砂地の三角−−視えない狙撃者



<オープニング>


「依頼です」
 渇いた靴音に続いて発せられた言葉に振り返ると、そこには薄明の霊査士・ベベウの白い顔があった。
「聞かせてくれ」
 エンジェルの医術士・ヴィルジニーは、自分のかける椅子の背もたれに置かれていたベベウの手を取ると、それを強く引いて、隣に腰掛けるように促した。
 上着の裾を伸ばしながら、ベベウは音をたてずに座り、依頼について説明を行った。
「ある砂丘で、正確にはわかっていませんが、何十という人々が、不明となっています。彼らは、隣町へ赴くために砂丘を横切ろうとしたのですが……いずれも帰ってきてはいないのです」
「何か……いるの?」
 ヴィルジニーが尋ねると、ベベウは首肯いた。
「ええ、複数の魔物が潜んでいるようですね」
「そうなんだ。それで、どんな敵なのかはわかってない?」
「あまり……わかってはいません。わずかな目撃談などから推測すると、敵は火球を先端に灯した矢を射るもの、そして、赤く蠢く炎を放つもの……以上の二種がいるようですが……」
「煮え切らないな、ベベウ」
 歯切れのいいヴィルジニーの言葉に、ベベウは思わず微笑むと、言葉を続けた。
「そうですね。これは、僕の想像に過ぎませんが、お話ししておきましょう。砂に潜む魔物は、もう一体いるのでないかと思うのです。目撃情報では、矢と火球の他に、七色の光を見たという話がある。僕は、三体の魔物が、ちょうど砂地に巨大な三角形を描くように、頂点に位置していると考えています。互いを牽制しあうように、です」
「砂丘のどこに魔物がいるかは、わからない?」
「常に位置を変えているのでしょうね、浜風が砂を運び、砂丘が刻一刻と姿を変えるように」
「うん、そうか」ヴィルジニーは立ち上がった。「じゃあ、行ってくる」
「非常に危険な依頼ですよ。一晩……ずっと、姿の視えない射手からの攻撃に備えなければならない。魔物の探査に手間取れば、野営も行わなければなりません」
「わかってる。だから、回復役はひとりでも多い方がいいんだ」
 そう言い残すと、ヴィルジニーは颯爽と旅立っていった。
 魔物が潜む、砂だけで覆われた世界へ……。

マスター:水原曜 紹介ページ
 水原曜でーございます。 
 今回は、『非常に危険な依頼』へヴィルジニーを赴かせることにしました。命にも関わる可能性がある依頼です。参加される皆さんも気をつけてくださいね。
  
 戦いの舞台となる砂丘ですが、とても広大です。鳥取砂丘よりもずっと広い、砂漠みたいなところだと想像していただければ正確です。
 
 相手となる魔物たちですが、ベベウの話によると三角形を形作っているようです。その大きさや、位置などはいっさいわかっていません。仮に、三角の中へと足を踏み込もうものならどうなってしまうのか、想像してみてください。
 
 まずは、魔物の探索が先決でしょう。ですが、場合によっては、野営しなくてはならないでしょうし、行き残った不明者と遭遇することもあり得るでしょう。砂漠と違って、昼も夜も冬の寒さがありますから、その点にも注意してくださいね。
 
 それでは、皆さんの参加をお待ちしております。

参加者
刺シ穿ツ死翔ノ槍・コクト(a07365)
夜闇を斬り裂く連星の騎士・アルビレオ(a08677)
爆炎のカルナバル・ジークリッド(a09974)
闇夜を護る月の刃・カルト(a11886)
閃剣の蒼輝竜・ヒリュウ(a12083)
流水の道標・グラースプ(a13405)
打砕く焔・エルド(a13954)
ちょ〜トロい術士・アユム(a14870)
愚かなる狐・トニック(a15220)
戦慄の黒・シュウ(a16511)
紅水華・エスルフィア(a17896)
天満月の戦使・マナート(a18009)
NPC:天水の清かなる伴侶・ヴィルジニー(a90186)



