≪Relic Searchers≫眠れる魔王様ぱにっく!!



<オープニング>


●ここに、1つの絵本がある
 パステル調の絵柄が優しい、その絵本のタイトルは『眠れる魔王様』。
 背には淡く輝く白い翼。美しい銀髪をなびかせ、流星雨を思わせる模様が豪奢な衣を纏った少女――魔王様が眠ったまま風任せに『白き庭』を彷徨い、やがて風琴の庭園で目覚めてお茶会をする、長閑な1日を描いたそんなお話。
 作者の名も、挿絵を描いた者の名も記されていない、この広い世界において8冊しか存在していない、古い古い絵本。

 時は3219年秋――世界は全てのグリモアを搭載した『世界首都インフィニティマインド』を中心に、平和と繁栄を謳歌している頃。
 件の8冊の内の1冊が人の目に触れた事から、この物語は始まる。

●エンジェルの医術士・ソワレの探索
「……あれ? 留守なんだ」
 その庵に、人の気配はなかった。庵の主は訪問者と旧知のエンジェルの牙狩人。『放浪する地図士』という称号の通り、1年の大半は旅の空で地図を描き続けているから留守なのも仕方ないかもしれないけれど。
「今日まではいるって聞いてたんだけどな……」
 不満を零しながらも、そこは鍵も掛かっていない勝手知ったる住まいだから中に入る足取りも慣れたものだ。
 中は水回りが集まった厨と、簡易ベッドとランプを乗せたサイドテーブルとクローゼットが1つ切りの狭い寝室、そして大きな製図台と文机が鎮座ましましているちょっと広めの書斎のみ。書斎にある書棚は大量の羊皮紙を収めたマップホルダーで溢れ返っている。地図帳として編纂されたものは外の倉庫にきちんと保管されているから、ここにあるのは未整理ばかりだろう。
 書斎の文机の上には、1冊の地図帳が置かれていた。フラウウインド大陸の地形を記されたそれも、やはり庵の主が作ったもの。これから予定している冒険の一助にと、かねてより約束していた地図帳を受け取りに来た訳で。
(「勝手に貰っていっても良いよな……」)
 外では既に仲間が待っているから、書置きだけ残す事にして彼は地図帳を手に取った。
 その時、目に入ったのだ――修復されたばかりらしい、古びた絵本が。
「眠れる……魔王様?」
 地図帳の隣に置かれたその絵本は、羊皮紙の特性そのままに濃藍のインクで記された文字も挿絵の淡い色彩もよく保っていた。
 表紙に描かれているのは、美しい銀髪をなびかせて空を漂うエンジェルらしき少女。何故か、既視感を覚えた。
 何気なく手を取り、絵本を開く。内容は、主人公が『魔王様』と物騒なネーミングなだけでほのぼのとしたものだったのだけど。
「聖骸探索者の町……風琴の庭園……」
 記されている見知った地名に思わず目を瞬く。前者はこの庵があるコミュニティからさして遠くない町の別名であり、後者は呪われてしまって廃棄された空中庭園とか何かとか。
「魔王様って……まさかな」
 でも、こんな話も確かに聞いた事があるのだ。このホワイトガーデンに、伝説の魔王の遺跡があるのだと。この白き庭は医神ラウレックが愛し子供達の為に作った避難所。如何にも眉唾な与太話だと、これまでは笑い飛ばしていたのだけど。
「ソワレ、まだ?」
「あ、ああ……すぐ行く」
 仲間の声に、エンジェルの医術士・ソワレは慌てて書斎を後にする。地図帳の代わりに古びた絵本を手にして。
 冒険のネタを目の当たりにして、手を出さない冒険者はいない――つまりはそういう話だったりする。

