＜リプレイ＞
●海風と太陽と
「海ー！」
「れっつパライ〜ソ♪ なのにゃ〜」
海を見るなり飛び出して行くルシエラ（a03407）とミルミナ（a10750）。
「夏と言ったら海。見目麗しい女性の水着。これを見ずして何を見る、触らずして何を触るかッ！」
「そうだ！ 夏だ！ 海だ！ ナンパだーっ！！」
その後を、ガンツ（a00288）とカナタ（a08780）が雄叫びをあげてポーズ。更にその後ろを走っていたアールタラ（a10556）が盛大にコケて。
「皆、元気ですわね」
「そうですね。私達はのんびりさせて貰いますかね」
ルナ（a03236）に微笑み返しつつ、横にいるカガリ（a01401）を覗き込むタケマル（a00447）。
それに頷く彼女はどことなく挙動不審。実は海が苦手だったりするのだ！
そして、それらを見つめるルビーナ（a00172）の邪な笑み。
これから起こる惨劇に想いを馳せているようだった（ぇ）。
●夏はあばんちゅーる？
「スイカ〜。甘くて美味しいスイカはいらんかね〜」
「声が小さいぞ！」
スイカモズー（a02064）の厳しいツッコミに、手伝わされているクロトの悲鳴。
「美味しい卵料理だよ〜！」
そして、砂浜に響くジョッシュ（a08992）の声。
その横には『たまごの王様』と書かれた幟。小さな屋台の中でリタ（a00261）がフライパンを振るっていて。
更にその横に立つマッチョなボディが美しい彫像。首には『苦悩するマッチョ』と言うプレート。
「この像ヘンー！」
「気味悪がるではないぞ！ マッチョこそ！ この世の美なり！」
買い物に来た子供達に笑われ、彫像がクワッと目を剥き真理を説く。
おや、何かと思えばバレット（a03164）さんだったんですね（ぇ）。
そんな客寄せが功を奏してか、屋台に人々が集まり夏の海に華を添える。
ちなみに、材料の輸送は本職者と言う事でシギルに押し付け……もとい、任されたらしい。
そのシギルと言えば……。
「うーん……流石に悪い事をしたか」
そう苦笑するシュウ（a00014）の目線の先。
「シギル様！ わたくしめと一緒にトマトの如く赤い情熱的なアバンチュールを……」
「やめんか気色悪い！ ……って言うかその手に持ってるものは何だあーッ！」
「トマトパンツなのだ♪ シギルちん、履くのだ☆」
「断る！」
「お断りはお断りにございます！」
「拒否権はないのだ！」
「離せーっ！ ぅわーっ！ どこ触ってやがるっ！」
「……何やってるの。ウチのだんちょーは」
「……襲ってるんだろ」
「裸祭り？ 面白そう〜」
ポチョムキン（a01214）とロザリンド（a00198）、シギルのやり取りを見てポカーンとするヘリオトロープ（a00944）にエル（a09448）の冷静なツッコミ。
パラナ（a11184）と言えば、何かのお祭りと勘違いしているらしい。
「そこだ！ いけ！」
「大変だねぇ……」
「がんばれ……」
煽るライド（a03082）に、まったり目線のケイ（a05527）。その後ろから覗き込むクウォーツ（a00767）は完全に傍観モード。
「シ、シギルさ……」
「ああ、アリーシャは危ないから」
がーん☆ とショックを受けて助けに入ろうとするアリーシャ（a04067）をレネ（a01876）が制止するも、彼女は何だか楽しそうで。
「ぼ、僕がシギル君を守……」
「声が小さい！」
続いて止めに入ろうとしたクロトもまた、スイカモズーのツッコミでバッサリと斬り捨てられる。
「ほら。日焼け止めも塗ってあげるのだ♪」
「はい！ わたくしめのボディーを使って丹念に！」
「ぎゃああっ！ 止さんかーっ！」
「頼まれれば助けてあげなくも無いけど……」
「ま、約束しちゃったし……」
苦笑交じりに言うエイシェル（a05007）にパオラ（a02342）が遠い目をして溜息１つ。
「うわ、寒っ！ しつこいのは嫌われるわよ！」
