<リプレイ>
外から観察するウサミミ村は悪夢のような静寂に包まれていたが、時折豚グドンの怒号や何かを破壊する音が聞こえてそれを破った。 村に辿り着いた冒険者たちは四手に分かれて東西南北それぞれの入り口から進入した。
●東 神殺騎士・サファイ(a00625)とこぼれ落ちる黄金の雫・スノウ(a14449)が石造りの東門を潜るとすぐ、家の扉を力任せに破ろうとするグドンが目に入った。 グドンの体当たりで壊されつつある扉の向こうから「ひぃぃ」と押し殺した悲鳴が聞こえてくる。 早く止めなければ扉を壊して家に押し入ったグドンが村人を人質にとってしまう。 そう判断したサファイは用意していた干し肉を放り投げ、 「餌ならこっちだぜ!」 とグドンの気を引いた。
グドンは道に落ちた干し肉を拾って口に押し込みほとんど飲み込むように食べてしまった。 そして「ぶひぶひっ!」と声をあげて仲間を呼び集める。 四体のグドンがすぐに駆けつけてサファイとスノウを取り囲んだ。
「きゃあっ」 スノウとサファイは五体ものグドンを前に恐れをなして逃げ出す……ふりをした。 グドンたちは二人を追って襲っていた家々から離れる。 十分にグドンたちを引きつけたことを確認したサファイは逃げるのを止めて振り向きざまに居合い斬りを放った。 真竜業魔剣が先頭を走ってきたグドンの首を綺麗に斬り飛ばす。
仲間の頭がごろりと地面に転がるのを見た残りのグドンたちは慌てて逃げ出そうとしたが、スノウがそれを許さなかった。 「逃がしませんよぉ」 スノウが懸命に歌う眠りの歌を聞いて三体のグドンが眠りに落ちる。 眠りを逃れた一体にはサファイが仕掛けの突起を開いた真竜業魔剣をチェインシュートで打ち込んだ。 鎖が巻き上げられると背中を深々と突き刺されて悲鳴をあげるグドンと共に剣がサファイの手元に引き寄せられる。 その一体と眠った三体にとどめを刺してサファイとスノウは広場へと急いだ。
●北 緋燕・ソルティーク(a10158)、幻影の舞姫・アリス(a20132)は北側から村に入った。
うさみみバンドが普段着の一部であるアリスにとってウサミミ村は同胞同然である。 「気を引き締めていきましょう!」 とアリスは意気込む。 そんなアリスにソルティークは、 「ところでアリスさん、この眼鏡をかけて頂けませんか?」 持っている眼鏡をかけさせた。 そしてアリスの手を取り告白する。 「結婚してください」
「? ……いいですよぉ?」 それがあまりにも突然だったためアリスはつい何も考えずに即答してしまった。 しかし後から何を言われたのか考えると、 「……え……結婚? ……ええっ!? ……け、けっこん〜!!?」 驚きのあまり慌てて転びそうになってしまう。 アリスは顔を真っ赤にしてうつむいた。
少しの沈黙の後、上目づかいでソルティークを見る。 「あの……そのぉ……いきなりそんなこと言われても……困っちゃいますぅ……。 あの……お、お付き合いからじゃ……ダメ……ですか……?」 今度はソルティークの方が焦った。 彼としては即振られてしまう予定だったのでこんな返事の時はどう対応するか決めていない。 場が硬直してしまったかに見えたその時、都合良く五体のグドンが道の向こうからやって来た。
グドンたちはソルティークとアリスの姿を認めるなり、 「ニンゲン、クイモノダセ!」 そんなことを言いながら襲いかかってきた。 ソルティークはエンブレムシャワーでグドンたちを弱らせながら言う。 「アリスさん、この話は邪魔者を片付けてからにしましょう」 ソルティークの言葉にアリスは頷いた。
「はいは〜い♪ 豚グドンの皆さん注目ですぅ〜☆」 アリスがアビリティの力をうさみみバンドに集めてスーパースポットライトを放つ。 ソルティークの攻撃に怯んで逃げようとした一体のグドンがアリスに目を惹かれて動けなくなり、四体はアリスに攻撃を集中させる。 「れっつ、ダンシング〜♪」 しかしアリスは舞うような動きでグドンの棍棒を捌いていった。 ソルティークの二度目のエンブレムシャワーで五体が倒れ戦いは終わる。 この後二人は告白の件について話したのだが、その内容は二人しか知らない。
