【キーゼルの誕生日】トレジャーハント?



<オープニング>


「ああ、君達。暇だったら、ちょっと付き合ってくれないかい?」
 その日、ストライダーの霊査士・キーゼルは、酒場に居合わせた冒険者達に、そう声をかけた。
「ドリアッド領に、面白そうな遺跡があるって話なんだよ。だから、ちょっと出かけてみようと思うんだけど……一人で行くのは、さすがにちょっと不安でさ。誰か興味のある人に、付き合って貰えないかと思って」
 キーゼルが言うには。
 その遺跡は、森の中にある古びた石造りの遺跡で、少し前に発見された場所らしい。
 目ぼしいお宝の類は、殆ど誰かに持ち去られた後のようだが、価値の低い物、あるいは完全に無価値なガラクタなどは、まだ幾つか残っている状態……だという。
「伝聞だから、事実かどうかはわからないけどね。でも……面白そうだろう?」
 もしかしたら、何か『いい物』が転がっているかもしれないんだから……そうキーゼルは、心なしか楽しげに微笑んで。
「ただ……ほら、僕は霊査士だからさ。一般人が出入りしている場所のようだから、モンスターの類はいないだろうけど……野犬の一匹や二匹くらいは、住み着いてるかもしれないからね。一人で行くのは危ないと思ってた所なのさ」
 そう聞いた冒険者達は、確かにと揃って頷く。
 ――霊査士は、物品に宿る精霊に語りかけ、情報を得る能力と引き換えに……戦闘能力を失い、ひとたび戦いの場に巻き込まれれば、即座に気絶してしまう存在だから。
「もし野犬にでも襲われたりしたら、その瞬間に気絶して大怪我……なんて事にもなりかねないからね」
 キーゼルは軽い口調でそう話すが……それがただの冗談では済まない可能性がある事は、冒険者達にはよく解った。
「ああ、そうそう……今度の9日は、僕の誕生日なんだよ。だからさ……誰か誕生日プレゼント代わりに、一緒に付き合ってくれないかい?」
 一年に一度の事なんだから……とでも言うかのように、キーゼルは微笑むと、そう問いかけながら冒険者達の顔を見回した。

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参加者
NPC:ストライダーの霊査士・キーゼル(a90046)



