<リプレイ>
「巨大ヤドカリの宿探し……か」 村の安全を第一に考え、月下の黒猫・ジン(a03382)が村人達を広場に集める。 巨大ヤドカリは自分の宿となる殻を探して村を襲っているため、何か宿の代わりになるものを提供すればいいのだが、なかなかピッタリなものが見つからない。 「……体長6メートルのお宿かぁ。それじゃ、7〜10メートルくらいのお宿があれば、その中に入って移動する事が出来るかな……? 海藻を巻くとか、おっきなお布団を巻くとか、方法はあると思うけど……、ちょっとイマイチかな? ……いや、お布団って暖かいし、これから寒くなるんだし……。うっ……、そんな冷たい目で見なくても……」 次第にゼブラーウーマン・パルディラ(a90126)の視線が厳しくなったため、紫烈堕天・ユギ(a04644)が申し訳なさそうにボソボソと喋る。 別に悪ふざけをしているわけではないのだが、パルディラの視線が怖くて喋れない。 「……お布団は無理だと思うよ〜」 ジト目でユギを睨みつけ、パルディラがボソリと呟いた。 「わかったよぅ。皆がお宿の代用品を作ってる間、酒樽被った大きなヤドカリさん達の足留め行ってきます」 パルディラがやけに怖かったため、ユギが涙を浮かべて砂浜にむかう。 この様子ではパルディラに何かあったらしい。 「それじゃ、私達もお宿作りを始めましょうか。出来る事ならヤドカリ達とは戦いたくありませんし……」 村人達に宿の代わりなるものを出来る限り用意してもらい、陽光の翼剣・アスコット(a11579)が思い浮かぶ宿を次々と作っていく。 どの宿を好むかとヤドカリ次第のため、保険の意味も含めていくつか宿を作ってみる。 「なかなかいいアイデアが浮かびませんね〜。……どれも実用性に欠けるというか、なんというか」 完成したばかりのお宿を見つめ、希望と夜明けの銀狐・カーリエ(a11908)が疲れた様子で溜息をつく。 ほとんどのお宿はその場しのぎのものばかりで、住まいとして使用するには難がある。 「そうなんだよねぇ。ここにはヤドカリの専門家さんもいないから、ちょっと難しいんじゃないのかなぁ〜」 困った様子で汗を流し、パルディラがコンコンとお宿を叩く。 お宿の中には叩いただけで壊れてしまうものもあり、パルディラが慌てて転がった破片を拾い上げる。 「やはり始末するしかないようですね」 何処か寂しそうな表情を浮かべ、刹那の影・ヴィルファ(a13368)が辺りを睨む。 これがワイルドファイア大陸だったら手頃な貝が見つかると思うのだが、そこまで行く労力もなければ持っていくための手段もない。 「それも運命でござるよ、ニンニン」 仲間達に気づかれないようにしてお宿に近づき、夜明けを告げる足音絢爛舞踏・ダイキ(a07932)が『ニンニン』とペンキでサインした。 記念に一筆と思っていたのだが、たくさんお宿があるため、次々とサインを書いていく。 「ところでヤドカリは食べられるのかなぁ〜ん?」 バーベキュー用の串を両手に握り締め、夜陰の風花・シス(a14630)が首を傾げる。 退治したヤドカリをすぐに調理しようと思ったため、いまのうちから準備を始めているらしい。 「噂ではサザエに似た味がするらしいですね。ただし大きなヤドカリは大味すぎてオススメする事は出来ません」 村人達から聞いた情報を思い出し、アルターエゴ・レイ(a08468)が口を開く。 この辺りでヤドカリは珍味とされており、あまり好き好んで食べるものはいない。 そのためサザエの味がするという話も、嘘である可能性が高いようだ。 「別に無理して食べる必要はないだろ。追い返してやればいいんだから……」 村人達があまり言い顔をしなかったため、ジンが慌ててフォローを入れる。 ヤドカリに食われた村人もいるため、冒険者達の発言に嫌悪感を持ったらしい。 「そんなに怖い顔をしていたら駄目ですよ。村の皆さんにとっても、ヤドカリにとってもよい結果にするために、力を合わせて頑張りましょう!」 そしてアスコットは村人達を安心させるため、優しく声をかけるのだった。
