ」
 ヤマが言った。
「これを預けておくね」
「なんだ」
「お手紙。……わたしがどこにもいなくなって、長い時間が過ぎたら、その時に読んでね」
「……今読んだらいかんのか?」
 封をされた書簡を取り上げると、なかでかさりと何かの音がした。
「うん。ずっとずっとあとで読んで。……約束だよ」
 そう言ってから見せたヤマの笑顔は、いたずらを仕掛けた子どものようだった。
「……良い酒が手に入ったんだ」
 ゼナンが、そう言って瓶を取り出す。
 夜はまだ、つづく。

「うん、まあ、そろそろ落ち着いてきたし、いいけど」
「ありがとうございます」
 奏す灰白・ツェツィーリア(a20211)の、厨房の隅を使わせてほしいという申し出に、ジオは頷く。
「……以前、教えてもらった料理を」
「それはあそこにいる無口な人に食べさせてあげるの?」
「……」
 ツェツィーリアは何か言ったようだが聞き取れなかった。
 場所を明け渡し、ジオは件のテーブルへ。
「飲み物おかわりいるかい?」
 宵闇悲譚・エーベル(a57840)は浅く頷いて応え、それから、店主をそっと呼びとめた。
「……リアは、いつもは……どんな……?」
「どうって……。彼女の『いつも』はきみのほうがよく知っているんじゃないのかい」
「……」
「たぶん、きみの知っている彼女と、きみと会っていないときの彼女に何の違いもないと思うよ。でもそれって実はすごいことだ。わかるかな」
 ややあって、エーベルはこくりと頷く。
 少しして、ツェツィーリアはできたての料理を運んでくる。いくぶん緊張した面持ちでテーブルに並べたのは、野菜の多く入ったパスタと、温野菜のサラダ。料理としては簡素なものだが、エーベルには十分に価値のあったものらしい。たっぷり一分は、得も言われぬ表情で固まったままだった。
「……食べたら?」
 見守っていたジオがそっと助け舟を出す。
「あ、ああ」
 ようやく食器に手をかける。
「……。……う――、美味い……」
 たったそれだけだった。
 けれどそれで十分であることは、ツェツィーリアの表情がほどけるのを見れば理解できただろう。

 夜半を回った。
 すでに帰るものは帰り、まだいるものは賑やかに騒ぐよりも、しみじみと飲んでいるといった風情である。
 さっきまで歌い続けていたキルテラが、ウェグルスと肩を組んで酔っ払って寝てしまったので、今はカラシャがリュートをつま弾いている。
 その音をうつつに聴きながら、メリーナは自分で入れた食後のお茶もさして減らないうちに、タケルの肩にもたれかかっている。
「時の経つのは早いですよねぇ。どんどんと皆過ぎ去っていく。今日のこの楽しい時間も」
 タケルが言った。
「そうだね……。生命の書は使わないと決めたけど、ときどき、ずうっとこういう日が続けばいいな、って思うときはあるんだ」
 同じテーブルにかけて、ジオは話す。
 コトリ、と、テーブルのうえに、タケルは小さな石のかけらを置く。
「もう随分前の事ですが、はっきり覚えてますよ」
「あの時の! まだ持っていてくれたんだね。やあ……あの鉱山(やま)もどうなっちゃったかなあ……」
 初老の店主の表情のなかに、タケルはこの男が積み重ねてきただろう年輪を見る。
 知り合ったとき、すでに壮年の霊査士だったジオの、多くを直に見たことはないのに、なぜだか想像できる気がした。
 汗まみれで坑道で働いた少年は、長じて逞しい青年重騎士に、そしてやがて後進の冒険者を送りだす霊査士になり、いつしか柔和な笑みをたたえた料理店のあるじになった。そしておそらく、いずれはこの店もたたんで、日がな庭いじりと読書をして過ごす老人になるだろう。
「あ」
 メリーナが、突然、目を覚ました。
「どうかした」
「……夢を見てました」
 まだちょっと寝ぼけた様子で、彼女は言った。
「良い夢だった?」
 ジオが笑う。
「……」
 口を開きかけて、メリーナは呑み込む。今日何度も、そんなことを繰り返している。なつかしい、話したいことはいっぱいあるのに、思い出として口に出してしまうと、それが遠い昔の出来事だと認めてしまうようで。
 本当は、あの氷原を夢に見たのだ。
 どこまで澄んだ北の空のした、真っ白な地平線がまぶしいほどだった、いつかの光景を。
「そろそろお片づけはじめたほうがいいですか」
 ぴょこん、とメリーナは椅子を降りる。
「まだいいよ。ゆっくりしてて」
「でも。向こう一年はお掃除しなくていいくらいぴかぴかにしましょう」
 言ってから、気配に振り向く。
 その夜の、最後の客の姿に、メリーナはかすかに息を呑んだ。
「お久しぶりですわ。お元気そうで、なによりです」
 かはたれのひかり・オーロラ(a34370)はささやくように言った。

