秋芳の夢〜咲くや散るらむ万想の華と〜



<オープニング>


 大きな空を見上げるように小花が一輪。
 それは、毎年夏の間に高山で、絨毯のように咲き集う紅い花。
 物心ついた時から一緒にいる、ずっと花畑は二人の遊び場だった。

――ねえねえ、お花畑行こ。
 知ってるでしょ、もうすぐ花の季節が……終わっちゃうよ。
――俺はもう、そんなトコで遊ばねぇの!
――そんなこと言って昨日も付き合ってくれたのに〜。
――ばっ、お前……それはな……!
 花畑より身近に咲く花のような少女の笑顔に、淡い想いを抱いた頃、少女は少年から遠ざかる。

 少女が好きだった花。
 思い出の遊び場に咲く花。
 ……他は皆枯れてしまった。
 一輪だけ、ぽつりと、咲いている。

「取り残されているのだ。まるで何かを待っているかのようにな……」
 冒険者が集まる酒場。霊査士は伏目がちに淡々とそれを口にした。
 本来は夏に咲き、秋までにシーズンを終えて土に還るはずの花だ。それがどういう訳か今年は、数株だけ秋の始めに花開いたのだと。
「もっとも、そのシーズンももうじき終わる。さて――本題だが」
 さらりと言って、黯き虎魄の霊査士・イャトは一通の手紙を卓の上に置いた。
「とある小村の村長からの依頼でな。ディスタという18歳の少年を捕縛してもらいたい」
 冒険者達をゆっくりと見渡す瞳が、完全に伏せられた。
「……村長が可愛がっていたノソリンを盗み、逃走中の少年だ。村から程近い山間の高原に向かっているらしい。ノソリンは途中で乗り捨て、現在は徒歩だな」
 帰巣本能を発揮して、ノソリンは既に自力で村長の元に帰って来ているという。怪我もなく、元気だそうだ。
 だが、これまで平和そのものだった安寧の小村で起きた初めての事件。
 手紙と共に送られて来たノソリン用の耳輪を霊視した結果、視えて来た犯人は村の人間だった。
 それを受け、どうしても村長の怒りが治まらないという事で、可及的速やかにこの少年を村に連れ戻して欲しいと。そう言う訳である。
「高原まで少年を追いかけて、捕まえて、村に連れ帰る。……それだけ?」
 烈斗酔脚の栗鼠・ヤン(a90106)が依頼の内容を反復して確認する。
「ああ」
「本当にそれだけで良いのね?」
「そうだ」
 イャトは言う。簡単な依頼だ。ただ――

 数分後。酒場の隅のテーブルで、ヤンがグラスを重ねている。フラフラに酔っ払っている。
 即ち、彼女の理解が及ばない事態が起きているという事である。
 卓に突っ伏しながらヤンがぼやいていた。
「村には、ディスタ君の恋人がいるんれすって。で・もー、不治の病に臥せっていて明日をも知れない命なんだって……」
 そういえば、イャトも言っていたか。
「花が咲くとか、枯れるとか何とか……よく解らないわね〜。何かさぁ……えっと。あれ、忘れちった。とにかく、何にしても、ディスタ君を連れて帰ればそれで良いって事よね。うん、よし。……――」
 自分に言い聞かせる様にヤンが酔いに任せて口走る言葉は一部、正確ではなかった。
 冒険者達はこの場に居合わせ、はっきりと聞いている。

 イャトは最後にこう、付け足したのだ。

「少年が求める花はどちらも枯れる。両方を得る事など出来ないと理解した上で、伝えるべき言葉を探している。『何故』? 『誰に』? ――さぁな」
 ディスタをどうするかはお前達の判断に任せる。以上だ。

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参加者
聖砂の銀獅子・オーエン(a00660)
ブランネージュ・エルシエーラ(a00853)
朝風の・ジェルド(a03074)
星影・ルシエラ(a03407)
鋼帝・マージュ(a04820)
星影ノ猟犬・クロエ(a07271)
吼えろ・バイケン(a07496)
追憶は夕暮れに終わる・テトラ(a13202)
怠惰の・メイヤ(a16200)

NPC:烈斗酔脚・ヤン(a90106)



