全ての人に愛の手を〜スケートに行こう!〜



<オープニング>


 始まりは一通の手紙。
 内気な半人前看護士・ナミキ(a01952)の元に、見知った名の記された手紙が届いたのだ。
 それは、毎年冬になるとお世話になっている山間の村からの手紙。
 そこへは氷の張った湖にてのスケートやら釣りやらを楽しみに、訪れていたのだ。
 あまり道も整備されておらず、決して気軽に行けるところではないため、村人以外の人口は極めて少ない。
 けれどその分、人との繋がりを感じることのできる、そんな、村だった。
「そう言えば、今年からスケート大会を開くと言っていましたね……」
 ナミキはワクワクしながら手紙を検める。
 村活性化のために企画したと言う大会。その案内かと思いきや。
「親父さんが、怪我……?」
 不安げに眉をひそめ、ナミキは手紙を読み進める。
 概要としては、こうだ。
 お世話になっている親父さんが怪我をしたそうだ。
 彼はスケート大会の運営の中心となっていた。
 息子と娘が代わりに作業を進めているが、元々人手の少ない村のため、まかないきれない。
 近隣の町や村への宣伝も滞っており、このままでは大会自体が成り立たないかもしれない。
 ……結構、深刻らしい。
 ナミキは一通り目を通してから、しばし思案した後、踵を返した。
 向かう先はSAKURA HOUSE。手近なところから声をかけ、皆で手伝いに行こうと言うのだ。
 無事に成功させたい。ナミキは、その思いと意気込みを胸に、足早に向かうのであった。

マスター:聖京 紹介ページ
この度はリクエストいただきありがとうございます〜。

さて、まずはどんな大会にするのか、お話し合いください。雰囲気ではなく、内容です。
プレイングには大会の概要(どなたか一名)と、
村についてからの行動内容(全員)を明記ください。

ちなみに、息子さんの名はレイン、娘さんの名はメロウ。二人ともいい子です。
なお、サザも付き添いますので、どなたか指示をしてあげてください。

参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
柳緑花紅・セイガ(a01345)
内気な半人前看護士・ナミキ(a01952)
兄萌妹・フルル(a05046)
黒バニーなお姐さん・アリス(a10264)
その他・ベルゼベル(a11017)
天使と悪魔なのんびり自由人・プリノ(a12089)
芒舞・レイリス(a13191)
NPC:快活陽姫・サザ(a90015)



<リプレイ>

●準備は大事!
 晴れ渡った空。澄み切った湖面。そしてその境界のように佇む氷。
「まさに、絶好のスケート日和ですね」
 大会はまだですけど。と、紙の束を抱えた自由探求者・プリノ(a12089)が、キラキラと光る氷の湖を眺めながら呟く。
「そうね〜。スケートは敵だけど」
 同じ量の紙束と扇子を手に、静戦の舞華・レイリス(a13191)も笑顔で言う。
 呟きの中身がちょっぴり不穏な気がしたのは、気のせいだ。
 さて、彼女等の持っている紙束は何かというと。
 今回とある山間の村で行なわれるスケート大会の告知だ。近隣の村や町に知らせるべく、先の二人他華一杯の面子で回るのだ。
「ぼくの魅力でお客さん呼ぶね〜」
 やる気満々の兄萌妹・フルル(a05046)。
「ふふ、沢山来てくれるといいわねぇ」
 既にはしゃいでいる永憂戦姫・サザ(a90015)。
「趣味のランニングで鍛えた足を使うか」
 華と呼ぶにはちょっと疑問かもしれない月光と闇・ベルゼベル(a11017)。
 そして、スケート大会の手伝いを言い出した、内気な半人前看護士・ナミキ(a01952)だ。
「親父さんの容態、思ったより軽くてよかったですね。それじゃ、張り切っていきましょう!」
 歌って走って踊ってまいて。えらく奇妙な散らし配り団は、順調に、大会を広めていくのだった。