●広場 西を担当した黒バニーなお姐さん・アリス(a10264)と黒より昏い碧・ラト(a14693)、南から入った宵闇月虹・シス(a10844)と導星の重騎士・ペ(a21142)の四人はグドンと会わずに広場までやって来た。 広場では大量の人参料理を十体のグドンたちが貪り食べていた。 ある者は料理の種類などお構いなしに両手で手当たり次第に掴み取っては口に運び、またある者は数人分の料理が盛られた大皿を両腕で抱え込み料理に鼻を突っ込んで食べている。 各自が思い思いの独創的な食べ方で料理を堪能していたが、ただ一つ共通しているのは食べるのに夢中で冒険者たちに気がついていないことだった。
運の良いことに二組の冒険者たちが広場についたのはほぼ同時だった。 四人は互いの姿を認めると目配せして頷きあい、すぐに戦いに移った。 「いきます!」 「土に帰れ」 最初にシス、次にラトが見敵必殺とばかりにニードルスピアで攻撃する。 グドンの半分は二方向からの二人の攻撃で料理を食べながら串刺しにされて倒れた。
もう半分は仲間のグドンの後ろや大きな甕の陰にいたり、テーブルの下に這い込んで落ちた料理を食べていたりといった理由でニードルスピアを逃れていた。 さすがに冒険者たちの存在に気づいた五体にアリスがスーパースポットライトを使う。 「こっちを見なさい!」 やはりウサミミから発する光を浴びてグドンたちはアリスに目を惹かれる。 その内三体はアリスに殴りかかってきたが、もう二体はアリスを気にしつつも北に向かって逃げ出した。
たった十秒で仲間の半分を殺されたのだから、この二体が恐怖のあまり逃げ出すのも無理のないことだ。 しかしその二体の行く手にマフラーを靡かせてペが回り込む。 「逃がしませんよ」 そう言って立ち塞がるペを二体のグドンはそれぞれ棍棒と斧で攻撃したが、ペは剣と盾とで二つの攻撃を受け止めてそのまま二体を広場の方へ押し返した。
その後もシスとラトのニードルスピア、さらにアリスのミラージュアタックとペの大地斬が猛威を振るいグドンたちを逃がすことなく倒し尽くした。 ストライダーの方のアリスにスノウ、ソルティーク、サファイたちが広場に到着したのはこの戦闘が終わってすぐのことだった。
●ウサミミ祭り 倒したグドンの数を教えあってグドンが全滅したことを確認した冒険者たちは家々を回ってそれを告げた。 息を殺して冒険者たちの戦いを見守っていたウサミミ祭りの参加者たちはどっと冒険者たちの元に押し寄せた。 口々に感謝や賞賛の声をあげる参加者たちを見て冒険者たちは驚きと喜びを覚える。 と、そこに参加者たちをかき分けてウサミミ村の長老がやって来た。 長老は祭りの再開と冒険者たちを祭りに招待することを宣言し、参加者たちは歓喜に沸きかえった。
「ウサミミ、ですか。僕に似合うでしょうかね?」 渡されたウサミミを見てペが言った。 戦いの片付けや祭りの準備、壊された家屋の修復に活躍したペの周りには村人たちが集まっている。 「きっと似合うウサ」 「早く着けてみるウサ」 「ではそうしましょう」 ウサミミを着けてみようとするペだったが、 「おや、これは……とさかが邪魔して着けられないようです」 「とさかは外しておけば良いウサ」 「いえ、これは外せません。頭から生えているものなので」 「ええっ! そのとさかは仮装じゃなかったのウサ?」 「とさかが生えてるなんて不思議ウサ〜」 田舎の村なので無理もないが、村人たちはチキンレッグについて何も知らなかった。 ウサミミは着けられなかったが、ペはチキンレッグ領の話などを村人たちと楽しく語り合った。 「ところで、この村には何か珍しいお土産などはありませんか?」 商人気質を出してペが尋ねる。 「お祭りに関係したグッズなどがあれば、本国に紹介してみるのも一興です」 「ウサミミは門外不出だし、あとは人参ぐらいしかないウサ」 「そうですか。 ……しかし、平和な村で、皆が楽しく過ごしているところを見られれば、それが一番のお土産ですね」 ペはにっこりと微笑んだ。