<リプレイ>

 何を為すべきか、為さぬべきか。
 浅い朝風の・ジェルド(a03074)は、来た道を振り返る。
 自分達とは道を違え、村に向かった仲間達の背を思い返す瞳は、無言。
 病床の彼女を連れ出すのは無謀だ。どれほど急げば間に合うのか、間に合わないのか。それさえ解らない、運を天に委ねるしかない現状。憂う時間も惜しかった。
 『ディスタを村に連れ戻す』――請け負った唯それだけの目的を前にして、高原への道を急ぐのみ。
「切ないですね、何とか無事成功させたいです」
 肩で息をしながら、言い聞かせるように呟いたブランネージュ・エルシエーラ(a00853)。
 彼女が遅れて合流した理由を仲間達は訊ねなかった。
 誰が為、今、すべき事は何か。それは、それぞれの胸の内にある想い。

 儚い現実を、知っているから。

 祈るような声が、風のない室内でまどろむ少女の髪を揺らす。
 ――ディスタさんの意思を成し遂げた後に、必ず彼と共に戻ります。それまで、どうか……
 少女はそれが冒険者からのメッセージである事など知る由も無い。
 カーテン越しの柔らかな日差しの下。真っ白なベッドの上で身じろぎ、瞳が薄くゆっくりと開かれ――瞬きをする程の間にもう、伏せられている。
「……ディスタ……」
 そういえば、もう随分と逢っていないなぁ。
 何も映さない瞳。瞼の裏に浮かんで来るのは記憶の中の少年の姿。
 楽しかった日々に思いを馳せる口元が、綻んだ。
 彼はもう、花畑は卒業しちゃったのかな。お花、まだ咲いてるよね――
 何事か言いかける言葉は吐息に、吐息は寝息へと変わって行く。
 家族が気付いて部屋を覗く頃にはもう、夢の中。
 いつもより幾分安らかな彼女の寝顔に浮かぶ微笑さえ、痛々しい。

●秋芳の終期
 季節が巡り夏になれば、一面の草野原にまた紅い花の絨毯が広がるだろう。今、草は痩せ、黄色く細く大地に横たわり、冬の訪れを待つ。

 高原のひらけた景色の中に独り佇んでいた少年――ディスタは逃げも隠れも、驚きすらしなかった。
 彼の様子に違和感を覚えたのは、向けられる真っ直ぐな視線に虞も焦燥もなく平静そのものだったせいだろうか。少年は、聞いていた年齢以上に大人びて見えた。
 何故冒険者がやって来たのか、彼は理解していた。
「ま、君を連れ帰れーってお仕事なのよ」
 他人事のように怠惰の・メイヤ(a16200)が言う。素直に帰ってくれれば面倒臭くなくて良い、そんな本音を隠しもしない彼女は、既に依頼人への言い訳を考え始めている。少年が応じてくれなくても、一応義理は果たせる訳だし。
「俺はまだ、帰れねぇ……っても、あんたらには関係ない話だよな」
 ご名答。手っ取り早く、彼をロープで捕らえようとした守護者・マージュ(a04820)を、ジェルドが間に割って入って止めた。
「何で止めるのさ――」
 はけ口も何もかも、自分達が引き受けてやれば良い、そして彼を彼女の元に強制送還する。それがマージュの出した答えだった。花を摘んで帰るだけなら、冒険者に任せた方が遥かに早く目的を果たせるだろう。それが『帰れない』理由だと言うなら、だが。
「彼は、自分で決めたんだ」
 同じ後悔をするなら、他人に従うよりも自分の心に従う方が納得出来る。
 ジェルドの持論がマージュのそれと正反対である事は、問題ではない。
 元より覚悟と決意の上にある少年の選択だ。どんな結末が待っているかを知りながら、そう在る事を選択したのは他ならない彼自身なのだから。
「あまり足止めをしないでやってもらえないか」
 言われてしまえばぐうの音も出ない。身勝手な押し付けだと、自分でも自覚していただけに。
 そして、ジェルドの言葉と行動に、マージュ以上に驚いているのはディスタ本人だろう。
「ディスタ君。君の思うようにするといい」
 ジェルドは言った。彼女が花を見られるよう、最大限の努力をする。――君はそう決めたのだから。
「例えそれで君が後悔することになろうとも、それは君が選び取った後悔だ」
「見逃す訳ではない。ましてや君の罪が消える訳でもね」
 聖砂の銀獅子・オーエン(a00660)の言葉に、虚を突かれた表情のまま「――ああ」と頷いて、
「解っているのに、何故――花を摘みに行くのに何か深い理由があるのですか…?」
 エルシエーラの問いには黙して答えず、
「彼女の死目に会えないことは覚悟してるんだろうね」
 静かに言葉を重ねた星影ノ猟犬・クロエ(a07271)の、確認の色濃いその声音に、少年は低く抑えた声を吐き出した。感情を押し殺そうと努める少年の、握り込んだ拳が震えているのをクロエは見る。