「どうしてたの」
「ずっと……ホワイトガーデンにて隠棲しておりましたの」
 隅のテーブルに、ジオとふたりでかけた。
「……わたし、老けたよね?」
「そんなこと――、いえ……ちょっと……ええ、ちょっと、驚きましたわ。でも、それだけの時間が過ぎたんですものね……」
「そうだ。もともと若くなかったんだからね。ヒトはすぐ歳をとっちゃうもんなんだよ」
「……わかっていたはずでしたのに」
 オーロラの外見に、むろん、変化はない。
 今も昔も、19歳の娘のままだ。
 しばらく、沈黙が落ちた。どれくらい経ってからだろう、オーロラが口を開いたのは。
「ずっと……ジオさんのことをお慕いしておりましたわ」
「……うん」
「でも、自分の気持ちがわからなくなっていましたの。本当にジオさんのことを好きなのか、ただの執着なのか……。わからなくなって、逃げましたの」
「それでずっと来てくれなかったんだね」
「でも今日お会いしてわかりました。やはり、好きなのだと思いましたわ。今回、こちらにお邪魔したのは、振られる覚悟もついたからです。知りたいんですの。あの頃、ジオさんが、私のことをどう思っていらっしゃったのか……」
「ははは……、弱ったな」
 ジオは眉尻を下げた。
「……あの頃、すでに若くなかったからね。もうちょっと昔に出会っていればわたしも迷うことはなかったんだけどねえ……。おじさんはいろいろ考えちゃうもんなんだよ。簡単に好きだからいいってもんでもない。生命の書のことなんて思いもしない頃だしね。余生を付き合わせるのが正しいことかどうかとも思った。いや……」
 ジオはかぶりを振った。
「きっとわたしもきみも同じだ。あと一歩、勇気がなかった」

 輝かしい冒険譚の数々と違い、『ランタン亭』の一夜のできごとは、叙事詩にうたわれることもなく、ただその場を過ごした人々の記憶に残るのみだ。
 生命の書を使うことのなかったものは、むろんその後の数十年のうちにすべて物故した。
 ジオ・アルマニオは、齢八十を越えてすこしまでを生きたと伝わっている。

●100年後、寄せ返す波の歌
「このくらいあれば大丈夫ですかね」
「十分だ。すまんな」
「いえ。こんなことであればいくらでも」
 タケルは微笑った。
 モーリが木を伐り出すのを手伝ったのだ。せっかくだからとモーリが筏を組み上げていくのにも手を貸す。
 なかなか立派な筏が出来上がるころ、浜のほうを歩いていたメリーナが姿を見せた。
「綺麗な場所ですね。ほら」
 メリーナは浜で拾った石を見せる。陽に透かせば不思議な色合いを見せるそれも、なにかの鉱石だろうか。テラフォーミングの影響なのか、普通はありえないような組成の石も、この場所では見つかるようだ。
「彼の名を冠した場所を残せればよいですよね」
 ぽつり、とタケルが言った。
「……皆がそう言うなら、それもいいだろう。俺は言葉や文字にするのは不得手だが……、かつてともにあったものたちを忘れることはない」
 モーリは応えた。
 大型盾は、陽光を受けて鈍く光る。錆びていないのは、誰か磨き続けていたものがいたのだろうか。
「私も、ご一緒しても構わない?」
 声に顔をあげれば、ひとりのセイレーンの女である。
「そこで、話を聞いたものだから。いえ、私は特に流すものもないのだけど……、見届けたいの」
 女は重騎士で、ウルズラと名乗った。

「ボクのこと覚えてるなぁ〜ん?」
「忘れるわけないじゃないですか、オリガさん」
 走る救護士・イアソン(a90311)は笑った。声がハスキーになったようではあるが、オリガはかわりないようだった。
「今日はなつかしい人に会えて嬉しいのでありますよ。サクヤさんもよく」
「ふふふ。もう百年たった、のね」
 五色薔薇・サクヤ(a49049)は16歳の少女になっていた。
「いつも、お日さまは、回るけど。最近の、100年は、何だか、お日さま早いみたい、ね」
 イアソンたち、幾人かの冒険者は、入江を囲う岩場を歩いていた。
 不思議な文様のような地層のなかに、生き物の姿を刻印した化石が露出している。
 オリガは夢中でその様子をスケッチする。
「どんな生き物だったのかなぁ〜ん?」
「百年前、フラウウインド大陸が封印を解かれたとき、探検を進めながら博物誌をつくっていましたよね。あれと照らし合わせてみれば、なにかわかるかもしれませんね」
 カラシャはオリガのスケッチブックのページを一枚もらって、化石から想像した動物の様子を絵にしてみる。
「フラウウインド博物誌。聞いたことがあります。そういえば、この帽子の羽はこの大陸の生き物のモノだと」
 そう言って、肩をすくめたのは、白い羽毛のチキンレッグ、セレス。
「そうなんですか?」
「100年前、この大陸を冒険していた人がいたんです。直接あったことはないけれど……私と似ているとおばあさまが言っていました」
 彼女が言うのは、玄天卿・クリス(a73696)と呼ばれた冒険者のことである。
 だがそのことに、さして興味もなさそうに――少なくとも表面上は――、セレスは海に視線を投げる。
「これ……石英だな」
 ヴァイスは美しい結晶が露出しているのを見つける。
 すこしかけらを貰って帰ろう。加工すればよい武器飾りになるだろう。

