<リプレイ>
●全村一斉かくれんぼ大会? 「今回は人数が多いこともあり、色々なところから応援をお呼びしています。それに、自由参加の純粋にかくれんぼをしにいらっしゃってる方たちも多いので、こちらを目印にしました」 村長が各種注意と共に赤と青のバンダナを配る。 夜駆刀・シュバルツ(a05107)が提案した方法だが、確かに有効であった。 このバンダナを見つかった相手に回収されたらその時点で失格である。 熊や猪を見かけたり、合図の笛を聴いたら逃げるように等々注意事項はまだ続いていた。 成人候補と自由参加者で羊グループにいるのはざっと200名弱であろうか。 自由参加者という話はどうも村の二大有力者から出た話であるというのもきな臭い。 妨害者へのカムフラージュである事は明確だった。 鬼チームで参加している冒険者達が小さく手を振ってきたりしている。 数名にまるで猟犬のような視線を感じるのは気のせいではあるまい。 儀式を成功させ、美味しい食事のために!(目的の半分以上はこちらであろうが)それぞれの思惑を胸に、そっと冒険者達は人ごみにまぎれた。
「これが地図の簡単な写しです。参考になるでしょうか」 チビねこ・ティア(a18135)が全員に地図を配った。 釣り場の位置情報や大岩等の情報が書き込まれている。 「大体ここと、ここと、ここぐらいで分担でしょうか?」 ストライダーの武道家・マサキ(a21623)が大まかな場所を区切って全員に確認した。 「了解しました。あ、消えにくい絵の具がありますのでいかがです?」 ドリアッドの医術士・リライト(a21214)が落書き用の絵の具を希望者に配る。 「ふむ……釣り場は結構あるのだな」 焔の錬金術師・ロイ(a20861)が地図を片手に呟いた。 「事情はどうあれ、思う存分釣りに興じていいというのは嬉しい限りですねぇ」 深緑の森の守り手・イツキ(a10040)が持参した竿の調子を見つつ、穏やかに笑う。 「さて……やるからには負けないよ? 必ず逃げ切ってみせる」 蒼く夢幻なる槍剣士・ジン(a19307)は軽く準備運動をしながら呟いた。やる気十分である。 「皆、怪我がないように十分注意して頑張るなぁ〜ん♪」 散る為に咲く華・コノハ(a17298)がにこにこと言った。 「普通にかくれんぼした方が面白いのにー……どうして邪魔するのかなのねー」 さすらいのゴンギツネ・ラキア(a12872)が首を傾げる。 シュバルツが苦笑しながら仕方ないのさ、と言ってラキアの頭をぽんと叩いた。 「妨害者は全員捕まえるつもりでがんばります!」 夢を紡ぎし青石の鍵・ソフィア(a15022)がぐっと拳を握って気合を入れた。 高らかに鳴らされる銅鑼。冒険者達は頷きあい、それぞれの担当とした地域へと駆け出した。
●木の葉を隠すなら森の中、不審者を隠すなら人ごみに!? 有力者の息子の片方が森の小さな池の前できょろきょろしながら釣りを始めるのを、シュバルツは手近な木の上から観察していた。 (「こいつらが一番狙われそうだしな」) 確かに、明らかに異質な気配が忍び寄っている。 普通の鬼なら、容赦なく踏み込んでくるだろうにじっと様子を伺っているのだ。 双方に気付かれないようにそっと木を降り、気配の後ろに回りこむ。 腕に巻いたバンダナは青。しかし、その手にしているのが武器であると認識した途端、シュバルツの容赦ないボディブロウが決まった。 「神聖な儀式だ。野暮な事はするな」 囁く様に言って、目を白黒させた妨害者に更に首筋に一撃を加え、昏倒させる。 気絶したそれを木に縛り付け、持ってきた口紅で思い切り顔中に×を描いた。 「……ついでにこうしとくか……」 口ではいえないような下品な悪口を顔に書き添え、ほくそえむ。 