≪星屑隊≫夏だッ! 海だッ!



<オープニング>


 うだるような暑さが続く中、星屑隊団長である銀星の射撃手・ユイ(a00086)は、ふと、旅団の仲間たちに声をかけた。
「ねぇ、皆で遊びに行かない?」
 行かない? と聞いたはいいが、さて何処へ。思っていると、活発な仲間たちは口々に声をあげた。
「スイカ割り!」
「海!」
「水着!」
「くらげ!(ぇ?)」
「百物語……」
 ポツリ唱えた一人の発言に、皆凍る。
「え……っと………皆で、海に行こうか♪」
 色々と言葉を捜し、ユイはちょっぴり引き攣った微笑で、告げる。
 賛成の二文字が即座に上がったのは、いう間でもなく。

「海、楽しみね」
 賛成決議からほんの一時後。睡夢想姫・サザ(a90015)はテーブルに頬杖つきながら、微笑んだ。
「うん。これから海に行ったら何をするか、皆で相談しなきゃ」
 サザさんもね〜。と、パタパタ駆けていったユイを見送り、サザはやっぱり、微笑むのであった。

マスター:聖京 紹介ページ
夏です。海へ行きましょう。ということしか、現在は決まっておりません。
皆さんで相談して、何を持参し、どんなことをするのかを決めてください。

注意:なお、聖は基本的に怪談話は好きですので、プレイングに書いてあったら、こっそり描写してしまうかもしれません。

参加者
銀星の射撃手・ユイ(a00086)
狂犬・ジェイド(a00565)
翳る紅月・リィズ(a01358)
曼珠沙華・フィー(a02072)
明華・リンネ(a02220)
儚い光の軌跡・リア(a03550)
ねこまっしぐら・ユギ(a04644)
我流影殺法忍者・ショウシンザン(a05765)
ぽわふかのおふとん・ティフェル(a05986)
黒き翼の使者・シェローラ(a06798)
NPC:快活陽姫・サザ(a90015)



<リプレイ>

●到着。
「いや〜アツはナツいね〜」
 ほのぼのまったりと何か違う発言をした銀星の射撃手・ユイ(a00086)は、涼しげな装いに身を包んでそこにいた。
「うーみーはひろいーなーおおきーいーなー」
 そう、海。
 超棒読みで口ずさんでいる刃の験者・ジェイド(a00565)の姿があったりするのはさておき。
 さらに彼が夜に待つ怪談用に徹夜でランドアース中の怪談を探し、今現在寝不足なのもさておき。
 星屑隊一行は、大海を前にはしゃいでいた。
「わーい♪ 夏です夏です! 夏と言ったら海ですよー。いっぱいいっぱい楽しむですよー♪」
 中でも一番楽しそうなのは、終焉へ往く儚き光・リア(a03550)。
 実は彼女、海は初めてなのだ。だから、だろうか。微笑ましいほどであるのは。
「フェルたんーっ、暑いねぇ♪」
 ぎゅむぅっとお布団族族長・ティフェル(a05986)を抱き締めたと思ったら、夢幻ノ空ヲ切リ裂ク漆蒼・リンネ(a02220)はその手を引いて、海へとダッシュ。
 それを見て、
「あっ! リンネばっかりずるいのですっ!」
 餞・フィー(a02072)も後を追いかける。
「皆ぁ、あんまり遠くへ行かないようにねー?」
「だんちょ。聞こえてない……」
 普段ヘタレでもやる時はしっかりやる団長、ユイ。けれど、彼の言葉も、海の魅力の前では届くことなく……。肩をぽむりとしながら、死で穢れた紅月の華・リィズ(a01358)は静かに首を振るのであった。
「あれ? ユギさんは行かないの?」
「わたしはこのメンバーだとどっちかというとお姉さんだから、いろいろ世話を焼こうかなって」
 冷たい飲み物準備したり、準備体操させたり、荷物番したり……。指折り数えるねこうさ・ユギ(a04644)を見て、睡夢想姫・サザ(a90015)はくすりと笑った。
「ユギさんも遊んでらっしゃいな。ほら、私の方がお姉さんだし」
 1歳違いですが。
 そんなサザに、ユギは一瞬ほぇっとしてから、にぱっと笑う。
「実は、うずうずしてたのだよっ」
 飛び出していった姿は他の少女たちと何ら変わらない。そう。今この場では、無理にお姉さんになる必要など、ないのだ。