 貝殻を拾う手をとめて、水平線を眺めていた。
 ふと気づくと、10歳ばかりの少年――いや、痩せっぽちで髪は短いが女の子のようだ――が、こちらを見ている。
「こんにちは。はじめまして、よね……?」
 セラという名の少女は、灰色がかった青い瞳をしばたく。
 なぜだろう。この大陸に渡ってからつきまとう不思議な感覚。
「どうかな。私はユウ」
 彼女は応えた。ゆらりと白い狐の尻尾をゆらす。
 それからしばし、少女たちは波打ち際を並んで歩く。
 そんな彼女たちを見つめるのはセイエンだ。
「あ、久しぶり――……?」
 駆け寄って、思わず口をついて出た言葉に、そんなはずはないと思い直す。
 セイエンははっと息を呑んで――そして、ふわり、と微笑をほころばせた。永遠を生きるものだけが見せる、一抹の寂寥を潜ませながら、海の色の瞳は少女たちを見比べる。
「セイエンさん、変りないですね」
 シキだった。
「なんだか安心しました。大陸はすっかり様子が違うし。でもセイエンさんだけは昔のまま……」
「それは自分も同じだろう。人を頑固な老人みたいに」
 セイエンは笑って、そしてシキがおのれの肩ごしに、少女たちに気づくのを見る。
 瞳だけの問いに、浅く頷いた。
 瞬間――、4人のあいだに、強い風が吹きすぎたような錯覚があった。
 いわばそれは、『時』の大河そのものがたてる唸りであったかもしれない。
 100年をへだてて、そのおもかげに再び出会う言いようのない感覚を、シキとセイエンは噛み締める。
 4人はしばらく、砂浜に座って語らった。
 なぜだかそうするのがあたりまえに思えたからだ。
 そして、セラはずっと首からさげていた鍵を出して見せる。
「何の鍵かわからないんです。ここへ来たのもそれを探すため」
 彼女は続けた。
「もしお暇なら一緒に探してくれませんか?」
 最初に頷いたのはユウだった。
 合点がいったというような面持ちだ。まるでそのために自分はここへ来たのだというような――。
「いいとも」
 セイエンは応えた。
「……君達の頼みならば喜んで。テントは畳んで、また旅にでよう」
「テント」
 セラは繰り返す。
「うむ。テントは畳んで共に旅の出来る家なのだ。かつてそうして、宙へも旅をしたのだぞ。なあ、シキ」
 シキは頷いた。
「いろいろなところへ行きましたよね。また4人で、テントとともに行きますか。……楽しくなりそうです」
「テントが一緒ならきっと寂しくないね」
 ユウが言った。

 浜風にちぎれるギターの音色は、吟遊詩人・バラッドが奏でる音。
 歌うのは、代々歌い継がれている歌だ。
 その歌は、風に乗って入江をめぐり、波の音と溶け合ってゆく。
 岬の岩に腰をおろして、ヴァイスは持参した酒をガラスの杯に注いだ。
 一緒にいたいと願って叶わなかった亡き人に。生涯自分の道標となってくれた彼の人に。良き理解者であり、力になりたいと願った友人に。
 捧げるように杯を掲げる。
 酒を透かして見える、夕暮れの海へ、ちいさな筏が漕ぎ出していくのが見えた。
「お別れなのだそうです。でも決して忘れることがないようにと」
 海に、品物を沈めようとするモーリたちのことを、イアソンが語る。
「……『さようなら』がね、怖いの、減ったの」
 傍らのサクヤが言った。
「大事と思うの、増えたの」
「……人と別れるのは、本当はそういう意味なのかもしれません」

 ギターの音と、かすかな歌声に、ジョルディは浜のほうを振り返る。
「……」
 なにか大事な伝言を聞き漏らすまいとするかのように、すこしの間耳を傾け、それから、運んできた甲冑に手をかけた。
「ずいぶん立派な品だが」
「昨年亡くなった高祖父のものです。先に見送った戦友の鎧の欠片でつくったものだとか。それをかれらに返してやりたいという遺言で」
 ジョルディの名を継いだ男は、厳かに、黒い鎧を海へと沈める。
 そして静かに祈った。
「おやすみなさい……」
 ハルヒは、家族の絵を描いた紙を広げて、じっと見つめていたが、やがてそれをそっと丸めた。
 おもむろに、長い髪の一房を切る。
 自分はまだ行くことのできない場所へ届けるように、彼は波間に髪を流した。
 そして、モーリは、大型盾を取り上げる。
「探索の報告をしにお店に来るのが楽しみで。美味しい料理をずっと食べたかったのにな……」
 ピヨピヨが寂しそうに言った。
「重騎士時代のジオさんと一緒に戦ってみたかったなぁ」
 彼の、重騎士の頃の数少ない証人である盾は、ゆっくりと海の底へと消えていった。
 ウルズラは、言葉どおり、そのすべてをつぶさに見つめていた。
 誰もかれも、彼女が直には知らない人々である。
 反対に、この先の時代と世界を、送られたものたちが見ることはない。それはウルズラたちの世代の役割だ。それを果たすということの、これは誓いだったかもしれない。
「それ……?」
 ウルズラはモーリの手元を見た。
「手紙を貰った」
 古びた紙の封を、彼は切る。
「ずっと昔にな」
 変色した紙に、目を落とす。
「それも流すの?」
「……いや、それはやめておこう」
 モーリは言った。
「あいつは寂しがり屋だからな。……あいつめ」
 封筒から出てきたちいさな赤い鉱石を、モーリの無骨な指がつまみあげた。
「こんなものをずっと持っていたのか」
 モーリの唇が、たしかに笑みをかたちづくったのを、ウルズラは見た。

 海が、夕日の色に染まる。
 エーベルは、遠くにモーリたちの筏の姿をみとめ、はるか昔……まだこの大陸に7つの剣が突き刺さっていた頃、モーリと訪れたことを思い起こす。あの頃のモーリは青年の姿をしていたはずだ。長い時間のなかで、彼にも心境の変化があったのだろうか。
 おのれはどうか。
 そう省みれば、おのずとかたわらにあるツェツィーリアに目を遣らずにいられない。
 ひとしきり、このあたりの地層や植生を調べたあと、彼女に砂浜へ誘われた。水晶のかけらがまじり、きらきらと美しい砂を指のあいだにあそばせるツェツィーリア。はじめて会った頃より、その横顔がやわらいでいることをエーベルは知っている。
 出会う前の二人は。
 彼女はホワイトガーデンのたった一人の浮島で過ごし、エーベルも閉ざされた森の中で世間に背を向けて生きてきた。やがて冒険者として、外にかかわるようになり、そして……、長い長い、時間が流れた。
 振り返れば悠久に思える年月だが、それはこぼれおちる砂のように、かたときも止まることなく流れてきたのだ。
 エーベルが、ツェツィーリアの手をとった。
 はっと灰色の瞳が彼を見返す。
 口を開いたのは、同時で、ふたりの言葉がかちあってしまう。
「あ――」
「ええと……ベルから先にどうぞ」
「……う、うむ」
 思わず、居住まいを正した。
「リア」
 まっすぐに見つめて、彼は言った。
「私はお前とともに生き、時を重ね自然に還りたい。お前が見せるすべてを私は最後まで見届けたい」
 すでにふたりで過ごした時間は短くない。
 だがこの先も――ひょっとしたら永遠かもしれない時を、エーベルはツェツィーリアの傍らに見る。
「今まで本当にありがとう。これからもどうか傍に居てくれないだろうか。……生涯の伴侶として」
 ややあって――、ツェツィーリアはそっと頷いた。
「わたしは貴方と、家族になりたい」
 先を譲った言葉は同じ意味。そのことを、ずっと知っていた気がする。
「だってわたしが、――初めて恋をしたのも、ずっと恋をしているのも、傍に居たいと願うのも貴方だけ」
 砂浜に長く伸びる影がそっと寄りそう。
 ありがとう、……大好き。いつか還るその日まで、貴方と居る。
 ささやきが、波の音に溶けてゆく。

