<リプレイ>
●しんさつ、します☆ 「ふぇ? 患者様ですか……?」 愛を詠い微笑みと為す歌姫・アリシア(a10270)は顔を上げ、診察室へ向かう。 「えっと、あなたたちのお名前を教えて欲しいんだけど、なんて言うのかな?」 アリシアが診察室へたどり着くと、そこでは愛の抱擁天使・アヤ(a10024)が首を傾げ、双子に向かって名前を尋ねていた。 森療術士・フィルレート(a09979)はアヤが双子の名前を聞き出した後、二手に分かれての診療を実行する為待機している。 「あたしはリィス」 「あたしはルィスよ」 双子はアヤの質問に、胸を張って答えた。どこも痛くなさそうな態度だ。 「わっ、可愛い子たちですねぇ〜〜。私、今回は皆さんのお役に立つようがんばるですぅ〜〜」 今日もどこかで天然娘・ファナ(a12816)は名前を名乗った双子を見て、笑顔で言う。ちなみに双子は当然と言う顔をして、ファナの言葉を受け止めた。 「診察が終わったら、これをあげるですぅ〜〜。だから、ちょっとの間アヤだんちょーの言う事を聞いて欲しいですぅ〜〜」 そう言いながら、ファナは大きなケーキを取り出す。2人の少女はそれを見て、こくりと頷いた。 シーツを交換済みの診察ベットへ2人をそれぞれ案内するのは、無邪気な笑顔の・エル(a08082)と舞い遊ぶ純真・ラク(a09565)。普段から雑用を引き受けている2人である。 「……そう言えば私、小さい頃お医者さんがちょっぴり怖かったんだけど……。騒ぐ元気があるのだから、そこは心配ないかな?」 リィスとルィスの2人を見て、ラクは少し考えた。が、この状態だったら大丈夫だろうと、診察室の扉を開ける。
「患者さんは女の子が2人かぁ。今頃、お家の人は心配してるんじゃないかな? うちに来てるって事は伝えた方がいいよね?」 鋼鉄の乙女・ジル(a09337)はそう言って、アヤに質問した。 「それもそうですねー」 ふむふむと頷いたアヤの許可を得るジル。彼女は症状を家族に報告出来るよう、診療の様子を確認してから出かける事にした様子。 「ウールナちゃんも一緒に見学しましょうなぁん♪」 草深百合・メルフィ(a13979)がウールナへ声をかける。 熱を測ったり、触診して症状を確認するアリシア。あちこち押してみたりして、痛みを確認したりしつつ、首を傾げる羽目になる。 「変ね……」 痛みを訴える場所はあるが、次に確認するとそこは痛くないと言う。これでは、どこも悪くないのと一緒だ。もしかして、仮病? 診察の結果としてアリシアはその結論に達した。 「んー? どこも悪いところはないですねぇー」 アリシアと一緒に診察をしていたアヤもやはり、首を傾げて呟いた。 「ねぇねぇ、リィスちゃん、本当に痛いの?」 本当は、どうしたの? アヤはしゃがみこんで、リィスに視線を合わせて質問する。 フィルレートが診ていたもう1人の少女も、診察する限りにおいて、どこも悪くないように思える。首を傾げつつも彼女は引っ掛ける為にものすごく苦い薬を取り出した。 「これは大変、お薬がいるわね」 そう言って、苦そうな薬を用意する。 「で、本当は?」 にっこり笑ってフィルレートは質問した。ルィスはいきなり泣き出して、隣のアヤやアリシア、リィスがいる診察室へ駆けこむ。ルィスの様子に、リィスもつられて泣き出した。 「私はメルフィといいますなぁん。リィスちゃんとルィスちゃんは仲良しですなぁんね? 私にもお姉ちゃんがいますなぁん。弟や妹はいないけれど……いたら可愛がりたいですなぁん♪」 泣いているルィスやリィスの頭をなでながら、メルフィが笑顔で話しかける。しばらくして泣き止んだルィスが、不思議そうにメルフィの耳を引っ張った。 「……ほんもの?」 「あんまり引っ張ったら痛いですなぁんね?」 苦笑して答えたメルフィの様子に、ルィスは少し落ち着いたようだ。そうして2人がぽつぽつと弟が生まれてから、家族にあまり構われなくなり、嫌われた。構ってくれる人がいそうだったからここへ来たと話し出した時には、ラクのいれたお茶が各自に行き渡り。 「あのね、子供を愛さない親なんてどこにもいないの。あなたたちのお母さんだって、あなたたちを心から愛しているはずよ?」 そう言って、アリシアは2人をそっと抱きしめた。