<リプレイ>

「このメンバーで動くワケか……」
 千夜一夜・コクト(a07365)が呟き、戦慄の黒・シュウ(a16511)が応じる。
「……見つけるまでが一苦労だな」
 彼らは魔物を探していた。砂丘に潜む、三体の悪しき物を。
「待って」
 仲間を制した、蒼き聖風を纏いし戦乙女・ヒリュウ(a12083)。だが、敵影ではなかったようだ。
「変な砂の盛り上がったとことか気をつけるんやなぁ〜ん」
 そう言いながら砂の山を乗り越え、トロい術士・アユム(a14870)がブラウンの瞳をしっかり広げて、辺りを見渡したが、何も見つからなかった。
 
 冒険者たちは、砂丘を探索するにあたり、三手に別れていた。
「違ったみたいですね」
 蒼き月光の守人・カルト(a11886)は、仲間を振り返り言う。
「エルドさん」
 声に気付き、打砕く焔・エルド(a13954)が振り返ると、流水の道標・グラースプ(a13405)が指差していた。
「怪しいな。突っ込ませちまえ」
「はい」
 グラは下僕を作り上げる。そして、怪しい所へ行けと指示を出した。
「羽根っ子ちゃんがふたりも、気になりますよね」
 グラの言葉に、エルドが即答する。
「マジで触ってみてえよな」
 こんなふたりへ、愚かなる狐・トニック(a15220)が抱いた感想は以下の通りである。
(「似てるな……」)
 騒ぎにトニックが顔をあげると、エルドの足下に下僕が。
「怪しいって……俺じゃねえ!」
 けれど、グラがこう言い、彼は嬉しそうになる。
「エルドさん、おいしいよ」
 カルトとトニックは、弱々しい笑みで顔を見合わせるばかりだ。
 そんな彼らであったが、真っ先に不明者の一部と遭遇することになる。そして、怪我人を保護しながら、慎重に砂丘を進むことを余儀なくされたのであった。
 
 最後の班に、羽根っ子と呼ばれたふたりが含まれていた。
「まだ同盟の冒険者になって日は浅いけれど、私もヴィルジニー様と同じ思いです。私も少しは回復のお手伝い……できますから!」
 天満月の戦使・マナート(a18009)の背には、白い羽根がある。エンジェルなのだ。エンジェルの医術士・ヴィルジニーは、健気さに弱いらしい。「がんばろ!」と同郷の少女の手を取っている。
 唇から白い息を吐くと、連星の翼・アルビレオ(a08677)は目をうるませている仲間に言った。
「と、ヴィルジニー、張り切るのも良いが、お前は体力が少ないんだ。あまり無理するなよ?」
 真面目な顔をして首肯く彼女へ、輝煌弓・ジークリッド(a09974)が話しかけた。赤い髪のエルフという共通の知り合いがあったふたり、話題は自然と彼女に対する感情になって……ヴィルジニーは瞳を逸らしながら答えた。
「すごく大人の……女の人っぽいから」
「たしかに、外見はな」
 腕を組んでジークリッドは考え込む。外面は綺麗でも、中身は子供だと知っていたからだ。それに、女の子らしさについて聞かれても困ってしまうのは自分だ。
 そこへ、粉雪に舞う赤色・エスルフィア(a17896)がやって来た。彼女は、急に詰めかけてきたボーイッシュな女の子ふたりに囲まれて、少し驚いていたが、細い指先を唇にあてて思いを巡らせた。女性らしさに関する、彼女の答えは……「ふたりとも可愛いですよ」であった。
 可愛いか? と首を傾げるふたりに、微笑みかける少女。
 そこへ、遠眼鏡から瞳を離し、マナートが告げる。
「音がしませんか」
 