 鉱石のかけらがまじった美しい砂浜のある入江は、堅牢な岬によって外洋の荒波から隔てられているがゆえにつねに穏やかで、静かだった。
 この日、モーリたちが海に品物を流したことが知れて、いつしか、この浜には在りし日の追憶をもとめて訪れるものがあとを絶たなくなり……。
 この岬は「鉄壁の岬」、入江全体を「忘れじの入江」として、フラウウインドの地図に書かれることとなる――。

●1000年後、風のゆくえ
「あれー、イアソンくん、久しぶり。相変わらずだねぇ!」
 ある街を訪れたイアソンに声をかけてきたのは、空を望む者・シエルリード(a02850)だった。
「はわー、何年ぶりですか!」
「いやあ、百年か二百年か……。カルマくんも、生命の書を使ったんだね」
「ええ。お久しぶりです」
 イアソンの傍らで、隠逸花・カルマ(a31235)が微笑む。カルマとシエルリードのあいだでその瞬間に諒解されたものがあったようだった。おそらくそれは、ふたりが同じ理由で生命の書を用いたからだろう。
 イアソンが『楽園の風』を率いて世界を巡っているように、シエルリードも旅団で旅をしているようだった。次はどこへ? ああ、同じ方向だ。それならしばらく一緒に――、そんなことを話していると、まだ年少の、シエルリードによく似た子どもたちが割り込んでくる。
「この人誰?」
「大じじの知り合い?」
「ねえ、早く行こうよ!」
「お腹空いたア!」
「コラー!」
 シエルリードは声をあげた。
「人前で大じじ呼ばわりはやめれって何度言ったら……!」
 どうも似ていると思ったら、全員が彼の一族なのだそうだ。
「イアソンくんところはどうなの。ウチはねえ……。すっかり世界は平和だし、生命の書のせいで時間もあるからって、ちっとも修行もしないしさ。僕らが冒険者になった頃は、こうはいかなかったよねえ。昔はグドンだのアンデッドだのってのがいて……こら、そこ! 小さい子を泣かさない!」
 なかなか気苦労が多いらしいシエルリード。
「でも変わりませんね。シエルリードさんは」
「え、そうかな。……かもね。おかげで、せっかく生命の書を使ったのに、大切な人と一緒に歳をとっていけないんだ」
「……そうだ、この間、タケルさんたちに会ったのですよ」
 イアソンは、旧知の名をあげた。
 タケルはメリーナと、湖畔の屋敷で静かに暮らしていた。
 ふたりの暮らしはただ穏やかで――それでもときおり、冒険依頼にでかける程度の変化はある。長い時間を生きる冒険者としての、ひとつの理想と言えたかもしれない。
「へえ、そうなの。元気そうなら良かったね。けど変わらないといっても、立場は変わったよね。僕もこのとおりだし。イアソンくんも……。そういえば、ふたりにはまだ子ど――もがっ!?」
 言いかけたシエルリードを、電光石火の武道家の動きで、カルマが制した。彼女が日頃の鍛錬をかかしていないことの証だった。
「(だ、だめだった!?)」
「(すみません。100年に1回くらい意を決して言い出してみるのですが、そのたびに、しばらく固まってしまうので……)」
「(そ、そう……。大変だろうけど、が、がんばってね……)」

「イアソンさん、オリガさんが戻られましたよ!」
 虚静なる形代・ロティオン(a38484)が、オリガの手を引いてあらわれた。
 ロティオンは蒼月焔舞・イオル(a24342)とともに『楽園の風』の一員である。ロティオンはもとよりセイレーンの長い命をもつが、ヒトのイオルは生命の書によって22歳のままだ。
 オリガも一応団員のようなのだが、いつもふらりと旅立って別行動をとっていることが多い。
「昔の遺跡があるって聞いて行ってみたんだけど、ガセだったなぁ〜ん」
「それは残念でしたねえ。またしばらくおられるのでしょう? すこしこの町に滞在しようと話していたのですよ。栄えていてキレイな町でしょう?」
「ここはいろいろな職人さんの工房がたくさんあるみたいだよ。あとで行ってみよう」
 イオルが言うと、ロティオンは顔を輝かせた。
「いいですね。子どもたちを連れて行ってみましょう! そういえばイオルお兄さんと、よくモノを作りましたねぇ。このピアスも」
 イオルと銀工房に行ったのは、もう1000年以上昔のことだ。それでも金属は輝きを失うことなく今もともにある。それはイオルの耳にもあるのだった。
「そういえば最近は何か作りにって行ってないね。久しぶりに何か作る?」
「そうですねえ、お菓子づくりをしている店もずいぶん見かけたのでありますよ」
 ふたりの話に、イアソンが加わった。
「お菓子づくりといえば、『希望のとまり木』を思い出します」
 ロティオンが懐かしそうに言った。イオルもあの場所には行ったことがある。遠い記憶を思い起こし、『楽園の風』の冒険者はあれこれと楽しい計画に思いを馳せるのだ。
「この先の『琥珀の谷』っていうところに、牛くらい大きな猫がいるらしいなぁ〜んよ」
 オリガが、どこからかあやしい噂を聞きつけてきたようだった。
 得意げに見せたスケッチブックには、オリガの想像図とおぼしき正体不明の生物の画が。
「……。あの、なにが何だかわからないんですけど……」
「それなら行ってみて確かめるなぁ〜ん!」
「『琥珀の谷』なら聞いたことがあるよ。巨大猫はわからないけど、景色が綺麗な温泉があるって」
「温泉! 行きましょう!」
 イオルの言葉にすぐさまロティオンが反応した。
 さっきまで工房巡りをする話だったのに、もう温泉行きの話になっている。
 だがこれもいつものこと。なにせ、時間はいくらでもあるのだから。
 今日は東へ明日は西へ。
 そうして、『楽園の風』は世界のさまざまな場所に行き、さまざまな人々に出会ってきた。それはかつての知己の冒険者の消息を知るものでもあったし、時にはかれらの子孫との出会いでもあった。
 それらの邂逅については、イアソンの日記をひもとけば見つけることができる――。

