<リプレイ>
●深い森 爆風のあとに立ち込める煙のむこう。 木々の間に敵の姿は見えない。 「どこから見えない位置で攻撃を仕掛けているのかしら? まずは射られた方角へ行って見ましょう」 剣を持ち、矢の飛んできた方向へ走る神速のつまみ食い女帝・ウィンディア(a00356)が予測した場所へ辿り着いた時には何者の姿も見えなかった。 姿の見えぬ敵、だけど感じるのは間違いようのない敵意。 「相手の姿は見えたの?」 「いえ。見当たりませんわ」 「ちぃっ! 何処にいきやがった?」 追いついた吹く風の先・リンネ(a14608)と狂風の・ジョジョ(a12711)が油断なく周囲に気を配りながら唸る。 二人ともその手に握るのは大剣。手に馴染んだその感触も、振るうに狭い木に囲まれた空間ではいつもよりも重たく硬い。 ……キュンッ 風を切る音と共に見えたのは、飛来する蒼い矢。 「また!?」「くっ!?」 剣を眼前に盾のかわりに翳しながら待つと、矢はそのままの軌道を保ちながら追いついてくる仲間の方へと向かう。 「危ねぇ! 伏せろ!」 ジョジョの叫びとどちらが早いか。後続の仲間の輪の中央で着弾すると共に炸裂する。
「大丈夫ですか?」 「なんとか、ね」 答えるのは軽業拳法使い・ヤイチ(a12330) 大きな手傷は追っていないけれど、続けて貰えば危ない。 「敵の位置を把握出来てない以上、敵側の方が有利です。まずは敵の発見に全力を」 「じっくりと相手を見極めてからキルレインさんに狙撃をしてもらうまで持久戦になると思うが、がんばるのじゃ」 「医術士ではありませんが、回復はお任せ下さいな!」 「いや……今回は弓を持ってきていないのです。申し訳ない……」 挑風・ダスト(a20053)の言葉に、艶やかに舞う拳の華・アコ(a14384)は自信を持って、慧眼の静風・キルレイン(a12779)はすまなそうに手元の太刀の鍔を見せ答える。 「無い物をねだっても仕方ねぇよ。まずは相手を見つけようぜ?」
●探索 森の中を慎重に、アコを中心に据えた布陣で進む冒険者たち。 固まることで爆発に巻き込まれることよりも、回復の可能な範囲を保つ持久戦を挑む作戦だ。 ゆっくりと慎重な足取りで2射目が放たれたと思われる方向へ歩を進める。 「ふぅむ、一体どこにいるんだろ?」 矢が飛来した方向と、キルレインの弓使いとしての判断からの30m。 おそらくこのあたりから放たれたはず。だが、相手の姿はない。 「敵はなぜ姿が見えないのかしら?」 「カメレオンとか、擬態出来る動物系じゃねぇかな? あとは、鳥……例えばコウモリとか……?」 紅の颶風ルーズリーフ・グウェン(a19529)の意見は誰も肯定も否定もしない。可能性は十分にある。 「目印になりそうなものは……ついてないよな」 腕を上げたり背中をがんばって見たり。自分の体になにかそれらしい相手の狙撃の目標になるような何かがついていないかを確認する。 「姿が見えないんじゃ攻撃したくても出来ませんわね」 「敵が何処に居て攻撃してくるか分からない以上、全方位を哨戒すべきですね。その上で敵に攻撃させてから位置を判断するしかないでしょう」 「そうね。何度か攻撃を受けていれば、きっと相手の姿が見えてくるはずよ」 そして、見えない敵を探してまた森の奥へ、さらに進んでいく。 ●思考 3発目、そして4発5発と飛来した矢は、進む右手から、左手からと方向を変えての着弾。 「くそっ!」 「相手の姿は見えまして?」 「いや。見えなかった」 また走り出し、恐らくは射撃地点だと思われる場所へと走りながらそれぞれに気付いたことをまとめる。 「相手は木そのものなのかと最初は考えましたが、どうやら違うようですね?」 一つのところに留まっていないことは、これで判る。相手は動いている。ならあとは身を隠している術を見破ればいい。だが…… 早い。移動しているのなら、どうやて動いているのだろうか? そして不安はもう一つ。 