<リプレイ>

 2月9日、キーゼルの誕生日――彼の呼びかけに応じて集まった冒険者達は、目的地である遺跡に向かっていた。
「確かに霊査士という職業柄、危険そうな場所にはいけませんよね」
 錫色の紋章術士・リルミア(a01194)は、折角の誕生日なのだから楽しんで貰いたいと、同行した一人だ。
「そうだな……」
 凪し残影・ナギ(a08272)は頷くと、辺りに視線を向ける。
(「安上がりなのは好感持てるし……まあ、野郎に好感持たれても、何の得にもならんだろうけど……」)
 そんな事を思いつつ、ナギはキーゼルが存分に散策を楽しめるよう、危害を被る事が無いように気を配る。
「まあ、野生動物ならば人を見れば逃げるであろう」
 掛かって来ようとも、術の一つも撃って見せれば大丈夫なはず……と、大凶導師・メイム(a09124)も、日頃の恩返しの意味も兼ね護衛をと、警戒に重点を置きながら歩く。
 その反対側では、軽業拳法使い・ヤイチ(a12330)も周囲の様子や迫る者がいないか注意を払う。
 周囲は、どの方向にも誰かしらの視線が向けられている為、何か異変が起きれば、すぐに誰かが気付くだろう。
「まあ、なんとかなるやろっ」
 旅先から噂を聞きつけた、陽気なる夏風・アーニー(a07020)は、持ち前のお気楽精神からか、にかっと笑いながら軽やかな足取りで進む。
「キーゼルさんと遺跡に入れるなんて滅多にない事ですので、ボディガードとしてきっちりやらせて頂きますね♪」
 キーゼルの側では、いつもとは違いステッキを手にした、幸せを求めし白き鷹使い・シャンナ(a00062)が微笑んでいる。ちなみにステッキを持っているのは、心を鍛える為に……という事らしい。
「んしょ……」
「もう少し持とうか?」
 反対側では、微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)が、バスケットを抱えながら歩いている。その様子を見たキーゼルが聞くが、メルヴィルは大丈夫ですと首を振る。
 バスケットの中身は、腕によりをかけたお弁当だ。最初は一人で全て運ぶつもりだったけれど、かなりの量があり……重そうにしているのを見かねて、キーゼルや他の男性陣が手伝っている。
「何というか……激戦区……?」
 お弁当運びを手伝いつつ、遠巻きにキーゼルとその周囲を見た、蒼の閃剣・シュウ(a00014)は……こういった戦いでは気絶せずに済んで良かったねと、心の中でキーゼルに向けて呟く。
「それにしても、キーゼルに遺跡探検の趣味があるとは知らんかったなぁ」
「最近はそういった機会が無かったからね。霊査士になる前は、よく出かけたんだけど」
 一方、意外そうに漏らした、天翔ける蒼翼の獅子・テンオー(a01270)の言葉に、キーゼルは腕輪の鎖を揺らしながら返す。
「霊査士になる前……キーゼルはん、元は何やったの?」
 その言葉を耳にしたレディ・リーガル(a01921)は、道中聞いてみたいと考えていた内容だったから、丁度いいタイミングだと尋ねる。
「翔剣士だよ。12で家を出て、それからずっと冒険者さ」
「へぇ……」
 らしいといえばらしいと頷きつつ。リーガルはふと、冒険者になった頃のキーゼルはどんな感じだったのだろうかと思う。
「相変わらずガラクタ集めに精を出してるようじゃが……キーゼルも29になるのじゃし……そろそろ、本気で身を固めようとかは思わんのかぇ?」
 そんな会話を聞いていた、宵咲の狂華・ルビーナ(a00172)は、もう若くないのじゃからのぅ……などと呟きつつ、キーゼルと周囲へと視線を向ける。
「身を固める……ねぇ」
 十歳以上年下のルビーナの言葉に、キーゼルは髪をかき上げつつ苦笑すると「まあ、そのうちね」と呟く。
「あ、あれですね」
 と……凱風の・アゼル(a00468)が見えて来た遺跡に声を上げると、キーゼルを振り返り、面白い物があればいいですねと笑う。
「そうだね」
 楽しみだという顔で頷くと、キーゼルは心なしか足を早める。
(「……まあ、考えすぎか」)
 そんな中、朽澄楔・ティキ(a02763)は、ふと脳裏をよぎった考えを追い払うと、準備してきたカンテラを取り出す。前に、ピクニックの最中にドラゴンズゲートを発見した護衛士団があったけれど……まあ、そうそうそんな事も起きないだろう、と、カンテラに明かりを灯し、遺跡の中に入った。

「宝は探し出すまでが楽しいんです……気合入れて探します〜♪」
 無垢なる銀穢す紫藍の十字架・アコナイト(a03039)は、武器のロザリオを握ると、空洞がないか探して、床をガンガンと叩く。
 ちょっと――いや、かなり手荒に見えるが、本人曰く「繊細な乙女っぽい捜索方法ですよね」らしい。キーゼルなどは思わず突っ込みたくなったが……まあ、崩落などにはちゃんと注意しているようだし、別に良いかと特には口を挟まない。――挟んだ方が恐ろしい、とどこかで考えたのかもしれないが。
「キーゼルさん、もし出来れば遺跡の霊査をお願いしても良いですか?」
 遺跡の構造を調べて貰い、その様子を見たい……と考えたシャンナだったが、キーゼルは首を振る。
「それをやると、宝探しの楽しみが無くなるからね」
 もし霊視で遺跡の構造だけでなく、全ての宝の位置などを先に知ってしまったら……もう宝探しという気分では無くなってしまうだろう。それは宝探しが終わった後でも同じ。探し終えた後で、もし、自分達の見つける事の無かった宝や、隠し部屋などを視てしまったら……?
「あ……」
 シャンナもそれに気付くと、霊査の頼みはすぐに取り下げる。
「何か土産になるようなもんでも、出てくるといいんやけどな〜♪」
 アーニーは狐のウィルと一緒に周囲を見回しながら進むと、先頭に立って、通路の先にある部屋に向かう。が……。
「あれは……」
 部屋に踏み込んですぐ、奥に何かがいるのを感じ取る。正体はすぐに解った。低い唸り声、警戒するように窺う幾つもの気配……。
「野犬ですね」
 アーニーのみならず、それに気付いた冒険者達が一斉に身構え、楽風の・ニューラ(a00126)は獣達の歌を使い語りかけ始める。
 だが、説得しようとしても、武器を構えた冒険者を前に、野犬は警戒を解くどころか、むしろ強める一方で……やがて野犬達は、ひときわ低く唸ったかと思うと、冒険者の方へと迫る!
「っ……」
 前にいた冒険者が野犬を食い止める一方、後方では気絶したキーゼルを支えつつ通路へと後退して。虚実の狭間に揺れる明星・フォクサーヌ(a14767)は眠りの歌を、シュウが紅蓮の咆哮を使う。
 野犬達は次々と麻痺し、眠りに落ち……次々とその動きを止める。
「ふ、ちょろいもんね。……ほらー、せんとーおわったよー、おきろー」
 フォクサーヌは野犬達が行動不能になったのを見ると、キーゼルに呼びかけながら、着ぐるみの肉球部分でぺちぺちと叩く。
(「人数が少ないのが気になったけど、別に必要なかったかな」)
 リンゴ姫・アップル(a07891)は、瞬く間に一段落した事に対して、そんな風に思いつつ武器を戻す。
「どうやら行き止まりのようですし……このまま戻りましょうか」
 ニューラは室内をざっと見回すと、そう提案する。ここは彼らの縄張り、近付かなければ野犬達も追っては来ないだろうし、それに、出来れば穏便に済ませたいからと。
「そうだな……」
 野犬と遭遇したら、宝探しの手伝いでも……と考えていた宿無し導士・カイン(a07393)も、こう敵意を抱かれては難しいだろうと頷く。
「特に何も無さそうですし……」
「隠し部屋や階段の類も無さそうだな」
 ざっと室内を確認した冒険者達は、特にこれという物は無いと確認すると、野犬達のいる部屋を去った。

