恋まじない〜恋人ゲッツの赤い糸?!〜



<オープニング>


 今年もやって来る、ランララ聖花祭。気になる相手に告白だとかお菓子を渡すだとか告白妨害だとかいろいろバトル必須な祭りだが、それも相手がいれば楽しいだろう。……相手がいれば。
「なんであたしには素敵な王子様がいないんですか!?」
「……まぁ、落ち着こうか」
 知るかと言いそうになるところをぐっと堪え、ヒトの霊査士・ブレントは目の前の少女を手で制した。
 制された側は息荒くカウンター席に座った。
 この少女、名前はミレーヌ。恋人居ない歴十ウン年の恋に恋する女の子である。
「ふぅ……ごめんなさい、ちょっと興奮しちゃって。あの、恋人が居ないのは仕方が無いんです。だって、今まで素敵な人に出会わなかったから」
 そういう人に限って理想がやたら高かったり、高望みしすぎたりするものだがミレーヌの場合も例に漏れずそのタイプである。今も夢見心地の表情でうっとり言う。
「あたしの王子様……早くあたしを迎えに来て。なので、お手伝いして欲しいんです」
「手伝い? 男を紹介しろって事なら冒険者しか出来ないぞ」
「あ、それもいいな……じゃなく、違いますよ。お呪いで呼ぶんです♪」
「はぁ?」
 思いっきり眉を歪めるブレントに構わず、頬をちょっぴり赤く染めミレーヌは話す。
「恋人をつかまえるお呪いがあるんです。一本の赤い糸を空に飛ばして、余った糸を自分の左手の薬指に巻いていると……キャ♪」
 一人嬉しそうな声をあげる少女に困ったようにただ眺めているブレント。まぁ、他人の恋路を邪魔する事に全力かけたりするよりは叶わない他力本願の方がまだ健全だろう。
 まぁ、そのお呪いとやらは糸を自分で染めなければ効果が無いらしい。どうやらその染まり具合によってもまだ見ぬ恋人の事を占えるらしい。……かなりの眉唾ものに違いないが、そこはそれ。意味の無い事も楽しむお年頃♪ ということで(何)

「……お互い綺麗に染まるといいですね♪」
「………………」
 相手が居ない同士とすっかり仲間気分のミレーヌにブレントはやる気の無い溜息吐きつつ、酒を一口啜った。 

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参加者
NPC:昼行灯の霊査士・ブレント(a90086)



