【水晶の館】フォーナinスィートカカオ



   


<オープニング>


「……またこの季節がやってきたんだね〜」
 見慣れたビラを眺めて、チェリーはほうとため息をつく。
「そうみたいですわね」
 プラムはそんなチェリーを見て、にこにこと微笑む。

【『水晶の館』フォーナ記念日のお知らせ。
  いつもお世話になっております。今年のフォーナを持ちまして、水晶の館は一周年を迎えます。
  これもひとえに皆様のおかげ。フォーナの夜は特別にスィートなものを用意させていただくことになりました。
  また、新館が増えましたのでそちらのほうもよろしく!
                           水晶の館 支配人 ダンデライオン』

「ボクには関係ないんだけどなぁ」
「ぼやいてばっかりじゃいけませんの、チェリー」
 プラムに諭され、チェリーは「そうだね」と顔を上げる。

「というわけでだよ。
 水晶の館からまたサービス券つきビラをいっぱい貰っちゃったので、行ってみたいなーって人を募集だよ♪
 こっちのスィートカカオ館は15歳未満参加禁止なんだって背後さんが言ってたの。寒い夜を熱く過ごしたい二人にぴったりの場所なんだって♪」

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参加者
NPC:ミニモニハンター・チェリー(a90020)



<リプレイ>

●門前
「雪?」
 漸くビラ配りを終え、チェリーは空を見上げた。
 暗い夜空から舞い落ちる白い粉雪。
「どろり飲ませろにゃ〜〜!」
 遠くから勢いよく駆けてくるのはラピス嬢。その後ろからコウショウも一緒に駆けているようだ。
「もうこんな時間ではないか! タイムサービス受付終了まであとちょっとしかないのじゃ!!」
「…そ、そうか」
 半分意味が分ってない彼だが、彼女の「男女で行かないと安くならんそーじゃから汝も来い!」という言葉にやや納得したらしい。
 二人が門に消えていくのを見送り、チェリーは塀の隅で休むことにした。
 その前を、「積もり積もった11ヶ月のお話、今日は僕とリヒトンさんのツープラトンで沈めてくれよう〜〜!!」と意気込むティエンが通り過ぎていく。
 けれど目的の人物を見失い、さらに彼女とも逸れたようで、残念!…来年また頑張って下さい。
 そろそろ帰ろうとチェリーが塀から降りた時、少しずつ強くなる雪の中に佇む人影を見つけた。
「リリスさん!」
「今日は外で遊ぼうか?」
「いいの?」
 だって今日は恋人達の大切な夜なのに。
「3人だと微妙に遊べることが限られるな」
 リリスは雪を見上げて苦笑する。そして微笑んで告げた。
「そうだ、かまくらでも作ろうか」
「わぁい♪」
 館に背を向けて、チェリーは彼と彼の大切な人の待つ場所へと去っていった。

●アクアオーラの部屋
 静かな廊下をケイオスは、結婚式を終えたばかりの妻メディスを抱いて歩いていた。
 部屋の扉を確認し吸い込まれるように入っていく。ドレスを纏う彼女をベッドに下ろすと、彼はそのまま彼女の唇に激しく口づけた。
 腕の中のこの温もりが何よりも愛しいと、彼は思う…。
 あなたにあげられるものは、この体だけだから。あなただけのものにして欲しい、彼女は願う…。

 寝入った彼女をベッドに残しケイオスは湯浴みをする。汗を流す身体に残る気だるさが、なぜか心地良い。
「…ケイオス?」
 不安げな声。目覚めたらしいメディスが風呂に飛び込んできた。微かに震えている身体。
「大丈夫、俺は何処にも行かないから」
 彼は微笑むと、怯える彼女の身体を強く抱きしめるのだった…。

●サファイヤの部屋
「冬は寒いけど…こうしていれば暖かいよね」
 蒼色の部屋のベッドの上。ニックはエステルの身を抱き寄せながら囁いた。
 小さく頷く彼女。こういう場所でなら、旅団の時と違って皆の目や…耳を気にしなくていい。旅団長夫婦の小さな悩み?
 服の紐を自ら解き旅団長でもある彼女が頬を染めつつ言うの聞き、その身体をそっと押し倒しながらニックは悪戯っぽく笑った。
「ここは壁も厚そうだしね」
「!」
 真っ赤になる彼女。
「んもう…いじわる」
 拗ねる言葉を塞ぎ、求め合うようにキスを繰り返し、二人は熱い夜へと漕ぎ出していく…。