「ムッ……、あれはヤドカリの群れでござるな」 木の上に登って遠眼鏡を覗き込み、ダイキがヤドカリの群れを発見する。 ヤドカリ達は迷う事なく村を目指し、村まで続く街道を進んでいく。 「まずは小さい奴から倒しておく必要があるわね」 先発隊として村にやってきた小さなヤドカリ達に狙いを定め、最愛のものからキスを受ける・アテムト(a00130)が電刃衝を叩き込む。 アテムトの攻撃を喰らったヤドカリは、宿代わりにしていたヘルメットの中へ逃げ込むと、そのまま大袈裟にコロコロと転がった。 「さぁて、気張っていくか」 ヤドカリ達が纏わりつくようにして攻撃を仕掛けてきたため、日を追う黒き狙撃者・ユウ(a15210)が影縫いの矢を放って一匹ずつ動きを止めていく。 「急いては事を仕損じます。今しばし、お待ち下さい」 ヘルメットの上に足を置き、犬士・サヤ(a15604)が他のヤドカリ達の相手をする。 小さなヤドカリはヘルメットの中に逃げ込むため、なかなか退治する事は出来ないのだが、何とか足止めする事には成功したらしい。 「大丈夫ですから、心配しないで下さいね?」 パニックに陥った村人達を安全な場所まで誘導し、さっぱり探求学者・レイリス(a13191)がヤドカリ達を攻撃した。 「やっぱり食べてみたいなぁ〜ん☆」 バーベキューにして食べるため、シスがヘルメットに逃げ込んだヤドカリを捕まえる。 「まさか……喰うのか?」 嫌な予感が脳裏を過ぎり、レイが警戒した様子で汗を流す。 ヤドカリが思っていた以上にグロテスクな姿をしていたため、自ら好き好んで食べるつもりはないようだ。 「拙者は遠慮しておくでござる」 妙な視線を感じたため、ダイキが嫌々と首を横に振る。 熱々に焼かれたヤドカリはアンモニア臭が強く、とてもサザエの味がするとは思えない。 「意外と敵は単純だから、落とし穴に落とすといいわ。私も食べるのは遠慮しておくけど……」 落とし穴までヤドカリ達を誘導し、アテムトが鼻と口を布で覆う。 ヤドカリ達は落とし穴の中に落ちると、穴を掘って地中を進みそのうち気配がなくなった。 「いや、駄目だ。地中に潜って逃げられたぞ!」 穴の中を覗き込み、ユウがチィッと舌打ちする。 ヤドカリは身の危険を感じたり、温度調節する時に地中へ潜るため、地盤の硬い場所に村人達を誘導した。 「……已むを得ませんね」 次々とヤドカリ達が地中に潜ってしまったため、サヤが険しい表情を浮かべて逃げ遅れたヤドカリを倒す。 「彼らも必死のようですね。自分達が生き残るため……」 悲しげな表情を浮かべながら、レイリスが流水撃で続けてヤドカリを退治する。 「だからおいしくいただくなぁ〜ん」 ハリボテの岩に隠れていたダイキを捕まえ、シスがこんがりと焼けたヤドカリをむりやり口の中に放り込む。 「んあ……んぐぐっ……」 ダイキは必死で抵抗したが、やどかりのアンモニア臭がキツイため、薄れ行く意識の中で口をモゴモゴと動かせた。 「うま……苦い……でござる。あまりのニオイに食べる気が失せるのでござるが、その気持ちとは裏腹に口の中で始める肉汁が旨みとなって、俺の中で踊っている……。これは……肉のパラダイスッ!」 ヤドカリを食べる事に抵抗があったダイキであったが、予想を上回る美味さのため食べる事を止められない。 「なんだか様子がおかしいな。まさか……毒か!」 ダイキの表情が呆けてきたため、ユウが警戒した様子でヤドカリを睨む。 本当に毒があるかは不明だが、食べない方が身のためだろう。 「尊い犠牲だったなぁ〜ん」 ぽふぽふと両手を合わせ、シスがダイキの冥福を祈る。 「人を勝手に殺すなでござる。やはりヤドカリ達を食べる事は駄目でござるな。余計に敵を刺激して村人達にまで被害が及んでしまうでござる……」 巨大なヤドカリを守るようにして大きなヤドカリ達が現れたため、ダイキが悲しげな表情を浮かべると短剣を構えた。 こうなってしまった以上、倒すしか方法がないからだ。 「諦めるのは早過ぎますよ。