「狙撃に携わる者として見逃すわけにはいかない。どちらが上なのかハッキリさせてやろう!」
 傾斜を滑り降りていた彼女が片膝をついて射撃の構えをとる。放たれた矢は、影と光の境目を飛び、闇に吸い込まれた。そこから、不快な叫びが聞こえてくる。
 対となった剣『連星』を翼のように従え、アルビレオは敵との間合いを詰めた。黒いボロを纏った姿の魔物が、炭のような指先をこちらに向けている。放たれたのは、蠢く魔炎。咄嗟に切先を向けたが、交わしきれるものではなかった。食らい付いた焔の牙から流し込まれる毒に、彼は唇を噛む。だが、姿を現した狙撃者への攻撃を逡巡するほど、彼は甘くはない。連星が煌めき、その軌道が交差した先で、魔物がさらに悲鳴をあげていた。
 エスルフィアの手にする蛇の杖から、赤黒い焔が渦巻いて火急となり、三つの首を伸ばしながら魔物へと迫った。
 その爆炎が収まりきらぬうちに、マナートが獅子の心臓と呼ばれる長剣を抜き放ち、青い闘気を帯びた刀身を掲げていた。魔物の首筋に決まった一撃と同時に、雷に似た閃光が放射される。
「危ないぜ!」
 ヒュンと風を切る音がして、背後に轟いた爆音。
 ヴィルジニーが振り返ると、そこには両手を大きく広げて立つ、傷ついたエルドの姿があった。
「エルドさん!」
 エスルフィアの瞳に不安が過る。弱いヴィルジニーを護るのは自分の役目と思っていたのに、身を挺したのはあの人だった……。どうやら、爆風を浴びたのはエルドだけのようだ。また護られてしまった、と彼女は思う。
「ジークちゃん、頼むぜ」
 エルドの瞳がヴィルジニーを指し示す。
「ああ」
 素直に返事をして、ジークリッドは輝煌弓レベリオンを構えながら仲間の元へと急ぐ。
 さらに、エルドは叫んだ。
「カルト! あっちが先だ!」
「はいっ」
 エルドの側を駆け抜けて、カルトの指先から鋭い刃が放たれる。気で練られた白刃は、立て続けにボロをまとった魔物の胴を穿った。
 爆発を巻き起こした矢が放たれた先を瞳で折っていたグラだったが、尊敬する先輩の言葉に従い、簾叡と名のついた術手袋で護られた指先を、黒い影に潜む魔へと向けた。輝きに満ちた紋章が宙に浮かぶと、現われた銀狼が空を疾走する。組み伏せられた魔物から軋むような声があがった。
 さらに、トニックのグレートボウから離れた一矢が、狼が走り抜けた残光の漂う空を切り裂く。闇色に透き通った矢は、魔物の胸を貫き、その命を絶った。
 その後、散開した冒険者たちであったが、矢を放つ魔物を見つけることはできなかった。
 
 
 エルドたちが、不明者の一部を保護していたことを知り、アルビレオたちは予定よりも早く野営地へと赴くことを決めた。そこで、コクトたちとも合流する手筈となっていた。
 夜はあっという間に訪れた。冒険者たちは、用意していた絹や革のテントを張り、怪我を負い衰弱した不明者たちの手当に追われた。
「これお水やなぁ〜ん」
 アユムが差し出した水筒に、唇をがさがさにした男は飛びついた。
 薬草や暖かい飲み物を用意していたマナートのおかげで、遭難していた一般人たちは、なんとか命をつなげることができたとしても過言ではないだろう。彼女は多いに感謝され、ヴィルジニーたちからも称賛を浴び、少し照れていた。
 
 頭上には月と星が煌めく天蓋、辺りはすべてが黒と灰の織り成す奇妙な造詣。
 冒険者たちは、負傷者を抱え、動きの取りづらいこの時の襲撃を恐れていた。そのため、交替で行う周囲の監視を怠らなかった。
 アルビレオとマナートが見張りに出て、エスルフィアとジークリッド、そして、ヴィルジニーだけとなったテントの戸口へ、細長い影が現われる。布地を持ち上げて顔をのぞかせたのは、エルドであった。
「ヴィルジニーちゃん俺は不審人物じゃ無いのだよ? ホラオジサンアヤシクナイダロウ、ハハハ」
 ジークリッドとヴィルジニーは冷たい視線、エスルフィアは小首を傾げている。
「……いやマジデマジデ、その羽に触ってみたいとか全然思ってないんだから!」
 あっさりと本性を露見したエルドへ、思いだしたようにジークリッドが言った。
「そういえば……よりによって『ジークちゃん』? 子ども扱いはごめんだ! 断固抗議する!」
「尊敬できる奴だと思ってたのに!」
 ふたりに詰め寄られ、エルドは四つん這いで逃げ出したが、ジークリッドの手が伸びて腰のベルトを掴まれ、ヴィルジニーが背に舞い降りた。
 彼を踏みつけにしながら、ヴィルジニーが言う。
「ほら、エスルフィアも!」
 笑顔で誘われた少女は、戸惑いながらも踵を気になるあの人へ突き刺した。
「くふぅ」
 変な声をあげ、エルドは事切れ、少女たちは楽しそうに笑い合った。
 