●ガーネットの部屋
「食事も美味しかったし、夜景もこんなに綺麗で…」
 スティルは窓際から見下ろす、灯りで飾られた館の中庭を眺めた。降り出した雪もその美しさを引き立てている。
「スティルさん…」
 マークの声が響いた。
 今日は二人きり。特別な日、心の準備…そんな単語が胸をよぎる。小さく緊張した彼女をそっと彼が後ろから抱きしめた。
「スティルさんと出会えた事で…俺は一人じゃなくなったんです」
 紅潮した表情を見られぬようにマークは、そのままの姿勢で小さな指輪を彼女に差し出す。
「これからも…ずっと、俺の側にいてもらえますか?」
「…アタシは」
 彼の為に編んだ水色のマフラーをぎゅっと手に握り、スティルはゆっくり息を吸い込んだ。

●アレクサンドライトの部屋
 今、ルシールの隣に腰掛けているラミアはとても小さく見えた。大切な物を失い、辛い思いを沢山経験したからだ。
「強い女を演じても、これが私の限界という事か…」
 この館に彼を誘った意味。彼女は自嘲するように息をつき、笑う。
「私はどうかしているな…戦いの場から逃げ出したのみならず、こうして慰めにお前に抱かれたいと思うとはな」
「ラミア…」
 彼は震える肩を抱き寄せた。
「お前は何でも一人で抱え込みすぎる。一人では辛いのなら俺が半分支えてやろう。…少しは俺を頼れ」
 声にならぬ彼女の悲しみを拭ぎ去るよう、彼は彼女の求めに応じた。
 熱く交じる吐息。動揺と不安はやがて心地よいものになるだろう。他の誰でもなく貴方だけを頼った、その選択を信じて…。

●ルビーの部屋
 ベッドの中。一矢纏わず抱き合う二人。
「…エクセル…愛しているよ」
 愛しい彼女の耳元にそっと囁く。金色の髪を撫で、そのまま背へと動かす。
「…ゴードィ…や、優しくして…ね」
 震える彼女。無垢な体は震える程まだ緊張している。けれど縋るように彼の背に彼女の腕はもたれている。
 優しく抱きしめ、ゴードィはゆっくりと時を惜しむように彼女を愛した。
 甘い吐息は雪に溶けるだろう。
 だから、何も考えず、お互いを求め合おう。
 フォーナの夜はとても長いのだから…。

●アンバーの部屋
「…ぐう」
 ベッドで安らかな寝顔で寝息をたてているツキト。
 小悪魔みたいな微笑を浮かべ、睡眠薬入りの酒を指先で弄んでみせるコユキである。(←良い子はまねしないよーに)
「可愛い寝顔…」
 小さく微笑み、コユキはゆっくりとツキトの服を緩め始める。少々強引だけど、これもまた愛の形。
 彼の上に自らを重ねながら、積極的な奥様は愛する夫に優しいキスを繰り返すのだった。

●インカローズとムーンストーンの部屋
 大富豪中。(また後で)

●ダイヤモンドの部屋
 ベッドに運ばれると、フレイスフィアはアヴァロンを引き倒し寝かせると、その上に馬乗りになった。
 そして鎖つきの革首輪と手足の枷を彼に差し出す。
「…縛ってくださいませ」
 優しく家族も多いアヴァロン。私はやきもち妬きですぐに不安になってしまう。
 疑う訳でも愛想をつかした訳でもない。ダイヤモンドの強い意志が欲しい…。
 その表情を見て取り、彼は彼女の望むままにしてあげる事にした。
 鎖を握り強引に引き寄せ唇を重ねると、小さな身体を組み敷き身を重ねる。

 …本当はこんなもの無くたって、俺はお前を放さない。
 眠りにおちた彼女にそう囁き、彼はそっと口づけた。…愛しているよ。

●ラピスラズリの部屋
 日が落ちる前まで、館の庭を散策し、今は二人ソファでカードゲームを楽しむ二人。
 持参したクッキーとワインの量も、夜も更けて大分減ってきている。
 じーっとカードを睨んでいるエイルの表情を、余裕を含んでフォルテは楽しげに眺めた。記憶と計算が決めてのゲーム。彼女の札まで覚えた彼が手加減してるなんて気づいてない様子。
「ダウト!」
 エイルが歓声のように叫ぶ。
「あーあ」
 彼は残念そうに溜息をつく。
「勝った方のお願いを聞く約束ですわよ?」
 きらきらと瞳を輝かせ彼女は彼を見つめた。フォルテは微笑み身を向きなおす。
「お願いは…」
 綺麗な唇から彼女はゆっくりと言葉を選ぶように語る。 
 去年と同じく一緒に朝日をあなたと眺めたい。…でも今年は暖かなベッドの中で二人一緒に…。

