黒桔梗の森 〜彷徨える鎧・舞い踊る剣〜



<オープニング>


 彼らは……六風の・ソルトムーン(a00180)らは森を歩いていた。もちろん、目的無く歩いているわけではない。この森に来たからには、目的は1つ。
 そして、彼らはその目的とすぐに出会う。

――……ッ!
 森にこだまする不自然な金属音。
「あれは……鎧が擦れ合う音か」
 誰ともなくそう言った時、其の音の主が現れた。
 木々の間から姿を見せたのは、緑一色の全身鎧。既に人のものではない紅蓮の双眸が覗いている。
「先手必勝!」
 悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)は、狭い場所に入られる前にと斬漢刀・参式を手に駆け出し、皆がそれに続く。鬼札・デューイ(a00099)と刃嵐の百合・クーヤ(a09971)の二人の翔剣士が、ルシールに肩を並べお互い瞬時に目を交わす。斬漢刀と敵の獲物が交錯する時を狙って、初撃を叩き込むつもりである。
 眼前の鎧は右腕に無骨な戦斧、左腕に大型の盾を持つ。その盾には、勇猛なる獅子の顔が描かれていた。
(こっちは盾ね。上手くさばけば……)
 盾をちらとみると、クーヤは双剣『Rosa chinensis』の片方を逆手に構える。一刀で盾を誘導し、もう一刀で押し込む気だ。
 3人の接近を見た鎧は、大きく戦斧を振り上げた。
「ハッ! 隙だらけだぜ。なめてんのか!」
 デューイが振り上げられた右手に向って肉薄する。クーヤの剣も盾に届こうとしていたその時、
「な……っ!」
 デューイとクーヤの声が重なる。さもあらん。鎧の背後から数本の剣が宙に飛び出し、2人めがけて踊りかかったのだ。
「くっ!」
 クーヤは双剣で舞い踊る剣を防ぎ、後方に飛び退く。デューイはと言うと更に一歩踏み込んでいた為に飛ぶのが僅かに遅れ、こめかみの辺りを剣が一陣の風よろしく薙ぎ払っていた。
「むぅっ!」
 舞う剣の前では、風を切り振り下ろされた戦斧とルシールの斬漢刀が激しくぶつかっていた。散る火花を瞳に映しながら、ルシールが吼える。
「なめるなぁっ!」
 腕に力を込め、戦斧を押し返そうとするルシール。しかし、2人が飛びのいた事で、宙に舞う剣はルシールに矛先を向けていた。
 彼はやむなく後ろに飛ぶ。当然のように彼らを追う剣たちに、泪月華想・ミア(a00968)がエンブレムシャワーを放った。
「今の内に!」
 剣が砕けたのを見て、ルシール達は体勢を立て直す事にした。

「リングスラッシャーの様なものでしょうか?」
 再び鎧の背後から出た剣が宙を舞うのを見て、ミアが尋ねる。
「おそらくそうね。……という事は、本体を片付けてしまえばOK?」
 クーヤが仲間に確認する。
「何度でも出せるのでしょうか? 今は5本程舞っていますけど」
 舞う剣を指折り数えてミアが言うと、ルシールは斬漢刀を握り直した。
「本体の力もなかなかのものだ。油断はできん。ここは一気に畳み掛けるか」
 そう言うとルシールが駆け出し、7人は其れに続いていった。

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参加者
アルカナの・ラピス(a00025)
斬鬼・ルシール(a00044)
鬼札・デューイ(a00099)
六風の・ソルトムーン(a00180)
フレッツ・ヒカリ(a00382)
壁犬・ウィスタリア(a00498)
泪月華想・ミア(a00968)
百合の舞刃・クーヤ(a09971)


