<リプレイ>
「ハイこんちわ〜。おひさしぶり〜」 此岸現想・レビルフィーダ(a06863)の、にこぱっとした挨拶にぎこちない笑みを浮かべる、二つお下げの戦乙女・シフォン(a90090)。 「あら、元気ないわね」 「んー、嬢は、なんか騙されたとか、言ってる」 真白に閃く空ろ・エスペシャル(a03671)が答え、その隣でほんわかしのび・トゥルネ(a13962)が、鐘運びのためにロポサ村で貸してくれたノソリンと遊んでいた。 「あら、そうなの?」 「えと、そういうわけじゃないですけど……」 苦笑いするシフォンに、紫銀の蒼晶華・アオイ(a07743)が微笑む。 「シフォンさん……また騙されてしまいましたか。でもその純粋さが良いところでもあるのですよね?」 「まあいいわ。今年最後の仕事だから、ちゃっちゃっと片付けちゃおっか」 レビルフィーダの言葉に、深緑の魔弓姫・グリューネ(a11029)がバンダナ越しに答えた。 「しかし、年の最後に蛇退治とは……なんの脈絡もないな。まあ、せめてバッグの材料になるぐらいの皮が取れればよいか」 「ふむ。元はと言えば、余計な事をしたグドンに原因がある。この季節、怪物と言えど蛇は寝ておったのではないのかのぅ」 氷輪に仇成す・サンタナ(a03094)に、心優しき銀翼・ノクターン(a17940)が言った。 「せっかくの新年なのに鐘が無いというのは、凄く寂しい事だと思います。何としても無事に取り戻さないと!」 「そうですね。熊カレーはさて置き……鐘の音は楽しみにしてただけに残念です」 慧眼の静風・キルレイン(a12779)が答えると、翡翠の脱兎・リヒトン(a01000)が眼鏡越しに歌うように言った。 「鐘がごーんごーんで年があけるですねぃ〜いっぱいならして108つですねぃ〜えっちを祓ってくれますねぃ〜えっちなことはいけないともいいますねぃ〜」 「え?」 シフォンが首を傾げると、レビルフィーダとキルレインは顔を見合わせてくすくす笑った。 「シフォンは知らぬようだな。鐘を108回鳴らすと、煩悩が消えるという古い言い伝えがある」 「ぼんのうって何ですか?」 「それって美味しいなぁ〜ん?」 グリューネの説明に首を傾げるシフォンとトゥルネに、サンタナがにっこりとし、アオイが微笑んだ。 「シフォン殿には少し早いかもしれぬのぅ」 「そのうち分かりますわ」 「時間ですね。そろそろ出発しましょう」 剣難女難・シリュウ(a01390)のせりふに、全員が頷いた。
「この辺りですわ」 アオイの言葉に、全員が立ち止まる。 「あれ……ですかのぅ」 サンタナが指さした向こう、峠道の薮の緩やかな崖の向こうに、砦跡らしき建物の影が見えた。 「鐘を取り戻すまではここでまっていてくださいですねぃ〜」 リヒトンがノソリンを立木に繋ぐ。 「おそらく蛇は砦の中でしょう。ですが、油断は禁物です」 シリュウの言葉に、サンタナとキルレインが無言で頷く。 「で、蛇が鐘に巻き付いてるんだっけ?」 レビルフィーダの問いに、ノクターンが答えた。 「そうです。ですから鐘を壊さないようにしないといけません」 「えと、鐘は金属製だから、そんな簡単に壊れないとは聞いてますけど……」 ノクターンのせりふに付け加えるシフォン。 「大丈夫よ。要は蛇だけ撃てばいいんでしょ? まーかせて!」 レビルフィーダのせりふに、同じ牙狩人のリヒトンの目が眼鏡の奥で光り、キルレインとグリューネは無言で目配せした。 「鐘はなるべく大事にしたいなぁ〜ん」 「よし、ではいこうか」 グリューネを先頭に、一同は砦へと向かった。
「目標を確認……あれだな」 「巻き付いてますねぃ」 荒れ果てた砦の壁のすき間から、リヒトンとグリューネが中をのぞき込んだ。屋根も外壁もほとんど失われた砦の建物のちょうど中央に、大人がしゃがみ込んだくらいの大きさの鐘が、鈍い金色を放ったまま放置されていた。三つ首の蛇は、鐘に巻き付いたまま、その頭を体の中にうずめていた。 「やっぱり、鐘に巻き付いてるなぁ〜ん」 「どうして鐘にまきついてるんでしょうか?」 ノクターンの問いに、エスペシャルはうなずいた。 「んー、多分、蛇にとって巻きごこちが良いのかもしれない」 「なるほどなぁ〜ん」 感心したように納得するトゥルネ。 