●と、いうわけで。
「皆でスイカ割りですね。折角ですからスイカに当たりを入れました。当たりを引いた方にはもれなく、団長の人形をプレゼント!」
「僕!?」
 沢山のスイカをごろごろと転がし、ニッコリ笑顔で言うと。黒き翼の使者・シェローラ(a06798)は商品、ユイ人形を掲げた。
 つぶらな瞳が愛らしく彼らしい。
「はいはい〜。私一番にやりたいですっ♪」
 水色ワンピの水着姿で跳ねながら、リアは棒を構える。
 真白な布で目隠しセット完了。
 ぐるりぐるりと回った後、右へ左へ目指すはスイカ。
「そこだーっ!」
 誰かの声。リアの表情が変わる。
「居合斬り(奥義)ッ!!」
 マチナサイ。
 砂浜を裂くような勢いでスイカを叩き切ったリア。しかし、それはカラッポ。
「はれ? もしかしてハズレ引いちゃいました?」
 目隠しを外してがっかりするリアの後ろから、今度は別の声が動き出した。
 リンネだ。目隠しをして生き生きと棒を握り締めると、真っ黒笑顔を浮かべながら、構える。
「スイカはどこだー?」
 迷うことなく向かう先には、フィー。
「あっれー? ここかなぁ?」
「何でボク狙ってるんですかっ!」 
 笑顔が語る。問答無用と。
 始まる鬼ごっこ。黒笑顔で追うリンネと、泣きダッシュで逃げるフィーの結末は……。
「…ちっ、ちょこまかと素早いスイカめぇっ!」
 華麗なる衝撃(改)ッ!!
「ひにゃぁあああっ!!」
 ぱんぱかぱーん!
 スイカ(ハズレ)もろとも決めた一撃に、リンネは目隠しをとって爽やかな笑顔を作るのであった。
「次は私だよっ♪」
 嬉々としたユギが構えたのは、鋼糸。
「いや、それは危ないから」
 早々にジェイドの手によって強制退場させられてしまうのであった。
 最後に棒を握ったのは、ティフェル。よろめきながらもスイカへ進み、そして、渾身の一撃。
「えいッ!」
 ぱかんっ。目隠しを取ったティフェルの目の前には、真っ赤なスイカが。
 どうやら、当たりを引いたようだ。シェローラの手から、商品のユイ人形が手渡される。
「やったねフェルたん♪」
「やったです〜リンネたん♪」
 はしゃぐ姿は微笑ましく、熱い。
 そんな彼女等を遠巻きに眺めながら、ユイは浜辺で貝殻を拾っていた。
 一夏の思い出のためと、可愛いあの子のために。
「らぶらぶな人たちの邪魔しないように、気をつけなきゃね〜」
 とか何とか言っている自分が一人でらぶらぶ状態なのは、本人、気付いていないようだ。

