<リプレイ>
●ひとつおたずね致します 「あなた達が、あたしのキノコを採ってきてくれるのね! 」 クレアはお手製の採取袋をずい、と出す。それを受け取った邪竜導師・ティリア(a05478)がえっと、とクレアに向かって声を上げた。 「キノコの子を見つけた場所、詳しく教えてもらいたいんですけど」 「分かれ道の狭い方を行って、大きな木が3本あるその間を抜けた所に水辺があるのよ」 「それでわ、その木を見つけたらすぐということですわね」 クレアの言葉に穏やかな日の守護者・アネット(a11710)はそう言った。 「後は狼だけど」 「それは大丈夫ですわ」 西風を喚ぶ者・アリシエル(a15354)はクレアにそう言った。 話を聞いている3人を、白雲と緑風を導く者・ライオル(a12876)と荒野の青騎士・ランダート(a15170)が見ている。 「惚れ薬かー……ま、きっかけになればいいのかねー? 」 「健康的に問題はないのかということが気になりますが……」 ランダートの言葉に、ライオルはそう言って話しの盛り上がっている3人を見た。 「……クレアさん、惚れ薬、私にも作り方教えてくれませんか? 」 聞こえてきたティリアの声に、ライオルが静かに笑った。 「クレアさん本人が大丈夫というのなら大丈夫なんでしょうけれど」 「俺的には真面目に考えて、答えだそうとしているよーに思えるんだがなー」 小さく、ランダートはそう言って頭を掻く。そうかもしれませんね、零してライオルは続ける。 「お相手の方、クレアさんのような美人に想われてうらやましい限りです」 「ーレンアイとかはよくわかんないけど、がんばってその手伝いをしなきゃ」 2人の後ろから、やってきた白銀のオトボケ射手・ケルフィン(a07772)がそう言った。 「そうだ、キノコの子見て覚えておかないと」 そう言うケルフィンに、ライオルがそれが、と零した。 「研究ノートのスケッチしかありません」 「んー、じゃ見て覚えよう」 しょうがないね、というケルフィンにランダートが頷く。 「いいわよー、もうがっつりしっかり教えてあげる。で、誰に使うのよ? 」 「って、今の所使うアテはないんですけどね……」 聞いてくるクレアにティリアは苦笑してそう言っていた。 一方、狼対策として囮係となった阿風呂の闘犬・ノリス(a07933)と暖かく柔らかき風・リスリム(a05873)は話をしている一同から少し離れた場所で用意を始めていた。 「キッノコ狩り〜♪ キッノコ狩り〜♪ 狼倒して、水辺に注意しキッノコ狩り〜♪ でもって恋愛も成就でキッノコ狩り〜♪ じゃワイ! 」 上機嫌なノリスの歌声が、肉を炙った煙の立ちこめる中に響く。白い煙に、けほ、と一つむせながらもぱたぱたとうちわで扇ぐリスリムが息をついた。 「……片思いの相手、振り向かせたいなんて……動機は可愛いけど……薬に頼むってどうなの……」 リスリムはなんか、と呟きながらせっせと袋に詰め、きゅ、と口を縛った。 「惚れ薬……人の恋路に首を突っ込むのもなんですが、ちょっと、楽しそうですわ」 クレアから話を聞き終えて来たアネットがそう言う。ふふ、と笑う顔は本当に楽しそうだ。 「何とかなりそうでも片思い中ってだけで何にでも頼りたくなっちゃうですよね。って事で、クレアさん、協力しちゃいます!」 「私にできること、精一杯しようと思いますわ」 ぐ、と拳を握りしめてそう言ったティリアにクレアが手を振っている。アリシエルは静かにそう言って、準備ができた一同を見渡した。