地味に蓄積していくダメージは休息を取れば癒せるのだろうが、それをしている時間もなければ、相手が許してくれるはずもない。 「ヤル気があるなら出てらっしゃいな!」 アコの叫びは、回復役としての苛立ちだろうか? 何かを思案するような顔で自分たちが来た方向を振り返るヤイチ。 「特に変化はない、か……」 異変があれば直にでも投げられるようにと構えた戦輪を下ろし、代りにウィンディアと視線を交わしてリングスラッシャーを召喚する。 「ならば、これにはどう反応しますかしら?」 「敵が視えればすぐにでもぶつけられるだろうから、ね」 「ダメね。私の夜目なら見えるかとも思ったんだけど……わからないわ」 6発目の飛来に、自身のエルフの目で周囲を警戒していたが、それらしい熱源は視えない。 「相手は体温が低いということですか」 「植物やそれに近い形状のものである可能性が高いわね」 しかし言ってみて自分で違和感を覚える。相手がこれだけ動き回っている。それは間違いない。 「んじゃ、植物が動き回ってるってこと?」 「モンスターに体温があるのかどうか自体がわからんのじゃ。そうかも知れぬし、そうで無いかも知れぬ」 「あぁそっか……面倒な敵だなぁ」 グウェンの呟きはそのまま全員の心理そのままだったに違いない。 見えない相手の姿と力を、今までの経験と知識のなかから合致するものが無いか、近いものは無かったか頭をめぐらせ考える。 「よく動く敵なら……もしこっちを追うような敵なら逃げると見せかけて視界の開けた場所へ誘導するってのはどうかな?」 たいして、経験の低さを気にするグウェンは、思いついた意見をどんどんと言っていく。 「追えば逃げるけど追ってこない敵、これが一番面倒だよな……逃げ場を無くすように誘導するしかないのかな」 周囲への注意はそのままに、歩きながらの話し合いは続く。 「まずは敵の姿を捉える事。それを考えないといけませんわね」 「一射ごとの間隔は開いていますね」 「つまり……連射はきかないっ……っつぅ……連射は効かないってことかな?」 会話の合間に響く爆音に、リングスラッシャーを飛来した方向に飛ばすが、敵を捉えられずに戻ってくる。 「一発ずつだってんなら、見つけりゃ一気に間合いを詰めて、それで終いだ……このまま見つけられなきゃジリ貧だけどな」 「射ってすぐ移動しているのでしょうか?」 キルレインは射出地点をじっと観察するが、足跡らしきものはない。 「いえ。それにしては足跡がありませんね」 今までの狙撃を思い返す。 軌道は山形ではなく、どちらかと言えば直線的なものだった。 弓師としての判断を、一度のゆっくり頷きで心の中で確信に変え 「矢の軌跡からして地面に近い位置からの射撃だったと思うのですが。少なくとも上空や木の上からのものではなさそうです」 自信に溢れた表情で語る。 「キルレインさんがそう判断するなら信じるよ」 「なら、上への注意は捨てるべきですわね」 視線は水平に。 ただ周囲への索敵だけに意識を向ける方向を絞る。 「アコさん、あとどれくらい回復できる?」 「撃たれる度に回復をするなら……8回ですわ」 問われた彼女は自分の力の残りを計算する……ここまでで既に10回使った。 爆発の威力を考えるなら、2発3発と続けて食らうのは望ましくないために、矢が飛来するたびに回復を重ねてきたが…… 「あと5回くらいが安全圏じゃな。帰還も考えるなら、じゃが?」 「……少し、温存したほうがいいですわね」 「それで倒れたら元も子もないし、なるべく早く片付ける、でいいんじゃないの?」 どちらにせよ、長くは留まれない。 短期決戦しかない、その事を知ればこそ軽い口調でリンネは大剣を肩に担ぎなおした。
●瓦解 残りを5回と定め、次の一撃を待つ。 次の1射……それでも何も掴めなかった。 爆風の向うには何も見えず、歯噛みしながらまた回復とともに、じっと神経を鋭敏に保つ。