<リプレイ>

●呪いと飲みの会
 決して上のサブタイトルは『のろい』と読むのではありません。『まじない』です。
 でも、ある意味『のろい』っぽいものを感じる……らしい。
「こう、実に執念じみたものを感じさせるな……いやまぁ、実際に執念バリバリに込めている者もいるんだろうが」
 しみじみと言う朽澄楔・ティキ(a02763)は酒場に集まった顔ぶれを見渡した。
「それでは、これから素敵な恋人を掴まえる為のおまじないをやりますね♪」
「はい♪」
「おまじない〜おまじない〜♪」
 ミレーヌの言葉にウキウキワクワクなチビねこ・ティア(a18135)と元気なとんがり帽子の・ショコラ(a06425)の少女二人。
「うんうん。いいですね、おまじないを楽しむ女の子たちというのは」
 微笑みながら渋めの緑茶好き・サガン(a18767)はおまじないにはしゃぐ少女たちを見、そしてもう一方を見て苦笑を浮かべた。
「チキンレッグが同盟参入したね……セイレーンの商売敵って聞いてるけど、忙しくなりそうだねぇ?」
「いやぁ、どうだろうねぇ」
 早速テーブルの一つを陣取り、酒を注ぎつつ言った蒼の閃剣・シュウ(a00014)に小さく肩を竦め、ブレントは酒を一口すする。
 相変わらず、こちら二人は呑み会に終始するらしい。
「……というか、私の知っている赤い糸のお話って、心中する二人が白い糸でお互いの手首を結び剃刀を手首に滑らせ溢れた血で白い糸が赤く染まり、二人の血が交じりあって染め上げられた赤い糸はあの世で二人をきっと結んでくれる……なのであまりロマンは感じてなかったり」
 ほぼ一息で言った楽風の・ニューラ(a00126)の言葉に一瞬酒場内の空気が凍る。
「いやぁぁぁあ! そんなの嫌ぁ」
 涙を浮かべ絶叫するミレーヌ。ティアとショコラの瞳も悲劇の情景を思い浮かべたのかウルウルと潤んでいるがニューラはさっさと勝手にミレーヌが用意していた染色液を手元に引き寄せ染色に取り掛かり始める。
「それ、本当にのろいじゃん。まぁ、いいか〜見てるだけじゃヒマだし、ボクもやろうかな」
 守護者・マージュ(a04820) も腕まくりをして真っ白な糸を手に取った。
「あ、ほら。もう染め始めるみたいですし、やり方教えてくださいよ」
 苦笑を浮かべながらミレーヌやティアたちをあやす流浪の民・クロノスター(a20425)にぐすっと鼻をこすり、ミレーヌは気持ちを持ち直すためにも大きな声でおまじないに集まった面々に言った。
「では、これから説明をしますね! まずは白い糸を自分の腕をいっぱいに広げた長さ分用意しま〜す。そして、それをこの煮汁につけて念じるのです!! 心の底から、真剣に、まだ見ぬ王子様を描いて!!」
「念じるって……本当に執念バリバリだな。そのパワーを真っ当な方向に向ければ……」
「それは言わないお約束だよ〜ティキ」
 後ろからティキの耳を引っ張り笑いながら、シュウはのほほんと糸を染め始めたメンバーを眺めて酒を呑む。
「やっぱ、菓子作りはガラじゃなかったもんな。これで、綺麗に染まればいいんだろ? よっしゃ! じゃあ、いっちょ真っ赤に染めてみるか」
 意気揚々と染料の木の根と新芽の煮汁に糸を浸すヒトの紋章術士・カルナ(a20646)。
 カルナの隣で小さな桶に糸を浸しているのは狼牙の守護神・アールグレイド(a15955)。上下に糸を揺らしながら、次第に白から色が変化していく糸を眺めてアールグレイドは呟く。
「……恋占いもいいが、友達占いでもいいのかな? ……友達の色って何色だろうな?」
「さぁ? ……すでに恋人がいる場合だとどうなるのかな?」
 と、恋人持ちの双閃焔翔・シェード(a10012)は一応やってみようと糸を染め始めたが、切れてお先真っ暗だけは勘弁……と心の中で祈っている。まぁ、そりゃそうだろう。
「いいねぇ……まぁ、こっちは別れたばかりだから冷やかしだな」
 片手に湯のみを持ち、お茶を啜りながら遠い目をする孤独に虚ろうもの・セリオス(a00623)は一応、と糸を染めている。
「まぁ、暇つぶしだしどんな結果でもいいし。結局それでどうなるかは自分次第だからな……」
 ずずず、と茶をすすりセリオスは土臭いヘドロのような煮汁を覗き込んだ。
「ときめく人は妄想に囚われがちです……糸を芸術的に見事染め上げる事が出来ても、煩悩の狭間でお指がモジモジしてしまっては……欲望が形を成して……」
 何やらもふもふ口の中で独白しながら考え事をしつつ糸を弄くっていたクロノスターは己の手の中の物にあぁ、と声を上げる。
「良く分からないものを作成してしまいましたよ……!」
 綺麗な網を慌ててクロノスターは解いていく。そんな彼女の後ろでは真剣に……本当に真剣に桶の中へ糸を垂らしている三人の姿。
 液に全部糸をつけては上げ、つけては上げて様子を見つつ熱中しているのはマージュ。  
「ティアの事を想ってくれる誰かに出会いますように……出会いますように」
 糸の端をしっかり握り締め、ティアは念を送る。そんなティアより更に念を送っているのがショコラ。トレードマークの帽子を深く被り直して精神統一。そして願うのは
「むむむ〜〜。うまくいきますようにうまくいきますようにうまくいきますように!」
 もう念仏の域である。
「いやぁ、真面目だねぇ」
 のほほんと片手にグラス、片手にショコラから渡された糸を持ちとりあえず染めているブレント。
「こういうのも楽しいじゃないですか。そうですねぇ、私は、相手が見つかりますように。この先いろんな人たちと出会えますように……」
 そう願いを込めるサガンにブレントは苦笑する。
「願掛けじゃないはずなんだがなぁ」
「いいじゃないですか。楽しいですし♪」
「……で、お前さんは何をしてるんだ?」
 ブレントに問われ、ニューラはにっこり微笑む。
「媒染材による色味の変化を見てるんです」
 そんな彼女の前には小皿に分けられたいくつもの染色液があり、それにプラスレモン汁やら明礬やら酢やらを加えていく。仕舞いには指を少し切って血を混ぜる。
「染まり具合がどんな風に違うのか楽しみですね♪」
「……いや、普通に怖いし」
 呟いたシュウだが、ニューラに笑顔で振り返られ在らぬ方向へ視線を泳がせた。