●狼と湿った森 森はどこか空気の重い、湿った森だった。日差しはあるというのに、吹く風は生暖かった。 「地図からするともう少しで分かれ道です」 ティリアのその一言に、みんなで辺りを見渡す。狼を誘い込むのには、少しでも風上で足場のしっかりした場所を探す必要がある。 「……少しでも、足場のいい所を探さないと……」 そう言うリスリムに、ライオルも頷く。 「風上で、足場の良い場所でしたね」 「開けていないと困りますわ」 アネットはそう言って、茂みの奥を見る。あ、とランダートが声を上げた。 「あそこなんてどうだ? 」 「あ、いいですね」 ティリアは手をかざしてランダートの指さした場所を見る。道から外れたその場所は、丸く穴が開いたようになっていて、上から日が差し込んできている。大きな岩が3つ転がってある。 「あの岩陰も使えそうですわ」 アリシエルがそう言う。 「足場もしっかりしてそうじゃワイ」 ノリスはそう言い、同じ囮役のリスリムもその場所を見て頷いた。 「後は分かれ道に着くだけですわ」 アネットはそう言って道の先を見る。ふと道の奥、茂みが揺れた。 「あら? 」 「なんか、いたっぽいね」 声を上げたアネットにケルフィンがそう言った。道の先を見るランダートも、何かの音を聞いて顔を上げる。 「……狼、かな」 リスリムはそう言って、がさがさと茂みを行く音に耳を澄ました。緊張が走る中、ノリスが袋を取り出した。 「とうとうこれの出番じゃワイ! 」 「それは? 」 囮用の炙り肉はリスリムが持ってきている。不思議そうな顔をするアネットに、ノリスが声を上げた。 「肉臭キノコじゃワイ! 」 「肉臭……」 「キノコ……」 ティリアと、アリシエルが続いて洩らした言葉にノリスが力強く頷いた。 「イイ匂いじゃワイ」 じゅるり、と一つ舌なめずりしたノリスがきらきらした目で袋を見つめる。茂みを行く音は増えてきていた。
●囮だ肉だよ全速力 「ーっ」 たん、と軽く地面を蹴る音がした。狼だ。ー早い。はっとしたアリシエルの横にノリスが入り声を上げる。 「ワォ〜ン、ワォ! ワイ! ワワオィ? 」 茂みに隠れていた狼たちが、一匹、また一匹と出てくる。全部で、20匹くらいだろうか。 「それでは私たちは所定の場所で」 「気をつけてくださいませ」 ライオルとアネットはそう言って踵を返す。続いてアリシエル、ランダート、ケルフィン、ティリアと足早に行った仲間を確認してリスリムとノリスは囮に使う用の袋を取り出した。 「ほら……ここに餌があるよ……」 所定の場所に向かっていった仲間を目で追う狼たちにリスリムは袋を見せた。ぴくん、と一つ反応した狼の前ゆっくりと、袋の紐を解く。 「肉臭キノコじゃワイ! 」 袋を開けて、ノリスは高々と肉臭キノコ一袋分を掲げる。おいしそう、と思いつつも必死に手を出さないようにじゅるりと一つ、舌なめずりして狼たちを誘う。 「……欲しいのなら、こっち……おいで」 リスリムはそう言って、片手で肉を持つ。魔導書は小脇に抱えて、鼻をひくつかせる狼を見てゆっくりと足を引いた。ノリスも、肉臭キノコの匂いを漂わせながらじりじりと寄ってくる狼に逃走経路を確保する。 「ここにあるワイ! 」 近づいてくる狼を確認して、ノリスとリスリムが目を合わせる。 「今じゃワイ! 」 「……うん」 肉と魔導書と、肉臭キノコをそれぞれしっかり持って2人は狼たちに背を向けて走り出した。
