<リプレイ>
●秘境の温泉 ぼんやりと立つ白い煙の中、乳白色のお湯の中からセクシー爆乳拳・アイリューン(a00530)腕がすらりと伸びた。 「温泉でのんびりとぉ〜は、できないんですわねぇ〜? 」 ぱしゃん、と湯を打つ腕はさらりと水を弾く。残念そうに、乳白色のお湯に指を滑らせるアイリューンに蒼麗の名士・セント(a00260)が頷いた。 「入っている時は、とにかく用心ね」 「光り物を狙ってくる鴉退治ですか……」 想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は物憂げにそう言った。暖かいこのお湯からも鴉の追跡の為に出なければならない。 「ですが、美肌効果の温泉の為にもファイトですわ」 紋章姫・サティア(a10545)はそう言って、湯の中で小さくガッツポーズをとった。ぱしゃん、とはねるお湯から覗く腕は見事にお湯を弾いていた。 乳白色のお湯は、さらりと肌に心地よい。気分を良く、湯を肌に滑らせている女性陣の一方で石を隔てた向う側、男湯では刀鏡曲師・ターカート(a04904)が湯気を肌に感じながら息をついていた。 「……しかし、依頼抜きでこういった温泉には来たいものだ」 まあ、折角の機会だしな。と呟くターカートは、水着を着ておいている。着替えを早く行えるようにと準備したターカートの視界に、肌を露出することを嫌がって、胸元まで大きなタオルで隠した暖かく柔らかき風・リスリム(a05873)が入る。その横には、同行してきた庭園の守護者・ハシュエル(a90154)の姿があった。 「リスリム、そのまま入ったら髪が濡れるぞ? 」 「知り合い? 」 「あぁ……あれ……、馬鹿兄のターカート。仲良くしてやって」 そう言い切るリスリムに、ハシュエルはどうも、とお辞儀する。 リスリムの長い髪を温泉に入る前にと、結い上げるターカートの手際はひどく良い。 「……別に、結ってもらわなくなって、自分で出来る……」 ブツブツ言いつつも見事結われた髪に、ターカートが終わった。とぽんぽん、と頭を叩いた。 「なかなかその髪型も似合ってるじゃないか」 そう言って温泉に入っていくターカートを追って入った2人の後、服を畳まず寝かしていた窮鼠のストライダー・デューク(a15739)が温泉に入った。 「ゆっくり入るのは後からでも出来る」 デュークはそう言いながら、脱衣所に視線を向けた。 「イヤリングは、脱衣所だったな」 「ランダートがリボンをつけてあるって言ってたし、見やすいとは思うよ」 ハシュエルはそう言って、あ、と声をもらす。リスリムもそれに告いで、ああ、とデュークも頷いた。 追跡要員その1である、荒野の青騎士・ランダート(a15170)は現在物陰にて待機中だ。追跡要員その2のデュークは光りを反射する石を片手に温泉の中くう、と背を伸ばした。
●必殺早着替え 目指せ 麗しの温泉の為に 「ハッシュの一座のおねーさん達のアクセサリーがねぇー、まあ、鴉は光り物を集める習性があるって言うしな」 一人、物陰の中で待機中のランダートはそう呟いた。もちろん、女湯側ではない所だ。槍を片手に待機するランダートは、ふう、と一つ息をついた。時折聞こえてくる声は女湯にしても男湯にしても楽しそうだ。 「サクッと取り返してー、温泉にゆるりと浸かりたい所だな」 苦笑一つ、浮かべてランダートはそう言った。
「イヤリングは脱衣所においてあるのよねぇ」 脱衣所に視線を流して、アイリューンはそう言った。 「鴉にリボンでも何かつけられるといいですわね」 サティアはそう言って、温泉で少し火照った頬に手を当てた。 「追跡組に追いつく為に、早着替えが必要だけどね」 「がんばります」 セントの言葉に、ラジスラヴァがそう言って笑った。女性陣としては早着替えがちょっとばかし問題になる。最悪、タオル一枚なんてこともありえるのだから。 「私あんまり得意ではないので……」 タオル一枚かもしれない、とこぼすサティアの顔にふと、影がかかる。 「あらぁ〜」 ばさ、と大きく響く音と見上げた空が黒くなるのにアイリューンは指で唇に触れながらそう言った。 「俺は一足先に追うぜ! ナイフを見つけて来てくれ」 ハイドインシャドウで物陰に隠れていたランダートがそう言って駆け出す。