●風琴の庭園の守人・フアラの驚愕
 彼女はエンジェルの一般人。代々『風琴の庭園』と呼ばれる空中庭園を守る家系に生まれ、最近、両親からその役目を受け継いだばかりだ。
 彼女の1日は、庭園の掃除から始まる。2階層のこの庭園には幾つもの金属の管が岩壁に張り巡らされ、あちこちで口を開けている。この仕掛けが『風琴』と呼ばれていて、庭園に風が吹く度に妙なる音が奏でられるのだ。
 風琴の管は枯葉やらで詰まってしまうと変な音を鳴らしてしまうので、その点検は念入りに。そうして、次は庭園を彩る花壇の手入れだ。
「……あら?」
 納屋から園芸道具を運び出していた彼女は、空を見上げて小首を傾げた。
 ふわりふわりと漂う白いものが、段々近付いてくる。銀色の髪が美しくそよ風になびき、背の白い翼が淡く輝いていた。恐らくエンジェルの少女だろう。
「あらら、大変」
 このままでは、庭園にある尖塔に激突してしまう。慌てて尖塔を駆け上がった彼女は、すんでの所で壁にぶつかりそうになった少女を塔の中へ引っ張り込んだ。
「……みゅ?」
 その衝撃で意識が戻ったのか、目をパチパチと瞬く少女。不思議そうに回りを見回し、彼女に気が付くと「あら」と紅い双眸を見開いて両手で口を押さえた。
「あなたは……ニナ様? 何年ぶりかしら、お久しぶりですの〜」
 本当に驚いた。初対面から身内の名前を聞くなんて思ってもみなかったから。
「お祖母様を御存知のようですけれど」
 戸惑った表情の少女に、彼女は安心させるような笑みを浮かべる。
「私はフアラ。この『風琴の庭園』の守人を務めています。何処かから流れて来られたようですけど……あなたのお名前も教えて戴けますか?」

●聖骸探索者・ルミリアの帰還
 ――気が付いた時、古びた塔の中にいた。
 何だか見覚えがあるような気がして、見回していたらエンジェルの少女がいて。その栗色のお下げに遠い記憶が刺激される。
「お祖母様を御存知のようですけれど」
 でも、どうやら違ったらしい。
「私はフアラ。この『風琴の庭園』の守人を務めています。何処かから流れて来られたようですけど……あなたのお名前も教えて戴けますか?」
 風琴の庭園――これまたとても懐かしい名前。星海へ旅立つ直前の思い出が蘇り、思わず笑みが零れた。
「私はルミリアと申しますの……あの、突然で失礼ですけど。今の日付を教えて戴けませんか?」
 3219年――内心で仰天した。都合100年程、光の海で過ごしていた計算になる。ぶっちぎりの記録更新だ。
「まあ、光の海に……家には帰れそうですか?」
「多分、大丈夫と思いますけど……」
 きっと、荒れ放題ですわね――なんて、聖骸探索者・ルミリア(a18506)は呑気に構えていたけれど。
 この時の彼女は思いもしなかった。『聖骸探索者の町』に構えていた旅団『Relic Searchers』の拠点である屋敷は、団長の長の不在ですっかり遺跡の様相で。その地下にあるルミリアの(医術士としての)研究室は、知らない人が見たら怪しげというか邪悪な実験室に見えなくも無い事に。


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参加者
龍騎艦隊・イマージナ(a18339)
聖骸探索者・ルミリア(a18506)
城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)
探索士・エルヴィン(a36202)
閃光の射手・イオリ(a43829)
氷剣探求者・ニール(a66528)
NPC:放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)



