さいはて山脈を登れ!〜メイド村の遺跡〜



<オープニング>


 とある村に、台風が訪れた。
 強力な雨と風は、山間部に暮らす住民達を怯えさせたが……特に被害も出る事はなく、台風は過ぎ去った。
 だが、村人達が朝外に出ようとした瞬間……その轟音は響いた。
 地滑り……それもかなりの規模だ。
 被害の規模を見ようと村の青年が地滑りの起こった付近を確認しに行くと、流れたの土砂の下から遺跡と思われる建造物が姿を現していた。
 一体いつのものなのか。何のためのものなのか。
 何より、これは村おこしになるのか。
 村人達は頭をひねらせて、悩んで、悩みつくし。
 結果、古代のメイド喫茶という結論に達したのだという。
 温泉や特産品の石鹸と合わせて、盛大な村おこしをしようと画策。
「そういえば、前にこの村に来てくださったメイド様がおったのう」
 そう言うのは、村の長老。
 メイド様、というのは冒険者の事なのだが……。
「村おこしのイベントに、あの方々をお迎えしてはどうじゃろうの」
 その長老の提案に、反対する村人達は居ない。
 全力で歓迎しよう、と大盛り上がり。
 ……という感じの理由で、村に招待された光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)達。
 招待状に書かれていた内容は。
 メイド様へ。以前はお世話になりました。
 この度、当村はメイド村としてリニューアルする事になりました。
 つきましては、是非メイド様達に最初に我々の村を楽しんでいただきたく思います。
「……どうする? とりあえず、行ってみるかえ?」
 なんか色々ダメな雰囲気が漂う招待状を受けて、プラチナはとりあえず仲間達に声をかけるのだった。


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参加者
聖骸探索者・ルミリア(a18506)
気紛れな魔女・シラユキ(a24719)
聖剣の王・アラストール(a26295)
真っ赤なお伽話・デスペラード(a27803)
城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
無銘の・ウラ(a46515)
異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)
NPC:トレジャーハンター・アルカナ(a90042)



<リプレイ>

「それにしても珍妙な村があるもんじゃな。まぁ世の中平和になったとゆーことなんじゃろうな。と思っておこう」
 無銘の・ウラ(a46515)は、隣の気紛れな魔女・シラユキ(a24719)をちらりと見る。
 ウラや異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)が着ているメイド服はシラユキが買ってきたものだが……どうにもこうにも、微妙にサイズを手直しした跡がある。
 それが、所謂女性らしさを示す部分である事に気づいてしまいそうだが、気づきたくない。
「……く、くやしくなんてないんじゃからね!」
 そんなウラの魂の叫びに思わずシラユキが振り向くが、あえて何も言わず。
「前回の作戦は成功に終わったが、被害は甚大だった。主に私の精神面が」
 メイド村を見下ろす丘の上、真っ赤なお伽話・デスペラード(a27803)は静かにメイド村を見下ろす。
「私の心に甘えがあったのか、それとも……。しかし、今度はそうはいかない。見ているが良いメイド村。私の銘を畏怖と共に刻んでやろう」
 目指すはメイド村。行くは歴戦のメイド達。
「御奉仕、推奨!」
 気合を入れるためもあるのだろうか、何やら変身ポーズを取る聖剣の王・アラストール(a26295)。
 ここより先は進むも地獄、引くも地獄のメイド道。
 村の入り口に入ったメイド達は、それを改めて認識する。
「……迂闊に招待に応じた妾がダメなんじゃろうか?」