●エメラルドの部屋
「どこに行っていたの?」
 イツキの突っ込みに、アルベルトは5秒程固まった。わざと部屋を間違うとかダメです♪残念♪
「…そうだ、式はいつにしようか?」
 誤魔化す為じゃなくて大切な話。彼の微笑みに、イツキは目を細めた。
「あのプロポーズ、嬉しかったわ」
 そう囁いて抱きしめられる。そして優しい声で耳元に囁いた。
「あたしは貴方のもの、貴方はあなたのものよ…」
 深い口付けの後、彼女は今日のために誂て来たキャミソールを彼にだけ見せてくれた。その黄金の美しさは、彼をきっと天国に導いたことだろう。 
「と、その前に怪我してるでしょ。包帯替えてあげ…」
「子宝に恵まれたいですねぇ」
「あっ…ちょっと!こらっ…」

●屋根の上
「わー!」
 忍び同士なのだからこの程度は楽々、とは思いつつ、ジェイドはユギをお姫さま抱っこして水晶の館の屋根の上に移動した。
 大富豪もそこそこに1ゲームで引き上げた二人は屋根を目指したのである。
 降り積もる雪に少し寒かったけれど、雲間の星に目を奪われる彼女を抱き寄せ、その横顔を機嫌よく眺める。
(…ジェイドさんに「好き」って言ってからもう1年)
 ユギは暖かい彼の腕にもたれ目を細めた。すぐ胸が一杯になって上手い言葉が出てこないけど。
「なあ。…また今年も一緒にフォーナに来れて…良かったな」
 彼の声。振り向いて優しくキスをする。願わくば、来年の冬も、その次も。

●ブラックダイヤの部屋
「リヒトンさん、ここにいましたか!」
「ティエンさんですねぃ〜」
 すれ違い気味だった恋人達もようやく巡り合い。
 カップル同士でそれぞれ人探しをしていたとは、それだけ相性のいい似た者同士だからだろうか。
「…二人でお泊りするんでしたねぃ〜」
 呟く彼女に、ちょっぴり不安にはなるものの。
 食事を取り、楽しく過ごした後、彼女は少し恥ずかしそうに彼を見上げた。
「寝る前に御風呂にはいるんですねぃ〜…」
 湯上がり。石鹸の香りに包まれる二人。
 ベッドの縁にちょこんと腰掛けながら、二人は見つめあう。
「リヒトンさん、これからもよろしくね…」
「そろそろ寝ましょうですねぃ〜…」
 恥ずかしげに顔を背ける彼女をそっと抱きしめ、…二人もまた夜の海へと漕ぎ出でていくのだった。

●ムーンストーンの部屋
 大富豪のカードを片付け、パチパチと響く暖炉の音を聞く。やっと二人だけの空気が戻った。
 指に嵌った輝きにそっと触れ、ティフェルはリィズを振り返った。
「これ、ありがとうね? 上手くいえないけど今までで一番、一番嬉しい…」
 リィズは黙って、彼女を背中から抱き寄せた。
「俺は今、きっと世の中の誰よりも幸せだ」
 みるみる頬を染めるティフェル。その彼女を抱きなおし、深く深く口付けるリィズ。
 そして抱き上げ、ベッドまで連れ去ると、彼はやさしくその体を横たえた。
「ティフェルにフォーナの祝福を…」

●杉石の部屋
「愛している…ラヴィス」
 シシリーの声が甘く響く。まさか私が、こんな風にこんな日を過ごすことになるなんて…貪るような激しい口付けを交わし彼女はとろけていく思考の中で思った。
 汚れた過去、辛い経験。感情の欠落。完全ではなかった私を拾ってくれた。
「シシリー…さん」
 彼の手の平。熱い指から受ける刺激に痺れ、吐息が溢れる。
 その表情を見つめながら、シシリーもまた彼女に心で叫んでいた。
 お前が望むなら、全てを捧げよう。想いの全てを、誓いを、そして…この命さえも。
 お前と生きていくと決めたあの日から、俺の全てはお前のものなのだから。
 汗ばむ二つの身体。華奢なその身の内に、猛る欲望を注ぎ込み、彼は彼女の名を呼び続けた。

