【尻尾で愉快な仲間たち】盗賊団が郵便配達



<オープニング>


 それはある日のこと。
 盗賊団としての戦利品を眺めていたサヤは、ふと、その中に紛れていたそれを見つけた。
「これって……」
 サヤはしばしそれを見つめた後、大切そうに抱え、仲間の姿を探した。
「ねぇシリン兄。これ、何て読むの?」
 字の読めないサヤは、シリンが読んでくれるのを何度も頷きながら聞き覚える。
 そうして、満面の笑みを浮かべると、
「ありがと。セイン兄には内緒だよ」
 そう言い残して、駆け出していくのであった。

「と、言うわけでして。サヤの後を追ってはいただけませんか?」
 ゆらり。首と一緒に鼠の尻尾を傾げ、シリンは尋ねた。
 相手は、霊査士のリゼルである。
 盗賊を自称する彼が、寄りにもよって冒険者の酒場に訪れるとは、一体、何を考えているのだろう。
 リゼルは当惑しながらも、とりあえず、話を伺ったのだ。
 それによると、行商人から盗んだ品の中に、預かりものと思われる手紙が紛れ込んでいたそうだ。
 それを見つけたサヤが、一人で届けに行こうとしている、と。そう言うことらしい。
 それだけならいい。だが、シリン曰く、唯一かつ最大の問題があるそうで。
「サヤは、極度の方向音痴でして。それも、無自覚の」
 なるほど、それは問題だ。
「送り手、受け手、双方の思いの詰まった物を手にしているわけですから、迷わせるわけにも行きません。かといって、既に発ってしまったサヤを追うのは、私には至難です」
 すがる場所はここだけ。苦笑するシリンを見ながら、リゼルはため息をついた。
「とりあえず、彼を探してみましょう。で、盗みの片棒を担げと言うわけではないんですね?」
 伺うような問いに、ニコリ、笑顔が浮かぶ。
「はい。あ、お礼もしますよ。勿論」
「盗品で?」
「いえ。まっとうに働いた成果で」
 本当に、彼は、彼らは、何を考えているのだろうか。
 リゼルはやはり当惑を見せながらも、酒場をぐるり、見渡すのであった。

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参加者
銀星の射撃手・ユイ(a00086)
おきらく女剣士・サトミ(a00434)
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
青嵐の歌人・レイディア(a05847)
森緑の風追人・ディオ(a09121)
光翼纏いし気弱な天使・ミア(a09735)
春謡・ティトレット(a11702)
嵐の中に舞い戻った戦竜・ソウリュウ(a17212)


<リプレイ>

 遠く、遠く。遠眼鏡を用い、平坦な道の続く森を眺めていた森緑の風追人・ディオ(a09121)は、あまりに変化のない景色に、ため息をついていた。
 届けるはずの手紙を手に、自称盗賊団の一員、サヤがいるはずの場所なのだが、既にこの辺りには居ないのだろうか。一向に、姿が確認できない。
(「サヤの気持ちを尊重するのは難しい気がするが…皆優しいのな…俺は…とりあえず手紙が届けば、それでいいか…」)
 変わらず遠眼鏡を覗き込みながら、ディオはまた、ため息をつくのであった。
 同じように、銀星の射撃手・ユイ(a00086)は、竜の門に挑む者の武人・ソウリュウ(a17212)、木漏れ日の医術士・シトロン(a13307)とともに、サヤを探していた。
 主にユイが動物達に聞き込みをし、その間に二人が近辺を探し回ると言った方法。地道な作業である。
「ん…そっかぁ…アリガトね〜。……見なかったって」
「そうか……こっちも、全くだな」
「道なりに進んでいけば、きっと会えますよ」
 ユイのため息にソウリュウが肩を竦め、シトロンは苦笑する。
 そんな、全く持って収穫の得られない作業を続けていると、ばさり。空から、一羽の鷹が降りてきた。
 鷹はおもむろにユイの肩に止まると、何かを訴えようとして、ユイの頭をつつく。
 それは、ユイのペットであるファル。「兎尻尾の人」を見つけたら戻ってくるよう告げて、空へ放していたのだ。
 それが、戻ってきたと言うことは……。
「あぅ、痛いよ……」
 二言三言、獣達の歌で尋ね事をすると、ユイはニコリと微笑んで、ソウリュウたちを振り返った。
「いたのか?」
「うん。もう、皆と会ってるって」
 どうやら、既に他の仲間が、サヤを発見していたようだ。無事に見つかって、ホッとする三人。
 一番乗りでないのは、少し、残念だけれど。

