突然変異熊を殲滅せよ!



<オープニング>


「おい、見ろよ親父! 村中メチャクチャだぜ!」
「ああ。こりゃ酷い……。いったい何があったっていうんだ?」
 山間の小さな村に行商にやってきた商人の親子は、その村のあまりの状況に、一瞬目を疑った。
 この村は親子にとって月に一度は訪れる馴染みの村で、村の事は良く知っていた。それだけに、自分達が目にしている惨状が、すぐには信じられなかった。
 家は無残に破壊され、辺り一面瓦礫の山。軽く見渡しただけでも、原形を留めている家は一軒も無かった。
「盗賊にでも襲われたのかな?」
「バカ野郎! 盗賊に襲われたくらいでこんなになるか! とにかく村の中を探索してみるぞ」
「ええっ!? そりゃヤバイよ、親父!」
「……ったく、情けない奴だな、お前は。じゃあお前はここで大人しく待ってろ。俺一人で行ってくる」
 そう言うと、初老の男は一人で村の奥へと歩いていった。
 
 村の奥へと足を踏み入れた男を待っていたのは、山積みにされた村人の死体だった。死体も家同様、ほとんど原形を留めておらず、とても正視に耐えられるものでは無かった。またその死体から流れ出た血が、死体の周りに大きな血溜まりを作り、辺り一面に何とも言えない不快な臭いを漂わせていた。
 男は胃の中から熱い物がこみ上げてくるのを必死で耐え、何か犯人の手がかりとなる物が無いかと、必死で辺りを探す。と、そこで男は山積みにされた死体の中から、黒光りするある物に気付いた。
 男は死体の背中に深々と刺さっている物を引き抜くと、それをじっくりと観察する。
「これは爪だな。この大きさからすると……熊か?」
 しかし熊が村を襲ったにしては、不可解な点が多すぎる。だが、この爪が事件を説く鍵になるに違いない。そう思った男は、爪を懐にしまうと、すぐにその場を後にした。


 そして数日後、今回の依頼に参加する冒険者が全員集まったのを確認すると、エルフの霊査士・エルフィール(a90177)が椅子から立ち上がり、口を開いた。
「初めまして。私、エルフィール。つい最近霊査士になったばかりの新人だけど、精一杯みんなをサポートしていくから、これからよろしくね♪」
 酒場にエルフィールの元気な声が響き渡る。
 エルフィールはぺこりと頭を下げると、再び椅子に座り、置いてあったオレンジジュースに口を付けた。
「こちらこそよろしく。じゃあ挨拶も済んだところで、本題に入ってもらえますか?」
「分かったわ。今回みんなにお願いするのは、ここから2日ほど北に向かった所にある、山間の小さな村を全滅させた熊の退治よ。敵の数だけど、突然変異した熊が2匹で、後は普通の熊が10匹程度ね」
「突然変異した熊が2匹? 珍しいな」
「ええ。どうもこの熊は夫婦だったみたいで、一緒に突然変異したみたいね。2匹とも大きさは3メートルくらいだけど、オスの方は桁違いの腕力を持っていて、メスの方は炎を吐く事ができるわ」
 エルフィールは地図を取り出すと、それをテーブルに広げ、×印が付けられた所を指差す。
「ここが熊に滅ぼされた村、そしてここから少し東に行ったこの森、ここに熊達は潜んでいるわ。所詮熊だと侮らないで。油断はできない相手よ」
 エルフィールの言葉に心配はいらないという顔をすると、冒険者達は立ち上がり、酒場を後にしていった。

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参加者
商忍・キッド(a00652)
荒野の猟犬・ルクス(a03658)
業の刻印・ヴァイス(a06493)
サイレント・ロア(a11550)
赤の従四・トゥース(a11954)
華胥への誘い・ヴィーナ(a12135)
焔纏者・アシュレイ(a15053)
風抱く医術士・ソフィー(a16966)