 光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)が思わず息をのむのも無理はない。
「オス! お帰りなさいませお嬢様!」
 並んだマッチョのメイド達に、クラリとするような感覚を覚える。
 確か以前は、結構見た目普通の人が多かったはずなのだが。
「キモォォォォっ!!」
 思わず叫ぶガマレイ。
 無理もない。常人ならば、この場で逃げだしている。
「お帰りなさいませメイド様。我等がメイド村へ……」
 アラストールの前に進み出たのは、マッチョになって面影はあまりないが長老だろうか。
「なんというか、この村はもう少しマトモな人間おらぬのか!?」
「何を仰いますかメイド様。メイドとは奉仕に必要な体力と精神を兼ね備えるもの。すなわちパワー、が我等の結論です」
 迷いなく答える長老を見て、プラチナはオープン前に招待されたのは、ある意味不幸中の幸いだと思う。修正せねば……と。
「うぅむ、しかし見てはおれぬ……」
 思わず頭を抱えるプラチナを余所に始まる村の説明。
「って言うか、一体何をどう勘違いすればこういうことになるのでしょうか……」
 村の説明を聞きながら、聖骸探索者・ルミリア(a18506)は思う。
「まぁ私達を歓迎したいという気持ちはわからなくも無いのですが……明らかに間違ってますよぅ〜」
 間違っている。だが、間違いすぎて三回転くらいして、もはやどうでもいいんじゃないかと思えてしまうレベル。
 だが、彼女達はあえて戦いに挑みに来た。
 メイドとは何たるか。その真実を魅せる為に。
「メイドどうも。よろしくお願いするのじゃよメイド!」
 ウラの先制攻撃に、村人AとBが感嘆の声をあげる。
「さすがメイド様。素晴らしい挨拶ですな」
「ああ、我等とは年季が違う」
 何やらまた新しい勘違いをしている風だが、誰も突っ込まない。
 突っ込まないが……交わした目線で、誰もが同じ考えを持つ。
 とりあえずバラバラに分かれて、何とか軌道修正しよう……と。
「メイドさん心得! 一つ、挨拶は可憐に! 二つ、所作は清楚に! 三つ、仕草は可愛く! 四つ、退かず媚びず顧みず!」
「オス! 復唱します!」
 とりあえず村の入り口でメイドさん心得なるものの勉強会を始めた城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)は、目の前に居並ぶメイド達を見る。
 全員マッチョの男だ。女性がゼロだが、とりあえずさておくとして。
「皆さんは男性という大きなハンデを背負っています。このハンデを克服し、なおかつお客様に満足して頂く事は並大抵の事ではありません」
 確かに、並大抵の事ではない。
 熱弁を振るうサクラコは、手近にあった板をバンバンと叩きながら説明する。
「接客側の照れや気恥ずかしさはお客様を不快にさせます。恥ずかしいと思うのは自分に自信が持てないから! 確かな技術と経験、そして自信を身につけそれら全てを克服するのです!」
「オス!」
「その挨拶はなんですか! もっと可憐に!」
 何やら一体感を増してきたサクラコ達。
 腕立てを始めたメイド達から少し離れた場所。
 作りたての木材の匂いのする特設ステージで、シラユキとウラはジャン拳なるものの演舞を見ていた。
「って、えらく暑っ苦しいのが揃っとるな。メイドなんてやらんともっとまっとーに生きたほうが世のため人のためそもそもわしのため、ついでにランドアース温暖化の進みも遅くなって皆幸せな気がするんじゃけど」
 確かに暑苦しい。メイド服を着込んだマッチョが格闘の演舞のようなジャンケンをしている姿は、実に暑苦しい。
「では、ここでお客様参加タイム!」
 ステージに上ったウラは、目の前の暑苦しいメイドから少し目をそらす。
「メイドたる者、ご奉仕する相手に気持ち良くなってもらうためにもわざと負けんといけんのんよ」
 頷くと、びしっと目の前のメイド(マッチョ)を指さす。
「とゆーわけで、とりあえずわしが気持ちよく勝てるようにすべし!」
「オス!」
「って、んむ? ジャン拳? え? どうやるの? あれ?」