すぐそばでそんな事が行われているとは露知らず、息子は一匹釣って次の場所へと移動しようとしていた。 確かに、一箇所に留まるのは危険だろう。そう判断し、シュバルツもそっと後をつけながら移動を開始した。 イツキはどんどんと山奥へ分け入っていく。 今日は死ぬほど釣りまくっていい日であり、彼的には至福だった。 とりあえず、見つけた手ごろな場所で釣り糸をたらす。 「おお、中々大物が……ん??」 数匹釣ったところで妙な気配。じっとこちらを伺われている様子に、イツキは釣竿を片手に立ち上がった。 気付かれたと知るや、相手の敵意が大きくなる。 先に邪魔な冒険者達の排除に出ようと言う魂胆らしかった。 じっとイツキが動かないので、焦れたのか相手が飛び出してくる。 大振りな攻撃を適当に釣竿であしらいつつ、彼は小声で眠りを誘う歌を呟いた。 「これを、こうして……これなら大丈夫ですかね」 たちまち眠り込んだ妨害者から上着を剥ぎ取って木に縛り付け、ついでに顔に『私は儀式を妨害しました』と大書きする。 もう数匹をたちまちのうちに釣り上げると、イツキはまた次の場所を探すべく、魚を抱えて更に山の奥へと入って行った。
山の中には面白いものがたくさんある。 鳥や花に思わず見とれてみたり、一般の鬼が走っていくのをそっと物陰に隠れて見送ったりしつつコノハはとことこと歩いていた。 途中イツキに出会って小さめの魚を三匹ほど分けてもらう。 少々開けた水場に出たとき、聞こえてきたのは争う声。 周りを見渡すと、川の岩の陰で少女と少々体格のいい少年が乱闘している。 言い争う内容から、少女の魚をその少年が奪おうとしているらしいと知り、コノハは駆け出した。 「みんな仲良く……自分の力で頑張る、なぁ〜ん!」 後ろから近づいて愛剣の鞘で少年の頭を殴りつける。 ずるずると崩れる少年。手加減はしたのですぐに気がつくだろう。 少女はコノハの格好等に少々驚いた顔をしたが、にこりと笑ってぺこんと頭を下げ、走り去っていった。 「どういたしまして、なぁ〜ん♪」 何となく嬉しい気分になり、コノハはまた違う場所へ歩き出した。 髪を帽子に押し込み、枯葉色の服、顔にはご丁寧に泥まで塗ってティアは完全に周囲に溶け込んでいた。 ペアのマサキとは離れても互いにすぐ会える様に例の地図で念入りに打ち合わせをしてある。 森の中では一緒に、開けたところではバラバラに、慎重に二人は進んで行った。 見つかりそうになったらお互いが別方向に石などを投げて気をそらす。 途中、肉や魚を焼く匂いに足を向けると、そこでは鬼側の冒険者達が熊と戦いを繰り広げていた。 近くで二人組の鬼が怪しい動きをしているのでマサキはティアと顔を見合わせ、そっと忍び寄る。 武器を携帯しているのを確認し、耳元でそっとティアが眠りを誘う歌を呟いた。 眠りに連れ去られようとする瞬間、マサキの拳が次々と腹に叩き込まれ、妨害者達は低くうめいて昏倒する。 二人で協力して妨害者の上着をはいで木に縛り付け、思い思いの落書きを顔に施す。ティアは彼らの頬に木炭で渦巻きなど書いて楽しそうだ。 熊との戦いはまだ続いているようだが、彼らに任せておけば大丈夫であろう。 二人はそっとその場を後にした。 ラキアは周囲に溶け込むようにしながら、有力者の息子の片割れにつかず離れずと言った様子でついて歩いていた。 今のところは異変を感じられないが、油断は出来ない。 そう思って気を引き締めた途端に、辺りに現れる不審な気配。 (「きたきた、なのねー」) 息子はと言えば全く気付かずに川で釣りなぞ始めようとしている。 あんまり近づけるとよくない、そう判断してラキアは自分から妨害者たちに近づいていった。 近づいてくるラキアに敵意をむき出しにした気配が、一つ、二つ……三つ。 こちらに向き直ったところでラキアの手元から術の蝶が一斉に飛んだ。 混乱した妨害者同士が、殴り合いを始めて見事に相打ちになる。 残った一人も素早く気絶させ、ずるずると引きずって木に纏めて縛り付けた。 「ズルッコはだめですよー!」 そういいながら、顔中に色々な絵を描くラキア。実に楽しそうだ。 (「あ、そういえば息子しゃんは?」) 思わず時を忘れかけたが、川に戻ってみれば息子はまだのんびりと釣りをしていたのでほっとし、また監視をつづけることにする。