●おしごとちゅう、です! 「あら? アヤさんたちは……?」 外出先から戻ってきたばかりの双閃焔翔・シェード(a10012)は、首を傾げて周りを見まわした。いつもならアヤを始め、診療所の女性陣が診察の順番を案内しているはずなのに、誰もいないのだ。 ひょいと奥を覗き、幼い少女たちにかかりきりになっている様子を確認すると、シェードは苦笑しながら呟いた。 「……仕方ない。他の患者さんは私が診ますかね」 少しのかすり傷で顔を出す男性患者の相手も、腰の調子が悪いと言う年配の女性の相手も丁寧かつ適切に行うシェード。 「はいはい。女性を口説く元気があるんなら、大丈夫ですよね?」 にっこり。くるくるっと包帯を巻きつけるシェードに言い切られ、最後に居残り不満そうにしていた男性はすごすご帰った。待っていた患者の診察を終えると今度はすり鉢を取りだし、薬草をすったり日に干したり、干していた物をしまったりと、シェードはくるくる働いて回る。 今度は新しく掘り出した温泉につける、柵の作成だ。 「やる事、いっぱいありますね……」 何となく、遠くを見つめたシェードが溜息をついたのは予想の出来る展開であった。
「お迎えが来るまで、私たちと遊びましょう♪」 診察を終えた少女たちを連れて、アヤがそう声をかける。フィルレートは簡単な手伝い仕事を教え、双子の少女たちも打ち解けた雰囲気になって行く。 「あなたたちはその弟さん、かまってあげた? あなたたちが弟さんをかまってあげたら、その子もあなたたちをちゃんと見てくれる。自分たちに出来る事で、ご両親を手伝ってあげてごらんなさい。きっとご両親も返してくれるわ」 シェードは更に薪を割って、室内へ必要な量を運びこむ。その薪を運ぶ手伝いを双子にさせるフィルレート。火が小さくなっていた暖炉へ薪をくべ、シェードは火の大きさを調節した。 「ん? そんなとこで話してたら、寒いでしょう? 暖炉の前で暖まってはどうです?」 薪を運びこむ際におどおどしていた双子へそう声をかけ、飴を与えてくつろがせると、シェードは暖炉に近づきすぎない要注意をしてから再び仕事に取り掛かる。ちなみに、たまたま近くを通りかかったウールナが飴の言葉につられて飛びこんできたが、そこはそれ。勘(?)で押さえ込み、飴を与えた後で、しばらく子供たちの相手をするよう言いつけてみたりしたようである。
エルとジルは2人、近くの村へと顔を出していた。双子の両親探しである。子供が生まれてそれほど経っていない家で、双子の姉妹がいる家はどこか尋ねて回ると、比較的すぐにその家を見つける事が出来た。 「可愛いお子さんですね。そろそろ歩けるようになる頃ですか? お母さんとしては嬉しい時期ですよね? ボクにも弟がいたんですが、これがまた生意気で……よく関節技かけて泣かしてましたっけ」 双子が診療所に着ている事をエルが告げ、ジルはおんぶされた赤ん坊を見て笑顔で話しかける。 「今になってみると、小さかった弟を育てるのは大変だから、構ってられないのは分かる気がします。でも、ちょっと寂しくもありました。弟にお母さんを取られちゃった気分で……」 そう言って、更にジルは言葉を続けた。 「子供には、両親の愛が一番の薬なんですよ」 だから、忙しいとは思いますが、診療所まで迎えに来てくださいと、エルは頭を下げる。 「大変だからこそ、お母さん1人で抱え込むより、お姉ちゃんたちの手も借りるのが、お子さんの成長にも繋がると思うのです」 ジルもそう言って説明し、同意を得て2人は診療所へ双子の母を案内する為、道を戻り出した。