<リプレイ>

 聖骸探求者の町――その呼び名は、ある旅団が拠点だったのが由来という。
 何となく物々しく、如何にも冒険を予感させるネーミングだが。
「……普通の町、だよな」
 古びた町並みをのんびり人々が行き交い、町角で遊ぶ子供の声が長閑に響く。エンジェルの医術士・ソワレが求める物騒な手掛かりには程遠い雰囲気だ。
 ソワレが抱えるパステル調の絵本『眠れる魔王様』は、放浪する地図士・ネイネージュ(a90191)の庵からを持ち出した絵本だ。そこに描かれる『眠れる魔王様』の調査が今回の目的。冒険仲間はお伽噺だと誰も取り合ってくれず、少々意地になっている自覚はあった。
 まずは聞き込みが鉄則かと思案している時だった。
「そ、それは……!?」
 何となくわざとらしい驚愕の声だった。振り返れば少女が1人。小柄で華奢な体躯に重厚な甲冑を着込んでいるのにしっくりと似合っている。
「その絵本、何処で?」
「……知り合いが持ってたんだけど」
 流石に「勝手に持ち出した」とは言えない。
「そうですか……あ、申し遅れました。わたしはサクラコです。御覧の通り、ドリアッドの重騎士です」
 次に驚いたのはソワレの方だ。
「もしかして、城壁の姫騎士?」
「はっはっは、そのとーり」
 城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)――1200年前の激戦を生き抜いた少女は歳を取らぬまま、今は多数の重騎士を擁する軍団の長。ソワレも名を知る程の有名人となっていた。
「俺はソワレ。この絵本を知っていると?」
「知ってるも何も、わたしも同じ本を持ってます」
「えっ!」
 何という運命的偶然!
「それは、今から約1200年前に起きた惨事を後世に伝える為、実話を絵本にしたものです」
 何という衝撃の事実!
「……じゃあ、魔王は」
「勿論、実在します!」
 何という急展開!
「……あのぅ」
 そこへ新たなる登場人物が!
「今、魔王がいるって」
「ええ、言いましたよ」
 サクラコより幼げな少年だった。背に負う弓も新しい。猫尻尾と独特の装束からして楓華の武士の子供だろうか。
「実は僕も、魔王を調べに来たんだ!」
 少年はイオリと名乗った。ソワレには懐かしい名前で、聞いてみれば以前に会った閃光の射手・イオリ(a43829)の子孫とか。
「英雄の御先祖様とお知り合いだったなんて!」
「まあ、長くは生きてるから」
 御先祖様に憧れる少年はそれだけで感動しきりだ。
「それにしても、どうしてあなたのような小さい子が魔王の事を?」
「小さくない。数えで10歳なんだから!」
 抗議しながらイオリが見せたのは、やはり古びた絵本。
「先祖代々の古文書に混じってたんだ」
 イオリも「ホワイトガーデンに魔王なんて」と思ったようだが、実家の近くに『魔王が鬼の大群を蹴散らした余波で崩れた谷の跡』なんて史跡があるそうで。
「意外と本当なのかなぁって」
 それで期待と不安半々でホワイトガーデンを訪れれば、確かに絵本通りの町があって。
(「同じ絵本を持ってる人もいるし…やっぱり魔王様は存在するのかなぁ?」)
 既に聞き込みも始めていたが、町の人々は「危ないから」と口を揃え、手掛かりはないという。
「冒険者だから大丈夫と言っても、信用してくれないんだよ」
「でしたら、私と出会えたのは運命かもしれませんね」
 無駄に大きく胸を張ったサクラコは、そっくり返らんばかり。
「ついて来て下さい」

