<リプレイ>
●深夜の企み事 朝と呼ぶには早く、深夜と呼ぶには遅い……そんな時間。場所は『巨人の足』と呼ばれる荒地。上から見ると巨大なヒトの足跡のように見えることからそう呼ばれている場所である。そこに数人の人影があった。 「今日こそ奴らに一泡吹かせてやるぞ! 」 「おーっ! 」 「声が大きい、聞きつけられたらどうする!? 」 「ぉー」 「ふふふ、しかし奴らも我々がこんな時間から工作しているとは気付くまい」 「今の間にこの『コンダラー』とやらをどこかへ隠しちゃえばOKですね」 「その通りだ、運ぶぞ」 「ぉー」 『コンダラー』の周りに集まり運ぼうとする人影たち。しかし一向に動く気配はない。 「よし、これは無理だ!」 「……ぉ〜」 「他の方法を考えるぞ!」 「ぉー」 何時の間にか夜は明けようとしていた。
●消えたコンダラー!? 「さーて、張り切ってやってみよーか! 」 そう言ってテキパキと指示を出すのはホイッスルとメガホンを首にかけ、動きやすそうなアスリーテスウェアに身を包んだ翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)である。その姿は妙に板についている。ちなみにまだ作業が開始されていないため、ヘルメットはかぶっていない。 「ところでコンダラーはどこにあるのでしょう? 」 ナタクの名前の付いたユニフォームを着て疑問符を浮かべるドリアッドの舞踏家・エレナ(a06559)。手にはシャベル、側に手押し車が置いてある。その瞳には『破壊乙女ナタク』のユニフォームを着る者としての気負いが……感じられはしないが本人なりにやる気のようだ。 「そういや見当たらないな」 キョロキョロと見回しながら侍魂・トト(a09356)が答える。小さな身体で周囲を見る姿はさながら小動物である。……まあ思っても誰も言わないだろうが。 「あら、トトさんキョロキョロ見回す姿が可愛らしいですわね」 言った。 「かわっ……オレはちっちゃくねぇ! 」 怒った。……ちょっと照れているのは相手に邪気がないからだろうか。 「はいはい、二人とも喋ってないでまず探すよ」 三人は辺りを探し始めた。
重拳の反逆者・アルシー(a02403)は土の山を前に悩んでいた。明かに人の手が加わった山である、隣に丁度その山で埋めれそうな穴もあることだし。これは一体なんなのか。何の為に作られたのか。しかし、これをどうするかは決まっている。何故なら自分はここを整地するために来たのだから。自分は何を悩んでいたのだろう。やることが決まっていれば実行すればいいのだ。
土の山にアルシーの破鎧掌が叩き込まれた。中から現れる『コンダラー』の勇姿。
「くそぅ、『コンダラーは重いから動かせないし埋めて隠してしまえ! 作戦』は失敗だ、逃げるぞ! 」 「おー! 」 一仕事終えたアルシーの笑顔は眩しかったが残念ながら誰も見ていなかった。
●夏休み怪奇特集! 逃げ出した男子シンネット普及協会の面々。彼らは身を隠せそうな岩場まで移動し、そこで新たな作戦を練っていた。 「しかしこんなにアッサリと見破られるとはな」 「うむ、しかも隠すので精一杯で他に罠はしかけれなかったし」 「これからどうする? 」 「やはり実力行使あるのみ! 」 「そうだ! ってなんだか霧が出てきたな」 「本当だ……前が見えないくらいに……」 「う、うわぁ!? 」 「どうしたっ、ビー? 」 そして霧が晴れた後にビーの姿はなかった……。ちなみにビーは名前です、念の為。 「まずは一人……で、ござる」 紫尾の発破娘・スイシャ(a01547)の罠にかかった男子シンネット普及協会の面々は無事に作戦を遂行できるのであろうか!? ……乞うご期待。