●クラゲ狩り。
「皆、楽しそうですね」
 浜辺から離れて一人自前の釣竿を手にしているのは、無の中の稀有・ショウシンザン(a05765)。場所が良いのか腕が良いのか。魚だけでなく、貝やら海藻やら得体の知れない生物まで、なかなか大量である。
 そんなショウシンザンから離れた所では、皆がクラゲ狩りに勤しんでいた。
 網と籠とを手に海に浸かるユギの傍らには、ちゃっかり武器を手にしたシェローラが。
「クラゲ食べるんですか?」
「ていうか、クラゲあんまりいないね」
 元々そうわんさかいるものでもないのだが、ちょっぴりがっかりかもしれない。
 と、浅瀬でパシャパシャとクラゲを探す姿を、見つける。
「くらげ〜くらげ〜かむばっく〜♪」
 ティフェルだ。突然消えてしまった某クラゲに思いを馳せながら、沖へ、沖へ、沖へ……ざぶん。
「「あ」」
 同時にあがる声。すぐさまわぷっと顔を出したティフェルだが、うまく泳ぐことが出来ず、どんどん沈んでいく。
「リィズたん〜っ沈む沈む〜っ」
 ばしゃばしゃと水を跳ねさせながら、力の限り呼ぶ。
 そんな彼女の声に、迷わず海へと向かう影が、一つ。
 言うまでもない。リィズだ。本来なら気絶してから助けた方がいいのだろう云々言ってはいたが、溺れた者がティフェルとなれば、そんな認識は覆される。
「ティフェル、掴まれ!」
 差し伸べられる手。虚空にすがっていた手のひらが、それをしっかりと捕まえた。
 引き寄せ、抱き締め、抱え上げると、ティフェルが大きく咳き込んだ。
 そうしてから、リィズにしがみ付く。
「大丈夫か?」
「はいです……助けてくれるって、信じてました〜」
 にこり。ちょっとだけぐったりとしたような微笑に、リィズは安堵したように笑みを返すのであった。

●お待ちかねの、夜。
「皆で怪談話、だな」
 待ってましたといわんばかりに邪笑を浮かべるジェイドは、闇に溶け込んでいてかなり怪しい。
「ほぇぇっ…!? 本当にやるのですかー!?」
 泣き出しそうなリアの後ろでは、布団に蹲ってすでに泣いているティフェルの姿があったり。
 さらにそんなティフェルに抱きついて耳を塞いでいるフィーの姿があったり。
「では私から行きましょうか。…あれは雨が降りしきる日のことでした……」
 怖がる者楽しむ者それぞれを見渡してから、シェローラはゆっくりと語りだす。そうして、辺りは冷たい空気に包まれていくのであった……。
「ん〜全然怖くないけど…僕の金縛り体験談を」
 ひとしきり話しが通った頃。ユイは頬を掻きながら、神妙な面持ちで語りだした。
 夜中にふと目が覚めて。…体が動かない。目も開けない。
 …何だか寒気がして…無理やり目を開いた。
 そしたら…辺りが部屋じゃなくて…真っ暗。
 その暗闇の中…誰だか知らない女の子がボールをついて遊んでた。
 ふいに、その子がこっちを見て…笑った。
 …人じゃありえない顔で、ニタリと。
 その顔が、急に視界一杯に広がって……
「っきゃああああっっ!!」
 びくぅっっ!
 突然上がった悲鳴に連動して、怖がり組が一塊になりながら悲鳴をあげる。
 そんな彼女等を見て怖がるショウシンザン。なんだか微妙な図、完成。
「………叫ぶ所、よね?」
 にっこりと笑ったのは、最初の悲鳴の主。サザだった。
「こ、怖がらせるなんて酷いですよ〜」
「うふふ〜。ほら、盛り上げないと♪」
「ふ、ふふふ……」
 部屋の隅から笑い声。一斉に振り返った先には、小刻みに肩を震わせるリンネが。
「……リンネさん…?」
「フフフ…血みどろでも首なし幽霊でもなんでもダイカンゲー☆」
 あはははは。
 サザの悲鳴に吹っ切れたのか。リンネ崩壊。
「ふむ、そういえばここら辺って、幽霊による行方不明者が結構あるって話だぞ。特に、黒い服の男がいなくなるとか」
 そんなリンネはさておきと、ポツリと漏らしたのはリィズ。それを受け、ジェイドが続ける。
「あぁ、それはあれだ。この辺に遊びにきたセイレーンが、黒っぽい服の男に殺されたため、その幽霊が祟ってるとか何とか……と、このガイドブックにはあるな」
「え、マジか……まあ所詮迷信だよな」
 ひらりと薄手の本を示すジェイドに爽笑してみるも、皆絶句状態。
 肩をすくめると、リィズは、す、と立ち上がった。
「ちょっとトイレにいってくる」
 ぺたぺたぺた……しん……。
「…蝋燭が短くなってきたな。取ってくる」
 ぱたぱたぱた……しん……。
 二人の姿がなくなり、先ほど以上に静かな空気が流れる。
 そのまま、話すに話せず沈黙が過ぎる。5分…10分…15分……。
「ねぇ…ジェイドさん、遅くないかなぁ…?」
「リィズたんも……」
 ぽつり、ぽつり。ユギとティフェルが、同時に呟いた。
 確かに遅い。遅すぎる。なまじあんな話を聞いた後だ。余計に、心配である。
「ジェイドさん、黒っぽいから幽霊に祟られたですか!?」
「……皆で、探しに行きましょう」
 フィーの言葉に提案したシェローラ。皆、頷いた。
 そのころ。
 当の2人は、皆から離れた草陰で、ぼんやりと待機していた。
 察する者は察するだろう。そう、この海の噂も、ジェイドの怪談も、果ては彼の持っていたガイドブックさえ、偽物なのだ。
 全ては皆をこの場所へ誘い出す為の罠である。
「…きたぞ」
 ニヤリ。邪笑とともにアビスフィールドを展開するリィズ。ジェイドもまた、ミストフィールドをかけ、辺りから視界を奪う。
 そして。昼間の内に仕掛けておいたこんにゃくやらクラゲやら怪しいオブジェクトが立ち並ぶその場所へ、彼等は、やってきた。
「ジェイドさん〜リィズさん〜って、わわ…な、何これ!?」
 ユイがこんにゃくに引っかかった。作戦開始だ!
 草陰から飛び出すリィズ! しかし霧と闇の交わる中から飛び出した白い影にすかさず飛び出したのは飛燕連撃(奥義)。
 錯乱したフィーは誰彼構わず攻撃を仕掛ける!
「ひにゃあああっ!」
「きゃあああっ!」
 ばきっ(殴った)ざしゅっ(刺した)ずざざざっ(コケた)ぷきゅ(踏んだ)。
「わあああっ!」
「ぎゃあああっ!」
 どかっ(殴った)ずばばっ(斬った)がらがら(壊れた)ざっぱーん(落ちた)。
 何かが海へ落ちたのをきっかけに、騒乱は収まった。
「リィズた――んッ!」
「はわわっリィズ様――ッ!」
 そう、落ちたのは、錯乱攻撃を一身に受けたリィズ。
 ジェイドは攻撃をハイドインシャドウで身を潜めていたため、ちゃっかり難を逃れていたり。
 皆で駆け寄って覗き込めば、ぜーはーと息をついて岩に捕まっているリィズの姿があった。
「何でこうなるんだ……」
 錯乱とは、恐ろしいものである。