「さぁ、皆さんそろそろいいですか〜? じゃあ、一度糸を洗います。これが一番ドキドキするんですよ〜♪」
 キャー、と一人興奮するミレーヌの手の中にはどす黒い糸。ミレーヌだけでなく、煮汁につけた糸全てが今は黒い。
 綺麗な水を入れた桶に全員せーので糸をつけた。
「あ、あ、綺麗に染まってますぅ!」
 頬を赤くさせながら嬉しそうな声をあげるティアにショコラも歓声をあげた。
「やりましたですよ〜綺麗な赤です〜♪」
「うん。綺麗だ。良かった」
 と、こちらもにっこり、綺麗に染まった糸を見るマージュ。
「……ムラ……ムラムラ」
 糸を端から手繰り寄せながら、セリオスはふぅとため息をつき、茶を啜る。
「ん〜ちょっと、染まりが薄い、かな?」
 首を傾げて明かりに透かしてみるシェード。
「私のは、まぁまぁですかね」
「何を言ってるんですか。綺麗に染まってるじゃないですか。私のなんて、ホラ……」
 サガンに差し出したクロノスターの糸はムラだらけ。
「あう……」
「あは、あははは。気を落とさないで下さい、ね?」
 がっくり肩を落とすクロノスターに励ますサガンは困り顔で頭を掻いた。
「よっしゃ、赤!」
「これは……ピンク?」
 ぐっと拳を握って喜ぶカルナの隣でアールグレイドは首を傾げて微妙な染まり具合でピンク色になった糸を見た。
「……これが友達の色、か?」
「いや、違うって」
 真面目な顔で呟くアールグレイドにツッコんだカルナは隣の霊査士の手元を覗き込んだ。
「うわ! これまたヒデぇムラだらけだな」
「うるさいよ」
 ぽいとムラだらけの糸を水の中へ落としたブレントは、もう占い関係なしのニューラの糸束を見た。赤に緑に黒に茶と実に色様々。それでせっせとミサンガを作るニューラにシュウとティキがヒソヒソと呪いだ、呪いだと囁きあっていたのは秘密だ。

「最後に糸を飛ばします♪」
 そういったミレーヌが冒険者達を連れてきたのは酒場のある町の近くの小高い丘。吹く風に草がさわさわと音を立てている。
「いいですか? まず、糸の片方を左手の薬指に巻いて、半分の長さのところで糸を噛み切ります。そして、残った糸を願いを込めて風に飛ばすんです」
 説明を受け、冒険者たちはそれぞれ指に糸を結び糸を噛み切る。
「じゃあ行きますよ〜せーの!」
 ミレーヌの掛け声で一斉に晴れた空に糸を投げる。
 柔らかな風に吹かれ、青い空にふわりと赤い糸が膨らむように流れていく。
 風に遊ぶ髪を手で抑えながら、ティアは少しはにかんだ顔で自分の指に結わえられた糸を見た。
「おかえり〜」
 糸を飛ばし終えて酒場に戻ってきた仲間達を出迎えたのは飲み食い目的だったシュウとティキ。それと、飛ばす気のないブレントにセリオスとニューラ。ニューラの糸はすっかり良い具合の長さにまで編まれている。
「すっかり宴会モードですね」
 苦笑し言ったクロノスターにブレントがグラスを掲げる。
「お〜。まぁ、皆も座れ」
「では、遠慮なく。あ、私お酒は飲めませんので、ミルクで」
「ティアはオレンジジュースがいいです」
「じゃ、飲み物と食べるものも頼みましょうかね」
 飲み物とつまめるものを酒場のマスターに頼むシェードにセリオスが口を挟む。
「あ、未成年には飲ませるなよ。アルコールは脳細胞を破壊するからな」
「脳細胞だけじゃなく、身の破滅にも繋がる場合がありますよね」
 ぽそりと呟くニューラに酒呑みどもは苦笑を浮かべた。
「ブレント殿、ガードの方お疲れ様。良い骨休めになるといいな」
「おつかれさん、ブレントのおっちゃん」
 そう声をアールグレイドとマージュに声を掛けられ、ブレントは口の片端に笑みを浮かべる。
「……なんか、宴会のついでにおまじないしたのかおまじないのついでに宴会なのか、わからないわ〜」
「ま、タダで飲み食いできればそれで良し。それでなお、呪いが成就すれば言うことなしだろ」
「確かにそうですけどぉ〜」
 ちょっと不満そうにティキに口を尖らせて見せるミレーヌだが、すぐに笑みを浮かべて冒険者たちを見た。
「ま、いいか。楽しいし♪ もしかしたらこの中に私の王子様がいたりして〜きゃ♪」
 照れ笑みを浮かべてモジモジし始めるミレーヌに呆れ顔でティキは肩を竦めた。
「んじゃまーなんとなく乾杯するか〜」
 全員の手にグラスが行き渡ったのを確認し、ブレントは手を軽くかかげた。

 この後、おまじないを実行した者たちの結果のほどは……本人たちに聞いてください。


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作成日:2005/02/21
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