「……そんなのはもう、とっくに通り越してんだ」

「彼女にはちゃんと、言ってから出て来たの?」
 もし首が横に振られたら、代わりに伝えに走ろうと星影・ルシエラ(a03407)は決めていた。
 少年は首こそ振らなかったが、その瞳に自嘲の色が浮かべる。
「リルはもう、何もかも知ってるさ」
 俺がした事。村長の思惟。冒険者を呼ぶほど怒ってたなら、彼女はもう知っているはず。
 それが何を意味するのか、ルシエラは一瞬首を傾げ、しかしもっと大事なことを思い出す。
「ねぇ――なんで、リルさんの傍にいてくれないの?」
 裏を返せばそれは『傍にいてあげて』という願い。
 叶わないなら、せめて答えを彼女の元に持って行く。
 答えるつもりはないのだろうと思わせるだけの間の後で……それは無意識に零れた彼の想いだったろうか――ルシエラが、それ以上待つのは無駄だと身を翻した瞬間、その背に聞こえた小さな呟き。
 ルシエラはそれを拾って、振り返らずに駆け出した。

 ――お互い未練が残るだろ?

 逝きたくない、逝かせたくない。そんな我侭は苦しみを持続させるだけ。
 来年では手遅れ。このどこかに、まだ咲いている花があるなら……彼女に見せたいと思うから。

●せめて夢の中で
 村に到着し、思い知らされたのは依頼人である村長の『怒り』の深遠なる意味。
 ある程度の覚悟はしていた。だが、他の冒険者達の反対を振り切ってまで貫いた己の意志の前に、突きつけられた現実はあまりに重い。

 過ぎ去りし夕焼けの記憶・テトラ(a13202)は沈鬱な表情で椅子に腰掛け、ベッドサイドから少女を見つめていた。壁際には似たような表情で背凭れて立つ吼えろ・バイケン(a07496)がいる。
 もし望むなら、誰を敵に回してでも連れて行こうと決めていた、2人。だが。
 少女は何も望まなかった。故に、どこまでも優しかった。黙り込んでしまったテトラを慰める。
 会話する事さえ気遣われるほど憔悴している彼女にとって、『希望』は即ち夢物語。
「キミは、若いね」
 これが、同い年の少女の言葉だろうか。
「若くて、元気だね」
 病は深刻だった。決してその病状を軽視していた訳ではなかったはずなのに。
 彼女が口にするその一字一句にさえ気を揉みながら、家族はテトラとバイケンを警戒している。
 敵意にも似た視線が2人に突き刺さっていた。
 依頼を受けてディスタを追ったはずの冒険者が、ディスタを連れて来る代わりに命の刻限が迫る愛娘を連れ出そうとすれば、不審の目を向けられても仕方が無い事。同じ屋根の下で村長にテトラが試みた説得も、『今更』だった。
 村長は冒険者達に『ディスタを連れ戻す事』、それだけを強く望んでいたのに。
(「オレは…見えてなかったのか……」)
 眼を閉じたまま吐息で語るリル――フルリール。痩せた体、色素が抜けた髪、透けるほど白い肌……清潔に保たれた真っ白なシーツに包まれて眠る、その表情は余命幾ばくもない事などまるで気取らせない、凛とした笑みを浮かべる一輪の花。美しくさえある。
 時折その顔が苦悶に歪むのをただ見ていることなど出来なくて、テトラは少女の額に触れた。癒しの水滴に病を癒す効果は無い。それでも、触れられる事で安心を得たのか彼女の呼吸が安らいだ。
 気休めだ。驚くほどに低い体温を感じているテトラの掌。
 普通に身を横たえているだけでも、危うげな命の灯。身体を起こそうとするだけで家族が飛んでくるだろう。彼女自身にかかる負担も、きっと想像を絶する域に在る。
「………」
 バイケンは歯噛みし、拳を強く握り締めた。
 少年の決意や覚悟が理解出来ない訳ではないが……時間は待ってはくれない。