 野犬のいた部屋を離れると、冒険者達は宝探しを再開した。といっても……。
「みごとになんにもないのね……」
 ――と、思わずフォクサーヌが呟いたように、肝心な宝はなかなか見つからない。たまに冒険者達の前に現れるのは、壊れているんじゃないかというほど古びたカンテラだったり、黒く錆びたナイフだったり……価値がありそうには見えず、役に立ちそうだとも思えない、がらくたばかり。
「これは……」
 ふとニューラが拾い上げたのは、黒く汚れた……音叉、のようだった。汚れてはいるが、音はきちんと鳴るようだから、まだ使えそうだ。
「スーピー君、何か見つけましたか?」
 アゼルは、探索を手伝わせていた土塊の下僕が、何かを持って戻るのを見ると、どれどれと覗き込む。
「あら……」
 下僕が持っていたのは、ちぎれた紐と、そこに引っかかっていた一粒の真珠だった。おそらく、壊れたネックレスやブレスレットの一部が、どこかの隙間に挟まっていたのだろう。
「ん?」
 アーニーは、ふとウィルが何か足元で転がしているのに気付くと、それを手に取る。小さな丸い形の……バッジのようだ。黒く錆びているが、どうやら銀で出来た物らしい。磨けば綺麗になるだろうか。
「おっ」
 床を調べていたシュウは、空洞らしき場所を見つけると、床石を外して調べる。やがて見つかったのは……
「はとこの子、壷が出てきたよ」
 心なしか嬉しそうに振り返るシュウに、キーゼルは「そんな所から?」と驚きつつ、一緒になって壷を覗き込む。装飾などはなく、ただ古いだけの壷のようだが……それでも喜んでしまうのは、男の子だから……かもしれない。
 ――まあ、二人共、もう男の『子』というような年齢でもないのだが。
「ん?」
 一方、空気の流れに注意しながら、隠し部屋が無いか調べていたティキは、ふと、とある通路の途中で、どこからか空気が流れていような感触を感じる。試しにカンテラの火を掲げてみると、微かに揺れ……何かあると確信する。
「右からか左からか……手分けすれば早いか」
 だが、ハッキリとした位置まではわからず……考え込んだティキはすぐに顔を上げると、皆に声をかけ、手分けして探す事にする。すぐに何人かが集まって壁を調べ始める中、彼らの後ろでは、空洞がありそうならブチ抜いてみれば……と、アコナイトが身構え、マッスルチャージを使い力を溜める。
 と――
「ここやないか?」
 コツコツと壁を叩きながらテンオーが声を上げる。少しずつ念入りに調べていた彼は、他の場所と違う音が響く箇所を見つけたのだ。
 だが、そこに扉のようなものは見当たらす……テンオーなどの付近にいた者は、破るしか無さそうだと判断すると、すぐに数歩下がり壁から離れて。
「じゃ、いきますよ♪」
 そこに一歩踏み出したアコナイトは、溜め込んだ力と共に、思いっきり大地斬をブチ込んだ。