ロイは開始時に候補者達に村長について聞いて回っていた。 (「一応中立とみていいのかもしれんな」) 彼についての噂はほとんど彼の人柄の良さと公正さを語っている。 「ここなんてどうだ?そろそろ釣り始めた方が良いだろう」 誰にともなく呟いて、水辺に腰を下ろすロイを、じっと木の上から見つめる影があった。 偶々水辺を監視していたジンである。 「遊び感覚でやるって訳にもいかなそうだな……こりゃ……」 ロイの周りで蠢き始めた気配に苦笑して小さく呟き、ジンはじっと様子を伺った。 ロイはといえば気がついているのかいないのか、中々釣れない魚に首を傾げたりしている。 「……ってか、どう見ても成人って感じの顔じゃないだろ……。どう見たってこいつはオッサンだろ?」 ロイに襲い掛かろうとした妨害者をその注意がこちらに向いてないのをいいことに後ろから殴り倒して昏倒させ、ジンは思わずと言った風に呟く。 不審な争いの気配を感じ取ったらしいロイが、少々とは言え釣れた魚を手に、顔を隠して素早く逃走した。 その様子を見送りつつ、ジンは妨害者の上着を奪い、木にぐるぐると縛り付ける。 「に……く……っと。……うん。一種の羞恥プレイだね?」 かなり間抜けな顔を晒す妨害者に、声を出して笑いそうになるのを必死にこらえる。 また次の候補者がやってきた気配に、そっとジンは木の上に戻って周囲の観察を続けることにした。
リライトとソフィアはあたりに漂う血の匂いに気付き、お互いに緊張しつつ水辺のそばとあって慎重に散開した。 身を潜めるように辺りを伺っていると、鬼たちが話しながら通りかかった。どうやら、近くで獣と戦闘があったらしい。 周りに溶け込むようにして、じっと息を殺す。 ガサガサと周りを探し始めた鬼の様子に、ソフィアがそっと土から下僕を作り出し、反対方向に行かせて気をひいた。 まんまと騙された鬼達に気付かれないようにそろりとその場から退避する。 川のそばを用心しつつつかず離れずぐるぐると回る。 途中見かける候補者達に不審点がないか観察することも忘れなかった。 短くソフィアの悲鳴が上がり、何事かとリライトが駆けつけると。 「やー、見つかった! こっち来るなぁ!」 どうやら鬼側の参加者と思しき重騎士をソフィアが蛸殴りにしている。 切れ切れに聞こえる重騎士の言葉と、その妙に爽やかなのに軽薄な笑顔とで推測するとどうやらナンパしにかかり、返り討ちにあっているらしかった。 最大限に緊張しているところにそのような事をされればボコられても文句は言えまい。 苦笑したリライトの目にその騒ぎに乗じてソフィアを襲おうとしている人影が映る。 素早く回り込むと、体格差に勝てそうだとふんだのか妨害者がくるりとこちらを向いて襲ってきた。 「私は医術士ですが鍛錬を積んでますので、ゴロツキの皆様よりは強いのですよ」 あっさりとかわし、杖で殴って昏倒させながらリライトはにっこりと微笑んだ。 縛り付けて上着を奪い、顔にネズミひげや○×を落書きするのも忘れない。 重騎士を撃退して気が済んだらしいソフィアと、もう一度巡回に戻ることにした。 夕暮れが近くなってきた。 妨害者たちの行動も段々とエスカレートしていく。 