【四人のメダル】手放した男



<オープニング>


 くたびれた上着の袖を折り返して、そこから突き出したのはごつごつとした掌だった。分厚い爪は短く切りそろえられていて、皮膚には火傷の跡が白い筋になって残っている。
 柔らかくメダルを包み込む手は、優美な女性の手も、華奢な少女の手もしっかりと掴んでいた。木漏れ日の中を、子供の歩調に合わせて、ゆっくりと歩く。静かな振動が、小さく輝く金細工には記憶されていた。
 だが、細やかな細工の施された金の面が、紅蓮の炎からの揺らめきを浴びて、熱を帯びる。白い腕が四本伸びていたが、男の指先に触れることもできずに、いずれも赤い光の中に溶け込んで……消えた。
 
 
「このメダルを長く手にしていたのは、職人の手でしょうね」
 薄明の霊査士・ベベウは、上着からくすんだ風合いの金細工を取り出した。彼の隣に腰掛けていた少年が、ポケットから仰々しく取り出したものと比べて、明らかに経年の積み重なりが見てとれる。少年のポケットに大切に放り込まれていたメダルは、常に人の手に触れられ、布地に磨きあがられて光沢を帯びていた。だが、もうひとつはファリノスが磨き上げても、へばりついた埃がなかなか落ちない。
 信じられないといった顔つきで、ファリノスは口を開いた。
「それで、誰なんですか? このメダルの持ち主って。職人って、なにをしてる人ですか? ぼくとおなじご先祖の子孫なんですよね?」
 ベベウは小さく首を振った。
「少なくとも、あなたと同じ伝承をその人物は知っていたようです。それ以外のことは、残念ながらよくわかりません……。それに、このメダルの持ち主は、今は別の人物となってしまっているのです。ある古物を取り扱う店の主が、現在の正式な所有者となっています。前の主は、数年前にこのメダルを手放したそうです。一切合切の家財道具諸共と……」
 食い下がるようにファリノスは言った。
「そんな……だけど、それって……」
「その人物は、ある森に入り、今では砂金を捜しているそうです……。古物商が言うには、すべてに疲れはたてような外見で、ずいぶんとやつれた男だったとか。彼はこれまでのすべてを捨てて生きたいのだと、そんなことを呟き、だから主も記憶に残っていたのだそうです。それに、メダル以外の品はひどく煤けていて、値のつけられるものは少なかったそうです」
 机に腕を叩き付けて、ファリノス少年は天井を仰ぎ見た。
「すべてを捨てるなんて……できっこないですよ! それに、メダルと四人の後継者を揃えないと、一族の宝は見つけられないっていうのに……。森へぼくが捜しに行きます。場所を教えてください」
「それはよしたほうがいい」震えていた少年の肩に掌を重ね、ベベウは言葉を継いだ。「その森はアンデッドが徘徊する危険極まりない場所です」
 少年は絶句していた。ベベウは腕を組み、説明を続ける。
「砂金を捜しに森へ入る人々が立ち寄る、小さな山村があります。その長から、アンデッドの退治と、砂金を捜す人々の保護を目的とした依頼がもたらされたばかりなのです」
 静かに聞き入っていた少女が、組んでいた腕を解き、ふくらみを帯びた唇を開いた。
「じゃあ、ついでに前の持ち主って人を捜せばいいな。ねえ、ベベウ」
 霊査士は微笑み、首肯いた。

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参加者
風色の灰猫・シェイキクス(a00223)
明告の風・ヒース(a00692)
ニュー・ダグラス(a02103)
ねこまっしぐら・ユギ(a04644)
紅・フラト(a07471)
闇夜の夢見師・ルシア(a10548)
闇夜を護る月の刃・カルト(a11886)
熊殺し・ミーナ(a13698)
白の預言者・ティナ(a13994)
紫空の凪・ヴィアド(a14768)
NPC:天水の清かなる伴侶・ヴィルジニー(a90186)