 ――ちょっと買い物行って来ますからお留守番お願いしますね〜。
「……あれから早100年。団長はいつ帰って来るんでしょうなぁ」
 軽い気持ちでは引き受けたけれど、約束は約束。それに破るのも何だか……かなり怖い。
 という訳で、龍騎艦隊・イマージナ(a18339)がその小屋で暮らし始めてそろそろ1世紀。
 今日も自慢のおはぎを抱えてのんびり日向ぼっこ、の筈だったが。
「はっ!」
 お向かいのお屋敷、というか遺跡のような建物に向かう人影が3つ。
 ここ数年近付く者もいなかったのに……イマージナは慌てて駆け寄った。
「ここに立ち入るととんでもない事になりますし」
 突然、ローブを引きずる少女の含み笑いに、彼らは怪訝そうに振り返った。
「あら」
「おや……」
 まずサクラコと目が合うが、白々しく逸らされる。
「ここ、魔王の遺跡?」
 首を傾げる前に、1番幼い少年に話し掛けられた。
「ええ、その通り〜」
 まあ、嘘は言ってない。イマージナ的には。
「だから、立ち入り禁止ですし」
「何故」
 ボソリと呟いたエンジェルの少年の方は、イマージナも覚えていた。向こうは目深に被ったフードで気付いてないようだが。
「この忠告を守らなかったお隣のロイドさんは、3年後に蜜柑の食べすぎて腹痛に!」
「……関係無いと思う」
「勝手に忍びこんだ本通りのリンちゃんは、いまだに嫁の貰い手が無く……くぅっ!」
 自分で言って、自分でも大ダメージのイマージナである。
「わ、罠とかもアルYO!」
「望む所だ。僕達は魔王の正体を確かめに来たんだから!」
「その本は!」
 血気盛んにイオリが掲げた絵本に、ハッと息を呑むイマージナ。思わず涙ぐむ。
「何と懐かしい……その絵本の謎を解きたいんやったら、仕方ないですやろね。私が案内してあげますし」
 コロッと態度を変えたイマージナは、門扉に手を掛けて。
「うっきゃあ!」
 取っ手から飛び出した鉄バサミに指を挟まれた。

「みゃ!? 100年ですか……3桁突入とはぶっちぎりで記録更新ですわね〜。色々と情勢も変わっていそうです」
 聖骸探索者・ルミリア(a18506)はその頃――風琴の庭園で、お茶を楽しんでいた。

「うぐっ!」
 玄関の扉を開けて、百科事典が直撃するイマージナ。
 屋敷に辿り着くまでに何度も落とし穴にはまっている彼女に、一同不安げの眼差し。
「い、行きますし!」
 そんな視線を余所に、一瞬で立ち直って先を進む『自称』案内人。
 中は、物で溢れ返っていた。怪しげな等身大の魔王像やら多重の封印が施された血塗られた古書やら奇妙な紋様を描いたタペストリーやら。そこかしこに乱雑に積み上げられている。
「これって、魔王のコレクションかな……」
「どうだろう」
 山積の品々で窓は塞がれ、薄暗い中を恐る恐る進んでいく。
「のおぉっ!」
 先頭を行くイマージナは罠発見器の様相だが……重騎士だし大丈夫だろう、多分。
「っ!」
 まあ、謎の巨大生物の剥製の首が轟音を立てて落ちて来て、イオリはべそをかいたけど。
 やがて――地下への階段を発見し、慎重に降りていく一行。
「こ、これは……何と邪悪そうな研究室!」
 面妖な標本や薬瓶に囲まれたその部屋は見るからにおどろおどろしい。地下だけにランプの灯火だけが頼りなく……灯り?
「誰かいる?」
 血色のドレスを纏う魔王らしき肖像画の下、グツグツと煮立った大鍋にボチャボチャと何かを投げ込む人影が。
「……誰だ?」
「うわぁっ!」
 もうもうと湯気の立つ大鍋を背景に右手に肉切り包丁、左手に血塗れの肉塊を持って振り返られれば、そりゃ誰だってビビるだろう。

「お家は大丈夫ですか?」
「団員さんにお任せしていますから……これ、美味しいですわ〜♪」
 その頃のルミリアは――風琴の庭園の守人・フアラお手製のタルトを堪能していた。