「お願い、今だけ……ボクに羽根を頂戴なぁ〜ん!」 ふわり、とコノハの体が舞う様に動く。 大胆にも見晴らしのいい場所で堂々と襲い掛かってきた妨害者を瞬く間に片付けて、必死で木まで引きずり、くくりつけた。 正直倒すのよりも移動させるほうが小さなコノハにはよほど大変だ。 上着を剥ぎ取り額には、大きく『桃色』。 シュバルツは、隠れていた場所に賭けの相手が近づいてきたので猛然と逃げることに成功。どうやら賭けは彼の勝ちらしい。 ロイは、また四苦八苦しつつ釣りをしていたところ気配を感じてそっと藪に身を隠した。 楽しそうな鬼側の女性冒険者がバケツに水を汲んでいる。 何をするのかと固唾を呑んで見守っていると、つかつかとこちらに向かってくるのでいつでも逃げられるようにと、体制を整えた所。 ばしゃーっ!!! 容赦なく振ってきた水に見事に頭の先からずぶぬれになる。 上げかけた声を必死で抑え、とりあえず茂みからは逃走に成功したが、しばらくすると後ろから発見を告げる声。 ぐんぐんと近くなるそれに、観念してロイはバンダナを外し、相手の赤い和服を着た冒険者に手渡した。 ティアはまた山のかなり奥でゆったりと魚を釣っているイツキをそっと眺めていた。妨害者に狙われたら大変ですしっ、とかいいつつも素敵♪と、顔が知らず緩む。 一方、マサキはティアと二手に分かれて巡回しつつ、木の実や山菜等を集めて回っていると、後方から掛けられた元気のいい声。 (「しまったっ、見つかった!?」) 猛然と逃げるが、逃がさないと叫ばれた途端に体が硬直して動かなくなった。 ルールはルールだ、仕方ない。潔く諦めて彼は、自分でバンダナを外した。 無邪気にはしゃぐ相手の少女を見ると、なんだか悔しさも薄れる。 山に日が沈んだ。 イツキは大量の戦利品を抱え、のんびりと帰る途中に聞きなれた声を聞き、次いでタックルされて危うく転びかける。 「飛ばされたりしませんでしたか?」 ぼんやりすることが多いので気にかけていた同じ旅団のエンジェルの少年は、タッチの差で間に合わなかったと本当に悔しそうだった。 その様子に思わず笑みがこぼれ、共に村への帰途へつくことにする。
●魚も熊も猪も、皆美味しく胃の中に。 儀式は大きな怪我人もなく無事終了した。 縛り付けた妨害者は日没と共に一応解放したが、三々五々逃げたのでどうなったのかは不明。 証の魚は村の広場で調理したり豪快に焼かれたりして振舞われている。 鬼側の冒険者たちが倒した熊や猪は有効活用され、熊鍋ボタン鍋になって皆の胃を楽しませていた。 マサキや他の候補者がついでに集めてきた山菜や木の実も宴会を彩っている。 「たくさん動いたらお腹減っちゃったのねー」 「いっただきま〜す♪ なぁ〜ん♪♪」 「おいしいです〜♪」 一日山の中を動き回った欠食児童たちが素晴らしい食べっぷりを見せている。 もちろん大人達も負けてはいない。見る見るうちに皿は空になっていった。 「顔になんて書きました? え、それは恥ずかしいかもっ」 「……ったく、骨の折れる依頼だった……」 「うん……成功してよかったな……飯も旨いし……」 皆でニコニコと成果を話し、鍋と魚に舌鼓を打った。 達成感は食欲を増し、歓談は味を一層美味くさせる。 かくれんぼ大バトルは、無事にその幕をおろしたのだった。

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参加者:10人
作成日:2005/03/02
得票数:ほのぼの16
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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