 ――壊れた影の向こうには、隠し部屋が一つあった。冒険者達は瓦礫を軽く退かして歩きやすくすると、その中に入る。
「ほー……」
 カインは感心した様子で中を見回す。そう広い部屋ではないが、これまでに誰かが中を調べた様子は無く、辺りには幾つかの物が転がっている。どうやら、これまでとは違い、それなりに価値のある物も多いようだ。
「俺の使えそうな掘り出し物はあらへんかなぁ」
 テンオーは、何か自分向きの物は無いかと、室内にある物を順に見ていく。その傍らでは、きょろきょろとしていたアコナイトが、何やら怪しげな像に視線を留めると、それを拾う。
「へぇ、これはなかなか……」
 ナギはシンプルなデザインのピアスを拾うと、感心した様子で呟く。デザインこそ派手ではないが、目利きを得意とする彼には、これが上質の白銀とオニキスが使われた、良い品だと判ったからだ。
「キーゼルさんは入らないのか?」
「宝探しは好きだけど、財宝の類はそうでもないからね」
 全員が入るには少し狭い部屋だという事もあり、キーゼルは通路で待つ事にしたようだ。
 その返事に、メイムは彼に昔何があったか――どうやら大切な人を失ったようだから、その時の事をさりげなく聞いてみようとするが……なかなか上手い言い回しが浮かばず、また、周囲には万が一に備えて彼の側を離れない冒険者も多かった為、結局、切り出す機会を得られずに時間が過ぎるのだった。

 そうして一通り探索を終えた冒険者達は、見つけた品を手に酒場への帰路についた。帰りに何かから襲われる……というような事もなく、一行は無事に酒場へと戻る。
「さてと、じゃあ用意しておいた鳥を振る舞うとしようかな」
 シュウは出発前にマスターに預けておいた鳥串を出してもらうと、誕生日祝いでも、と、それを皆に振る舞う。
「へぇ、美味そうだな」
 ナギは串に手を伸ばしつつ、いける口ならどうかと酒をキーゼルに勧める。
「じゃあ貰おうかな」
 グラスを受け取り一口運ぼうとするキーゼル……と、桐の箱を手にルビーナが近付いて来る。
「キーゼル〜♪ 誕生日おめでと〜なのじゃ☆」
 言いながら渡した箱の中身は、一枚の皿。ホワイトガーデンで手に入れた物だという。
「作者は不明じゃが、エンジェルって事は確かじゃよ。中々味のある良い作品なのじゃ☆」
「へえ……」
 しげしげと皿を眺めるキーゼル……その一方で、はてとルビーナは首を傾げる。同じような事が前もあったような、デジャブを感じるが――まあいいかと振り払って、鳥串に手を伸ばす。
「オーケン石ってご存知ですか?」
 ニューラは一見白い毛玉のように見える石を取り出しながら訊ねる。ウサギの尻尾のようにも見えるから、別名ラビットテール……何に使える訳でもないけれど、宜しければお祝いという事でお持ち下さい、と。
「いや、初めて見たよ。面白い石だね」
 キーゼルはニューラの説明に感心すると、気に入った様子で懐にしまう。ちなみに、今日彼が着ている服は、出発前に一足早くリーガルが贈っておいた物だ。
 そんな間にも、他の冒険者達から祝いの言葉が次々と贈られて……先ほど遺跡で見つかった品の幾つかも、プレゼント代わりにと、幾つかキーゼルの手に渡る。
(「宝物……」)
 それを目にしたメルヴィルはふと思う。自分にとっての宝物は、きっと――
(「……はじめてお会いできた、あの時の偶然。少しずつ積み重ねてきた、たくさんの思い出。そしていま、すぐそばで同じ時の流れを感じることができること……」)
 ――それが、自分にとっての宝物だと、胸の奥で確認しながら。メルヴィルはそっと、用意しておいたある物を握って。
「お誕生日、おめでとうございます、です」
 掌の中身……紙吹雪を舞わせながら微笑む。
「わざわざお祝いまでしなくても良かったのに……ありがとう」
 そんな彼らの様子に、キーゼルは一言ながらも、皆の顔を見ながら礼を言い……冒険者達は一度乾杯すると、遺跡探索の打ち上げ兼、誕生日パーティを楽しむのだった。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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参加者:20人
作成日:2005/02/18
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