●待ち伏せと説得 「そろそろ来るかな」 たん、たん、と木の上に登ってケルフィンが弓の調子を見ながらそう言った。 「そうですわね」 岩の後ろに隠れ込んでアネットはそう言った。他より突出したこの場所ならば弓も射りやすいだろう。ティリアとアリシエルは、開けた場所の両側に隠れ、この場の入り口にはライオルとランダートがついた。 「ー来ましたね」 聞こえてきた足音にライオルがそう呟く。木の上にいるケルフィンを除く全員がハイドインシャドウで気配を消す。それからすぐに、ノリスとリスリムが狼の群れを連れて駆け込んできた。 「ー」 岩を背に、追いつめてくる狼たちにリスリムとノリスがゆっくりと足を止める。20匹ほどの狼がじりじりと、肉を狙ってやってくる。そして、近くにいた一匹が地面を蹴った。 「そこまで」 高らかに響くケルフィンの声と同時に、矢が降り注いできた。最初の一匹は、ケルフィンの放った矢で影を射抜かれてそのまま地面に落ちた。敵襲に顔を上げる狼たちの周りをぼんやりとした闇が覆う。ティリアのアビスフィールドだ。 「これでちょっとはいいはずです」 「こちらですわ」 正面にいた数匹が足を止めたのを確認して、リスリムは岩の上で弓を構えるアネットの後ろに回る。 「……あげるよっ」 岩の裏に入る前に、持っていた肉を群れの中に投げ込んでおく。 最初の内こそ慌てたが、敵を見据えた狼たちは統率が取れた攻撃をしてきた。同時に飛びかかってくる狼3匹を、ノリスが拳で応える。 「豪腕キノコフック……続いて真空アフロキックじゃワイ!」 肉臭キノコは狼たちにばらまいて空になった袋を片手にノリスが攻撃を繰り出す。 ライオル、ランダートそしてアリシエルは後方にいた狼たちと戦っていた。 「よっ……と」 3匹で連携してくる狼をランダートが舞うように避ける。同時に振るう細槍が、牽制の一撃を打つ。 「狼さん達、私を食べても美味しくないですよ? 」 襲いかかってきたのは5匹。ライオルは杖を片手にそれを避けて、エンブレムシュートを放った。 「ずいぶんと減ってきましたわ」 銀色に光る狼を打ちだして正面から来た狼の動きを止めて、アリシエルはそう言った。少しずつ狼たちも勢いが失せてきている。 「あまり傷つけたくはありませんわ」 「……退散、してくれないかな……」 足下を狙って、威嚇の弓を射続けるアネットは直接向かってきた狼を盾ではじき飛ばす。その後ろでエンブレムシャワーを放ったリスリムが掠るような位置を狙った。 「そこまでっ」 ティリアが足止めのニードルスピアを放つ。ケルフィンは弓を持って木の上から降りてくる。 「もういいよね」 追いつめられた狼たちの足下を狙った矢を放って、ケルフィンがそう言った。 「他所へ移ってもらえないかー? 」 尾を垂らす狼たちもいる中で、一際大きな狼の目を見てランダートはそう言った。この辺りは街道なのだとも含め、じ、と目を見る。 「もう分かってるだろ」 その一言が合図だったように、大きな狼は周りの狼たちを引き連れて、茂みの中に身を翻していった。 「説得成功だね」 ケルフィンのその言葉に、ランダートは槍をたん、と地面にさして頷く。 「無事に行えてよかったですわ」 取り残されることなく去っていった狼にアリシエルが安堵の息をついた。 「それでわ、キノコ狩りの開始ですわね」 皆さん、とぽん、と一つ手をついてアネットがそう言った。
●うれし恥ずかしキノコ狩り 「森って良いですね。お弁当持ってくれば良かったです」 「季節も季節ですし、気分は楽しいキノコ狩りですわ」 ティリアの言葉に、アネットはそう言って、辺りを見渡す。大きな3本の木を抜けて湿ってきた足下に気をつけながら進む。 「水の音がしますわ」 アリシエルの言葉に、ライオルが頷いた。 「水辺と小道……、あそこじゃないですか」 うーん、と右に左に視線を巡らしていたライオルが細々と水の流れる場所を見つけた。 「クレアさんは大きな木が3本ある所を抜けたとこって言ってたけど、広いねこの辺り」 肩をすくめてそう言うケルフィンの横でくん、くんと鼻を利かせていたノリスが声を上げた。 「ムム! なにやら良いキノコの香りがするワイ♪ 」 進むノリスの後にランダートが続く。