「では、打合わせ通りに」 アオイの言葉にグリューネが手を振ると、無言のまま一同はそれぞれ散った。 「私たちも行きましょう」 「ん」 シリュウが黒輝真剛鋼剣の鍔を切ると、壁から中へと飛び込んだ。それに、エスペシャルが続く。 「鐘、返していただきますよ」 シリュウが剣を抜いた。その音に、蛇が三つ首をもたげてシリュウを見た。 「囮は、任せて」 零式マンゴーシュを構えたエスペシャルの向こうから、シフォンとノクターンが同じように武器を抜き、サンタナとトゥルネが、剣の切っ先を蛇に構えた。3方向から取り囲まれた蛇は、かま首をもたげると威嚇するかのようにゆらゆらと頭を揺らす。アルヴァレスタを構えるキルレインと、ロンクボウを構えるレビルフィーダの矢じりがぴたりと蛇に向けられると、星砕陽光を構えたリヒトンの眼鏡の奥の瞳が光った。 「鐘に当てちゃ駄目なのよねー」 「蛇だけ狙うのですねぃ」 「……」 誰が命令したわけでもなかったが、グリューネが矢を放つのとほぼ同時に、牙狩人たちの一斉射撃で戦闘の幕は切って落とされた。風切り音と共に、ホーミングアローが蛇に次々と命中する。蛇がひるんだ隙に、エスペシャルが真っ先に飛び出すと、その注意を引き付けるかのように、鼻先でステップを踏んだ。蛇の頭が一斉に毒液の塊を吐いた。それをライクアフェザーでかわすと、つられて蛇が一斉にエスペシャルへと襲いかかる。 「胴体を狙うなぁ〜ん」 トゥルネのストームゲイザーが蛇目掛けて振り下ろされると、蛇の体に命中して鮮血がほとばしった。慌ててとびずさるトゥルネに、入れ替わるかのように、サンタナが間合いに飛び込む。 「鐘から離れるのじゃ!」 邪大鉈の刃が閃くも、カラミティエッジは命中しなかった。蛇の毒液がサンタナ目掛けて飛んできたが、マントのおかげで、すんでのところでかわす。 「んもう、お前のせいですっ!」 シフォンのヘビーメイスが、蛇に命中し、鈍い金属音と共に肉が潰れる音がした。「このっこのっこのっ! 鐘から離れなさいよ、このクサレ蛇!」 「嬢、キャラ、変わってるし」 「シフォンさん……あんなキャラクターでしたかしら?」 ほとんど八つ当たりに近いシフォンの様子に、呟くエスペシャルとアオイ。 「いきますっ」 シフォンの隣から、ノクターンが飛び出した。シフォンの八つ当たり攻撃でひるんだ蛇の間合いに踏み込むと、ミラージュアタックが一閃した。手応えあった、と思った。 「危ないッ!」 シフォンが悲鳴をあげた。 「にゅぅ!?」 ノクターンを見下ろすように、蛇の首が向けられた。次の瞬間、毒液の塊をまともにくらって崩れ落ちた。 「ノクトちゃん!」 シフォンが慌ててノクターンに駆け寄る。別の首がシフォンたちに向けられた時だった。風切り音が響いた。グレイテストオリオンを構えるグリューネの影縫いの矢だった。無言で二の矢をつがえる間に、シフォンは引きずるようにしてノクターンを蛇から引き離した。 「あとは任せて下さい」 苦悶するノクターンに、アオイが微笑むとエシャリオが光を帯びた。 「祈りの風よ 同胞を清し給え」 柔らかな風と共に、ノクターンの毒は消えた。
「思ったよりしぶといですね」 シリュウは、かま首を揺らす蛇と対峙したまま呟いた。こちらの攻撃はそれなりに当たっているのだが、蛇は鐘から離れようとしない。 「どうやったら引きはがせるなぁ〜ん?」 トゥルネの問いに、シフォンがメイスを握り直す。 「頭ごと……潰しますッ!」 「シフォンさんッ!」 ノクターンが止めるのも聞かず、シフォンが飛び出した。蛇の三つの首から次々と吐かれる毒液。一発、二発と外し、シフォンは蛇目掛けてメイスを振り下ろそうとしたその時だった。 「駄目じゃ、間に合わんッ」 サンタナが飛び出した。3発目の毒液が、メイスを振り上げたシフォンにまともに命中した。悲鳴と共に崩れ落ちるシフォン。蛇の頭が一斉にシフォンに飛びかかろうとした。 「集いし聖光 再び弧を描きて 吾が最手と成れ」 アオイのエシャリオが再び紋章を描くと、そこから飛び出した無数の光線が蛇に浴びせられた。それでも、蛇の頭の一つがシフォンに牙を突き立てようとする。そこに鈍い風切音。 「ネイチャーのお仕置きですねぃ〜」 リヒトンのホーミングアローだった。次の矢をつがえて、すぐさま身構える。 