まだ何も終わっていないのですから……」 大きなヤドカリ達の吐いた炎から身を守るため、アスコットが土塊の下僕を召喚して壁にする。 「そうかも知れぬでござるな。だが、俺はヤドカリ達の声を聞いたでござる。突然変異によって大きくなった悲しみを……」 ヤドカリ達に引導を渡すため、ダイキが飛燕連撃で牽制し大きなヤドカリにカラミティエッジを叩き込む。 あまり戦う事には乗り気でなかったダイキだが、ヤドカリを食べた事で何か感じるものがあったらしい。 「ダイキさんの言うとおりだな。ヤドカリ達も殺してくれと言っている」 獣達の歌を使ってヤドカリ達と会話し、ジンが寂しそうに口を開く。 「せめて苦しまずに逝かせてあげようか」 眠りの歌を使って大きなヤドカリ達を眠らせ、ユギが小さくコクンと頷いた。 何匹かのヤドカリは抵抗に成功したが、それでも小さなヤドカリ達が眠りについたため、ユギが再び眠りの歌を歌いだす。 優しく心に響くヤドカリ達の子守唄を……。 「もう何も苦しむ事はない。安らかに……眠れ!」 ヤドカリ達を苦しませないようにするため、宿無し導士・カイン(a07393)が躊躇せずにトドメをさす。 「このまま生き続けても、宿を変えるたびに村を襲う事になりますものね」 巨大なヤドカリにピッタリなお宿がとうとう完成しなかったため、カーリエがユギと一緒に優しく眠りの歌を歌う。 さすがにヤドカリ達も抵抗できなくなったため、貝の中に閉じこもりそのままピクリとも動かなくなる。 「やるしかねぇのか! 畜生!」 土の中から現れたヤドカリ達の攻撃をかわし、ユウが雄たけびを上げてホーミングアローを叩き込む。 巨大なヤドカリと違って小さなヤドカリ達は運命を受け入れる事を拒否しているため、ユウも攻撃する事に少しためらいがあるらしい。 「正直……グドン等以上にこのテの生き物を相手にするのは嫌なものですね……」 ヘルメットごとヤドカリ達を攻撃し、ヴィルファが疲れた様子で溜息をつく。 「そう思うのなら……手加減するな」 戦いを長引かせる事によってヤドカリが苦しむと思ったため、レイが厳しい表情を浮かべて飛燕連撃を叩き込む。 祈りにも似た一撃がヤドカリの急所を貫き、大量の体液があたりに勢いよく散らばった。 「これしか方法がないんですね」 ヤドカリ達の冥福を祈り、サヤが静かに目を閉じる。 せめて巨大なヤドカリのお宿が完成していればこんな悲劇を生む事もなかったが、今後の事を考えればこれが最良の手段とも言えるだろう。 「一気にケリをつけるわよ」 自らの思いを鋼糸に込めて巨大なヤドカリを狙い、アテムトがカラミティエッジで叩き込む。 するとヤドカリは全く抵抗することなく、自らの運命を受け入れその場で息を引き取った。 「……御免なさいですよ」 悲しげな表情を浮かべ、レイリスが退治されたヤドカリを抱きしめる。 村人達もレイリスに心を動かされたのか、村の中にヤドカリ達の墓を作ろうと提案した。 「やっぱり食べるのは駄目かなぁ〜ん?」 みゅうっと寂しそうな表情を浮かべ、シスが瞳をウルウルさせる。 「食べる事もある意味、供養になると思いますが、ヤドカリ達の心を知った後では難しいですね」 ヤドカリ達も食べられる事を臨んでいるような気もするが、それ以上に彼らの悲しみを知ったため、アスコットがボソリと呟きシスの頭を優しく撫でた。 今はヤドカリ達の冥福を祈る事が先だと思い……。 その後、村人達の話し合いにより、この村では毎年ヤドカリ達を弔う祭りが行われる事となる。 冒険者達の悲しみを歌にして……。

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参加者:13人
作成日:2004/11/04
得票数:ほのぼの17
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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