 足元には枯草ばかり。最後に少年が目指したのは崖上の高台だ。
 オーエンは己の肩を少年の足場に提供して押し上げ、ジェルドが少年と平行して崖を登りながら時折手を貸して支える。そこは、遠い日に少女が、風に揺れる『紅』を見つけた場所らしい。
 あの日、制止も聞かずによじ登って行く彼女を追いかけた。足を滑らせた彼女を受け止めて、二人一緒に落っこちて。あちこち擦り剥いて帰ったあの時も、そういえばお互い両親にこってり絞られたっけ。
 ノソリンの背に揺られた帰り道。二人一緒に見た景色は、忘れられない思い出――
「……っ、畜生」
 今、視線の先に彼女はいない。けれど、……
 絶壁にしがみつく手に、踏みしめる足に力を入れて背伸びする少年を、冒険者達は見守る。

 暫くは、少女の呼吸音だけが聞こえていた静寂の室内。
 その呼気がふと、止まる――
 慌てて駆けつける家族と、覗き込む冒険者達をリルは薄く瞳を開けて見つめた。
 生きている。安堵と呼ぶべき感覚を超越したそれは、祈りにも等しい。
「……ごめん。何も要らないって言ったのにね」
「「「?」」」
 彼女は微かに、呟いて眼を閉じた。
 夢を見続けても良いかな。できれば――起こさないで。
 ――逝くなら、ディスタが帰って来る前が良い――
 それが彼女の、最期にして唯一の望みだった。

 すり抜けるように落ちた少女の意識は二度と戻らない。
 少年が伸ばした手は花を掠めて空を掴み、視界に映り込んだ青空が、遠ざかる。

「ディスタ君!」
 崖から足を滑らせた少年を捕まえ損ねたジェルドは、落下した彼の身体が下でオーエンとエルシエーラに受け止められているのを見て、内心胸を撫で下ろして高台の上に顔を出す。
 そこに――最期の花が枯れているのを確認した。
 起き上がろうとしない少年を心配して覗き込んだオーエンは、彼の瞳が今は、冒険者の姿など見ていない事に気付く。
 ディスタの視界に広がる、青空。それは、程なく色を失い、滲んで流れた。

●万想の華
 バイケンの鉄拳がディスタの顔面を張り飛ばし、その身体は壁に叩きつけられて尻餅をついた。
「伝える言葉があるのなら、お主の思い出に伝えるのではなく、今現実にある事実に伝えるもの。言葉は生きている内にしか伝わらないでござる。死んだ者になにが伝わろうものか!」
 その激昂ぶりは、殴る準備をして待っていた村長でさえ飛び出すタイミングを逸して立ち尽くし、思わずその拳を解いて少年に差し伸べようとした程だ。
「バイケン君、落ち着いて!」
 烈斗酔脚の栗鼠・ヤン(a90106)は相棒が激怒し、涙するのを初めて見た。身体を張ってバイケンを抑えながら、貰泣きで顔をくしゃくしゃにしている。
「お主がやらねばならなかったことは、傍にいてやることだったでござる」
 相手は一般人。怒っていても自制はしている。
 肩で大きく息をしながらバイケンは言葉を口にすることで冷静になろうとした。
 言葉だけでは納まらない感情の分だけ溢れている涙。
 それを解っていながら何故自分は少年を連れ戻す方向に心血を注がなかったのか。そして少女の傍に在りながら、どうする事も出来なかった自分への怒りもあるだろう。
 少年はその間咳き込みもせず、じっと黙って、耐えていた。
「村長……」
 そっと、ジェルドが窺うように村長の前に立つ。少年をこっそり彼女の元に連れて来ようとしていたクロエとマージュは肩身が狭い。
「冒険者殿に全て先を越されてしまっては、儂に出来るのは許す事、くらいしか残されておりませんな」
 世話をかけました。と、依頼人は微苦笑を浮かべて一礼した。