パオラの暴言……もとい、紅蓮の咆哮で凍りつく仲間達。
「ほらほら、皆いい加減に……」
そこにすかさず割って入るシュウ。
「ちょっと、危な……！」
「男色は抹殺ー！！」
「あ」
「あ？」
ばきょっ！
めこっ！
スッパーーン☆
パオラのタックル、ガンツの膝蹴り、エイシェルのハリセンがポチョムキンとロザリンドに同時にクリーンヒット。
爽やかな笑顔で海に消えて行く２人。それに巻き込まれたシュウも一緒に吹っ飛ばされて……。
「……こうして平和は守られたのじゃった」
そして、ルビーナは予想通りの事態に１人笑みを浮かべるのだった（ぇ）。
●それぞれの海
「お疲れさん。重傷なのに手伝わせて悪かったね」
「いや、それはいいけど。抱擁、抱擁だね。深い意味は無いんだけど、抱擁だよね？」
屋台は好評で、早々に店を畳む事となったリタ達。
報酬代わりに命の抱擁でマッサージすると言う彼女の申し出に狼狽するジョッシュ。
いや、嬉しい。嬉しいんだけどそんな……。
「若いのぅ……」
そんな２人を、バレットがポージングしながら眺めて。
「わーい！ お水気持ちいい〜♪」
一方で派手な水音を立てて泳いでいるパラナ。
「お嬢さん！ 私と一緒に……へぶぅっ！」
そして、カナタは依然ナンパ連敗中のようである。
「アヤノさん、グラマーだねぇ？ 水着似合ってるよ！」
「あ。いや、私の場合は太ってるだけで……」
突然ルシエラにそう声をかけられて、頬を染めるアヤノ。
「自信持ちなって」
笑うリシェール（a00788）に、彼女がますます赤面して。
「ちょっと、日焼け止め塗るの手伝っておくれよ」
そう言って寝そべるケイの大胆な水着、豊満なバスト。
「任せろっ！」
悪戯心と欲望を傾けて彼女に迫るガンツ。気付いているのかいないのか。ケイは任せるがまま。
ここぞとばかりに触りまくる彼にエイシェルのハリセンがジャストミート。
あわや海の藻屑に……と思った次の瞬間。
懲りずに這い上がって来るガンツ。
そんな華やかな女性陣＋αが集まる一角を見て溜息をつくカガリ。
「……どうかしました？」
「ううん。何でもないん」
微笑むタケマルに、彼女は慌てて首を振って。
大好きな人と一緒。楽しまなくちゃと思いつつ、自分の体型を考えるとやっぱり憂鬱だ。
「カガリさんは、そのままで良いんですよ？」
突然の彼の声に、首を傾げるカガリ。足りない言葉だが、優しさは伝わって来る。
「あ、いや……海で遊びましょうか？」
少し照れたのか頬を掻くタケマルに、彼女は微笑みを向けた。
仲良く海へ向かう友人達を見つけて、微笑むルナ。
その隣にはわんこ宜しく繋がれている……いやいや。縄のついた浮き輪を装着しているクロトの姿。
「普段のルナさんも綺麗だけど……水着は良いねえ」
控えめだが、少し大胆な水着姿のルナを見つめてしみじみと言う彼。
微妙にズレた賛辞。それでも褒めてくれないよりはマシ、と溜息をついて。
「クロトさん、カキ氷如何ですか？」
「いいね。僕がおごるよ♪」
微笑み合って歩き出す２人。もちろん浮き輪に繋がれたまま（ぇ）。
「ん。この視線は……誰だっけ？」
と思ったら、立ち止まりキョロキョロと辺りを伺うクロト。
そこから少し離れた場所にいる愛らしい女の子３人組……と言ったらレジス（a09204）は泣くかもしれないが。
「レジスさん、泳がないのにゃ？」
「え？ あの僕は……はわぁ！？」
彼の返答を聞く前に、海に突き落とすミルミナ。
「な、何するのー！？」
「きれいな海で泳ぐのは気持ちいいのにゃ！」
波間から抗議するレジスに、えへん！ と胸を張る彼女。
その横で、ひたすら一点を見つめているルゥ（a08433）。
２人は、最近元気がなかったルゥを気遣って海に連れて来たのだが……。
「ああっ。クロトさん素敵〜ｖ 眼福ですーｖ」
海どころか、一緒にいる２人すら目に入っていないらしい。