<リプレイ>

 冒険者達の前に姿を現した緑一色の全身鎧。右の手には無骨な戦斧。左の手には獅子の大盾。その背後からは宙を舞う数本の剣。
「本体の力もなかなかのものだ。油断はできん。ここは一気に畳み掛けるか」
 斬漢刀・参式を握り直すと、悪を断つ竜巻・ルシール(a00044)が駆け出し、他の7人は其れに続いていった。その道すがら、六風の・ソルトムーン(a00180)はどろり濃厚ピーチ姫・ラピス(a00025)とルシールに声を掛ける。
「主、倒れれば従これ滅ぶの理なり。剣達は後ろに任せて、緑鎧に集中するぞ!」
「承知!」
 ルシールはソルトムーンの言葉に頷くが、ラピスはそこで足を止めた。その間にも、緑鎧の背後からは次々と剣が放たれている。
「どうした? ラピス」
 ラピスの様子に足を止め、ソルトムーンが問う。ルシールも単騎で突っ込むわけにも行かずにそこで止まると、ラピスはルシールに近づき『君を守ると誓う改』を掛ける。
「皆を守るのが、妾の騎士道じゃ」
 更に、泪月華想・ミア(a00968)と心感染・ヒカリ(a00382)にも『君を守ると誓う改』を掛け、ラピスはこう言った。
「皆は攻めの一手と言うこともあるからのぅ。守りに特化した者も必要じゃて」
 そんなラピスの行動で彼らの初動は少し遅れたが、副産物として彼らは作戦を練ることが出来た。結果として、ソルトムーン・ルシール・ラピスは鎧に向かい、それを壁犬・ウィスタリア(a00498)が援護する。残りの4人は舞う剣を担当、と言う配置になった。
 また、この時間を利用して、鬼札・デューイ(a00099)は『リングスラッシャー奥義』を数体喚びだす事が出来ていた。
「奴サンも一筋縄じゃ行きそうにないが、俺は『鬼札』って看板に恥じない仕事をするだけさ」

 準備が整ったので、ウィスタリアが援護射撃の『影縫いの矢奥義』を放つ。
「動きを止めるにゃ♪ 逃がさないのにゃぁ♪」
 それを合図に、冒険者達は鎧と剣に向かっていった。と言っても、全員が向かっていく程、彼らは考え無しではない。先程ラピスが誓いを掛けた2人、ミアとヒカリは後方で剣の動きを見極めていた。
(「……最低でも5本出るわけで……それ以上出ても驚きませんけど……」)
 ミアはそう思いながら、改めて宙を舞う剣の数を数える。鎧の周りには既に20本近くの剣が守りを固めていた。
(「……戦うだけって……苦手なんですよね……本当……」)
 ヒカリはそんな思いを抱きながらも、剣の様子を見ていた。今は、刃嵐の百合・クーヤ(a09971)が剣達を引きつけるべく、『スーパースポットライト奥義』を使っている所である。
「さぁ〜! こっちに来るのです〜」
 まばゆい光が消えた時、果たして剣達は近くにいたクーヤの元へと向かってきた。ヒカリは後方でその様子をしっかりと観察する。
(「鎧が指示を出しているわけでは無いようです……。動きがバラバラだから……剣達の中に指示を出している者がいるわけでも無さそう……」)
 更に観察していると、周りに剣の居なくなった緑鎧が、更に5本の剣を空中に放つ。ヒカリはすかさず『スキュラフレイム奥義』をその剣に放った。
(「……やはり……鎧の能力なのですね」)
 パターンを理解したヒカリは、改めて『スキュラフレイム奥義』を剣に向かって放った。
 一方、クーヤが引きつけていた方の剣は、ミアの『エンブレムシャワー奥義』でその数を3割ほど減らしていた。だが、まだ7割の剣が、クーヤの双剣『Rosa chinensis』と切り結んでいた。
 クーヤは『ライクアフェザー奥義』で回避に専念し、少しずつ鎧と剣の距離を離していく。だが、この数では剣全部を誘導しきれず、剣が数本鎧の方へ戻り始めた。
「おっと。そっちには行かせねぇぜ! リングスラッシャー!」
 デューイの言葉に反応するかのように、リングスラッシャーが剣と空中で切り結ぶ。互いに相打ちで消えていく中、討ち漏らした剣をデューイは確実に仕留めていった。
(「持ち手が居ないとは言え、相手は剣。その殺傷力を生かすには、必然的に動きなんて決まってくるはずだ」)
 デューイの読み通り、宙を舞う剣は普通の剣同様に振り下ろされる。とすれば、あとは普通に戦えば良い。
 相手の力量を見極めたデューイは、クーヤと同じく、『ライクアフェザー』を使って回避しつつ剣を引き離しに掛かった。戦っている間にも、鎧は剣を宙に放っていたのだ。
「舞う剣とのダンスだ。まさしく剣舞だな!」
 デューイの言葉に、クーヤも頷く。
「剣舞なら負けませんからね〜!」
 そう言う目の前で、クーヤの双剣が『ゴージャス斬り奥義』で剣を仕留める。