 その、サヤはというと。
「あら、この間のサヤさん……でしたよね。こんなところでどうしたんですか」
 だだっ広い、何処とも知れぬ道を歩いていた所を、想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)が保護していた。
 サヤに目的達成の意識を持たせるため、あくまで、偶然を装って。
「ちょうど私もその街に届物の用事があるんですけど御一緒しませんか」
「うん、一緒に行こう♪」
 あっさりすんなり何の疑いもなく同行を認めると、二人は歩き出す。
 簡素な会話をいくらか繰り返しながら目的地へ向かっていると、今度は、おきらく女剣士・サトミ(a00434)と出くわす。
「わっ。サヤ君だよね! お久しぶり〜♪ ねぇ、どこ行くの…わたしも付いていって良い?」
「えぇっとね。これにかいてある場所だよ。お姉さん、一緒して平気なの?」
 サヤから手紙を受け取り、場所を確認だけして、サトミはニコッと笑って見せると、サヤの手を握った。
「わたしの目的は『良い男探し』だから目標達したんだよ」
 えっへん。胸を張って言う彼女に、サヤは楽しそうに笑う。
 と、両手に華状態のサヤの前に、木陰に佇み、小鳥を携え鼻歌を歌っていた青嵐の歌人・レイディア(a05847) が、現れた。
「…奇遇ですね。散歩ですか?」
「ううん、届け物」
 手紙をヒラヒラと見せ、微笑むサヤ。そんな彼に、レイディアもまた微笑む。
 そうして、小鳥に別れを告げると、尋ねた。
「…良ければ同行させて貰いたいのですが…駄目でしょうか?」
「ん? いいよ」
 やはり、あっさり承諾するサヤ。そんな彼に、ひょっこりと顔を覗かせた小春日・ティトレット(a11702)は笑いかけた。
「初めまして。私は……レイディアさんの付き人のティレットと言います。宜しくお願いしますね」
「うん、よろしくー」
 人見知りはしない性格のようだ。初対面のティレットとも、瞬く間に打ち解けて。
 五人は、連れ立って手紙配達先へと向かうのであった。
 ラジスラヴァが持参した絵本を広げて文字を教え、その反対側からサトミが一緒になっておしゃべりを続け、レイディアがそれを後方から微笑ましげに眺め、そんなレイディアの付き人Aを自称してしまったティレットは、離れるのも何だかおかしいし。
 サヤを中心に、奇妙な一団が出来上がってしまっていた。
「サヤ君は、好きな人とかいる?」
「うん。でも内緒」
「えー、残念。そういえば、シリンさんカッコいいよね〜」
「シリン兄のことはスズリ兄に聞かないと判んないよ? あ、年は21って聞いたけど」
 サトミとサヤは楽しそうに会話を続けている。内容は主に女性が好みそうな話題なのだが。
「そういえば、皆さん凄く仲が良さそうに思えたのですが、ご兄弟ですか? …盗賊をするために出会ったわけではないのでしょう?」
 さりげないレイディアの問いかけに、サヤは彼を振り返り、思案するように視線を宙にやった。
「探るの好きだね、お兄さん。僕らは兄弟じゃないけど、物をとるために出会った仲間だよ」
「物を、とるため……」
 その言葉に、ティレットは思わず反芻していた。
 サヤはなお、語る。
「うん。目標があるんだよ」
 訝しむような視線を、眺めながら。