「ほゎ……シギルさんも眩しいですーｖ」
……何か、全然元気みたいですが（ぇ）。
「ルゥさんもいつまでボンヤリしてるにゃ！ 泳がないなら食い倒れにゃよ！」
まだ精神があっち側にいるルゥと、濡れ鼠のレジスをズルズルと連行して行くミルミナ。
いつまでも続く３人のじゃれ合い。
「アルシェンドちゃん？ どしたの？」
ぼーっとしているアルシェンド（a01411）に、首を傾げるミュリン。
彼女に見とれていたなんて言えなくて慌てて首を振り、水から上がって来ようとする彼女を呼び止めてサンダルを履かせる。
「海には危険な生き物も多いと言う。砂浜も熱いし気をつけた方がいい。まあ、いざとなればおぶって……い、いや、やましい事は何も」
彼女の身体を気遣いつつ自爆する彼に、ミュリンは無邪気な笑みを返して。
「兄様ったら……」
浜辺のパラソルの下。そんな２人を眺めて溜息をつくアーシア（a01410）。それを、シギルがニヤニヤしながら見ていて。
「あ……シギルさん。この間は生意気な事を言ってすみませんでした」
「何の話だ？」
「男の価値の話です」
「ああ。別に謝る事じゃないだろ」
「私……ちょっと事情があって、人を好きになるのって何か怖いんですよね。だから、人を好きになるって凄い事だと思うんですよー」
こんな事を言ってどうするんだろう、と思いつつ。言葉は止まらない。
「だから、男の価値を上げる為にも……誰か好きになったら、諦めないで頑張って下さいね」
「……お前が俺をどういう人間と思ってるか分からんが。俺はそんなにいい人間じゃないし、フラれる方が多いんだぜ？」
「シギルー！ 遊んで！！」
「ビーチバレーするのだ♪」
苦笑交じりの彼から出た言葉に驚いて問い返そうとしたアーシアだったが、飛び込んで来たアールタラとロザリンドの声で遮られて。
「いやー。大変だったな、シギル」
彼女達を伴ってやって来たのは海水も滴るいい男……と言う割には満身創痍なシュウ。
「まあ、何だ。これでも食べて元気出せ」
お前も大変だな、と苦笑するシギルに、苦笑を返し。焼きもろこしと焼きイカを手渡して。
「そこ。ホモって無いでこっちに来るのじゃ」
「「誰がホモってるだ！！」」
そこに降って来たルビーナのツッコミに同時に返す２人。
それを気にする事なく、彼女は突然ワンピースを脱ぎ捨て、下に着ていたヒョウ柄ビキニを見せる。
「これ、似合うかぇ？ シギルの意見を聞きたいのじゃ♪」
「ん？ 悪くはないと思うが……」
「何じゃ。文句がありそうじゃな。では、選べ！」
言うや否や、水着が売っている屋台に引きずって行く彼女。
シギルが選んで着たのは、黒のホルターネックのキャミソールビキニ。
「随分とシックな選定じゃの」
「お前はこう言う方が似合う。宝石ってのは黒い台座に置いとくと映えるもんだ」
宝石と言うのが自分の髪と瞳を指しているのだと気がついて、少し赤くなる。
「……おぬし、やはり天性のタラシじゃな」
そう言うルビーナに、エイシェルとパオラが肩を竦めて。
「タラシはともかく、男にまで言い寄られるのはどうなのよ」
「全くね……今回の事は高くつくわよ？」
「ああ、利子つけて返す」
「あ、そう。……期待しないで待ってるけどね」
「そうだな。まずは身体で返すってのはどうだ？」
そっけないパオラにニヤリと笑うシギル。
それに、２人はにっこりと微笑んで……そして容赦なく蹴りを入れて海に突き落とす。
悪びれる様子もなくそのまま泳ぎ出した彼に、彼女達は苦笑するのみで。
「……泳ぎ上手ですね、シギルさん」
恥ずかしそうに寄って来た、レネに飾って貰った白いハイビスカスが可愛いアリーシャにシギルが微笑み返す。
「ああ。生まれたトコが急流の海に囲まれててな。子供の頃溺れながら覚えたんだ」
「あの……少し泳ぎを教えてくれませんか？」