10羽ほど鴉は空の一部を黒く染め、イヤリングについていたリボンがひらりと宙を舞った。 「来た……!」 「そうだな」 デュークはそう言って、置いてあった服を着付けた。 「先へ行く」 素早く温泉の岩を蹴っていったデュークの後ろ姿はすぐに消える。 「装備も無駄にははらなかったわけだ」 ターカートはそう言って、温泉の中に沈めておいた巨大剣を取り出して、着替えを取る。鴉の向かった方向を、厳しい顔をして見ながらターカートは巨大剣についた湯を払った。 「行ったわね」 鎧の下の服だけ着て、立ち上がったセントが髪をかき上げる。温泉の中から、ラジスラヴァの歌った眠りの歌は交わされて、代わりにサティア放った釣り糸が鴉の羽にかかり、身震いする鴉が慌てて飛んでいく。よほどの違和感があったのだろう。 「温泉入っている間に物盗んでくなんて許せないわよ! 」 「後を追いましょう」 さっと汗を拭いて、上にチャイナ服を羽織っただけのアイリューンがスリットから覗く足でたん、と温泉の淵に立つ。足下のブーツはかつん、と音を立てて地面を蹴った。 舞踏服に着替え終わったラジスラヴァがリュートを持って後に続く。 「しょうがありませんわっ」 覚悟したサティアはバスタオルに魔力のパレオだけを引っかけて靡くリボンを追った。
「遅い……掴まっておけ」 マントを羽織ったリスリムを小脇に抱え、ターカートが地面を蹴る。あ、と声をもらしたリスリムの視線の向こうでハシュエルが手を振ってる。 「後から行くよ」 静かになった温泉の上空を、イヤリングについたリボンが靡いて森の奥へ消えていった。 「リスリム、鴉はどっちに行った? 」 追跡中、ターカートがあげた声に抱え込まれているリスリムが指をさす。 「……えと、あっち……! 」 「そうか」 リスリムの指さした方向へ向かって走るターカートの前に、カンテラの灯りが差した。先に出ていたアイリューンが、2人に気が付いてカンテラの灯りを揺らした。 「これでお揃いですわねぇん」 「依頼主のとこの子は? 」 「今着いたよ、」 そう言ったセントに肩で息をするハシュエルが声を上げる。これで全員ですわね、と言うサティアにえっと、と男3人が固まった。 「それ……」 「間に合いそうもありませんでしたの」 タオル巻き付けて、パレオを引っかけただけのその格好に視線を外す。いろんな意味で目に毒だ、と呟いたのは誰だったか。チャイナ服に舞踏服、バスタオル巻いただけ。盗賊相手だったらいちころだったろう。 ラジスラヴァが木に刺さっているナイフを見つけていてアイリューンがきらりと光るデュークの投げ置いていった石を見つけ、道はすぐに分かった。 「さあ行きましょう」 「湯冷めしない内の方が……いいね」 サティアの言葉に、リスリムがそう言って苦笑した。
●光り物には要注意! 「うっし、合流だな〜」 大きな木の近く、静観していたランダートが後方からの灯りに気が付いてそう言った。カンテラの灯りに、デュークの姿も見ることができる。日の差し込まないほど鬱蒼とした森は、夜目の鴉には関係ないのかーそれとも巣は木の上だからいいのか。 「お前達ー……! っとお」 大きく、呼びかけたランダートの上を黒い影が急降下してきた。頭を掠って飛んでいったそれに、槍に手を回した。 「これが黒い影なのねぇん」 ふふ、とアイリューンが笑みを浮かべてそう言った。見据える先は黒い影、羽ばたきで起きた風にチャイナ服の裾がはためく。 黒い影はー無数の鴉だった。鴉には群れる習性がある。領域を荒らされたとでも思ったのだろう、急降下してきた鴉はただでさえ暗い森を余計に暗くさせた。 アイリューンが放ったチャクラムが、鴉たちを追い込む。 「群れか、」 リスリムを下ろして、ターカートはそう呟いて巨大剣を構えた。守護天使を呼びだし、鴉の群れを見据えて庇うように前に立つその後ろで、セントが紅蓮の咆吼をあげた。 「話を聞いてもらわないとね」 動きを止める鴉たちがぱたぱたと落ちてきた。それでも向かってくる鴉をラジスラヴァがよければ、舞踏服がひらりと舞う。繰り出されたニードルスピアが威嚇の一撃を入れ込んだ。 