 何やら説明タイムに入るステージ。
 ……と、ここで突然シラユキが、違うと叫んでステージによじ登る。
「勝った時と負けた時、それぞれどうすればいいかを伝授してやる」
 やる気に満ちたシラユキに、村人達がおお……と感嘆の息を漏らす。
「まず勝った時だが……媚びを売るような可愛らしい笑顔や仕草をして相手を魅了すると良いだろう。語尾に☆ が付くような台詞も合わせて勝利を喜ぶと尚良い。この時、間違っても恥ずかしがってはいけない。恥は最大の敵だ!」
「さすがメイド様☆」
「勉強になります☆」
 近くで見ていたトレジャーハンター・アルカナ(a90042)がキモい……と呟くが、シラユキは聞き流す。
「負けた時は罰ゲームとして身に付けている物を外し、ちょっと色気を出してみよう。無論、衣装をそのまま脱ぐのはまずい。それでは色気云々以前にタダの変態な上にそもそもメイドですらなくなる!」
 飛び出したシラユキの爆弾発言に、アルカナが逃亡する。
 メイド服に封じられたマッチョを解き放とうというのか。
 シラユキ曰く、男なら男でちらりと覗く逞しい肉体から男性特有の色気が感じられるはず……なのだが。
「分かりました。では、我等のあふれ出る色気をご堪能ください☆」
「いや……残念ながら私は感じないし感じたくないので目を背けるが、きっとそういうのが好きだと言う者も広い世界には沢山居るに違いない。多分。きっと。そう願いたい」
「なればこそ、ここでメイド様を我等の色気の虜に出来るならば勝ったも同然☆」
「よし、フォーメーションデルタだ☆」
 ズラリと円陣でシラユキとウラを囲むメイド達。
 鳴り響く太鼓の音の中で地獄の宴が始まった、丁度その頃。
「毎日新鮮なジュースを提供する為にも林檎を三秒で圧縮する筋力が必要です。という事で訓練です、十分で林檎圧縮百個はじめ!」
「そいやぁ!」
「ぬおりゃぁ!」
 青空の下、飛び散る青春の汗。
 リンゴを握りつぶしジュースを作るマッチョメイド達と、それを指導するアラストール。
 流しの……、と何やら口上が聞こえてくる方にアラストールが視線を送ると、何やらデスペラードがサンドイッチ制作現場のほうに現れたらしい。
 そう、サンドイッチ制作現場のメイド(マッチョ)達は、突然現れたデスペラードに驚きと感激の視線を送る。
 丘の上からハーモニカを吹きつつ現れた、流しのメイド。
 この村に伝わるメイド伝説の1つにしよう……などとメイド(男)達が囁き合う中で、デスペラードはサンドイッチの具材を手に取る。
「二度はやらん、よく見ておけ」
 そして作りだされたのは、手力を引いて気合を足し下手で割ったようなヘボサンド。
 所謂ダメダメサンドなのだが。
「愛とかそんなのが重要だ。忘れるな」
 そそくさと立ち去ろうとするデスペラードの肩を、メイドの1人ががっしと掴んで。
「素晴らしい……さすがです、メイド様!」
 漢泣き。そうとしか言いようがない泣き方で、サンドイッチ部隊のメイド達が泣いている。
「あえて、伝説のドジっ子を再現する事によって生まれる人間味と愛……」
「そうだ、我等は完璧な味にこだわり過ぎていた!」
「流しのメイド様を胴上げじゃー!」
「待て、流しのメイドは忙し……」
 逃げようとデスペラードはもがくが、聞いていない。
 デスペラードを胴上げしながら、メイドばんざーい、とかドジっ子ばんざーい、とか不器用っ子ばんざーい、とか好き勝手言っている。
「おお、何やら外が騒がしいですのう」
 無愛想っ子ばんざーい、とかいう声が聞こえてくる外を見ながら、メイド(長老)はお茶を差し出す。
「さて、それでは何からお話ししましょうか……とはいえ、メイド様に今更語るべき事があるかどうか。ほっほっほ」
 のんびりとした空間は、実に落ち着きがある。
 長老がマッチョで、メイドの格好をしていなければ……という前提はあるのだが。
 ルミリアはお茶を一口含むと、それとなく、やんわりと話しかける。
「何と言いますか、メイドさんと言うのは結局使用人であるので、本人が喋り捲ると言うのは似合わないと思うのですよねぇ……」