「……まさか、ここまで来るとはなぁ」
「大体の罠は、あの人が引っ掛かってくれたし」
 身も蓋もない返答に、探索士・エルヴィン(a36202)は思わず苦笑した。
「で、どうしてあなたが?」
「俺か? ただの管理人だよ。ここは魔王の居城であり、彼女に関する物が封印されている危険な場所だからな」
 顔見知りのソワレの追及にも、しれっと肩を竦めて言ってのける。
「まあ、今じゃ単なる遺跡というか、抜け殻だけどな。魔王の消息なんて今更なぁ」
 苦笑するエルヴィンの前で少年2人は顔を見合わせる。
「もし、絵本の道を辿るなら案内しますし」
 ここで引き下がっても収穫は無い。更なる冒険を求めてイマージナに付いていく一行を、エルヴィンは面白そうに見送った。
 食と住が保障されているホワイトガーデンに居座り続けて早1200年。実際の所、エルヴィンは相変わらず探索者だ。遺跡や未踏の地に挑み続ける内に自然と戦利品も溜り、溢れんばかりの品々の大半は彼が持ち込んだ物だったりする……敢えて口にしなかったけど。
(「ま、遺跡の利用権はそこを探索する者に帰する。トレジャーハンター心得の基本だ、な」)
 治安が良いホワイトガーデンなら、冒険の収穫の保管も最適という訳か。
 偶に物珍しさでやって来る人間に、泥棒避けの噂を撒く為に『魔王』話をするようになって幾星霜――だが、今回ばかりはエルヴィンも気になっていた。
 『当事者』であるサクラコが素知らぬ顔でパーティに加わっていた事に。
「やれやれ」
 小さく溜息を吐く。ここ数十年、火を絶やさず煮込み続けた大鍋のスープを飲み干し、エルヴィンは地下室を後にした。

「まあ、研究を」
「この頃は冒険らしい冒険もありませんもの。医術士として色々と研究や資料集めなんかを……結局、アビリティを使うのが一番手っ取りばやいのですよねぇ」
 その頃のルミリアは――100年ぶりのお喋りを満喫していた。

 野を越え村越え滝越えて。絵本に即した道程を往く。
「ここが、魔王様が通過時に破壊した崖の跡、通称ディアボロスクリフですし」
「……本当なのか、それ」
「でも、僕の実家の近くに似たような谷があるし」
 イマージナの誇張気味のガイドにソワレは胡散臭げだが、イオリは目を輝かせている。
「おや、それは禁断の書ですね? 開けてしまいましたか……」
 鬱蒼とした森を歩いていた時だった。突然、声を掛けてきたのは青い鶏冠のチキンレッグ。
「という事は、あなた方は勇者なんですね。それは、選ばれた人にしか開けられない本なんです」
「……1200年ぶりだよな、かれこれ」
 謎の物知りおじさんを装うとした氷剣探求者・ニール(a66528)だが、ソワレはバッチリ覚えていたり。
「ハハ、1200年ですか。思えば遠くへ来たものです……で、そちらの絵本ですが」
 強引に軌道修正するニール。
「来たる日に倒すべき相手が記されている筈」
「まさか、魔王の事?」
「そう。その日に備えて、修行を積まねばなりませんね」
(「まあ、ルミリアさんも長いこと光の海に落ちっぱなしだから、多分、帰って来た頃には忘れてるでしょう」)
 実際は件の絵本を見掛け1つからかってみようとわざわざ追い掛けてきたのが、本当の所。勿論ニールはおくびにも出さない。
「そうそう、忘れてはいけません。冒険を始めるには、装備が必要です」
 そう言って、剣や盾を売り付けようとしたが。
「俺は医術士だから両手杖だし」
「僕、牙狩人だし……」
 生憎、使える装備と違っていたようだ。
「では、行くのです! そして力を蓄えるのです! 魔王が復活するその日までに!!」
「はい!」
「イオリ!」
 勇んで駆けていく少年を慌てて追いかけるソワレ。だから、後の3人が意味ありげに目配せしたのは知る由もなく。
「子供って面白いですねー、すぐに騙されます。まあ、すぐに飽きるでしょう」
 勿論、3人とも最後まで見物する気満々である。