ケルフィンは木の下や、土の様子を確かめながら探していた。 「水辺を重点的に探しますね」 「……赤だっていうから、色で、探そうかな……」 土の湿った辺りを探しながら歩くライオルの側に、リスリムがそう言う。 「色は赤で、サイズもちゃんと見てきたしね」 事前調査済みのケルフィンの後ろでアリシエルは辺りを見渡す。 「あ、見つけたよ」 「あったワイ! 」 ノリスと、ケルフィンがそう声を上げた。 大きな木の下、少しばかり離れた所に土を被った大きな赤が見える。 「なんかちょっと毒々しいキノコですよね……口に入れて平気なのかな……」 「確かに、少し心配になる色ですね」 袋を広げていれるティリアの呟きに、ライオルはそう言ってまじまじと見る。 「持って帰るのか、それ? 」 ノリス、と声を上げるランダートの横、ノリスが上機嫌に大きなキノコの方を肉臭キノコの入っていた袋に詰めていた。 「もちGetじゃ」 きゅ、と袋を締めるノリスの側で群生するキノコの子を前に、ティリアが声を上げた。 「一応、少し余分に採っておいた方がいいかな? 」 「そうですわね」 袋に入る量よりも遙かに多いキノコの子に、アネットも頷く。 「マントに包んで持ってけばいっか」 外したマントを広げて、ティリアはキノコの子を包んだ。 「後は、クレアさんにお届けするだけですね」 ライオルの言葉に、一同が頷いた。
●ミラクルポーションキノコの子★ 「成功をお祈りします。きっと良い結果でしょうけれどね」 「ありがとう! 早速作り始めるわ」 ライオルの励ましの言葉にクレアはにっこりと微笑んで、採取袋とマントの中のキノコの子を受け取った。 「出来上がりが楽しみのような、恐ろしいような……」 作り始めたクレアを見ながらケルフィンがそう呟いた。 「あ、熱湯から始めるんだ」 「ティリアとアネットは、興味あるんだな」 研究室を覗き込んでいる2人にランダートがそう言う。 「後学の為ですわ。ホレ薬じゃなくて、自信の付く滋養強壮の薬、なのでしょう? 」 ふふ、と笑うアネットにランダートが肩をすくめる。 「……そういえば、リスリム様は何故、この依頼を? 」 「え? 」 「以前惚れ薬なんてって……」 「あ、べ…別に…っ、惚れ薬が欲しいわけじゃ……っ! ……今更、惚れ薬なんて使っても、どうにもならないし……っ」 声を上げるリスリムに、アリシエルがあ、と呟いて口元に手を添える。その頃には、出来上がりの一声をクレアがあげていた。
「ヴィゼル! 」 呼び出されたリザードマンのヴィゼルを前に、クレアはそう声を上げる。何の用だと言いたげなヴィゼルを前に茶色の、ちょっときらきらしてるおかしな液体をクレアが一気にそれを飲み干す。 「うわあ、飲んだよ」 「ワシとしては煮え切らないヴィゼルが飲むべきじゃと思うワイ」 「確かに、自信つけるって言うならヴィゼルの方かもなー」 ケルフィンはそう言って、ノリスはぼやく。頷くランダートの横で、アネットとアリシエル、ライオルが大声でヴィゼルを呼んでいるクレアを見ている。何をしたんだ、と声を上げるヴィゼルにティリアがいいなあ、と声をもらした。 「あの分だと大丈夫そうですね」 「……幸せに、なって欲しいね」 リスリムが呟いた言葉に、それぞれに頷いた。

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参加者:8人
作成日:2004/10/22
得票数:恋愛2
ほのぼの14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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