 
 なんだか騒がしいな、そう感じながらもコクトは双眼鏡を丘陵へと向けていた。
 なだらかな稜線が上下しながら、永遠に続いている。レンズに地平の上で煌めく赤い星が過って赤い線を引いた……その直後であった。
 空との境目に、いくつかの影が現われた。這い出たのは人、頂から転げ落ちる姿もある。
 そして、暗闇から伸びる七色の光も……。
「急げ! 魔物に追われる者の姿がある、相手は吟遊詩人らしき物だ!」 
 コクトの声に、彼と同じ班に属する冒険者たちがテントから飛びだしていく。
 そこへ加わるべく、ジークリッドは暖かな地面から足を離して駆け出す。
「さっさと片付けないと、オレ達だけで倒してるかもしれないぞ」
 外を警戒していたアルビレオが、走る少女に声をかけた。彼女が狙う牙狩人風の魔物のことだ。
 唇の端をあげて微笑みながら、彼女は言い返した。
「片思いが実ったばっかりなんだろラブコメ団長! ルティスを泣かせるなっ!」
 こめかみをかきながらアルビレオが漏らしている。
「ったく、言ってくれるぜ」
「ヴィルジニーちゃん、あの人たちを任せます」
 保護した人々を託しながら、グラースプは少女の肩に手を置いた。羽根に触れたいところだが、君を守ると誓うのなれば、肩だろう。我慢をする。
「わかった」
 グラの視線が気になったが、深々と首肯くヴィルジニーであった。
 
 
 砂と空との境目に現われた影へ、ジークリッドが矢を放つ。射程はこちらの方が長い、そして、射られた矢はなだらかな弧を描き、魔物の中心部を確実に捉えた。
 ぬらりと赤い光が滴る刀剣を抜き放ち、シュウが気を高めている。村正はさらに紅く禍々しい光をまとった。
 蒼風聖獣牙で風を切り裂き、ヒリュウは魔物へと迫った。接近してわかった相手の姿は、三本首の道化師だ。
「許さない!」
 逃げ込んできた不明者の姿を目にして、彼女は怒りを抱いていた。鋭い刃が暗闇に一閃し、魔物の胸部を撫で切った。
 辺りが途端に明るくなる。丘陵の頂に立つ影は、まるで舞台上の道化のようだ。
「これ以上人が襲われへんように〜モンスターちゃん達をやっつけるんやなぁ〜ん」
 頭の上に光を放つ輪を浮べアユムが言った。
 防具の形状を変えながら、コクトは駆けていた。抜き放たれた双頭の刃は、その名を迅朧といった。月夜に凍える銀の光を放ちながら、奇妙な笑顔を浮べる魔物を切り裂く。
 そこへ、爆音が轟いた。狙われたのは、こちらへ向かっていたグラースプたちのようだ。
(「……要らぬ心配であって欲しかったが……」)
 丘陵の上部から見下ろすコクト。アルビレオたちが、狙撃者へと向かい疾走している。
「気を散らしてやる」
 リングスラッシャーを放つアルビレオに続き、エスルフィアとマナートも敵との距離を狭めている。
「みんなっ大丈夫だね?」
 仲間の顔を見渡しながら、グラースプは身体に光をまとっていく。仄かな癒しの波が、冒険者の傷を回復させた。前触れのない攻撃にも、皆は落ち着いているようだ。まずは、道化から倒してしまわねば。
「エルドさん、援護しますっ!」
 揃えられたカルトの指先に、鈍色に光る刃が生じている。横薙ぎに振り抜かれた指先から、瞬きながら投じられた刃は、嗤う三つの頭へ次々と命中した。
 白銀に光る刃を取り囲む紅い宝玉の連なり……颶風という名の蛮刀を振り上げたエルドだったが、にやりと笑って突き出したのは、武具を持たぬ空の掌。それが、魔物の胸部に触れるなり、三つの首揺らいで、丘の向こうへと落下していった。
 無言で丘へと駆け上がり、矢をつがえたトニックであったが、彼は弓を降ろした。すでに、魔物は息絶えていたのである。
 