 一方。ずいぶんと装いの違う一団が、ここにもいた。
 シリンを先頭にした、自称盗賊団と、彼等を呼び出した当人である願いを抱く気弱な天使・ミア(a09735)。
 サヤたちの賑やかしさとは対称的に、何となく静かだ。
 その要因は、何と言っても団長を名乗るセインの沈黙であろう。
 彼だけを残して他の面子を誘うのも何だかおかしいと、同行してもらったのはいいのだが。
 見ようによっては怒っているような雰囲気が、静かな空気に重みを与えている。
「私たちがサヤさんを探していると言うことは……できれば、本人には内緒にしてあげてください……」
 「セインには内緒」な郵便配達のことは口走らないよう、捜索作戦の概要とお願いを告げながら。
 ミアは、それぞれの姿を一瞥して、そろり、顔をあげた。
「あの……皆さんは、どうして盗賊をしているんですか……?」
 一番近いシリンに尋ねれば、彼は他の者を振り返り、微笑んだ。
「笑わないでくださいね。伝説になりたいんです」
「伝説……?」
「そ。どんな宝も華麗に盗む、伝説の盗賊」
「いまは自分の生活で手一杯だけど……行き着く目的は貧しい村の援助」
 問い返したミアに、ソフィ、スズリが補足していう。
 「はぁ…」と一つ頷くミアだが、何も盗賊として伝説にならなくてもいいのにと、思ってしまったりも。
 すると、いままで黙っていたセインが、口を開いた。
「呆れるならそれでいい。価値観が違うだけだ」
 そうして、冷たく、言い捨てる。
 そして。
「セイン兄はそう言うんだけどね、ホントは、捜し物をしてるんだよ。行商人ゴッコしたどっかの盗賊にとられた、宝物」
 レイディアと、その隣のティレットとを順に覗き込み、いたずらっぽく首を傾げて見せると、
「理解してもらう気はないよ。咎めるなら、抵抗するだけ」
 サヤもまた、無垢な笑顔で彼等を突き放すのであった。

「ん……あれは……?」
 サヤの辿るはずの道に障害がないようにと見回っていたソウリュウは、視線を巡らせた先に見つけた姿に、目を凝らす。
 気付いたシトロンも倣い……。
「あ。セインさんたち。どうしたの?」
 真っ先にユイが駆け寄った。
 手を振りながら微笑めば、知った顔に会ったためか、少しだけ、表情が和んだ。
「サヤが道に迷ったらしい」
「こちらの方が見かけたと教えてくださいまして。一緒にその場所へ向かっているんです」
 ミアを示しながらしれっと笑うシリン。
「あ、じゃあ、さっき見かけたのはサヤさんなのかな。街の方に向かってたよ」
 合わせ、にこやかに指をさすユイ。
「俺たちも同じ場所へ向かう。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「そうですね。では、束の間ですが宜しくお願いしますね」
 ソウリュウの申し出にも示し合わせたように了承して。
 嘘臭さのにじみ出るやりとりに、伝言を担ったファルについて合流していたディオはつい、苦笑していた。
 やはり、優しいのだな、と。
 一同連れだって歩きだせば、今度はユイたちが先導しだす。
 少し後ろに下がったシリンを一瞥すると、ディオは小声で尋ねた。
「送り手や受け手の気持ちは考えるのに、品物を盗まれた行商人の気持ちは考えないのか?」
「アレは全部返しましたから気にすることではありません」
 やはり、しれっと。笑顔を崩さずに、シリンは言う。
「セインには本当の悪人になってもらいたくありませんから。私とスズリとソフィとでこっそり返してるんですよ。セインには売り払ったと告げて。私たちが働いているのも、ごまかしのためですし」
 困ったように肩を竦め、けれどやっぱり微笑すると、シリンは、唇に人差し指を当てた。
「セインには、内緒にしていてください」
 そうして、何処までも不思議な印象を植え付けるのであった。

「ん、この家だよね」
 道中ラジスラヴァと共に少しばかり覚えた、読み方を頼りに、サヤは目的の場所を見つけ、満足と、安堵の混ざった表情を浮かべて投函した。
「これで、よし」
「お疲れ様です。はい、ご褒美です」
 にっこり。ラジスラヴァは道中広げていた絵本を、サヤに差し出す。
 サヤは、驚いたように目を丸くしてから、彼女と本とを交互に見て。そうして、苦笑した。
「ご褒美かぁ……嬉しい響きだけどね、僕、絵本って年でもないから」
 頬を掻き、きょとんとするラジスラヴァを見つめると、
「これでも17歳。子供っぽいってよく言われるけどね」
 肩を竦めて、笑うのだった。
 丁度、その時だ。他の者らもまた、目的地についたのは。
「あ、ヤバっ。セイン兄だ。ゴメン、またね!」
 バツの悪そうな顔をしてかけていったさやを見送り、そうして、合流した彼らを見やって。
 微笑ましさと羨ましさを抱きながら、レイディアは笑い、ティレットは、呟いた。
「ずっと、仲良しでいて欲しいな……」
 こうして、盗賊団の郵便配達は、無事、落着するのであった。


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作成日:2004/12/21
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