 ここは風琴の庭園――花咲き乱れる魔王の憩いの場。そよ風が吹く度に、妙なる音が聞こえてくる。
「あら、今日はお客様が多い日ですね」
 複数の足音にフアラが立ち上がる暇があればこそ、空中庭園へ雪崩れ込む冒険者達!
「えーっ!!」
 一斉に驚きの声が上がった。
「こ、こんにちは……」
 懐かしい団員達の顔ぶれに、ルミリアも思わず立ち上がる。
「えっと、100年ぶりになるのでしょうか? その……ごめんなさい〜」
 何というタイミング! てへっと舌を出して誤魔化し笑うルミリアへ、サクラコはズビシィッと指を突き付ける。
「友よ、震えるな! 瞳こらせよ、今こそ復活の時! あれこそは1200年前、このサクラコを瀕死の重傷までに追い詰めた魔王ルミリア!!」
「はい?」
 キョトンとなるルミリア。まあ、当然の反応だろう……というか、ノリで言っていい時とマズイ時がある。
「先手必勝! 覚悟〜!」
「イオリ、ちょっと待――」
 ソワレが止める暇があればこそ、すっかりニールに乗せられたイオリが貫き通す矢を放つ!
「きゃぁっ!」
 首を竦めて一撃を避けたルミリアは咄嗟に慈悲の聖槍でカウンター、ってそれもどーよ。
「この強さ! まさにまぉ…」
 冒険者歴1000年を超える医術士と駆け出しの牙狩人、その勝負は火を見るより明らか。
(「まさか復活していたとは……頑張るのですよ。勇者は負けてこそ強くなっていきます」)
 結局物陰からの傍観を決め込んだニールの前で、イオリは敢え無くダウンした。

「うーん……」
「気が付いたか?」
 命の抱擁で目覚めたイオリの顔を覗き、ソワレは苦笑を浮かべた。
「大丈夫か?」
「……ま、魔王は!」
 慌てて飛び起きたイオリだが。
「魔王様との涙の再会ですし〜」
「いや〜、ホント随分久しぶりですねぇ。だから、ぼーっとする時は足に縄を付けておく様にって言ったじゃないですか」
 魔王ことルミリアを中心に、わきゃわきゃとガールズトーク炸裂の光景に唖然呆然。
「何で……?」
「へ? 普通に仲良しですが何か?」
 サクラコのあっさりした言葉に少年はがっくりと脱力する。
「あの人も冒険者なんだよ。『魔王』は愛称らしい」
 一足早く事情を掴んだソワレが説明するが、イオリは中々納得しない。
「そんな……僕の実家の近くに、魔王に壊された谷があるのに」
「もしかして谷を崩して鬼の軍の足止めをした時の話かしら」
「さっきも、そこの女の人に魔王が崩した崖を教えて貰ったのに」
「……イマージナ様?」
「か、感動の再会の余韻で、そんな昔の事は忘れましたしー」
「青い鶏冠のチキンレッグさんが、僕達は魔王を倒す勇者だって」
(「……さあ、旅に出ようかな。ほんの100年くらい」)
 見なかった事にして、トンズラしようとしたニールだが。
「団長、久し振り」
「エルヴィン様! それから……ニール様も」
 心配になって追ってきたエルヴィンに捕まり、一緒に顔を出す羽目になっている。
「留守番の間におはぎを極める修行もしてましたし。味わってみて御覧なさいまし」
 からかわれたと悟り流石にお怒ったイオリだけど、そこは花より団子。イマージナ特製のおはぎで、怒りの矛先は収まった模様。
「皆、僕の御先祖を知ってるんだ!」
 今は彼らも憧れの御先祖の知人と聞いて感動している。
 こうして、この世に8冊しかない絵本が起こした騒動はひとまず収束の方向へ。
「何だかんだで平和ですわね〜。この平和が数万年続きますように〜♪」

「実はルミリアさんがぼーっとしている間にキマイラの大軍勢が世界の半分占領しちゃってですね」
「何ですって!?」
「今、インフィニティマインドを神槍の根元に駐留させて、攻勢を凌いでいるんです」
「こ、こうしてはいられませんわー!」
 懲りないサクラコの嘘八百が巻き起こすひと騒動は、また別の話となる。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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聖骸探索者・ルミリア(a18506)  2009年12月30日 11時  通報
皆様お疲れ様でした〜☆ 個人的にはエルヴィンさまの【数10年煮込み続けたスープ】が気になってみたり(笑)