サファイはテーブルに着いて老人のお酌を受けていた。 老人の禿頭にはウサミミが着けられ、枯れた体は肩を露出するピチピチの衣装と網タイツに包まれている。靴は踵の高い女性用のものだった。 「わしがこの格好でお酌をするようになって十余年。平然と杯を受けられたのはあなたが初めてじゃよ」 「このくらいのことは予想していたぜ。 さあ御老人、乾杯しようじゃないか」 サファイと老人、二人の持つニンジンジュースの入ったグラスがカチリと音をたてた。
「楽しいを通り越して、愉快な感じのお祭りですね……」 シスは喧騒を離れて遠くの木陰から祭りを観察している。 「あなたは参加なさらないのですかな?」 しゃがれ声にシスが振り向くと、長老とラトが立っていた。 「少し嫌な予感がして……例えば人参料理がありえなく大量に出てくるとか、食べきらないと怒られるとか……考えすぎでしょうか」 シスの言葉に長老は笑った。 「出される料理は人参料理ばかりですから、慣れない方は戸惑われることもあるようです。 またそれを面白がって無理やり食べさせようとする者もいますな」 ちょうどシスの視線の先でソルティークが笑いながら少し困っていた。
「人参は嫌いじゃないですけど……こればかりというのも」 「それならこのお酒はいかがウサ?」 「この色は……このお酒……ひょっとして人参製ですか? あうう、さすがにこれは」 ただその隣ではヒトのアリスが、 「ウサミミ祭りにはやっぱりわたしがいなきゃね」 と言いながら楽しそうに料理を食べ続けている。
「参加しなくとも、キャロットケーキぐらいはお食べになるでしょう?」 長老はそう言ってケーキを差し出す。 「あ、ありがとうございます」 シスはありがたくそれを受け取った。 「長老、この祭りの由来を教えていただけないか?」 ラトが口を開く。 長老が白い髭を撫でながら語ったところによると、こういうことだった。
その昔、恐ろしい大ウサギが現れてこの村を襲った。 伝説によると大ウサギは口から火を吐き、翼を生やして空を飛び、かぎ爪で岩をも引き裂き、目を見た者は石になってしまったという。 その大ウサギは英雄によって倒されたが、大ウサギの毒血を吸った大地は呪いによって作物が育たなくなり、村は飢えた。 そこで旅の占い師の助言を受けて人参を植えたところ、何故か人参だけはすくすくと育つ。 そうして育てた人参と踊りを大ウサギの命日に捧げて供養すると、呪いは消えて他の作物も育つようになった。
「その供養がこの祭りの元になったわけか」 「ええ。しかしこの伝説には別のパターンもありまして……」 長老の話は夜明けまで続いた。
「そろそろ私も踊りに加わってみようかしら」 ヒトのアリスはテーブルを離れて踊りの列の方へ向かう。 その途中でスノウとストライダーのアリスに出会った。 「あら、あなたたちも踊りに行くの?」 「そうですぅ。アリスさんもスノウたちと一緒に踊りませんかぁ?」 「良いわよ。行きましょう」 三人は村人たちから踊り方を教わると列に加わって元気良く踊った。 スノウ着ている丈の短い貫頭衣は飛び跳ねる時に下着が見えてしまうのではないか、と皆は心配したが、どういう仕組みか下着は全く見えず一同は安心して踊り明かしたのだった。

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参加者:8人
作成日:2005/03/07
得票数:ほのぼの13
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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