●乙女パンチは岩砕く 「むー……暑いのぅ……」 男子シンネット普及委員会の襲撃を警戒する破道の夢見師・トトギ(a10087)が呟く。彼女は作り出した土塊の下僕の上に乗り、巨人の足をパトロールしているのだ。さらに日傘をさして夏対策はばっちりである。 「ん? 霧が出ておる一角があるが……」 「ああ、あれはスイシャが男シ会の奴を捕まえてるんだよ」 爽やかな笑顔と汗を振り撒きながら空色の風・トウキ(a00029)が答えた。 「おお、あれが『恐怖! 夏の荒地で仲間が消える!? 作戦』か」 納得して頷くトトギ。 「……そんな名前だったっけ? 」 頬を掻きながらトウキ。 「いや、今わしが名付けたんじゃが」 「…………」 「トウキさーん、そろそろいいよっ! 」 沈黙したトウキに元気と可愛らしさが一杯に詰まった声がかけられる。風睡星・クゥリッシュだ。クゥリッシュはコンダラーを引くトウキのために流石に大きな岩石は無理までも雑草や石ころをどけていた。せっせと小石をどける仕草が妙に似合っていて…… 「……可愛いな」 ラブラブカップルめ。 「あ、これもどけなきゃね。……とりゃー! 」 岩石もどけれるらしい。 「よし、俺もリシュに負けないように頑張らないとな」 トウキは決意も新たに再びコンダラーを引きはじめた。 「わしも頑張らねばの」 霧から逃げ出て来た男シ会の男の動きを影縫いの矢で封じ、トトギはにやりと笑った。手に輝くのはシンネットラケット。こうして活動可能な男シ会の数はどんどん減っていく。しかし、今まさに巨人の足に新たな人影が現れたのだった。 「男子シンネット普及協会、支援部隊参上っ!! 」 「追加でボコられに来ましたっ! 」 「今喋った奴退場! 」 「了解! 」 馬鹿が増えました。
さてその頃、少し離れた場所にもう1つのコンダラーを引くアルシーの姿があった。何故かコンダラーのことをよく知っていたトトが前の雑草などをテキパキと除ける。エレナは襲撃を警戒している。ナタクは少し離れて指示を出す役だ。 「おい、エレナも手伝えよ」 もっともな意見である。だがエレナは首を横に振る。拒否されて驚くトトだったが 「私を呼ぶときは? 」 そう問われて思い出す。 「えーっと……ナタクン? 」 満足したように微笑んでエレナも小石……いや、大岩を破壊し始める。 「私が『破壊乙女』ナタクンですわ! 」 ドカーン。 「『ゴウリュウ殺し』とは私のことですわよ! 」 バキーン。 次々と石片へと姿を変える大岩たち。トトはそれらを脇にどけるだけで良かった。彼は笑顔のナタクの頬が引き攣っていることはこの際気にしないことにした。……アルシーが『何か』を跳ね飛ばしていることにも目を瞑った。ヒトの武人トト、10歳。ヒトはこうして大人になって行くのかもしれない。
●霧の中の懲りない面々 「な、何で霧が晴れる度に1人減ってるんだっ!? 」 もう何度目かの霧の中で怯えた声があがる。 「そう言えば聞いたことがあるっす。ここでは霧が出る度にポニーテールの女の子の霊が……」 「うわー、出たー! 」 悲鳴。パニック。 「大丈夫だ、一斉にブーイングすれば助かるっ」 そして巻き起こるブーイングの嵐。 「……それは拙者に対する挑戦でござるなっ!? 」 「わー、怒ったぞー!? 」 怒号とさらなる悲鳴。霧が晴れた後には沢山の岩と1人の少女だけが立っていた。その目にちょっぴり涙がたまっているのは本人の名誉のために伏せておこう。きっとゴミが目に入ったのさ。
●エースになれ! かつてシンネット界の超新星と言われた少女がいた。シンネットに関わる誰もが、彼女と共にシンネットという競技は発展して行くだろうと信じていた。……だが悲劇は起こった。少女は偶然居合わせた場所で事故にあったのだ。無事生還した時、命と引き換えに彼女はもう二度とコートに立てない身体になっていた。 そして現在。少女は娘となり、女性になり、今では母となっていた。いつしか過去は忘れ、今の幸せの中を生きていた。そんなある日、彼女は運命を感じる出来事に出会う。彼女の義娘がシンネットラケットを持って家に帰って来たのだ。 「これも運命ですか……」 かつての少女はもう二度と持つまいと思っていた愛用のシンネットラケットをそっと握ったのだった……。