「ノクターン殿はシフォン殿を頼む!」 飛び出したサンタナの一撃が、蛇の頭を吹き飛ばした。その隙に、ノクターンがトゥルネと2人がかりで、シフォンを引き離す。サンタナは飛んで来た毒液をかわしたが、とびずさった拍子にバランスを崩してしまい、別の蛇の頭に突き飛ばされた。サンタナに、残った二つの頭が一斉に向けられる。 「そうは……いきませんッ!」 キルレインの放った一矢は、蛇の影を寸分違わず射貫いた。途端に、蛇の動きが止まった。 「蛇の動きが止まっている間に攻撃を!」 二の矢をつがえるキルレインが叫ぶよりも早く、シリュウが飛び出していた。 「鐘から離れろッ!」 シリュウの居合切りが一閃し、そこへ踏み込んだエスペシャルがスピードラッシュを叩き込む。 「んー、離れてくれないと、嬢が鐘、壊すかもしれないし」 エスペシャルの呟きが蛇に聞こえたのか、ついに蛇がずるりと鐘から離れた。 「離れたなぁ〜ん。もう遠慮しないのなぁ〜ん」 トゥルネの一撃が、逃走を図る蛇の胴体に叩き付けられた。 「ふふり……よーーーく狙って。そこねッ!!」 のたうち回る蛇に、狙い澄ましたレビルフィーダのホーミングアローが引き裂かれた蛇の傷口に命中する。。 「さっきの……お返しです!」 ノクターンのミラージュアタックが、蛇の尻尾を切り落とした。激しく暴れる蛇が最後の抵抗を試みる。 「脱兎に代わって、とどめですねぃ〜」 リヒトンのナパームアローが命中して炸裂する。それでもなお暴れる蛇に、グリューネは矢じりをぴたりと向けた。 「戦闘はここまでだ」 グリューネの一撃が、二つ目の頭をぶち抜いた。最後に残った頭が、弱々しく毒液を吐いたが、サンタナはやすやすとかわすと、とどめの一撃を叩き込んだ。 「なぬ……まだ死なぬですじゃ!」 大量の鮮血を流しながらも、なおも逃げようとする蛇に、キルレインは矢を放った。 「……永遠に眠れ 」 針のような矢は、風を切って蛇の胴体に命中した。蛇は、残った最後のかま首を大きくもたげ、冒険者達を見据えると、崩れ落ちた。 「やりました!」 喜ぶノクターンが、蛇に駆け寄ろうとした。 「待てッ!」 グリューネの厳しい声に、慌てて止まるノクターン。グリューネとリヒトンは、それぞれの得物を構えたまま、じりじりと近づいていく。 「まだ死んだかどうかわからないですねぃ」 「もう死んだなぁ〜ん?」 グリューネとリヒトンが身構える中、トゥルネはとてとてと蛇に近づくと、ストームゲイザーでつついた。 「死んでるなぁ〜ん」 「やれやれ……ですね」 シリュウは、帽子の鍔を指で押し上げてから、蛇の胴体に剣を再度突き立てる。 「これで……鐘の音が聞けます」 キルレインの言葉に、全員にやっと笑みが戻った。
鐘を無事に回収した一行は、ノソリンの背中に鐘を乗せて、ロポサ村へと帰途についた。 「シフォンさん、大丈夫ですか?」 「大丈夫です。けど……とどめ、わたしが刺したかったのに」 「無理して飛び出すお前が悪い」 一番肝心なところで、毒液を食らって倒れたシフォンは不満げだった。グリューネの言葉に、アオイはくすくす笑った。 「これで熊カレーにありつけるのぅ」 サンタナの言葉に、笑顔で頷くノクターン。トゥルネは、ノソリンの背中で鐘とともに揺られてすやすやと眠っていた。 「もう少しだから頑張ってね」 ノソリンの首筋を叩くレビルフィーダに、なぁ〜んと鳴いて答えるノソリン。 「なぁーん……久しぶりにノソリン見たかも」 ノソリンの鳴き声を真似るエスペシャル。 「見えてきました。ロポサ村ですね」 キルレインの視線の向こうに、ロポサ村が見えた。 「鐘を鳴らして、新しい年を迎えますねぃ」 「そうですね。そして、来年もよい年でありたいですね」 リヒトンのせりふに、シリュウはそう呟いた。
新しき年が、冒険者達にとってよい年でありますように。

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参加者:10人
作成日:2005/01/05
得票数:冒険活劇12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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