熊グドンと豚グドン



<オープニング>


●第二のグドン
 森の中、ほとんど整備されていない細い道を足早に行く男の姿があった。
 その手には石斧を大事そうに抱えている。
 森には獣もいる。それに気づかれないように細心の注意を払いながら、それでいて限りなく急ぐ。
 そんな男の向かって左手側から、木の倒れる音が聞こえた。
 男がそっとその地を覗き込むと、そこには豚の顔をしたグドン達が、倒した木から実を取っているのが見えた。それを見た男の顔はみるみるうちに青ざめ、今まで注意を払っていた冷静さが嘘のように消え、慌ててその場から走り出していた。
 別段、グドンなど珍しくもない。男だって今までに何度か見ていた。

 ――けれども、今回ばかりは事情が違っていた。

「場所は山の麓に位置する小さな村です。
 依頼主が言うには、村から少し離れた森の中に、グドン達が出たそうなのです」
 リゼルは、カウンターに置かれた石斧を前にして言う。
 持って来た依頼主は、詳細を矢継ぎ早に話した後、早々に帰ったと言う。
「これは、そのグドン達が食事をしたあとに忘れて行ったそうです。
 霊査では、村の北方に熊グドン達が約四十匹ほど居るのが確認できました。どうやら、木を切り倒してその実を食べているようなのですが……」
 と、そこでリゼルが言葉を濁した。
「このままだと、そう遠くないうちに実を食べ尽くすでしょう。
 そうなると、近くにあるこの村を襲うのは確実です。
 ですから、皆さんにはそうなる前にグドン達を退治して頂きたいのです」
 それだけならよくあるグドン退治の依頼に過ぎないのだが、リゼルの表情は暗い。
「ただ……依頼主が此処に来る途中に、豚グドン達を見つけたそうなのです。
 村から道を南に少し下ったところで、同じように木を切り倒して実を食べていたそうです。
 こちらは詳しいことは分かりませんが、同じように近いうちに村を襲うと思います
 それで皆さんには、なんとかして村を守って頂きたいのです」

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参加者
人間失格・リリス(a00917)
寝惚け眼のナイフ使い・パラノイア(a07036)
夜明けを告げる足音絢爛舞踏・ダイキ(a07932)
阿風呂の闘犬・ノリス(a07933)
宵闇月虹・シス(a10844)
暴風ノ黄金姫・レグホーン(a11046)
サイレント・ロア(a11550)
ヒトノソくノ一・シス(a14630)


<リプレイ>

●準備
 普段なら昼でも薄暗い森だが、今は木々が倒れ視界は明るい。
 その開けた所を足早に駆けて行く五人の冒険者達。
「随分と手荒くやったもんじゃのう」
 先頭を駆ける阿風呂の闘犬・ノリス(a07933)が、その現状を目の当たりにして言う。
「だが、これなら思ったよりも早く見つかりそうですね」
 そう言うのは、しんがりを務める宵闇月虹・シス(a10844)。
「ああ、あまり時間は取れないからな」
 二番手を走る暴風ノ黄金姫・レグホーン(a11046)は、既に手に武器を持ち臨戦態勢。
「でも、もうかれこれ一時間ですかねぇ」
 眠そうに言う紺碧の埋葬者・パラノイア(a07036)。
 村へ向かう途中、木々が倒れた一角を見つけて森に入り込んだ五人。
 その痕跡を辿ること、約一時間。それだけ駆けてもまだグドン達の気配は無い。
「おっと、ここまでじゃ」
 と、先頭のノリスの足が止まる。その先には、無傷の森が広がっている。
 倒れている木はまだ新しく、食べカスも腐っていない。
 すぐさま、不慣れな手つきで火を起こし始めるサイレント・ロア(a11550)。
 ノリスは持参の袋から、何やら怪しげなキノコを取り出している。
 シスは二人の作業を手伝い、レグホーンとパラノイアは周囲の警戒に当たる。

「ここらでいいだろう」
 村から少し北に入ったところで、行き止まり・リリス(a00917)がバリケードを作り始める。
 材料は村人への注意を促すついでに、余った荷車や空き樽、戸板、それに食料を借りてきた。
 食料は、ノリスから貰った『芳香キノコ』があるが、怪しいので効果が無かった時のための保険である。
 その近くで夜明けを告げる足音絢爛舞踏・ダイキ(a07932)が、村から持ってきたロープで罠を作る。
「ちょっと様子をみてくるなぁ〜ん」
 そう言って、蒼天眼・シス(a14630)は気配を消して森へと入って行く。
「初依頼だそうだが、大丈夫なのか?」
 ダイキがその背に声をかけるが、「なぁ〜ん」とのんびりした声が返ってきただけだった。
「初めて戦った敵もグドンだったけど……懐かしいねぇ……いろいろとあったねぇ……」
 バリケード作成の手を止め、空を見上げ物思いにふけるリリス。