「あなた達のしていることは、みんなが迷惑していることですわ」 サティアの獣達の歌が響く。その後ろでは、デュークが支援の攻撃をしている。 「でも、キラキラしたものに目がないなんてセンスいいわね」 地面に落ちた鴉たちを見て、そう言うセントが浮かべた笑みは優雅だ。その横に立っていたラジスラヴァが、一つリュートを奏でた。 「いいですか、人の持ち物を勝手に持って行っちゃダメなんですよ」 ラジスラヴァの奏でる獣達の歌の旋律に鴉たちが、攻撃の手を緩める。 「イヤリングは返してもらえねえか? 」 ランダートはそう言って、手の中で持ってきた宝石を転がす。鴉たちは取りに来るわけでもなくおのおの木の枝にとまってこちらを見ている。 「お願い……、返してくれないかな……? 」 リスリムはそう言って、鴉たちを見る。ぽろん、ともう一度リュートの音がした。正面に出たラジスラヴァが再び歌い出す。 「もし、繰り返すようなら、あなたもあなたのお友達もみんな痛い目にあってしまうの」 ちら、と見るのは地面に落ちて紅蓮の咆吼で動けなくなっている鴉たち。 「わかったかしら」 にっこりと、浮かべた笑みでラジスラヴァは旋律を止めた。残ったのはリュートの余韻と、極上の笑みを浮かべたアイリューンと、動けなくなった鴉を前にどうして盗むのかしらね、と呟いているセント。サティアはパレオを手に、木の上の鴉を見据えている。 そして、巨大剣を片手にしたままのターカートとその後ろにリスリムとハシュエル。ランダートは槍を片手に、でデュークは少し離れた所で狙いはしっかりとつけている。 戦闘準備万端で、精神的にも力一杯の優位。 「……あら」 鴉たちが一斉に飛んでいったのは、それからすぐのことだった。 「さすが、本業だな」 「ありがとう」 細槍を片手に、戻ってきたデュークがラジスラヴァにそう言った。 「で、寒くねえのか……それ」 「大丈夫です、わ……」 するすると木の上に登って、依頼の品のイヤリングを見つけて来たランダートがバスタオル一枚で戦闘を乗り切ったサティアを見てそう言った。首を振るサティアも、さすがに寒そうだ。 「それじゃぁ〜、温泉でゆっくりしましょ〜」 「のんびりと入りたいわね」 アイリューンのその言葉に、今度こそ、とセントが頷いた。
●レッツ温泉ロマン 白い、湯煙が上がる。 「生き返りますわ……」 やはり寒かったのか、温泉に首までつかるサティアを眺めながら、アイリューンが足を伸ばす。すらりと湯面から出た足を指でなぞりながら、乳白色のお湯に時折透けて見える肌に笑みを浮かべる。 「日光浴と温泉で……いいわね」 気分リフレッシュって所ね。とセントはくう、と体を伸ばす。 「折角ですから……、今回の鴉の一件を歌にして見ました」 くう、と同じく背を伸ばすラジスラヴァがそう言った。 「ど〜おせおぃらは底ぉぬけバケぇつ、そおれじゃいくぜと風のぉ中」 「この歌ですか? 」 「あ、これは……」 大きく響いた声に、サティアが笑み半分でそう言った。いえ、と素直に否定するラジスラヴァにセントが微笑んで、アイリューンが男湯との境の大きな岩を指さした。 「……はあ、疲れた後の風呂はやっぱ最高だぜ…」 温泉の中、こんどはゆったり入っているデュークの歌が響く。 「ほら、解けているぞ? 」 戦闘の前に結んだリスリムの髪をターカートが結い直す。 「………兄さん……ありがと」 結び終わった髪にそっぽを向きながらもそう言ったリスリムに、ターカートが一つ笑みを浮かべてリスリムの頭をくしゃ、と撫でた。 「背中を流してやるよ」 「あ、ありがとう」 ランダートはハシュエルにそう言って、背を流す。湯船からは相変わらず、デュークの熱唱が響き渡っていた。
後日、この温泉はラジスラヴァの歌によってさらに人気をはくしていったそうだ。
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参加者:8人
作成日:2004/10/30
得票数:ほのぼの14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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