少しの葉がこすれる音も聞きのがさないように、少しの土を踏みしめる音も聞き逃さないように。 少しの異変も見逃さないように。 緊張と共にジリジリと感じる焦燥とに耐えながら、まった一瞬。 「……そこっ!」 叫ぶヤイチの戦輪の先、一瞬確かに見えた影。 しかし戦輪を避けるように……というよりも、そのために力をためていたのか、その影は凄まじい勢いで避ける。まさに飛ぶように。 そしてそのまま鬱蒼としげる木々の後ろに隠れるように消えていく。 その軌道を見極めようと目で追った冒険者たちは、その途中で蒼い矢が放たれるのを確認して慌てて防御する。 爆風の過ぎたあと、もう一度回復を行ない、改めて確認をする。 「見えまして?」 「はっきりとは確認できませんでしたが、いました」 一瞬だけの遭遇だが、手の内は……わかった。 「移動と同時に撃っているようじゃな。だから連射が出来なかったのじゃろうか」 「撃ってきた方向、探しても見つからないわけだね」 まだ捉えきれたわけではない、が勝機が見えた。 自然、口元に浮かぶ笑みをお互いに確認しながら、次の1射をまつ。
さっきの狙撃地点から少し離れた場所。 そこに。 気配が生まれた。 「おゆきなさい……リングスラッシャー!」 ウィンディアとヤイチの二つのリングスラッシャーが左右に分かれて飛ぶ。そしてリングを追うように走り出すリンネとジョジョ。 どちらに飛ぶかわからないために挟撃を狙っての一撃に、モンスターは撓めた体を大きく引き絞り、放たれた矢のごとく横に飛んでみせる。ジョジョの向かった方向に! 走りこむジョジョの横を、モンスターが口から放った蒼い矢が飛んでいく。 リンネは逆方向にモンスターが跳躍をしたのを見て振り返り、見た。 矢が、ダストへと命中する瞬間を。 腹に響く鈍く低い轟音と共に起こった爆発。そしてその後の吹き荒れる煙を割って後ろに吹き飛ぶ仲間。 「「ダストぉ!」」 轟音ですら無視するように走りこんでいたジョジョは、その仲間の叫びに振り返ってしまった。 アコに抱き上げられ癒しの術を施されるダスト。その体は黒く煙を上げ、遠目に見ても軽い傷ではない。 「…………!」 頭が真っ白になった。怒りで思考が止まる。敵を目の前にして、何も考えられない。白紙に変った、その次の瞬間に。
ぅぅぁぁっぁがぁぁああ!
ジョジョは走りだした。 無防備に剣を振り上げ、汚らしく大口を開けるそのモンスターに向かって。 「いけない! ジョジョ、戻ってください!」 仲間の制止も聞こえない。 気味が悪いほどの蒼い体躯の大蛙に、その自分に向けられて開かれている口に、この剣を叩き込む。考えではなく、凶暴な感情のままに走り寄った彼は。 そこで意識を失った。
●撤退 「ジョジョ!」 爆音と爆煙の中で、ダストと同じように弾き出されて来る巨漢。近づいたところにまともに正面からの一撃。 慌てて駆け寄り、その傷の具合を見る。 「……退きましょう」 ダストへの直撃は少なからず自分たちにもダメージがあった。一緒に回復したとはいえ、残りの回復能力も心もとない。ジョジョまで癒した今…… 殿に立ったリンネが警戒を続ける中、キルレインとヤイチがジョジョを、グウェンとウィンディアがダストを抱えるようにして、彼らは森を後にしたのだった。

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参加者:8人
作成日:2005/03/10
得票数:戦闘5
ミステリ1
コメディ4
えっち1
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冒険結果:成功!
重傷者:狂風の・ジョジョ(a12711)
挑風・ダスト(a20053)
死亡者:なし
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