と、まあそんなことがあったかどうかは知らないが、今1組の母娘が『巨人の足』で向かい合っていた。母の名は剣の舞姫・シェラーナ(a04118)、娘は天真爛漫颱風・シャルムという。 「行くわよ、シャルム! 」 「はい、お義母様! 」 二人ともノリノリです。喋り方が変なのはノリのせい、多分。 「受けなさい! スーパー・稲妻……サァァァァァァァァァブッ!! 」 シェラーナが見事なフォームでサーブを放つ。シンネット関係者が見たら息を飲んだろう素晴らしいサーブだった。鍛えるのに丁度良い、難し過ぎず、簡単に取れもしないサーブ。……ただしコートであれば、である。激しい凸凹のある地面に当ったボールは誰にも理解出来ない軌道を描き、明後日どころか10年後の未来の方向へ跳ねた。 「…………っ! 」 シャルムは懸命に追うが、鍛えた彼女の反射神経を持ってしてもそうそう捕れるものではない。何度も放たれるスーパー稲妻サーブ、やがて膝をつくシャルム。 「1球も捕れなかったわね……」 「次こそ必ず捕るです! 」 だが、娘の目から光は消えていない。そのことに安心と喜びを感じつつシェラーナは再びサーブを放つのだった。そうしてシンネットの修行を続けた母娘に迫る人影があった。追加された馬鹿たちである。 「む、シンネットの修行をしているぞ」 一目で判るのはすごい事かもしれない。 「妨害しなくては! 」 「おー! 」 そこに僕に乗り日傘をさしたトトギが通りかかった。 「……あそこは一種異様な雰囲気じゃのう」 トトギの目に今まさにシェラーナに襲いかからんとする男シ会の姿が映る。 「危ない! 」 声をかけた瞬間、10年後の未来の方向からやって来たボールが男を直撃する。倒れ伏す男。やがて…… 「ついに捕れたです! 」 シャルムがそう叫んだ頃、男シ会の支援部隊は全て凶弾に倒れていた。 「……感動じゃな」 トトギが倒れた男シ会の者にさらに折檻しつつ、夕日をバックにひしと抱き合う母娘を見て呟いた。
●巨人の……? スイシャのくすぐりの刑、トトギの折檻を受けた男子シンネット普及委員会の男たち。彼らは一様にぐったりしてピクリとも動かなくなっていた。だがやがてそのうちの1人が何かを決意したかのような表情で立ち上がった。そしてスイシャの方へ歩いて行く。 「まだやるでござるか? 」 そう言ったスイシャの肩をがっしと掴み、滂沱のように涙を流し、叫ぶ。 「あの時はブーイングなんかしてごめんよおぉぉぉぉぉ! 俺、ホントはこんなちっちゃな子にあんなことしたくなくてっ」 土下座のような姿をしてオイオイ泣いている。 「悔やむ心があるなら許すでござるよ。罪を憎んでヒトを憎まず、でござる」 スイシャは男の頭を撫でてやった。
そんな心温まるのかどうなのかなシーンの後はしごき。『コンダラー』を使っての整地を手伝わされる男たち。後ろからナタクとエレナ……Wナタクを先頭に冒険者たちが追い立てる。説教と実力行使、どっちも恐怖である。 「ほーら、キリキリ走る! 」 「握り棒に熱意を込めるんだ! 」 「サボったら『破壊乙女』の新たな伝説の1ページになってもらいますわよ」 「…………しないってば」 「鬼じゃのう」 整地、無事完了。
全てが終わり、帰路につく冒険者たち。トトの側に、様子を見に来たミセス・モースが近寄る。 「今すぐにプレイは見せれないけど、次の試合の観戦チケットを渡すから見に来て下さいね。教えるのもその時に、かしら?」 そう言ってチケットを渡す、ちゃんと人数分だ。その横ではトウキがクゥリッシュを抱き上げていた。 「え、いいよ。トウキさん疲れてるだろうし……」 慌ててトウキを気遣うクゥリッシュに 「いいんだ、こうしてリシュを抱いてると疲れなんか吹き飛ぶから」 照れて頬を掻きながら言うトウキ。完全に二人の時間だった。側で 「そういえば襲撃なんかなかったわね? 」 と言うアルシーにツッコまないくらい。
ところで二人の時間と言えば 「シャルム! 」 「お義母様! 」 ……この二人の特訓していた場所だけ整地されずに残り『地獄の特訓所』と呼ばれた、らしい。

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参加者:8人
作成日:2004/08/16
得票数:コメディ16
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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