<リプレイ>

 冬の青空で、薄く伸び広がった雲たちは、移動に忙しい。晒した肌をなでる風は、性急に通り過ぎて、冒険者たちを震わせた。けれど、常緑の緑が空を覆わぬところへ歩み出ると、陽の陽射しは驚くほど暖かだった。
 
 川べりを、紅・フラト(a07471)は歩いていた。艶やかな髪を美しくなびかせ、均整がとれてすらりと伸びた身体で、軽やかに足を繰り出していく。
「あんまり採れないんだってね」
 フラトがふと漏らした言葉に、白の預言者・ティナ(a13994)の眉が険しくなった。といっても、少女が額に力を込めたのだ、薄くきめ細やかな皮膚がわずかに寄っただけで、しわが刻まれたわけではない。
「どうして、砂金を探すのかな」
「価値があるから……だけど、大勢が挑んでも、たくさんは採れないのですよね」
 熊殺し・ミーナ(a13698)はティナの問いに答えてみたが、自身も合点がいかなかった。少なくとも、この濁ったせせらぎが、人々に幸せをもたらしてくれると思えなかった。
 ミーナとフラトの背は高い。彼女たちの胸くらいまでしかないティナは、順繰りに顔を見上げて話した。
「生きるためにお金がいるのなら、砂金よりもっと確実なものはあると思うの。金細工のメダルも手放すのならお金や金じゃなくて、目標が欲しいのかな」
 茶色でも緑でもなく、澱んでいるが汚らわしくはない流れが、彼女たちの足下で、ゆったりと時を運んでいった。
 
 草の伸びた庭みたいな顔をした男性が、よたよたとした足取りで逃げてくる。
「大丈夫かい? とっととこっちへ来な!」
 フラトは声を張って、男を仲間の元へと呼びつけ、入れ替わりに徒党を組んだ死者の集団へと斬り込んでいった。腕の刃には、雷光と似た輝きが満ちている。焔天画戟が一閃すると、湿った身体のアンデッドは、腐った樹木が倒れるような音をたてて、身体を折り曲げた。
 逃げてきた男が、自分の背後で、無事に救出された同業者たちの列に加わったと確認すると、ティナは優しい光を放つハートのステッキを目の前の空間に差し出した。心臓の形をした宝玉から、明るい輝きが広がり、放たれた衝撃波が死者の胸を穿ち、大きな風穴を空けた。
 ミーナは男たちばかりでなく、ティナの位置も気にかけながら、直立する長身の木々が立ち並ぶ森を駆け抜けて、死者の目の前に躍り出ると、ふうと小さく息を吐き、肩を軸に固く固めた拳を回転させた。左右の拳が、次々に死者の頭部から頚部、胸部を砕き、後に残ったものは、腹から下だけとなったアンデッドの名残とでも呼ぶべきものであった。
 アンデッドを退けたティナたちは、助けた人々に怪我がないことを丁寧に確認すると、彼らを連れて川を溯っていった。
 東の支流を進む仲間たちとの合流地点、つまり、ふたつの流れがひとつとなる開けた地点が近づいていた。
 
「なんや、いらんかったんかもな」
 神鳴牙と呼ばれる刃を利き腕に、そして、灯のないランタンをもう片方の手に下げて、紫空の凪・ヴィアド(a14768)は平坦な口調で言った。
 エンジェルの医術士・ヴィルジニーは、普通ならば、特に親しい間柄なのではと勘ぐられても仕方ないくらいの近さで、ヴィアドに寄り添っていた。少女にしてみれば、敵がいつ現われるか知れぬ地で、医術士は仲間のそばにいるべきだと考えていただけなのだが、男ばかりの集落で育ったため、異性に対する意識が低すぎるのだ。
「問題の男は話から察するに、火事で家族を失った、ってとこか? 保護した面々から火傷痕のある奴を探し、説得しねぇとな……ちょっと待ってくれ」
 馴れた足取りで枝や朽ちた幹などが散乱する森を進み、小川へと仲間たちを導いて、風色の灰猫・シェイキクス(a00223)は手をかざした。尖った爪先が特徴的な、真新しい足跡があった。
「生きとるんか? 死んどるんか?」
 ぶっきらぼうに言ったヴィアドを、ヴィルジニーは水色の瞳で見つめた。その視線に気づいたのか、彼はずっと張り詰めたままだった頬をわずかに綻ばせる。無意識に認めたくないと感じる、胸の中の思いが彼をかたくなにさせていたが、ヴィアド本人もヴィルジニーも気づいていなかった。ただ、目や唇の形を通して現われる表象が、淡々としたものだなと見てとれるだけだ。
「間違いない、こいつは生きてるぜ。だが」
「だが、どうなの?」
 少女の問いに、シャイキクスは断言した。
「半分、死にかけてるな」
 