<リプレイ>

●朽ち果てた村
 酒場を出発して2日。
 8人の冒険者達は、突然変異した熊達に滅ぼされた村に辿り着いた。
 村に辿り着いた冒険者達は、そのあまりの悲惨な光景に言葉を失う。
 無残に破壊されつくされた家屋、あちこちに飛び散っている返り血、そして村の中心部に山積みにされている村人達の死体。どれも目を覆いたくなる光景だ。特に村人の死体は事件から数日が経過している事もあり、かなり腐敗している為、臭いが酷く、思わず吐きそうになる。
「……話には聞いていましたが、本当に酷い光景ですね。これ以上の被害を増やさない為にも、可愛そうですが熊達は全て倒すしかありませんね」
 口元を押さえながら、至純の歌声・ヴィーナ(a12135)が呟く。
「ああ。この状況から見て恐らく全ての熊が人の味を覚えているだろう。熊を生かしておけば被害が増えるだけだ。一匹たりとも逃がすわけにはいかない」
 ヴィーナの呟きに業の刻印・ヴァイス(a06493)も同意する。
「もし村が襲われた時にオレ達が居たら、村人達は無事だったかもしれない……。こんな事を言っても後の祭りだが、そういう肝心な時に役に立てないってのは、なんか悔しいな」
 山積みにされた死体を見つめながら、灼赫を抱きし陽竜・トゥース(a11954)は悔しそうに呟いた。
「それは仕方ありませんね。私達冒険者も万能ではありませんもの。ですから、変異熊達を退治して被害を最小限に抑える……それで十分だと思います」
 風抱く医術士・ソフィー(a16966)の言葉に、氷焔の騎士・アシュレイも頷く。
「ソフィーの言うとおりなぁ〜ん。これ以上の被害を起こさせない事が、今の俺達にできる最善の事なぁ〜ん。という訳で、熊退治頑張るなぁ〜ん!」
 村の悲惨な光景を目の当たりにした冒険者達は、気持ちも新たに、熊達が潜む森へ駆け出しっていった。

●暗き森の中にて
 村を出てしばらくすると、熊達が潜んでいるという森が見えてきた。
 森の入り口に到着すると、ヴァイスは用意してあった熊対策の道具を冒険者達に渡す。ヴァイスが用意したのは、体臭を消す草汁、音を鳴らさない様に鎧に挟む布、炎対策のマント、そして索敵用の遠眼鏡である。
「これで熊に見つかる確率もかなり減るだろう。早速行動を開始しよう」
 準備を整えた冒険者達は、まだ昼だというのに薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している森の中へと足を踏み入れて行った。

「怪力熊か魔炎の熊か……どっちも嫌だなぁ」
 商忍・キッド(a00652)が独り言を言いながら、遠眼鏡で熊を探している。
 しかし見えるのは木々ばかりで、今のところ熊の姿は発見できない。
「ねぇ、そっちはどう?」
同じく遠眼鏡を使って熊を探していたサイレント・ロア(a11954)に問いかけると、ロアは首を横に振って答えた。
 他の冒険者達も同じで、必死に熊の痕跡を探しているが、結局何も発見する事ができず、時間だけがただ流れていく。焦りと苛立ちが募り、誰もが口を開かなくなった頃、荒野の猟犬・ルクス(a03658)が声を上げた。
「……熊の足跡、発見したぞ……」 
 ルクスの言葉に冒険者達は安堵の表情を浮かべ、すぐにルクスの周りに集まる。そしてルクスが指差す先を見つめると、そこにはうっすらとだが、確かに熊の物と思われる足跡が残っていた。
「この大きさからすると、これは普通の熊の足跡だな」
 その足跡を見たヴァイスは、大きさからそれが変異熊の物では無いと判断する。
「……この足跡を、追っていく。みんな、ついて来る……」
 そう言って森の奥へと進んでいくルクスの後に、冒険者達はついていく。しばらくの間、そのまま足跡を追っていくと、不意にロアが立ち止まった。
「どうかしました、ロアさん?」
 ソフィーが声をかけると、ロアは人差し指を口に当てた。どうやら静かにして欲しいらしい。それを見た他の冒険者達も立ち止まり、ロアの真似をして耳をすませてみる。すると……。