 一方その頃。お客を呼び寄せるために肝心な『道』の整備に勤しむ者、大会の会場整備を行なう者が、村には残っていた。
「ナミキクンの頼みを断れるわけ無いじゃない!」
 会場設営にきびきびとあたる戦うお姐さん・アリス(a10264)。恋する乙女は大変である。
「力はありあまってるからな。こう言うことで手伝えるなら、こっちも嬉しいもんだな」
 柳緑花紅・セイガ(a01345)もまた、道具の点検、整備をしながらにっ、と笑う。
 時間もなく、人数も少ないためか、皆実に急がしそうである。
 勿論、運営主催者レインとメロウも。
「おかげで何とかなりそうだな」
「ですね。本当に助かりました」
 そんな、彼らを見て。
「……仲のいいことは、いいことですね」
 作業の傍らに、想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は、小さな歌を、口ずさむ。
 大会開催までもうわずか。告知を終えた者らも加え、作業は急ピッチで進められていくのであった。

●いよいよ開催!
 見事に晴れ渡った空の下、透き通った氷の舞台は三つ、用意されていた。
 一つは競技用、一つは初心者講座用、そしてもう一つは、こじんまりとした釣り場である。
「今年の大会の成功はきっと来年もまた沢山の幸せを運んできてくれるハズだぜ」
 釣った魚をその場で調理、のキャッチフレーズの元、セイガは村の奥様方とともに釣り場の隣で出店中。
 リンク同様こじんまりした魚がちまちまと連れるらしく、なかなか盛況だ。
 若い女性や奥様方にセイガがちやほやされているのも理由の一つと思われるが。
「さて、競技の方はどうなってんだろな」
 ひょい、と顔を覗かせたその先では、ナミキ対フルルのスピード勝負が繰り広げられていた。
 さすが冒険者と言うよりは、さすが上級者。毎年滑りに来ているだけあって、ナミキもフルルもものすごいスピードでリンクを回って行く。
「おー、すげぇなー」
 人だかりと歓声で、どちらが勝負を制したのかまでは見て取れなかったが、参加者も観客も、楽しんでいるようなので良しであろう。
 大白熱の大会。それ以上に賑わっていたりするのが、初心者講座用のリンクだ。
「わ、わわ…はうっ!?」
「ひっ、ふぇっ?! …っととっ?!」
「クッ……意外と難しいものだ……」
 何度も転びまくって尻餅をついているプリノといい、扇子やらメモやら引っ張り出してバランスを取ろうとしているレイリスといい、ギリギリ立っている状態で一歩も動けないでいるベルゼベルといい。
 そろいも揃って初心者な冒険者一同であったり。
「嬢ちゃん、ホラもっと体起こして。手すりに掴まってゆっくり……そうそう」
 レインの指導を受けながら、少しずつ少しずつ滑っている状態だ。
 無論、彼らのみならず、その場にいる大半の者が同じ状態だが。
「プリノさーん、この子怪我しちゃったみたい」
「ふぇ!? い、いま行きます〜」
 そんなわけで、プリノ持参の【天使の診療所】依頼用救急医術士BOX〜グリーンバージョン〜及び仮設休養所が大活躍なのであった。

●競技も大詰!
「チョコレート、栗にゼリー、そしてメロンは如何か〜」
 ぺたん、ぺたん。
 リンクの周りをサンダルで歩きながら声張り上げるベルゼベル。
 中身がえらく季節感を無視しているような気がするのは捨て置いて、無料で配布中だ。
「チョコレート、栗に……ん?」
 ぺたぺたと歩くその視線の先に、氷の上に座り込んだ少女を見付けた。
 近寄ってみると、なるほど、転んだらしい。おまけに、親とはぐれたようにも見える。膝を抑えて、すすり泣いていた。
「大丈夫か?」
 問えば還る沈黙。苦笑して、ベルゼベルは一先ず、癒しの水滴で怪我を治療してやる。そうして、
「一緒に行くか? 誰と来たのか知らないが、休養所に行けば、見つかるかもしれないぞ」
 手を、差し伸べる。
 少女は一瞬と惑って、ベルゼベルの顔を見上げると、こくり、頷いて立ち上がるのであった。
「よし、行くか。えーチョコレート、栗にゼリー、そしてメロンは如何か〜」
「如何か〜」
 ぺたんぺたんと配り歩き、やがて少女を無事同伴者のもとに連れて行ったのは、ちょっとした余談である。