 〜イアソンの日記より〜
 某月某日。今日はハーゼさんのお店に立ち寄りました。……といっても、ハーゼさん自身はもうとっくの昔に故人なわけですが、子孫の方はハーゼさんにそっくりなので、ここを訪れると、昔に戻ったような気になります。それはスルクさんも同じ気持ちのようでした(いつもここでお会いします。このスルクさんは生命の書を使われたので、ご本人です)。ですが「師匠、俺ってそんなにじいさんに似てるんすか?」と言われると、ちょっと複雑な様子です。なにせ、本当にハーゼさんに生き写しであるだけに。師匠と呼んでくれるな、とむずがゆそうにスルクさんは応えます。
「えーなんで師匠が嫌なんっすか……」
「恥ずかしいというか、慣れん……。それに、少し寂しいわい。名前を呼んでくれる方がワシは嬉しい」
「そっか…んじゃ〜、スルク!って呼んでいいっすか? そうそう、師しょ……スルク、今度ウチのメニューが変わるんでよかったらまた食べにきてくださいね。イアソンさんも、ぜひ!」
 そう言って屈託なく笑う姿を見守るスルクさんは、まるで孫の成長を見るような……などというと、怒られてしまうかもしれませんね。

 スルクさんのように、1000年が経っても、長い命のまま、生き続ける昔の冒険者の方には、旅の行く先々でお会いします。
 ハルヒさんは旅をされているそうです。奥さんが先だたれたあと、思い出の残る土地に居続けるのはつらいからと出てこられたそうですが……。
「このあいだ、久々に帰ったら、息子が僕より背が高くなってて。どんだけほったらかしにするんだー、ってげんこつで殴られました」
 ハルヒさんより大柄だというのですから相当ですね。でも息子さんのいうとおり……、そろそろ帰ってあげてもいい頃からしれません。
 サクヤさんに会ったときは驚きました。
「イアソンお兄ちゃん! ……うぅん、もう『お兄ちゃん』はおかしいかしら」
 サクヤさんはすでに成人されていたのです。
 ご結婚もされたそうで……。これだけの時間が経つと、変わるものは変わってゆくのですね。でも話してみれば、サクヤさんの優しい、ふあふあしたところはちっとも変わっていないのです。サクヤさんは言いました。
「あのね、わたし、ママになったの」
 と。お父さんに似た、ストライダーのお子さんだそうです。
 サクヤさんはとてもとても、幸せそうな様子でした。

 ヴァイスさんは、冒険者として気ままな旅を続けられていました。
 キルテラさんもです。キルテラさんは40代になったとおっしゃっていましたが……、なにぶんタロスの方は外見では年齢がさっぱりわからないのです。
 各地を旅する方が多い他方で、ご自分のいるべき場所を見つけて腰を据えられた方も多いようです。
 ある町でたまたま立ち寄った『星空亭』というお店は、氷雪の翼・パール(a26513)さんのお店です。パールさんは1000年前から年齢なども変わっておられないそうで……、まあ、それは自分もそうなのですが、パールさんが仰った、
「いつまでも、みんなのこと、勇姿を鮮明に覚えているために……。語っていくために、私は形を変えてはいけない気がするんです……」
 という言葉が印象的でした。
 カラシャさんは、ある小さな町で、文字や歌を教える学校のようなものを開かれています。
 ときどき、変異動物の害などがあると街の自警団の一人として戦いに行かれたりもするようで――。平素は市井に溶け込み、いざとなれば武器をとって立つ。そういったありようは、今の時代の冒険者のあるべき姿かもしれません。
 ピヨピヨさんはワイルドファイアの、インセクテアの国で暮らしておられます。
 お店を出されたと聞いたので行ってみると……、これが『ランタン亭』というお店なのです。
 遠い遠い昔――みんなで集まったあのお店の名前が、まさか1000年を経てワイルドファイアで掲げられるとは、ジオさんも想像しなかったでしょう。
 味の記憶と、わずかに残ったレシピを頼りに、ピヨピヨさんが再現したという料理をいただきました。
 材料は、ワイルドファイアの怪獣なんですけどね。