 放置された革のテントが、無残な切れ端を風に羽ばたかせていた。
 ヴィアドが中をのぞいたが、放置されたのは相当に昔のようだ。主はもう、どこぞの村や町で別の暮らしを始め、落ち着いているのではないか。
 突然に、シェイキクスが言った。
「あいつか」
 森の地面から倒れ込んだ倒木は、その先端を小川のせせらぎにまで達していた。流れを堰かる幹の影に、ひとりの男が横たわっていた。
 ヴィアドが周囲を警戒する中、ヴィルジニーに介抱されなら青年は言った。
「この先にいくつかテントがあります……そこに、死人の群が……」
「ここは任せるで、ええな」
「わかった」
 ヴィルジニーに告げ、ヴィアドはシェイキクスと共に、川べりの隘路を急いだ。
 切り裂かれたテントの残骸がシェイキクスの視界に現われ、その辺りを緩慢な動きで徘徊する灰色の者共の姿がヴィアドの硝子越しの瞳に映った。
 生者の姿が見当たらぬと瞬時に悟ると、シェイキクスは透き通った赤い矢を手元に作り出し、葉や羽根を想起させる意匠の施された弓につがえ、狙いを定めた。ふたりの生を感じ取ったのか、黒ずんだ長い爪を伸ばした腕を下げて、死者たちが向かって来たが、飛来した矢がその鼻先で赤い火球となって爆ぜ、その身体を吹き飛ばしてしまう。
 同族の一部であった破片を浴びていた蠢く死者も、疾風のごとく駆け抜け、幻影を従えたヴィアドの神鳴牙を浴び、無残にもたった一太刀で葬り去られたのだった。
「吹き飛ばしてやったぜ」
「すごいな」
 揚々と戻ったシェイキクスに、ヴィルジニーが素直に手を掲げる。少女の掌を、シェイキクスは叩いた。
「気分が悪いのか?」
「なんでもあらへん」
 俯いて眼鏡の位置を直し、ヴィアドはヴィルジニーの言葉を窮屈そうに遮った。
 助けた男に案内され、シェイキクスたちは別の男たちを見つけだした。
「兄貴がな……」 
 ぽつと漏らしたヴィアドに、シェイキクスとヴィルジニーが振り返る。だが、その時、対岸から仲間の声が聞こえ、少年は口をつぐんでしまった。
 ふたつの流れがひとつとなり、たっぷりの水を湛えた川は、泰然と流れる。
 その向こうで、白い髪の少女が手を振っている。
 ティナは仲間に会えて、とても嬉しそうだった。
 