 ……グルルゥ……ウゥ………

 静寂の中、かすかに熊の鳴き声がいくつも聞こえてきたのだ。冒険者達の間に一瞬緊張が走る。
「ち、近くに熊がいるなぁ〜ん! どうするなぁ〜ん!!」
「こっちに向かってきてるって訳じゃなさそうだな……。とにかく近くにいるのが分かったんだ。後は計画どおり風下に回って攻めよう」
 するとロアは指を舐めて濡らし、風向きを確かめる。あまり風が吹いていなかったので、分かりづらかった様だが、どうやら自分達が今いる位置が風下に当たる様だ。
「好都合だね。それじゃあこのまま進んでいって、熊を発見次第、戦闘開始って事だね」
「ああ。だが油断は禁物だ。少しでも気付かれない様、細心の注意を払って近づこう」
 冒険者達は木々を壁にし、自分達の姿をできるだけ発見されにくくして、素早く熊のいる方向へと近づいていく。するとある程度進んだ所で、先頭を走っていたルクスが止まれのジェスチャーをした。どうやらこれ以上近づくのは危険の様だ。
 冒険者達は持っていた遠眼鏡で様子を確認すると、100mほど離れた所に熊が6匹いるのが確認できた。大きさを見る限り、ここに変異熊はいない様だ。
「……変異熊、いない、みたいだ……」
「なら、さっさと片付けようぜ。こいつら相手に時間も体力も使ってられないからな」
「分かったなぁ〜ん。俺とルクスが紅蓮の咆哮使うなぁ〜ん。それが戦闘開始の合図なぁ〜ん。それまでここで待ってるなぁ〜ん」
 冒険者達がそれに頷くと、アシュレイが熊に向かって走り出す。
「……ルクス、いく……」
 それから一足遅れて、ルクスも熊に向かって走り出していった。

●ベアーハント
 熊達はすぐに2人に気付き、物凄い勢いで駆け出してきた。あっという間に2人に近づく熊達。だがそれは紅蓮の咆哮を使う2人にとって好都合だった。
「さて、早速だがお前達には麻痺してもらおうか」
 戦闘モードのスイッチが入り、語尾の『なぁ〜ん』が消えたアシュレイが、熊に向かって紅蓮の咆哮を使う。すると1匹の熊が動けなくなり、その場に崩れ落ちた。しかし動ける熊はまだ5匹もいる。間髪入れずにルクスも紅蓮の咆哮を使い、更に2匹の熊を麻痺させる事ができた。
「さて、麻痺しなかった奴らから倒していくか」
「……うん」
「よし、俺達も行くぞ!」
 ルクスとアシュレイが麻痺しなかった熊に襲い掛かるのを見て、待機していた冒険者達も熊に襲い掛かる。
「これでもくらえ!!」
 キッドの放った飛燕刃は熊の体を切り裂き、傷口から鮮血を滴らせる。
「さあ全てを焼き尽くしなさい! スキュラフレイム!!」
 悲鳴を上げ、よろめく熊に、ヴィーナがスキュラフレイムを放つ。獅子と山羊が熊の体に深く喰らいつくと、そこに蛇が毒を流し込み、爆発炎上する。熊はそのまま前のめりで倒れると、もう二度と動く事は無かった。
「グガアァッ!!」 
 その熊が倒れるのとほぼ同時に、別の所からも熊の叫び声が聞こえてきた。どうやらアシュレイとルクスが仕留めた様だ。
 仲間が次々に倒されるのを見て恐怖を感じたのか、動く事のできた最後の熊は一目散に逃げ出した。
「悪いが逃がす訳にはいかない……」
「………」
 逃げ出した熊を追ってヴァイスとロアが走り出す。熊は必死になって逃げるが、2人から逃げ切る事はできず、すぐに追いつかれると、2人の攻撃をくらい、あっという間に倒されてしまう。
 動ける熊でさえ冒険者の相手にならないのだ。動けない熊に勝ち目があるはずもなく、次々と冒険者達に仕留められていく。
「残りはこいつだけか……」
「ええ。動けなくなった相手を攻撃……というのは、あまり良い気分じゃありませんが、生かしておいたらまた人を襲うかもしれません。ここはやはり……」
「そうだな。せめて苦しまない様に一太刀で……」
 と、ヴァイスが剣を振り上げたその時!
「危ない!! みんなその場から離れろ!!」
 後方にいたトゥースが大声を上げる。
「「「!?」」」
 訳も分からぬまま、トゥースの指示に従って冒険者達がその場を離れた次の瞬間……
 
 ズドオオオオンッ!!!