●ブラックオルロフの部屋
「贈ったドレス着てくれたんだ…良く似合ってるよメイ」
「そうか?」
 久しぶりの再会。眩しそうに妻を見る視線に彼女は少し照れている。
 彼もまたその空気に照れ、窓の外に目を移す。
「…表に出ないか?」
 降り続ける雪。もう積もり始めている。
 新雪を踏みしめ、灯りで飾られた庭を二人は歩き出した。白い吐息が宙に残る。少し震えるメイの肩に、シュウは自分の羽織るマントをかけた。
「寒さしのぎだ、少し踊らないかい?」
「!」
 メイは一瞬目を見開き、それから頬を染め仕方無さそうに腕を伸ばす。
 手を差し伸べていたシュウは、ゆっくりその指先を捕らえ、微笑んだ。
 静かに降る雪。音楽はない。けれど二人は雪の庭で優雅に踊り続けたのだった。

●ベリルの部屋
 一晩の浄化と食事を引き換えに。
 キティはマオーガーと共に部屋に入った。事を急く彼は、部屋に入るなり彼女を座らせると、ズボンを下ろす。
 十字架を握るように彼女はそれを包み込み唇を添える。彼の悪意を吐き出させることで、彼女の浄化は完成する。
「ま、負けた…あまりにも上手い」
 朝を待たず、崩れ落ちるマオーガー。
「お腹一杯です♪」
 大変満足したような彼女の声と遠ざかる靴音を聞きながら、彼は黄昏の吐息をつくのだった。

●翡翠の部屋
「あの人と来たかったなぁ…」
 ツィッギーは一人の部屋で溜息をぽつり。土塊の下僕だけじゃ完璧には満足できない。
「…逢いたい」
 彼女は心からそう思い、熱い吐息をつくのだった。

●黒曜石の部屋
 乾杯と、グラスの音が鳴り響く。
 自作の料理とワインの並ぶ食卓で、リュシュカとディアナは見つめあっていた。
「今年もまたディオナ殿の手編みのマフラーを巻く季節がきたな」
 1年前のこの日「俺と家族に」との言葉を受けてくれた事、その感謝を思い出し、リュシュカは微笑む。
「…またその手編みのマフラーを使うのか? それは初めて編んだから下手くそなのだぞ…?」
 困ったように頬を染めディアナはリュシュカを見つめる。
 少し酔ったような瞳。心配して寝台を勧めると彼女は素直に従った。
 けれど酔った訳ではない。彼女はそう囁く。
 彼と共に横になり、長い髪を彼の手で梳かれ、やがて抱きしめられながら…。貴方の側ならどこだって安心して眠れる…のだから。

●アクアマリンの部屋
 どろりの空き瓶が転がる部屋の中、疲れて寝入るラピス姫。その寝顔はとても満足そうだ。
「…仕方ないな」
 起こすのも可哀相と、コウショウは彼女を背負って帰路につく。
 幸せな夢を見てるに違いない彼女と共に。

●カーネリアンの部屋
 よく寝ている。フィルは熟睡するサリアを見つめ微笑んだ。
 昨晩はちょっと激しすぎたか…下手したら子供とか心配。
 朝食にはパンにサラダとスープ。準備をしているとやがて彼女が起きだす音が聞こえた。
「起きたかい?サリア」
「おはよ…フィル」
 目をこすり彼の姿を確認すると、彼女は急に昨晩を思い出したか赤面する。おはようのキスを交わすと二人は一緒に朝食の支度をした。

 こんな毎日がずっと続くといいと思う。
 フィルは彼女を見つめそう実感した。だから、彼女の瞳を見つめゆっくりと真剣に話した。
「ずっと一緒にいられるように、サリアの誕生日がきたら、結婚しよう」

●スターサファイヤルーム
 東から差し込む朝日。
 その眩さに瞼をしかめ、彼は目覚め身を起こす。
「にゅ…ファルケン」
 隣で寝ていたシエヌが呟く。でも起きた訳ではないようだ。
 珈琲をフロントに頼み、届いたそれをゆっくり味わう。彼女はまだ起きない。
「そろそろ…起きてもらわないとな」
 悪戯を思いつき、彼は珈琲を口に含むと彼女に顔を寄せる。
「!」
 口移しの珈琲。驚き瞼を開くシエヌ。
「うに…おはよ…」
「おはよう、っておい」
 また瞼をつむってるし。仕方がない再度口移し。
「にゅ〜…」
 尻尾をばたばたさせながらシエヌは抵抗し、「今度はうちが…」と言い出す始末。
 チェックアウトまでにはまだ時間がある。
 二人はじゃれあうように、もう一度身体を重ねあうのだった。


マスター:鈴隼人 紹介ページ
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作成日:2005/01/04
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