 ハーゼさんのように、昔の冒険者の方の、子孫にあたる人々にも出会います。
 たとえばロックさんという方は、ある町の商会を取り仕切っている方なのですが、この方はクリスさんの子孫にあたるひとです。それなりの立場のある方なのですが、聞けばしょちゅう「市場調査だ」と言い訳して出奔されているそうで……。本当は旅に出たいというのは、これはやはり血なのでしょうか。
 ある町で『無双流』を掲げた道場を見つけましたが、ここの師範代のジョルディさんという方は、同じ名の重騎士の方の血を引いておられるようです。名を受け継ぎ、そしてその精神も受け継いでおられる様子。
「修行が足りん! 重騎士の本分は守りにありだ!」
 弟子のみなさんに稽古をつける、気迫にあふれる姿を見ていると、そう感じられます。
 祖先にあたるジョルディさんを、自分は直接お会いしたことがあったか、よく記憶していないのですが、たしか、リディア護衛士団で功を立てられた方だったのではないでしょうか。黒い鎧のお姿を、お見かけしたことはあったように思います。
 そんなことを思い出したのは、ある日、フリジアさんという歌い手の方と出会った時のことです。
 この方はたいへん歌がお上手で、町々を渡って歌をうたっておられるのですが……、なんでも「先祖と共に戦った騎士」の末裔を探しておられるそうで、自分を訪ねてきて下さいました。1000年前の冒険者のことが知りたい、と。
 手がかりは少ししかなかったのですが――、黒い甲冑で戦った重騎士ということで浮かんだお話をお伝えすると、お役に立てたのか、喜んでもらったのです。
「こんなサービス滅多にしないんだけど……私の歌、聴いてくれる?」
 聴かせていただいた歌は……、長い時を越えて、何人ものひとの思いを封じたような、不思議で、美しい旋律でした。
 ウルズラさんは、フラウウインド大陸が今の姿となった時の探索でお会いした方です。
 ウルズラさんは自家製ハーブのせっけんやサシェといった雑貨を扱うお店を営まれています。……実は、この店には、ときどきモーリさんが立ち寄ってなにくれと世話をされているそうなのです。たぶんそれは……、自分がアミンサさんの牧場に寄るのと、似たような理由からかもしれません。
 うずらを育てておられるアミンサさんは、ウィルカナさんの子孫なのです。
 ウィルカナさんとアミンサさんはあまり似ておられないのですが……、かわいいうずらたちと戯れていると、1000年前の日々のことをふと思い出したりするのです……。

「ホワイトガーデン、なぁ〜ん?」
 イアソンから次の目的地を聞いて、オリガは小首を傾げた。
「お手紙をもらったのですよ」
 そう言ってイアソンが見せたのは、癒しのそよ風・ナティル(a65912)からの手紙だった。
「ナティルさんは今、ホワイトガーデンで孤児院を営まれているそうなのです。中には冒険者になりたい、という子どもたちもいるそうで……。もし望むなら、そういった子たちを連れて行ってあげてもいいと思うのですよ」
「ホワイトガーデン、久しぶりなぁ〜んね」
「サタナエルさんのところにも寄れるかもしれないですね。最近、あちらで畑を耕して住んでおられると聞きました」
「……。イアソン、いつか約束の木まで競争したの覚えてるなぁ〜ん?」
「覚えてますよ。オリガさんが木に激突しました」
「そこは覚えてなくてもいいなぁ〜ん。あの頃……」
「?」
「……。つづきは着いてから話すなぁ〜ん!」
 ぱたぱたと走っていくオリガ。
 見送るイアソン。
 ふと気づくと、カルマがいる。
「……約束の木、なつかしいですよね」
「……」
 かたわらに座って、身をもたせかかってくるカルマ。
「こういうとき、泣いたり怒ったりしてもいいの?」
「え〜。それは困ります〜」
「……もう」
 永遠に等しい時間は、幸福だろうか。
 カルマはときどき考える。
 無限の時間をよりそうと決めたことに悔いはなくても、優しすぎることは、時に雲を掴むようなふわふわとしたものであって。
 でもこれもひとつの、幸せのかたちなのではないかとも考える。
「あ、そうだ。イオルさんがクッキーを焼くって言ってました。そういえばいい匂いがしませんか?」
「……本当」
 ただよい甘い香りに、ふたりは顔を見合わせて笑った。
「イアソンさーん」
 近づいてくる軽やかな足音は、ロティオンだろう。
 さあ、お茶の時間だ。

●数万年後、そして星の彼方へ
 タイムゲートへと、大勢の冒険者たちが向かいはじめた頃。
 楓華列島の深山幽谷からひとりの男が、おもむろに岩肌に足をかけ、はるか蒼空を睨んだ。
 ぼろぼろのフードの下で、紫の瞳が天を見据え、そして時が至ったのを悟る。
 まさしく今が時である。
 彼だけではなかった。幾百幾千の冒険者たちが、インフィニティマインドとともに、星の世界へと駆けのぼったのだ。

(「ドラゴンウォリアーシステム・起動――召喚獣システム……オールグリーン――ドッキング準備・完了召喚獣とのドッキングを行います……ドッキング・完了――全能力・解放……解放完了・DWモードへの移行を確認」)
 重武装主戦型高機動タロス・ゼロ(a77439)は、数万年を経て、おのれの戦う力に衰えのないことを確かめる。不気味に虚空に展開する機械戦艦をまえに、集まった冒険者たちのあいだに緊張が走った。
「HAHAHA!タロス人生の折り返し地点で、でかいのがやってきやがったな! ……おおう、ウェグルスじゃねえか!」
「……すみません、それは以前の名前のようです」
「あっ、なんだ、再起動しちまったのか」
 キルテラは再会した旧知が姿だけを残して別人になってしまっているのを知る。寂しくはあれどそれはタロスにとっての常ではあった。
 同じくあちこちで、はからずも戦場での再会になってしまったものたちが声を掛け合う姿が見られた。
 その中に、楓華より帰還した男もいる。
 ぼろを脱ぎ捨てれば、数万年前と変わらぬ、金鵄・ギルベルト(a52326)の姿があった。ドラゴンウォリアーとなったギルベルトは、その闘志に瞳を金色に染め、くわえ煙草の口の端を吊り上げた。万年の雌伏を経て、発する闘気は目に見えるようだ。錆びついた斧をふるえばそれは黄金に輝くハルバードに変じた。
 懐のお守りにそっとふれ、そして、ギルベルトは数万年ぶりの戦場へ一歩を踏み出す。