 上着のポケットに、どこか相棒に似た菓子と、件の金細工を忍ばせて、ニュー・ダグラス(a02103)は森を歩いていた。
 薄い唇を開いたままで、明告の風・ヒース(a00692)はぼんやりとダグラスの横を進む。嘆美といって差し支えのない美貌の持ち主は、相棒のポケットに自らを模った菓子が詰め込まれていると知らない。
「酷い家だな」
 朽ち果てた革の切れ端を見つけ、ダグラスが言うと、左手に白い術手袋をはめた少女が、腕組みをして言葉を繋げた。
「家族……かぁ」
 闇夜の夢見師・ルシア(a10548)が漏らすと、蒼き月光の守人・カルト(a11886)がぱぱっと口を挟んだ。ナイフ投げらしく、目端が利いて、言動もはしこいのだ。
「家族じゃなくって、家だろ? ダグラスさんが言ったのは」
 少女は言葉を荒げずに言い返した。
「だけど、家には家族があるもん」
「それはそうだけどさ……」
 ルシアは続けた。
「だから、想像しちゃったの、ボクはっ!」
 ふたりのやり取りを、ヒースと顔を見合わせて見守っていたダグラスだったが、瞳の端に何かが移り込んで、視線を森の暗がりへと向けた。
 そこには、横たわる人の姿があり、あるべきものがなかった。エルフの瞳に感じられるべき、ぬくもりがなかったのである。亡骸は、男だった。
 突然に現われた亡骸を見下ろしながら、ダグラスは脳裏にふたりの笑顔と、それを奪った男の狡猾な眼差しを揺らめかせていた。両親の死を知り、自らも凶刃から逃げるのに精一杯だった若き日の彼は、落ち延びた先で、これまでの世界が瓦解したのだと悟り、肩を震わせ涙したのである。
 下顎を失った骸骨の、黒い泥が詰まった眼窩を見つめて、誘ヒ紫蜘・ユギ(a04644)は眉をひそめた。この男の瞳は、青かったのか、黒かったのか、それとも、自分と同じ色をしていたのかもしれない。彼はひとりで、ここで死んだ。きっと、誰かを待っていたわけでもないのだろう。白骨の虚ろな眼差しから、彼女は空虚な色を浮べた瞳を想像していた。穿たれたふたつの穴を合わせたら、きっと心の穴くらい大きい。
「…………」
「どうかしましたか?」
 ヒースの問いかけに、ユギは小さく首を振った。
「なんでもないのよ」
 彼女は思わず妹の名前を口にしていたのだが、それは隠した。
 
 歌の主を探して、カルトは森を歩んでいたわけではなかったが、枝を揺らして茶色の小鳥が飛去って、変わりに現われた陰鬱たる空気の主の姿には、さすがに首を傾げたくなってしまう。
 一方で、相手のアンデッドも首を傾げている個体が多いようだ。もっとも、彼らの場合、疑問を呈しているというよりは、腐った脳が重たく、細った首では支えきれなくなっているだけなのだが。
 ワンドを天高く掲げたダグラスから、激しい光の渦が放たれた。死者の影を長く伸ばし、その虚像を浮かび上がらせる。多くは男性、わずかに女性が含まれていた。
 深い朱色の矢羽根を掴み、張り詰めた弓の弦を銀のピアスが光る耳元まで引くと、ヒースは赤茶の瞳が捉えた死者へ、一矢を放った。ぐらぐらと傾く男の頭部へ、矢は急激に矢尻を傾けて突き刺さった。
 白い樹皮の幹を始点に、ユギは身体を大きく旋回させた。木立を駆けて、高く飛び、片手を樹木に巻き付かせるようにして、アンデッドの後方に降り立ったのだ。紫の髪がふんわりと空気を含み、またしぼむまでの間に、彼女は指先に練りあげた気の刃たちを死者に向けて投じていた。
 唇を噛みしめて、ルシアは指先を死者たちへ向けていた。黄金の紋章が薄暗い森に現われ、結ばれた光の線から溢れだした輝きが、アンデッドの身体を貫いていく。
 光の雨が消えると、次に死者の群を怒濤のごとき砂礫の嵐が襲った。木の葉や小枝などを巻き込んで爆風じみた衝撃をもたらした砂塵が消えうせ、そこにぼんやりと立ち姿を見せたのは、カルトだけであった。
 戦いは終わった。けれど、ルシアは宝玉の煌めく左を、未だに掲げたままだった。まるで、何かを掴み取ろうとでもするように。忘れ得ぬあの日、救えなかった小さな手を、少女はまだ掴みたかった。それは叶わないと、自分が誰よりもよく知っていたとしても。
 ぼんやりと霞んだ彼女の視界に、黒髪の少年が現われて、左手は両手で包まれた。
「終わったよ」
 カルトの短い言葉が、嬉しかった。
 