●豚戦
「……来た」
 三十分かけて火を起こし、『芳香キノコ』と肉を焼くこと更に三十分。
 いち早く気配を察したレグホーンの声に、皆に緊張が走る。
 近づく足音は数多。二十や三十ではない。
 森から出てきた豚グドン達の姿を視界に捕らえた瞬間、全員が一斉に動く。
「Wooooooooo!!!!!!」
 レグホーンが紅蓮の咆哮を使い、豚グドンの動きを止める。
 そこにシスのニードルスピアが豚グドンにダメージを与え、弱った敵をノリスとロアが確実に仕留めていく。
「はぁ、面倒ですねぇ」
 ライクアフェザーを使用して囮となり、多くの豚グドン達に狙われながらも余裕を見せるパラノイア。その周りには幾つものリングスラッシャーが、パラノイアの隙を埋める様に敵に攻撃を加える。
「あの世まで送届けてやるぜっ!! グドン野郎どもっ!!!」
 紅蓮の咆哮を使い終えたレグホーンも、スティールソードで切りかかっていく。
 ノリスは体力を、ロアは防御力を、パラノイアは回避力を、そしてレグホーンは敵に囲まれないように動きながら、敵を倒していくが、数で勝る豚グドンの攻撃をかわしきれず、少しずつ傷を負っていく。
 シスのヒーリングウェーブがその傷を癒していくが、彼女は生粋の医術士ではない。当然、使用できる回数も少ない。
「ヒーリングっ……!」
 シスの詠唱に『銀月魂』は反応せず、無色透明なまま効果を発揮しない。
「次から次へと……キリの無い奴らじゃ!」
 そう愚痴をこぼしながら、爆砕拳で豚グドンを飛ばすノリス。
「…………!!」
 逃げ出す豚グドンに追い討ちとばかりに気高き銀狼を使って仕留めるロア。
 だが、その隙に繰り出される豚グドンの攻撃に堪えきれず弾き飛ばされる。
 なんとか体制を立て直したロア目掛け、斧を振り上げる豚グドン。
「させるかよっ!」
「させません!」
 レグホーンがその豚グドン目掛けてブレイブタックルで突進し、豚グドンを吹き飛ばす。
 更にその豚グドンにシスのスキュラフレイムが襲い掛かり、止めを刺す。
「これで、終わりですね」
 最後の豚グドンを切り伏せたパラノイアが、周りの状況を確認する。
 動く豚グドン達が居なくなり、その場の全員が一息つく。
 倒した豚グドンの数は六十匹近い。重傷者がいないのが幸いと言えるぐらいだ。
「のんびりするのはまだ後じゃ、村へ行くぞい」
 そう言ってノリスは、疲れた様子を見せるロアとシスを小脇に抱えて、村へと向かって走り出す。その後にパラノイアとレグホーンも続く。

●熊戦・準備
(「見つけたなぁ〜ん」)
 熊グドンを探して三十分。ようやく目的の場所に到着したシス。
 持ってきた遠眼鏡は、視界の悪い森の中では効力を発揮できないため、視認できるところにハイドインシャドウで身を潜め、熊グドンを警戒しようとすぐ近くの木々に身を隠す。
 だが、突然一匹の熊グドンが雄叫びを上げ、その瞳にシスの姿を映す。
(「気付かれたなぁ〜ん?!」)
 熊グドン達が食べ物に飢えていた事と、シスの冒険者としての経験の少なさが重なって、シスの気配が熊グドンに漏れ、結果、熊グドンに気付かれてしまった。
 シスはすぐさま思考を切り替えて、その場にミストフィールドを使って、同士討ちを促すように中央を突っ切って北へと疾走する。

 熊グドン達を撒いてシスが村へ戻ったのは、熊グドンを探しに出てから四時間後だった。
 シスの説明を聞いたダイキは、目に見えて落ち込むシスを励ます。
「大丈夫でござる。貴殿が失敗を補うよう最善の努力をしたのでござろう?」
「そうだな。失敗するのは仕方がない事だ。だが、それを悔やむのは依頼を無事に終えてからだな」
 リリスはそう言って、近い戦闘に備えてバリケードを補強する。
「殲滅班が来ないかもしれないから……厳しいがやるしかないねぇ」