 小村で、起きた初めての事件はこうして幕を閉じる。
 村長のノソリンを盗んだ少年は、相応の代償を充分に払ったという事で酌量されたらしい。
 通された部屋で少女の亡骸を見た少年は、何も語らず、涙を見せる事もなかったという。
 ――伝えるべき言葉が見つかっていればあるいは、その結末だけは違ったのかもしれない。

「ヤンさんがディスタ君の彼女なら、彼の行動は嬉しい? それとも、傍にいて欲しい?」
 クロエがそう訊ねた時、ヤンは「ち、違うのよっ」などと口走り、止まらない涙を隠そうとしていた。的外れの反応を返した事に気付いた彼女は思案顔の後、腰の水筒をマージュに盗られていた事を思い出して苦笑する。
「やっぱり、その時になってみないと解らないわね。でも逆の立場なら……私は傍にいるんじゃないかしら。どうしたらいいか解らなくて、ただ傍で泣いてるだけなの」
 だから、大事な人の為に最期に何かしてあげようって、行動に移せる彼は凄いと思うし、羨ましい。
 殴られちゃったけどね、と己の頬でそれを示しながらまだ涙を溜めているヤンの苦笑と横顔を、クロエは少し複雑な思いで見つめた。
「クロエ君はどうなのよ?」
「僕が彼と同じ立場なら、やっぱり傍にいてあげたいと思……」
「そうじゃなくてっ」
「?」
 ディスタ君の彼女と同じ立場なら?
「人は誰しも覚悟を決めなくてはいけない時はあるものだ……辛くてもね」
 こっそり水筒に用意してきた酒をヤンに渡しながら諭すようなオーエンの言葉は図らずも、ヤンだけに告げる物ではなくなっていた。少なくともディスタ少年はそれを解って行動していたし、ヤンはそんな彼を羨ましいと断言したのだ。
 テトラは、何も出来なかった事が悔しいのか、哀しいのか自分でもよく解らない。俯いて、呟く。
「奇跡はなくても、救いぐらいは在って欲しいと思ったんだ」
 救いなら、あった。彼女は笑顔で逝ったのだ。
 彼女は幸せだったと言えるだろうか。少女の家族は、村長は。そして、少年は。
「誰も全て幸せになる事なんて出来ないのに。それでも足掻くのかな……『たった一つの冴えたやり方を求めて』?」
「あんたらは、何も解ってないんだな」
 ディスタが躯の胸に、最後に見つけたあの花を――枯れてはいたが――手向けながら、メイヤ、そして冒険者達に向けた言葉に。彼の想いの全てが集約されていた。
 足掻いている時にそんな事を考える余裕なんてない。溺れてみれば解るさ。
 手に触る物なら何だって――藁だって掴むから。

 間に合わなかった。何も伝えられないまま、彼女は消えてしまった。
 漠然とした不安に急かされる足が身体を運ぶ。
 いつもの酒場、いつもの席で――
「おかえり」
 帰還した冒険者達を迎える霊査士のいつもと変わらぬ声を聞いてほっとした瞬間、ルシエラの瞳から大粒の涙が零れていた。

 人の思い、万の想いが咲かせる華よ。願わくば。
 ――潰えた想いの蕾にもう一度……


マスター:宇世真 紹介ページ
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星影・ルシエラ(a03407)  2009年12月14日 22時  通報
ルシなら傍にいる。 ルシなら傍にいて欲しい。
自分の望みならわかるのに、あ☆たまにこんがらがるけど
自分以外のことは、
ほんとうのところよくわからない。
なにがそのひとにあう伝え方なのか応援の仕方かなとか
いろいろ。
想像はする。でも自分のできる想像の範囲内だよ。
ひととの想いと重ねてかなきゃ、いっぱい足りない

なんだろ、お帰りの声ですごく泣いた記憶がとってもある
思いっきり泣いててもいい居場所が有り難かったことも