意外な事実に冷や汗を流しつつもお願いする彼女に、彼は頷いて。
「そっか、溺れたか……。俺の通り名は波浪神ってあるんだよな。俺は海での守り神なんだぜ？」
この先溺れないマジナイを……と言いつつ近付くライド。その時シギルの頭に、クラゲつきのボールがヒットして。
「あ。すみません」
そこに聞こえて来たのは、アズヴァルの申し訳なさそうな声。
沈むシギルに、慌てるアリーシャと合掌するライド。
その横で、嬉しそうに浮き輪ごと沖に流されているルシエラを、レネが慌てて引き戻して……。
海でそんな騒ぎが起きている頃。
岩場の上で１人釣りをするウルフェナイト（a04043）。
突然背中を押され、振り返ると友人達……バケツを覗き込むルヴィン（a03635）の背に隠れるミィミー（a00562）が見えて。
「……何か用か？」
「いや。何か黄昏てるみたいだったからさ」
軽口を叩き合うルヴィンとウルフ。ふと気がつくと、ミィミーの姿が消えていて……。
「……行ってやれよ」
その言葉に頷いて、走り出す友人を見送って溜息一つ。
ウルフは手にしたペンダントを、思いきり投げる。
それは、陽に輝き……そして海へと消えて行った。
「スイカおいしい！！」
「メロンも美味しいよ！」
スイカとベリーメロンに大喜びのアールタラとパラナ。
ビーチバレーにスイカ＆メロン割り。
何故かスイカと称してスイカモズーとクロト、シギルの頭がリシェールの手刀で割られそうになったりしたが（ぇ）、まだまだ夏の風物詩を満喫する冒険者達。
「も、もう動けないのじゃ……」
猛暑の中、ビーチバレーに付き合わされてダウン寸前のクウォーツに苦笑を向けるヘリオ。
「リディ……じゃない、ヘリオ。カキ氷食うか？」
「うん。クウォも食べな」
エルからカキ氷を受け取った彼女は、最早腕も上がらないクウォーツの口にも運んでやって。
「カキ氷、父さんが好きだったよな……」
「そうだっけ？」
記憶を落としてしまった妹。
けれど、兄妹の時間はこれから取り戻せるから……。
「ああ、これから色々教えてやるよ」
礼を言うヘリオにエルは笑って、カキ氷を口に運んだ。
「こんな時間に水に入ってたら風邪引くぜ。お嬢さん」
夕暮れ時。一人海の中に佇むリシェールに呼びかける声。
「……お前ってタチ悪いよな」
振り返って苦笑する彼女に、シギルはいつもの笑みを浮かべていて。
……誰にでも優しくできるのは、きっと誰も特別じゃないから。
でも、そういう奴だと判っても不思議と嫌いじゃない。
むしろ……。
「ほら、戻るぞ。歩けるか？」
差し出される手。見下ろす紅い瞳。
それに……理由もなく嬉しさと恐怖を覚えていた。
少し離れた岩場。海を眺めているミィミー頬に伝う涙。
彼女の脳裏に過ぎる、海で死んだ両親の姿。
その肩にふわりかかるタオル。後ろから抱きすくめられてふと我に返る。
「ミィミー……。心配したぞ」
「な、なによ？ 別に泣いてなんていないわよ」
「俺の前でまで無理しなくていい。俺の大事な人……無事でよかった」
「……心配かけて、ごめんね」
凍えた心まで包むようなルヴィンの抱擁。その暖かさに、彼女はそっと目を閉じた。
こうして、夏の海の１日は賑やかに終わった。
全身筋肉痛になったり、日焼けで痛む背中に泣いたり……。
それもまた、冒険者達の楽しい思い出となるだろう。
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参加者：34人
作成日：2004/08/10
得票数：恋愛1
ほのぼの12
コメディ20
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冒険結果：成功！
重傷者：なし
死亡者：なし
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