 爆風に見舞われたダメージを追ったアルビレオを、赤い拘束服に搦め捕られたエスルフィアのほっそりとした胴から広がる淡い光が癒している。 
 すでに、敵は捕捉されていた。砂地からのぞく、細い管のような器官から、薄く透き通った赤い骨のような物体が発射され、その後の爆発を起している。
「我らに砂神の加護があらんことを!」
 師から譲り受けた短剣『月影のジャンビーヤ』を握りしめ、マナートが気を高める。聖なる剣の輝きに、蒼白い焔のように立ち篭める闘気が加わり、軽やかに身を翻したエンジェルの武人は、砂へ向けて切先を突き刺した。
 容易に突き刺さる刃……砂を巻き上げながら、醜い肉塊の魔物がその姿を現した。
 体液を噴き上げる魔物へ、さらに爆炎が襲う。
「本物のナパームアローだ!」
 輝くしなりを持つのは、ジークリッドだ。
 さらに、無言のまま頭を低く下げて駆けるシュウが続く。砂を巻き上げて軸足を魔物の直前に置くと、彼は両腕を頭上に掲げて刃を垂れ下げ、青い閃光で赤い刀身が包まれたと見るや、暗闇に半月の軌跡を描いた。苛烈を極める斬撃に、ぶよぶよとのたうっていた魔物の身体から、黒い霧のような内容物が洩れ出している。
 魔物の身体から、爆炎が上がる。自身の身体諸共、冒険者たちを吹き飛ばしたのだ。
 だが、アユムが素早く術を使い、前衛をフォローする。
「回復するんやなぁ〜ん」
 淡い光が消えるよりも早く、コクトは煌めく刃を投擲した。肉の壁に吸い込まれるように飛燕は消え、魔物が輪郭を失うほどに膨張をはじめる。敵は明らかに苦しんでいた。
「一気に決める。ヒリュウ、あわせろ!」
「……はいっ!」
 アルビレオが宙を駆け、ヒリュウは膨らんだ魔物の胸元へ滑り込む。
 像を増したふたりの影が、肉塊を取り囲み、鋭い突きが波打つ敵の表層を貫いた。
 黒い煙を噴き出し、魔物は弾けとんだ。
 後に残されたのは、灰色がかった薄い皮膚だけであった。
 
 
 いつの間にか額に浮かんでいた汗を拭いながらアルビレオが言う。
「どうだった? 初めてモンスターと戦った感想は?」
 答えたのはヴィルジニーだ。
「ピルグリムも気味が悪かった、だけど、これも負けてない」
 砂地に広げる魔物の亡骸を指差すヴィルジニー。
 そこへ、グラースプがやって来た。意を決してはいたものの、彼は依然として軽い口調で……。
「ヴィルジニー……もの凄く羽に触ってみたいんだっ」
「……いいよ」
「ほんとっ?」
「うん」
「じゃあ」
 手を伸ばしたグラは瞳を閉じる、手の感触だけを感じたかったのだ。だが、彼の手は空を掴んでいた。
「嘘ー」
「あ〜」
 少女の姿は、もう遠くにある。
 がっかりするグラの瞳に、頬を赤く染めるマナートと、その背後で羽根に触れているエルドの姿が映り、彼はさらにうな垂れた。
 したり顔でやけに嬉しそうなエルド……だが、背後でレベリオンを構える少女の姿には気付いていないのだった。


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参加者:12人
作成日:2005/01/27
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