 剣担当の面々が奮闘しているお陰で、鎧担当の面々は鎧に集中することが出来た。だが、万全の状況を持ってしても、鎧の力は並みの者ではなく、鎧との戦いは熾烈を極めた。
「手加減して倒せる相手とも思えん! 全力で行かせて貰うとしよう!」
 ルシールが麻痺も厭わず『ファイアブレード奥義』で斬りかかる。相手はさも当然のように影縫いの矢の呪縛から逃れて、盾で斬漢刀を受け流す。空いた右手の斧は大上段に振り上げられ、膂力に物を言わせて一気に振り落とされる。
「そうはさせぬ!」
 ソルトムーンのハルバードが、斧の軌道を遮るように振り払われる。斧はすかさず戻され、緑鎧は背中から剣を再び湧き出させた。
「……」
 剣が出る間を幸いと、ヒカリが『毒消しの風奥義』を掛けた。ルシールは麻痺から回復し再び戦列に復帰した。

 ラピスの防御もあって、敵味方とも完全には攻めきれない状態が続く。緑鎧の斧が4回目の空を斬った時、ラピスはルシールに言った。
「少々強引に、妾へ注意を向けさせようと思うのじゃ」
 ラピスの意図は理解出来た。
「確かに、相手は見た目通り防御も堅いし、斧の勢いも衰える様子もない。ここは大きな一撃が欲しい所ではあるな……」
 ソルトムーンが言うと、3人は頷きあった。そして、先程とはうってかわってラピスが攻勢に転じる。
「妾が相手なのじゃ!」
 ラピスは『兜割り改』を放つ。すると、今まで攻撃を盾で受けていた緑鎧が、初めてその攻撃をかわす動きを見せた。さらに、ルシールやソルトムーンに向けられていた攻撃の手が、初めてラピス本人をめがけて振り下ろされる。
「合わせるぞ!」
 ソルトムーンの言葉に、ルシールが無言で頷く。その目の前では、ラピスが相手の大上段からの攻撃――兜割りを受けながら、鎧めがけて突っ込んでいった。そこへ、ウィスタリアの援護射撃も入る。
「鎧を貫通にゃ♪」
 『貫き通す矢奥義』が、鎧の中身にダメージを与える。遠距離からの攻撃に、鎧はたまらず自らの動きを止めた。そこへ、ラピスが身体ごとぶつかっていく。
「……ぐぅっ!」
 それは、ダメージとしては大したことはなかったのかも知れない。その時に必要だったのは、体当たりによる体勢の『崩し』だったからだ。そして、その目論見は見事に功を奏した。
「うおおおっ!」
 ルシールが正面から渾身の『ファイアブレード奥義』を振り下ろし、ソルトムーンがその左脇から『電刃衝奥義』で死角を突く。その連続攻撃は、ついに相手の鎧を傷つける事に成功した。割れた鎧からは、中身のモンスターの不気味な姿が見て取れる。
「ぐおあぁぁっ!」
 モンスターは一声咆吼を上げると、更に背中から剣を出した。だが、既に剣担当の者は他の剣を完全に打ち倒しており、背中からの剣もすぐに彼女たちによって迎撃されていた。逆に、咆哮はさらなる隙を生み、ソルトムーン達は一気呵成に攻め立てる!
(「あの調子だと、俺が手伝いに行く前に潰しちまうかもな」)
 剣を迎撃しながら、デューイが半ば安心してルシール達の戦いを見る。彼の予想通り、鎧を傷つけてからの彼らは、相手を圧倒した。逆に、鎧を傷つけられたモンスターは、絶対的な防御が無くなったからか、戦意を失って行くように見えた。背中からの剣も、いつしか放たれることは無くなっていた。
「はあっ!」
 剣担当も鎧の攻撃に合流し、緩むことのない攻撃がモンスターを打ち砕く! 最後は、ルシールの斬漢刀がモンスターを地へと打ち倒した。
――ガシャァン
 鎧の砕けた鈍い金属音が森の中に響き渡る。ここに、戦いは終わりを告げた。

「ちゃんとしないと跡が残るかも知れません。手当をしますから、少しだけ我慢して下さいね……?」
 戦いを終えた冒険者達を、ミアがそう言って手当する。その横で、ヒカリは地面に転がっていたモンスターの斧を見ていた。
(「……戦士であった者なら、これを墓にして置きましょうか」)
 ヒカリはそう考えると、がれきとなった鎧の前に、巨大な戦斧を立てる。
「……戻るぞ」
 ソルトムーンがそう他の冒険者達に声を掛け、彼らは黒桔梗の森を後にした。


マスター:金華堂公子 紹介ページ
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