「みんな、行こう……この先も続く未来のために。明日を終わらせないために」
 白と黒のいびつに歪んだ翼を広げ……、パールは言った。深紅の槍を手に、飛翔する。
 それが合図だったとでもいうように、ドラゴンウォリアーは流星の群れのように、宇宙の闇を裂いた。
「久々の戦い。腕が鈍ってなければいいが!」
 サタナエルの身体を黒炎が包む。
「本当。一族郎党にカッコわるいところは見せられないしねえ」
 シエルリードが紋章を描く。
「術士は内側へ!」
 カルマが叫んだ。
「聖鎧送るよ!」
 ピヨピヨが鎧聖降臨を後衛陣に施してゆく。
「無理はしないでくださいね」
 イアソンの言葉に、オリガは頷く。――といってもこのオリガはあのオリガではない、彼女の子孫だ。彼女はまだ冒険者としては経験が浅い。オリガによく似たおもかげで、しかしあの刺青がないのだが、ドラゴンウォリアーになったとたん、刺青が浮かび上がったのは、魂が継承されている証なのだろうか。
「でも絶対負けちゃいけないなぁ〜ん。ボクらは希望のグリモアの冒険者なんだから!」
 頼もしいことを言って、戦場を駆ける。
「先祖の名をけがすわけにはいかないからね」
 同じく新人冒険者のクリスは、玄天卿・クリスの子孫だ。護りの天使達を仲間に分け与え、ライクアフェザーの動きでかろやかに動く。
 漆黒の宇宙空間を、機械戦艦の発する光線が灼いた。
 青白い光線に撃たれたものは、魔氷に自由を奪われ、そこへ、ギアのような小型の敵たちがわっと襲いかかってくる。
 だが、闇のなかを清らかな光の帳がはためく。ナティルの子孫であるヒトノソリンの医術士、ルゥナのヘヴンズフィールドだ。仲間の魔氷からの回復を助ける。
 ルゥナは祖先が美しいエンジェルだったと伝え聞いており、それは長らく彼女の憧れであった。だからだろう、ドラゴンウォリアーになったルゥナは、エンジェルの純白の翼を獲得――したはいいが、ピンク色のノソ耳・ノソ尻尾はそのままで。どこか釈然としない気持ちを敵にぶつけるように戦う。
「医術士だと思ってナメてると痛い目みるなぁ〜ん! 」
 慈悲の聖槍が、ギアを貫いた。

 スルクの投げかけた蜘蛛糸が、ギアたちを絡め捕り、機械戦艦の動きすら封じる。
「たかが、壊れかけたギアと過去の亡霊に遅れをとるほど、体はなまってない」
 ひややかに言い放つ。
 機械戦艦が撃ち出す光の弾丸が宙で爆ぜ、驟雨のように白熱した攻撃が降り注いだ。ドラゴンウォリアーといえど無傷ではいられない。マールスは高らかな凱歌で仲間の傷を癒し、戦線を支援する。
「絶対、あげない」
 赤い薔薇をまとった、黒狐しっぽのストライダーが、飛び交う弾幕をかいくぐって、飛ぶ。
「私は、パパ達の様な大きな戦いは知らない。それでも負けない位、この世界が大好き。私を待っていてくれて、愛してくれる、この世界が大好きなの」
 彼女はサクヤの娘だ。
 指先が描く紋章が生み出す炎が、ギアを巻き込み、炸裂する。
 爆風に銀髪が躍った。
「頼むぜ」
 言い置いて、ギルベルトが敵のただなかに突っ込んでいく。
 レイジングサイクロンが数十ものギアを道連れにしたうえで、機械戦艦の一体を嵐に呑まれる小舟のように転覆させた。
 反動でマヒするギルベルトを、カラシャが凱歌で解放する。
 小型のギア風の敵は、ドラゴンウォリアーには強敵ではなかった。
 数に任せて取り囲んでも、カルマのデンジャラスタイフーンひとつで包囲網は吹き飛ぶ。
 サタナエルのデモニックフレイムがつくるクローンに戦線は崩れ、ヴァイスのエンブレムシャワーや、キルテラのファナティックソングに駆逐されてゆく。

「その歌は――」
 凱歌に振り向くジョルディ。
 戦場にあって他のことに気をとられるなど、いつもの彼にはなかったことだ。
 傍らのエイラは、機械戦艦へ向けてニードルスピアの雨を降らせている最中である。
「これは父祖より伝承され続けた『星の歌』。いつかこの歌が同胞を導くだろうと」
 ララヴァは、灰の瞳に黒い髪の、ヒトの吟遊詩人だ。
「再び共に征こうぞ、我が同胞よ!」
 ジョルディは理解する。
 おのが継承した名をもつ祖先が、かつてともに戦った人物が、この歌を伝えてきたのだと。
 黒炎に身をつつみ、ララヴァは駆ける。
 エイラのニードルスピアがギアを駆逐し、切り開く道を、ジョルディたち『黒鴉』の絆に結ばれたものたちが飛ぶ。
 唸りをあげてつっこんでくる機械戦艦の舳先を、ジョルディの盾が受け止める。
「重騎士の本分は守りにあり!」
 雄叫びが、虚空に響いた。