 大きな地響きとともに大地が揺れ、木々に止まっていた鳥達が一斉に羽ばたいていく。
「な、なんだ! 何が起こったんだ!?」
 冒険者達が音のした方を振り返ると、そこにはかなり大きな岩があった。そしてその岩の下には、先程トドメを刺そうとしていた熊が下敷きになって死んでいるのが見えた。もし逃げ遅れていたなら、冒険者達も熊と一緒に天に召されていた事だろう。
「こんな事ができるのは……まさか!?」
「ああ、ご登場みたいだぜ。変異熊さんがよ……」
 トゥースの視線の先にいるのは6匹の熊。その内の2匹は周りの熊より体が大きく、殺意に満ちた瞳でこちらを睨み付けていた。

●現れた変異熊
「トゥース! 岩を投げた熊はどっちだ?」
「いや、岩が飛んでくるのが見えただけで、どっちが投げたかまでは分か……」
 トゥースがそこまで言った時、6匹の中で1番大きな熊が近くにあった巨木を引っこ抜き、大きく吠える。それを合図に4匹の普通の熊が冒険者達に襲い掛かってきた。
「……間違いなく今のが雄の変異熊……だね」
「……ですね」
「って、納得してる場合か!? 来るぞ!」
「俺とルクスが熊の動きを止める。みんなは変異熊を頼む!」
 アシュレイとルクスは襲い掛かってくる熊に紅蓮の咆哮を使う。だが!
「……効かない!!」
 熊達は動きを止める事無く、そのまま突っ込んでくる。
「ちっ!」
 冒険者達は間一髪で熊達の体当たりをかわすが、そこに間髪入れずに雄の変異熊が襲い掛かってきた。
「な!? いつの間に!?」
 雄の変異熊は持っていた巨木で冒険者達を薙ぎ払う。そこには仲間の熊達もいたが、そんな事はお構い無しの様だ。冒険者と共に熊も吹っ飛ばされる。
「な、なんてパワーだ……」
「くっ! さすがに強いな……だが、負ける訳にはいかない!」
 アシュレイはそのまま突っ込み、雄の変異熊に一太刀浴びせるが、変異熊の発達した筋肉に阻まれ、それほどのダメージを与える事はできなかった。
「だったらこれでどうだ!!」 
 アシュレイに続いてキッドが飛燕連撃で攻撃する。キッドの放った3本の気の刃全てが変異熊の体を切り裂く。
「グウウゥゥ……」
 変異熊はかすかにだがうめき声を上げた。
「やった! 効いてるぞ!」
「よし、それじゃ一気に片付けるぜ! ニードルスピア!!」
 トゥースの放った幾百本の鋭い針は、近くにいた普通の熊とオスの変異熊の体に突き刺さるが、雌の変異熊には有効範囲外にいた為、針は途中で消えてしまい、突き刺さる事は無かった。
「ちっ、あいつまでは届かなかったか……」
 しかしこの攻撃が今まで後ろで佇んでいた雌の変異熊を動かした。
「ウガアアアアアアァァァァッッッ!!」
 さっき雄の変異熊が上げたものより、更に大きい雄叫びを上げると雌の変異熊がドスンドスンと音を立てながら、冒険者達の方へと向かってくる。
「わざわざ自分から来てくれるなんてな。そっちまで行く手間が省けたぜ」
 ヴァイスは飛燕連撃を放って雌の変異熊を攻撃する。気の刃が変異熊の体を切り裂き、傷口からは鮮血が噴き出たが、変異熊はそれを気にする様子も無く突っ込んでくる。
「ちっ、足止めにもならないのか!?」
 そしてある程度の距離まで近づいた変異熊は大きく息を吸い込み、冒険者達に炎を吐き出した。

 グゴオオオオオォォーーーーッ!!!!!