「ほっほっほ、なるほど、なるほど」
 何やら受け流されてるような感覚を覚えながら、ルミリアは語る。
「やっぱりメイドさんと言うのはさりげなく瀟洒にあるべきだと思うのですよ〜」
「ええ、ええ。そうでしょうなあ」
 しばらくこんな会話をしているうちに、ルミリアの調子もヒートアップしていく。
「そもそもですね、そもそも男性がメイドさんをやるのはどうなんですか?」
「村の女性が皆嫌がりましてのう。しかし、村興しのチャンスを逃すわけにはいかない……そこで生まれた妥協策ですじゃ」
 笑えない話を聞かされたルミリアだが、ひるまない。
 ルミリアが長老との舌戦を繰り広げ、ステージのシラユキが精神的なダメージを受けている頃。
「良いか、やるならトコトンまでやるのじゃ!」
「オス!」
「後はどうせならもう「あーん」とかやれば良いんじゃないかのぅ?」
 作ったばかりのオムライスを前に、プラチナとメイド(マッチョ)が頷き合う。
 原材料から全て村で作り上げた料理と、メイド(男)のあーん。
 この2つが揃えばもはや、敵はないに違いない。
「筋肉任せの手絞りジュース? 結構じゃないの。だがしかしっ! その魅せ方が間違えてる! 目の前でサービスやるのはただの見世物! メイドは見世物にあらずってやつよ!」
 ようやくキモさを乗り越えたガマレイの演説が響き渡る。
「さわやか且つ優雅にご主人様にご奉仕するには苦労やその他もろもろを滲ませることなく、意図も簡単にできました……みたいにジュースを提供する! 涙も苦労も汗も全てさらりと流し、ただ優雅にご主人様にご奉仕するってのがメイドの鏡じゃない?」
 おお、と拍手をするメイドとアラストール。
 メイドに対するこだわりがあるらしいガマレイに、感嘆したのだ。
 そして、ガマレイの提案でジュースの作成係と提供係に分かれるメイド達。
「無理に笑顔を作るべからず! 笑顔が苦手ならそれでもOK! ただ、相手を不快にせず真心込めたことがわかればよいのよ!」
「オス!」
 メイド(マッチョ)達の返事を受け、ガマレイは満足そうに頷く。
「はい、わかったら今すぐ準備して頂戴な! このままじゃガチムキメイド村になっちゃうわよ!」
 てきぱきと動き始めるメイド達と、パッドじゃないとか何とか言ってたような気がするガマレイ。
「メイドさん心得! 復唱!」
「職業メイドに媚などいらぬ! ただ前に進むだけ!」
 サクラコと、メイド(ムキムキ)達の声が村に響き。
 日が暮れる頃には、メイド達はすっかり、一人前のメイドの雰囲気をもっていた。
「一般の方にはお奨めできませんので、村おこしと言うのであれば改善を要する点が多すぎますわね」
「そうでしょうとも。未だメイドはマイノリティ。しかし、きっと乗り越えてみせましょう」
 ルミリアに、頷くメイド。そういう事ではないのだが。
「皆さんお疲れ様でした。今日から皆さんは立派なメイドさんです……これからも村興しのために頑張って下さい。わたしも影ながら応援していますよ」
 ほろりと涙を流すサクラコと、漢泣きするメイド達。
 やがて見送る村人達の声を聞きながら、アラストールはぽつりと呟く。
「……根本的な所から改善しないと村は逆に過疎&滅亡の危機な気がしてきました。天の声も、こんな村絶対いかないと断言していますし 」
 天の声とは心の声か。極めて常識的なアラストールの感想なのだが。
 数日後。メイド村の開村日……流しのメイドが現れたとか、かなりの人が訪れて観光名所になったとか。
 色々と聞こえてくる話はあるが……世の中、流行りというものは分からない、という証明なのか。
 プラチナに分かるのはただ、メイド達の特訓は無駄ではなかった……という、ただそれだけである。


マスター:じぇい 紹介ページ
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作成日:2009/12/19
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