 次々に、機械戦艦が沈んでゆく。
 竜は――凍てついた瞳で戦場を見つめている。そこには何の感情の色も差してはいない……。否――、そうではない。無に見違えるほど、それは充満した絶望の闇なのだ。
 その瞳は吸い込まれそうな深淵のようだと、フェデクは思う。
 しかし、壮年の重騎士は、おのれを奮い立たせた。
「ドラゴンつーたら、婆さんやそのまた爺さんの代からずっと討つべき相手だって聞かされてたんでな。おとなしゅう消えてくれんかね。このままじゃ収穫にも差し支えるんでな」
 それを皮切りに、ドラゴンウォリアーたちは一斉に、ドラゴンへと躍りかかった。
「ドラゴンだかなんだか知りませんが、針の穴ほども、お呼びじゃありませんのよ」
 ウルズラが大岩斬を振りおろす。
「闇へ帰れ……お前達の時代はもう過ぎた」
 瞳を赤く燃やしたヴァイスが緑の業火を呼ぶ。
 ドラゴンが、咆哮をあげた。
 すでに倒され、砕け散ったはずのギアや戦艦の残骸が、まだ動く機能を残していたのか、その声に応えるように飛来してくる。
「攻撃目標複数を周囲に確認――アビリティ『流水撃』を使用し一斉掃討を行います」
 ゼロが流水撃で迎撃する。弧を描き、疾駆するゼロの軌道を追うように爆炎の花が咲き、ドラゴンの巨体をあかあかと照らした。
「これ、結構痛いわよ……泣かせてあげるわ……」
 エイラが繰り出すヴォイドスクラッチが敵の鱗を裂く。反撃の氷のブレスを打ち消すように、ララヴァが歌う。
「無へと誘う子守唄(ララバイ)を聴け!」
 そしてまっすぐに降下する黒い稲妻――ジョルディのホーリースマッシュが、絶望の闇よりよみがえった肉体を大きく穿った。
 竜は吠える。
 それを聞くと、心が芯から冷えるような気がする。恫喝ではない。ただそれは深い深い絶望の叫びなのだ。
「……長い時の果て、また竜に会うとは、想像もしていませんでしたが……決着を、付けましょう……」
 パールが舞う。
 紅い槍の穂先が、燃え落ちる隕石のような残像を描き、見るものの視界を射た。
 鋭く斬り込むスピードラッシュ。防御のために閉じられた、霜に白く染まった翼にはいくつもの風穴が開いた。
「万年も絶望を抱いて……。けれど人にも物にも、眠るべきときはやはりある……。もう、眠ったほうがいい。眠らせてあげるよ」
 シエルリードの描く紋章がエンブレムシャワーの光を呼ぶ。
 ドラゴンウォリアーたちの度重なる攻撃に傷ついていくドラゴンに、冒険者の攻撃の手は緩むことはなかった。
「あの、尾を――!」
 パールの声が戦場を裂く。
 集中する攻撃。
 その一点に吸い込まれるように、降ってくる黄金の輝きは、ギルベルドだ。
 激しい戦場の喧騒さえつらぬく哄笑。あとさき顧みない闘いに、ギルベルトは血まみれだったが、頓着する様子はなかった。数万年ぶりの闘いの高揚に笑いが止まらないのだ。
「こちとら絶望に凍える程チャチな魂持って無いんでな」
 渾身の、ハルバードの一撃が振り下ろされる。
「宇宙の塵となれ!」

 冒険者たちは、絶望の氷が砕け散る音を聞いた。
 逆巻く風が――、ごうごうと音を立てて、タイムゲートの彼方へと吸い込まれていく。
 この宙域の敵は、すべて活動を終えていた。
 よそでは、まだ闘いが続いている場所があるのか、遠くにちかちかと光が閃いて見える。
「……」
 竜の骸は急速に凍りつき、ぼろぼろと崩れ始めていく。
「……古代ヒト族もみんな、守りたいものがあったから、力を求めたんだよね……?」
 パールはそのかけらのひとつを抱いた。
 それさえも、まるでパールの体温に溶けるかのように消えていこうとする。
「でも、それがあまりにも大きすぎて、抱えきれなくて、だからみんな壊れてしまったんだよね……? 大丈夫、希望は、私たちが紡ぐから……。力に、飲まれたりしないから……。だから、絶望しないで……安心して……ゆっくりと、お休みなさい……」
 その祈りは、届いただろうか。
 ドラゴンに――、絶望の混沌に消えたすべての魂に。

「決めていたんだ。これが終わったら僕も終わったら眠りにつき、魂がいつか還る高みに還る……。大切な人を、何千年も待たせたけど……これでようやく……」
 シエルリードのそのつぶやきを呑みこんで。
 この先に何が待つのか、オリガの抑えきれない好奇心の瞳の向こうに、タイムゲートは口を開けている。
 カルマはポケットの方位計にそっとふれる。未知なるあの深淵の向こうでも、きっとこれはゆくべき場所を示してくれる。
「……さあ、行きましょう」
 イアソンが、みなを振りかえった。
「よし」
「行くか」
「あとひとふんばりだ」
「希望のグリモアの地へ――」
「俺たちの過去と未来を守る」
「さあ……」

 それは時の果てか、あるいは始まりか。
 ゲートの向こうに待つ希望を求め、冒険者は一歩を踏み出す。


マスター:彼方星一 紹介ページ
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参加者:41人
作成日:2009/12/21
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玄天卿・クリス(a73696)  2011年11月11日 02時  通報
冒険者としての締め括りに此処に参加できて本当によかったよ。
皆本当にありがとうね。

氷雪の翼・パール(a26513)  2009年12月24日 23時  通報
えと、その、みんな、ありがとう…。

凪・タケル(a06416)  2009年12月22日 00時  通報
色々とお世話になりましたけど、ご迷惑かけてばかりでした。最後の最後に行けなかったのはちょっと心苦しかったのですが、それでもちゃんとお話しできてよかったな、と。