●おつかれさまでした? 「ケーキ作りを一緒にしませんかなぁん♪ ファナちゃんにラクちゃん、ウールナちゃんも一緒にどうですかなぁん?」 メルフィの誘いで、双子を含めた6人はケーキ作りにチャレンジをする。お母さんに2人が作ったと食べてもらえるかもしれないしと、スポンジを作り、クリームを泡立て、蜂蜜で戻したドライフルーツやフルーツを使って、飾りつけもする。双子はなれない作業に悪戦苦闘はしていたが、それでもずいぶん楽しそうにしていた。 「2人とも放っておかれて、やる事や居場所をなくしてしまったんです。立派な病気ですよ。今、ここでお家のお手伝いの練習してます。帰ったら弟さんの面倒を見るなどのお手伝い、あの子たちにもやらせてあげてあげてください」 フィルレートはケーキの飾り付けをがんばっている双子の様子を見せて、彼女たちの母親へそう伝える。母親に気がついた2人が走って行った後から、メルフィはケーキを抱えて運ぶ。 「この子たちが作ったのですなぁん♪ ぜひ、一緒に食べましょうなぁん♪」 そう言って双子の母親や診療所にいる人々を誘い、ちょっとしたお茶会が開かれる。その後でよければと、掘り当てたばかりの温泉に入る事をフィルレートが勧めた。双子や双子の母親以外に冒険者たちも温泉に入ったりしながらのんびりと。 「ふぅ、いいお湯ね〜。一件落着ってところかしらね、うふふ……」 母親に甘える双子の様子を見ながら、アリシアは笑顔を浮かべ、温泉ならといって、みかんを投げ入れたファナには、小さい子がいるのだから、投げ入れたりしたら危ないと注意をした様子。 「さあっ、皆で背中の流しっこですぅ〜」 めげずに元気なファナはそう言って、双子の背中を流したり。そうしてすっきりさっぱりした彼らが暇を告げると、エルが双子にこっそりと耳打ちをする。 「弟と、ご両親を大事にしてあげてね? 弟が出来たと言う事は、もう少し大きくなったら一緒に遊べるし、2人にとっても幸せな事なんだよ」 にっこりと笑顔を浮かべてそう言うと、エルは双子に別れを告げる。 「また遊びに来てくださいね♪」 ラクは元気な笑顔で、双子たちへそう言う。 少しは役に立てたかな? そう思いながら、ジルは亡くした自らの家族を少しだけ思い出した。それはやっぱりアヤも同じで、少しだけ羨ましい気持ちになってしまっていたり、する。 メルフィは最近会えない、実の姉を思い出して年上の姉と呼べるような人はたくさんここにいるけれどと、やはり少し、ホームシックな気持ちになってしまったようだ。姉代わりと行ったら失礼かもしれないが、年上で一番親しいのは……と考えてメルフィはぽつと呟く。 「……ウールナお姉ちゃん?」 「にゃ?」 きょとんと聞き返したウールナに、メルフィは冗談ですなぁんよ♪ と手を振る。 「ふぅ〜〜今日は楽しい一日でしたねぇ。……それで、あの子たちの病気って、結局何だったんでしょぉ?」 双子とお母さんを見送って。診療所へ戻ったファナは最後に首を傾げて尋ねた。 そうして1人。なんだかとっても働いたシェードは、エルの入れてくれたお茶で、一日の疲れを癒した、……かもしれない。

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参加者:9人
作成日:2005/03/08
得票数:ほのぼの12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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