●締め。
「いっくよー」
 キリキリと弓を引き絞り、ユイはナパームアローを海へと放った。
 どぱんっ、と派手な音と爆発が、辺りに飛沫を上げる。
 求めているものとイメージは違うが、闇の中に散った飛沫が、カンテラやらの灯りを受けてキラキラと輝く様は、なかなかに幻想的であった。
「綺麗ねぇ……」
 ほの灯りに瞳を細め、サザは微笑んでいた。
「来て良かったなぁ」
 ボロボロになってはいるが、フィーの笑みは満面だ。
「なかなかに、面白かったな」
 ユイの手伝いでナパームアローを放ちつつ、リィズも呟く。
「毎日見られたら楽しいのに……です〜」
 物寂しげなティフェル。けれど、瞳は幸せそうだった。
「…冒険者の技でもほっとする瞬間、作れるんだなぁ…」
 ほぅっと感嘆しながら、リンネは口元をほころばせる。
「……これ、昼間拾ったの」
 そんな、彼等の後ろで。少し恥ずかしそうにジェイドに貝を渡すユギ。
「ん、ありがとな……」
 綺麗な色のそれを受け取って、彼女の頭をなでるジェイド。
「……暖かいですね」
 微笑ましげに見つめ、シェローラは潮風に軽く瞳を伏せる。
「えぇ、とても……」
 ぱぁんっ。ショウシンザンの目の前で、また、光が弾けた。
「また皆で…来ましょうね」
 リアの言葉は、小さく揺らいで潮風に消える。
 けれど、みなの心には、きっと、同じ思いがあることだろう。
 それは一夏の思い出。刻まれたのは、賑やかで暖かな、安らぎであった……。


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