 冒険者達は用意してあったマントを使って身を守るが、それで防げたダメージは微々たるものであった。特に前衛で戦い、雄の変異熊の攻撃を食らっている冒険者達に今の攻撃は堪えた。再び炎を吐かれたら重傷は免れないだろう。
 と、そこに鎧進化を使い鎧の形状を大きく変えたロアが斬り込んでくる。ロアは変異熊の足元に飛び込むと、喉元めがけて剣を振るう。剣は熊の喉を斬り裂くが、致命傷には程遠い。
 ダメージを与えられた事に怒った熊はロアに殴りかかるが、ロアは熊の攻撃を盾で受け止めながら後ろに飛ぶ。鎧進化を使っていた事もあって、ほとんどダメージを受けなかった。
 しかし間合いが空いた事で、熊は再び息を吸い込み炎を吐き出そうとした。
(「マズイ!!」)
「させませんよ!!」
 変異熊が炎を吐き出すより先に、ヴィーナがスキュラフレイムを放つ。放たれたスキュラフレイムは変異熊の喉元に喰いつき、毒を流した後、爆発する。
「ウォォォーーーーン!!」
 叫び声を上げ、変異熊は地面に膝をつく。
「ソフィーさん! みんなの手当てを!!」
「分かりました!」
 ソフィーは雄と雌の変異熊に傷つけられた仲間達の回復に向かう。しかしそうはさせまいと雄の変異熊がソフィーに襲い掛かる。雄の変異熊は巨木を振り上げると、ソフィー目掛けて振り下ろす。
「医術士だからって舐めないで下さい」
 ソフィーは熊の攻撃をかわし、逆にスキュラフレイムで熊を攻撃する。瀕死の熊はこの攻撃に耐え切れず、爆発と同時に大きな叫び声を上げて絶命した。
「……これで、残りは、お前、だけ……」
 ルクスは雌の変異熊に近づくと、愛用の巨大剣を振り上げ、ファイアブレードを使う。魔法の炎が巨大剣を包み込んで燃え上がる。
「……殺します……」
 そう言って振り下ろされた巨大剣は変異熊の体を両断した。

●安らかな眠りを
「せめて墓でも作ってやるか……。アンデッド化しても動けんくらいにしっかりとな……」
「作るんだったら僕も手伝うよ」
「俺も手伝うなぁ〜ん♪」
 ヴァイスの言葉にキッドとアシュレイが同意する。
「無事に依頼を成功させる事ができて良かったですね」
 にっこりと微笑むソフィーにロアが頷いて答える。
「……ヴィーナと、トゥース、いない。どこ、行った?」
 ルクスは辺りを見回すが、そこにヴィーナとトゥースの姿は無い。
「ヴィーナさんとトゥースさんでしたら、一足先に村に向かいましたよ。少しでも早く村人に報告したいって」

「冬だからあまり大した花が咲いてなかったが、こんなもんでいいか?」
 トゥースが近くで摘んできた花をヴィーナに渡す。
「ええ、これで十分ですよ」
 ヴィーナは花を受け取ると、それを変異熊の雄と雌から取った爪と一緒に、村の入り口に供える。
「無事に熊を倒しましたって証か?」
「違いますよ。熊の爪は魔除けになるって聞いた事があるんです。それで……」
 そう言ってヴィーナは手を合わせる。
「どうか平穏を乱された村の方達が、今度こそ安らかでいられますように……」
 トゥースは何も言わなかったが、その想いはヴィーナと一緒だ。静かに目を閉じると、亡くなった村人達の事を想って黙祷を捧げた。
 冷たく吹きつけていた北風が一瞬暖かく感じられたのは、2人の祈りが届いたからだろうか……。


マスター:月影絶影 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2004/12/12
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