●熊戦・開始
 シスが戻ってから二十分足らずで、熊グドン達は現れた。
 一度見つけた獲物を逃したためか、感じる気配は荒い。
「死を呼ぶ舞踏、とくと見よ!!」
 食料の匂いを嗅ぎ付け、一心不乱といった様子で駆けてくる熊グドンの前に立ちはだかったダイキは、自分を中心にミストフィールドを展開し、敵のかく乱を図る。
 視界が悪くなった中を、ただがむしゃらに走る熊グドンは木々の間に張られたロープに気付くことなく、盛大に転んでいく。
 そして、それを警戒して足を止めた熊グドンをダイキが舞うように切りつけていく。
「ふむ、店の品物を持ってきたんでね……悪いが傷物にされるわけにはいかないんだ……返り血もごめんだよ……」
 ミストフィールドを抜けてきた熊グドンを、リリスがニードルスピアを使って倒していく。
 倒し損ねた熊グドンを狙って、シスがバリケード内から飛燕刃を使って仕留める。
 それでも数で押す熊グドンに対して、リリスの生み出した土塊の下僕が敵の動きを止める。
 たった一撃。それだけで土と化す土塊の下僕は、しかし足止めとしての効果をしっかりと発揮する。
 足が止まった先頭と、後ろから駆けて来る熊グドンの固まったところを、確実にニードルスピアが打ち抜く。
 だが、それでも倒し切れなかった熊グドン達は、力任せにバリケードを打ち壊す。
「あちゃー。力の強いやつらだな……シス、荷車を村の方へ持っていってくれ」
 荷車に乗った石の詰まった樽を熊グドン目掛けて投げつけつつ、リリスが言う。
 大急ぎで荷車を村へと退避させるシス。
 それを追う熊グドン達を、ダイキのミストフィールドとリリスのニードルスピアで足を止める。
「しかし、これは厳しいでござるな……」
 村へとジリジリと後退しながら、これ以上の戦闘は不利と判断して足止めに専念するダイキ。
「なんとか、殲滅班が来るまで持ちこたえれば……」
「どっせーーいっ!!」
 と、そんな彼らの後ろからすさまじい掛け声と共に飛んできたロアが、勢いそのままに熊グドンに体当たりをした。
 いや、体当たりと言うよりはただ投げられた石の如くぶつかっただけだが……
 どうやら後ろから駆けつけて来たノリスがロアを投げたらしい。
 投げた方は随分と爽快そうだが、投げられた方は随分と辛そうだ。
 そのノリスの左腕に抱えられたシスは、「お、降ろしてください!」なんて慌てている。
「当たらなければどうって事無いって感じですねぇ」
 早くも熊グドンとの戦闘に加わるパラノイア。力のこもった一撃を難なくかわし、ミラージュアタックを使ってかく乱していく。
「連戦は辛いもんだ……」
 そう愚痴をこぼしつつ、村へと向かおうとする熊グドンを切り伏せるレグホーン。
 力を温存していたロアも、ここぞとばかりに兜割りを使って一刀両断していく。
「食らえ、必殺! 爆裂キノコパンチ!」
 そう言うものの、実際は単なる攻撃なのだが、ダイキとの連携で上手く打ち倒していく。
「おのおの方、勝利は目前ぞ! 絢爛舞踏ここにあり!!」
 その声のとおり、残りの熊グドン達の数はもう数えるほど。勝利は確実だろう……

●事後
 村では、バリケードに使った板を焚き木にして、広場でささやかな宴会が行われていた。
 パラノイアが愛用のブルースハープで曲を奏で、舞踊が得意なシスがそれに合わせて踊っている。
 すっかり出来上がったノリスも踊ってはいるが、こちらは気分任せに千鳥足で踊るのみ。
「ふぅ……、疲れたなぁ〜ん」
 そう言いながら体を休めるシス。その隣ではレグホーンも酒をあおってのんびりしている。
 ロアは疲れたのか、こくこくと船を漕いでいる。対照的に、酔ったリリスは豪快にいびきをあげている。

(「拙者は、貴殿との約束を果たせているでござろうか……」)
 一人、輪から外れて空を見上げ酒をあおるダイキ。
 その答えは、自らの内に見出すしかない事を知りつつも……


マスター:滝川水瀬 紹介ページ
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作成日:2004/10/04
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