「あんただろ?」
 助け出した12人の男を連れて、冒険者たちは村へと戻っていた。シェイキクスの言葉に、男は目を逸らした。彼の名はマルセロ。両腕の肘から先に、酷い火傷の跡があった。
 だが、ダグラスが静かに差し出した金のメダルに、マルセロは目を見張り、言葉にならない声を発して、肩を震わす。 
 彼はシェイキクスとダグラスの求めに応じ、ファリノスが待つ宿へ向かうことを承諾した。
 
 薄く開かれたままの扉から、ユギとファリノスの声が漏れてくる。
「すべてを捨てるなんてって言うけど、もし『自分の手元には大切なものがない』と感じたなら? あ、ファリノスくんが間違ってるというわけじゃなくてね」
「どういうこと?」
「……捨てることはできるけど、忘れることはできないと思う」
 そう言うと、ユギはウインクした。感心したような、考え込むような顔つきの少年が、ぱっと表情を明るくさせた。開かれたドアの向こうに、見慣れない顔、マルセロの姿を認めたのだ。
 だが、ファリノスの笑顔も、うな垂れて弱々しく笑うマルセロの前で、曇ってしまう。男は生を望んでいないように見えた。少年が叶えたいと祈る一族の言い伝えにも、関心がないと言った。
 そんなマルセロへ、シェイキクスが語りかけた。
「無心に砂金を探すことで、悲しみから逃れようとしているのか? 失った悲しみは深いだろう……だが、家族と過ごした大切な思い出までも全部捨ててしまうのか?」
 椅子に膝を合わせて腰掛けていたルシアが顔をあげて言った。
「ボクは貴方の奥さんや娘さんの事、全然知らないですけど、大切な人を想う気持ち位なら解ります」
 ルシアの背もたれに手をかけていたカルトが続く。
「どんなに辛いことがあったとしても、家族を否定して欲しくないんです。家族の方も大切な人に忘れられるなんて悲しまれると思いますから」
 メダルを見つめながら、シェイキクスが言った。
「……前を見て生きるしかないんだ。……メダルには絆も思いも残ってるはずだ」
 その時だった。男の顔に、悲しみとも喜びともとれぬ表情が浮かんだ。
 そして、マルセロは大きな溜息をついて、背もたれに寄りかかった。
「僕は青二才です」そう前置きして、ヒースは言葉を紡ぎ続けた。「愛する者の死、救うことが出来なかった自責の念……貴方の抱える凄まじい孤独を、理解ってはいないと思います。けれど一つだけ分かることがある……それは、このままではいけないということです」
 部屋の片隅からユギが言う。
「酷だろうけど『捨てる』ことに夢中にならないで生きて。亡くなった人に申しわけないとか思ってるならしない方がいい。大切だったなら持ってなきゃ。思い出も、それに繋がるメダルも」
 マルセロは顔を覆った。心配そうにファリノスが歩み寄ると、男は嗚咽を漏らしながら、少年の細い胴を抱き締めた。床に落ちたメダルが、小さな円を描きながら、ちゃりと鳴っている。
 ダグラスに笑顔が浮かんでいると知り、ヒースは微笑みから呟きを漏らした。
「……どんな目に遭おうと、人はまた微笑むことができる……」
 ガタと椅子から立ち上がり、ヴィアドはファリノスに言った。
「仲良くしたらええんやで」
 ヴィルジニーが後を追ったが、ヴィアドは小さく首を振って去っていった。
 室内では、ティナがマルセロとファリノスの身体に手をまわしていた。
「ファリノスさんはひとりぼっちなの。おじさん一緒に家族になったらいいと思うの。そしたら二人共ひとりぼっちじゃないの。ただいまって言って、おかえりって言ってくれる人がいるのはいいことなの……」
 嗚咽をやめた顔は、ぐしゃぐしゃだった。
 少年が指差して笑うと、涙と鼻水を拭いながら、男も声をあげて笑った。


マスター:水原曜 紹介ページ
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わからない
参加者:10人
作成日:2005/03/04
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