 見回り、観察、見回り……。
 リンクの周囲をうろうろしつつ、アリスは時折その姿を眺めていた。
 ナミキと話す、サザを。
「ナミキさんも参加するの?」
「しますよ〜。このためにメロウさんとフルルには衣装チクチク作ってきましたから!」
「お兄ちゃんとペアなんだよ〜。メロウさんの演技は凄いから要チェックだよ」
 話す姿が、やけに遠くに見える。
 じぃ、と眺めて、アリスはつい、ため息をついていた。
「なんか、やっぱり『かなわない』のかなぁ……」
 それは小さな呟きだったけれど。
 そこに込められた思いが、酷く、大きくて。
 アリスはつい、ため息をついていた。
 が。
「ま、それはそれよ」
 握り拳一つで気合を入れなおすと、思った異常に盛況なスケート大会の雑用をこなすべく、会場を回りだすのだった。

「なかなか好調ですね♪」
 ぐるり会場を見渡しては何事かメモを取っているレイリス。何を書いているのかが全く持って不明なため、酷く、気になる所である。
「お姉ちゃん、何書いてるの?」
 度々かけられる無邪気な問いかけ。別に見られて困るようなことは書いていないが、あえて見せるようなものでも、なく。
「いろいろ、よ♪」
 なでなでとあしらって、レクチャーのおかげでなかなかに上達した滑りで、ついと去るのであった。
 向かう先は、本日メインのイベント。競技用リンクで行なわれる、演舞だ。
 ナミキ作の衣装を纏ったメロウは、優雅に一礼して、そうして、リンクを駈ける。
 フルルがファンだといい、チェックを勧めたその演技は、麗々でありながら繊細で、やはり、美しいと言うに相応しかった。
 ナミキとフルルも負けてはいない。メロウとは違った愛らしさ、細やかさが、とても、優美で。
 皆が見入り、そして感嘆の声に包まれる中。スケート大会は幕を閉じるのであった。

●最後は勿論…。
「皆さんのおかげで大会も無事終えることが出来ました」
「来年ももっと楽しめるように、皆で頑張ってくぜ〜♪」
 メロウ、レインの挨拶に始まり、宴会開始だ。
 冷たい夜の空気の中、大きな炎を炊いて、飲めや歌えやの大騒ぎ。
「ナミキさん、今日は疲れましたけど、とっても楽しかったです。ありがとうございました♪」
 ジュース片手に、ぎゅっ、とナミキに抱きつくプリノ。対抗して、フルルもナミキにしがみ付く。
「両手に華だな、ナミキ。にしても、今日は手伝わせてくれてありがとな」
「こちらこそ。急にお誘いしたのにありがとうございました」
 セイガが自分で釣った魚を味わいつつ微笑めば、ナミキも応じて、笑う。
 ベルゼベルは、とりあえず人前で無様に転ぶこともなく終えられて、やれやれと言うように炎を眺めていた。
「楽しんでもらえたようで、良かったわね〜」
 始終メモノートと睨めっこしていたレイリスの言葉には、皆大きく頷く。
 来年も、同じように賑わってくれればいい。
 そんな思いも込めて、ラジスラヴァは今日と言う日を歌にしたものを、やはり、小さく口ずさんでいた。
 余興の傍ら。まるで無縁だと言うような場所で、大きな炎を遠巻きに、アリスは小さく、ため息をついていた。
 昼間のことが尾を引いて、何となく、一人でぽつんとしていたのだ。
 そんなアリスの横から、ひょこり、顔を出して。
「隣、いいかしら?」
 サザはニッコリ、笑いかけた。
「ずっと見られてたような気がしたから、お話、したいなぁって」
 よいしょと腰掛けながらいうのを、やっぱりばれていたかと言うように苦笑しながら聞いて。
 アリスは、膝を抱え込んだ。
「今日は、ナミキクンのお手伝いが出来てよかったわ」
「そうね〜。私も、誘ってもらえて嬉しかったな」
 それは、どういう意味で。
「皆で何かするっていうの、楽しくっていいものね」
 その表情は、心底、楽しんだのだと言うようで。
「……そうよね。またこれるといいわね」
 アリスはやっと、顔を上げて笑えたような気がするのであった。


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